第七十三話 天使と悪魔
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第七十三話を投稿させていただきました。
終末戦争が幕を開け、至るところで戦いが繰り広げられる。
是非お楽しみください。
マーリンは、黒い衣服に身を包んだ女性と、白い衣服に身を包んだ女性と対峙していた。
「また姿が変わったんだ。マーリン。」
「哀れだね。ボクが救ってあげるよ。」
二人に目を向けたマーリンは、冷や汗を流す。
「超越種…。」
マーリンがこの戦いで絶対に会いたくないと思っていたほど恐ろしい存在が、今、目の前に立っていた。
「キミたちの目的って、《堕天使》の復活でしょ?ボクたちさ、アイツが復活すると困るんだよ。ボクたちの地位を剥奪されて、この世から消されることになるからさ。」
白装束の女性の言葉に、マーリンは冷や汗を流しながら、
「そうか…。」
と答える。マーリンは二人と距離を取り、いつ攻撃されても対応できるよう身構えた。
「それで困るからと言って、なぜ私の元へ来た?」
マーリンの問いに、黒装束の女性が答える。
「それはさ、計画してる奴らを倒すのが一番手っ取り早いわけじゃん。それに、その中でも一番弱いのを先に潰しておいた方が楽だしね」
「くっ!天使と悪魔風情が!王権 終焉の魔導!」
「行くよ、久遠。」
「うん。」
白装束の女性――久遠は、マーリンの放った王権へと迫る。
純白の羽根を散らしながら羽ばたき、掌を王権へ向ける。次の瞬間、マーリンの王権は跡形もなく消し飛んだ。
「バカな!」
マーリンは驚愕する。オリジンの王権にも匹敵すると思っていた自分の王権が、いとも容易く掻き消されたのだ。
「任せたよ、時雨。」
「はいよ。」
黒装束の女性――時雨は、人差し指をマーリンへ向ける。その指先から漆黒の魔力弾が放たれ、マーリンの肩を貫いた。
「ぐっ!」
マーリンが怯んだ瞬間、時雨は悪魔的な笑みを浮かべる。
「何が…おかしい?」
「さよなら。」
時雨がそう呟いた瞬間、空から黒い魔力の塊が降り注ぐ。マーリンはそれに呑み込まれ、その姿を完全に覆い隠された。
「マーリンの魔力は消えたね。次に行こうか。」
「そうだね。」
久遠の声に、時雨は振り返って頷く。二人は、次の王の元へ向かって動き出した。
───
「探すのはめんどくせぇ!一気に潰してやる!」
突如、空に巨大な流星群が現れる。
「一気に潰せば、悪人諸共消し飛ばせる!」
須郷に能力を授けられた一人の男が叫びながら、能力を発動させる。街中にいた人々は恐怖に駆られ、一斉に逃げ惑う。
「あいつ!俺たちまで殺す気だ!」
「死にたくないよ!斗真くん!」
「大丈夫だ!俺がついてる!」
「誰か!助けてくれ!」
人々の悲鳴がノイズのように鳴り響く街中。そこへ、一人の華奢な少女が現れた。その手には、大型の戦斧――バルディッシュが握られている。
「知ってる?能力者が死ねば、能力は解除されるんだよ。」
少女は頬についた血を袖で拭うと、流星群を放った男へ向かって駆け出す。
「っ!なんだ、ガキィ!」
少女は一瞬で男との距離を詰め、その身体をバルディッシュで斬り伏せた。
男が倒れると同時に、空を覆っていた流星群も次々と消滅していく。
「お、おい…あの子がやったのか…?」
「何であんなもん持ってんだ…?」
「私たちも殺されちゃうかも…。」
バルディッシュを肩に担いだ少女は振り返り、狂気的な笑みを浮かべる。
「次は誰を殺そうかな?」
少女は周囲を見渡し、一人の男に目を付ける。
「次はあなたぁ!」
標的へ駆け出しながら、少女は進路を塞ぐ者たちを次々と斬り伏せていく。
「さよなら!お兄さん!」
少女がバルディッシュを振り下ろした瞬間――ガキンッ!そう音を立ててバルディッシュが真っ二つに折れた。
