第七十四話 魔神王
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第七十四話を投稿させていただきました。
皆がバラバラに各地へ転送される中、悠都たちは一丸となり仲間たちと合流するために動き出す。
是非お楽しみください。
皆がバラバラに転移させられた中、リリィ、クラウス、悠都、茜、ヤミ、キツネ、鈴木の七人は、同じ場所へ転移していた。
「ここが現世…。茜さんたちの生まれ育った世界なのですね…。」
「うん、そう。」
キツネの言葉に、茜は頷く。
「とりあえず、他のみんなとも合流しましょう。」
リリィの声に皆が頷き、動き出す。
その時
「影塚星影の仲間だな?」
どこからどう見ても人間ではない怪物が、七人を見下ろしていた。
「ひっ!」
キツネはその姿を見た瞬間、尻もちをつく。その身体は震えていた。
「キツネちゃん!」
ヤミがキツネに寄り添い、その身体を支える。
「ほう。九尾の一族の末裔か。お前ら、来い。」
大柄な怪物の声に反応するように、四体の怪物が何もない空間から姿を現す。
「ヤバいな…。」
クラウスは腰から短剣を二振り抜き、構える。
「我が名は魔神王メフィスト。貴様らも《堕天使》復活の生贄となれ。」
その名を聞いた途端、皆は戦慄した。オリジンやマーリンすら超えるほどの魔力と、禍々しい気配。クラウスは短剣を握る手が、無意識に震えるのを感じていた。
「恐れたか?案ずるな。すぐに楽になる。殺れ」
メフィストの背後にいた四体の怪物が、クラウスたちへ迫る。クラウスは真っ先に怪物たちへ向かって駆け出した。
「ワタシたちも行くわよ!」
リリィの声に皆が構え、クラウスへ続く。
「雷霆」
一体の怪物が手に握った槍をクラウスへ投げつける。
クラウスは短剣で槍を打ち払う。
しかし、弾かれた槍は空中で軌道を変え、クラウスの背後から脇腹を貫いた。
「がぁ……!」
「クラウス!!」
リリィが叫び、クラウスへ駆け寄る。
「クラウス!」
「俺に構う…な。逃げろ…。」
「賢明だな。クラウスとやら。我らに勝ち目がないと理解できたらしい。」
メフィストが嘲笑う。リリィはクラウスを担ぎ上げ、逃げ出す。
「置いていけ!お前たちまで殺られる!」
「アナタを見捨てるわけにはいかない!」
その時、悠都と鈴木がリリィたちとメフィストたちの間に立ちはだかる。
「行け!」
「ここは俺たちが!」
「お前らじゃ…勝てない!」
クラウスが吐血しながら叫ぶ。
しかし、悠都はクラウスへ振り向くと、真っ直ぐに言った。
「星影なら、それでも敵に背は向けない。俺はあいつのダチだからよ。俺だけ逃げたら、カッコつかねぇだろ。」
リリィはクラウスを担いだまま、その場から走り去る。
「無謀だな。」
「やってみなきゃ、わからねぇぜ!」
「メフィスト様たちは先へ行ってください。ここは僕が。」
先ほどクラウスを槍で貫いた怪物が、悠都と鈴木へ迫りながら言う。
「そうか。任せたぞ。」
「はい。…僕はオーディン。」
怪物は、悠都たちの前でそう名乗った。
「五十嵐悠都!」
「鈴木雄介!」
メフィストたちはその場から姿を消し、悠都、鈴木、オーディンの三人が残された。
「来い!エクスカリバー!」
悠都の声に呼応するように、銀色の鎧に身を包んだ騎士が姿を現す。
「式神…ですか。」
オーディンは悠都を一瞥してから、鈴木へ視線を向ける。
「あなたは、どのような能力なのですか?」
「俺は回復だ。」
「そうですか。」
「お前の能力は?」
悠都がオーディンを見る。
「僕の能力は光です。」
「光か…。あまりいい思い出はねぇが。」
悠都はアメリカでの苦闘を思い出す。
「いきますよ。」
オーディンは槍を握ると、構える。
「雷霆!」
光り輝く槍が、悠都たちへ向かって放たれる。鈴木も悠都も反応できずにいた。しかし、悠都のエクスカリバーが二人の前に立ちはだかり、迫り来る槍を剣で弾き返した。
「っ!」
「こいつ!自分で動いた!」
オーディンが驚く。悠都もまた、自分の能力に驚いていた。
「いい能力ですね。」
オーディンは槍を握り直し、悠都と鈴木へ連続で突きを放つ。
「雷霆雨霰。」
雷霆と同等、あるいはそれ以上の速度で繰り出される槍の連撃。エクスカリバーはその攻撃を次々と捌いていく。だが、すべてを捌ききることはできなかった。槍がエクスカリバーの身体を貫く。その瞬間、エクスカリバーは光の粒子となって消滅した。
「エクスカリバー!」
鈴木もまた、次々と槍に貫かれていく。しかし、傷を負うたびに治癒を施し、身体を再生させる。だが、能力を連続で使い続けているため、いつ限界が来てもおかしくはなかった。
「鈴木雄介と言いましたね?よくもこれに耐えうる精神を持っている。敬意を表しましょう」
オーディンの突きが、さらに速度を増す。鈴木は必死に回復を続けるが、ついに回復が追いつかなくなる。
「ぐっ…!」
槍が鈴木の胸元を貫いた。
「鈴木ぃ!」
悠都が叫ぶ。オーディンは悠都へ視線を向けた。その目は、獲物を狙う狩人のように冷たく鋭かった。
「来い!エクスカリバー!」
悠都は再びエクスカリバーを召喚する。
「もう同じ手は通用しませんよ」
オーディンは瞬く間に悠都とエクスカリバーを槍で貫いた。
「…わかっ…てた…。俺たちじゃ…お前らに…敵わないって…。」
オーディンは槍を悠都から引き抜く。悠都はその場に崩れ落ち、エクスカリバーも消滅する。それでも、悠都はオーディンの足を掴んだ。
「それでも…!俺は…あいつと一緒に、肩を…並べたいと…思ったんだ…!」
「そうですか。」
オーディンは悠都を見下ろす。
「ただの人間が、ここまでやるとは思っていませんでした。あなたにも敬意を表しましょう。その誇り高き精神に。そして、五十嵐悠都。あなたのご友人にも。」
オーディンはそう言うと、悠都へ槍を振り下ろす。
「さて、残りも仕留めに行かねば。」
オーディンはその場から姿を消した。
───
その頃、三重県伊勢市では
「まさか、このようなことが起こるとは思ってもみませんでしたよ。」
「でしょうね。あえてあなたの預言から僕を消しておいたので、あなたが僕に気付くのは何があっても不可能でしたから。」
「そうですか。それで、なぜ今頃《堕天使》の復活などを計画したのですか?雅仁。」
アリスの祖母、アリューシア・テイラーは、目の前に立つ須郷雅仁を見つめる。
「なぜ、ですか?それは僕がこの世の頂点に立つためです。」
「なぜ、そのようなことを?」
「質問が多いですね…。」
須郷は少し間を置いてから、口を開く。
「僕は暁彦に憧れていたんですよ。彼の《特異点》としての力があれば、すべてを意のままにすることができる。僕は、そんな自由な世界を欲した。」
須郷は淡々と語る。
「そして今、彼は死に、《特異点》の力はまだ誰にも宿っていない。それならば、《特異点》に選ばれるために、僕は《堕天使》を取り込む」
アリューシアは、その言葉に目を見開く。
「雅仁!それはあなたの身を滅ぼす!世界をも滅ぼすことになる!今すぐに止めなさい!」
「うるせぇな。ババア。」
突然、須郷の口調が変わる。アリューシアは、その変化に一歩後退した。
「僕が無策で計画してると思うのか?《堕天使》を取り込む器になるために、管理者さえ殺して取り込んだ。」
「…もう、あなたはあの頃のあなたではないのですね…。」
「フン。過去に浸るな、ババア。」
「雅仁。暁彦たちが悲しみますよ。」
「知ったことか。」
須郷は冷たく言い放つ。
「過去の英雄どもが何を思おうが、僕は僕のやりたいようにやる。お前も、過去の英雄としてここで死ね。」
須郷の刀が、アリューシアの胸を貫く。
「馬鹿…が…。」
アリューシアは最後の力を振り絞り、札を須郷の腕へ押し付ける。
そして、その場へ倒れた。
「悪足掻きのつもりか?」
須郷は刀に付着した血を払い、鞘へ収める。
───
「見つけた。」
ヴァイオレットが一人、見知らぬ地を歩いていると、背後から声がした。
振り返ると、そこには鈴木義文が立っていた。
「っ!」
ヴァイオレットは逃げ出す。
「もう逃さない。」
義文がそう言うと、アダムが動き出す。
アダムは瞬く間にヴァイオレットを捕らえた。
「は、離して!」
「ジタバタするなよ。君には今から、実験を手伝ってもらうんだから。」
気味の悪い狂気じみた笑みを浮かべた義文が、アダムに拘束されて動けないヴァイオレットへ近付いていく。
皆さん、いかがだったでしょうか。
魔神王とその部下たちの登場。そして部下の一人、オーディンにより悠都と鈴木は命を落とす。
そして三重ではアリスの祖母、アリューシアの元に須郷雅仁が現れる。アリューシアが知っている彼とは異なる言動や計画。須郷雅仁は何者になってしまったのか。
次回第七十五話 集う者たち