「…あれ?」
少女は呆然と折れたバルディッシュを見つめる。すると、標的だった男が少女を睨みつけた。
「ウォォォォォォォォ!!」
男が叫び声を上げた瞬間、周囲のビル群が男を中心に次々と薙ぎ倒されていく。逃げ遅れた人々も、崩壊する街の中へと巻き込まれていった。
「これで二十人近く殺せたか。」
男はそう呟くと、何事もなかったかのように血に染まった道を歩いていった。
───
「まさか、お前さんに会えるなんてな。」
一人の中年男性が、ルベルの前に姿を現す。
「誰だ?」
「お前さんは、俺に会いたかったんじゃないか?」
「知らないな。お前など。」
「そうか…。俺は《世界政府》、オリンポス十二神のゼウス。」
「っ!」
その名を聞いた瞬間、ルベルは駆け出した。魔力を纏わせた蹴りをゼウスの頭部へ放つ。しかし、ゼウスの頭部は、ホログラムのように透けて消えた。
「残念。」
次の瞬間、ゼウスは足に雷を纏わせ、ルベルの腹部へ蹴りを放つ。
「ぐっ!」
ルベルは吹き飛ばされ、そのままビルへと叩きつけられる。
「か、体が…痺れる…。」
「《終末の七勇者》もこの程度か。」
ゼウスは動けないルベルへ近付いていく。その背後から、森田が飛び出した。
「食らえ!」
ゼウスの頭部へ向けて発砲する。しかし、またしてもゼウスの頭部はホログラムのように透け、銃弾はそのままビルへと突き刺さった。
「邪魔だ。」
ゼウスが手を掲げる。次の瞬間、空から雷が降り注ぎ、森田を撃ち抜いた。
「ぐっ…!」
森田は倒れかけながらも踏み止まり、再び銃口をゼウスへ向ける。
「っ!」
引き金を引く。放たれたのは、翡翠色に輝く銃弾。それを目にした瞬間、ゼウスは身体を稲妻へと変化させ、弾丸を躱した。
だが――
「何っ…!」
弾丸の周囲には、翡翠色に輝く風が纏われていた。それがゼウスの左腕を掠める。
「くっ…。」
ゼウスは左腕を押さえる。一方の森田は力尽きたように、その場へ倒れ込んだ。
「俺の体に…何をした…?」
ゼウスは森田を睨み下ろす。そして、追撃するように雷を落とした。
「っ!ゼウス!」
ルベルが声を上げ、ゼウスを睨みつける。
「来るか。ルベル・スカーレット。」
ルベルは痺れる身体を無理やり起こし、掌から血液を溢れさせる。そして、それをゼウスへ向けて放った。ゼウスは身体を稲妻へと変化させ、目で捉えられないほどの速度で攻撃を躱す。そして次の瞬間には、ルベルの目の前へ姿を現していた。
「っ!」
ルベルは地面に垂れた血液を刃へと変化させ、無数の血の刃をゼウスへ放つ。しかし、ゼウスは再び稲妻のような速度でルベルの背後へ移動する。
「遅いぞ。」
雷を纏った蹴りが、ルベルを捉える。
「いっ!」
ルベルは吹き飛ばされ、ビルを三棟貫いて倒れる。その衝撃によってビルが崩壊し、ルベルは瓦礫の下へと埋もれてしまう。そこへゼウスが黒く光る雷を広範囲へと落とす。一瞬にして、周囲は黒煙に包まれた。
「これで仕留めたとは思えないが、体の再生で手一杯で、俺へ攻撃するどころではないだろう。」
───
「あいつだ!」
「ダルヴィッシュだな!」
人々が武器を手に取り、ダルヴィッシュへ駆け出してくる。
「皆さん!落ち着いてください!私たちは敵ではありません!敵は須郷という男です!」
「黙れ!」
「そうだ!お前らが世界を滅ぼす《終末の七勇者》だってことは知ってるんだ!」
ダルヴィッシュは少し俯くと、その場から走り去ろうとする。
「逃がすか!」
「食らえ!」
一人の男がダルヴィッシュの全身を瞳に捉える。すると、ダルヴィッシュの動きが突然止まった。
「なっ!」
「やったぜ! 俺が止めてる間に、あいつを殺せ!」
「オレっちたちにまかセロリ!」
周囲の人々は一斉に動けなくなったダルヴィッシュへ攻撃を仕掛ける。ダルヴィッシュは攻撃を受け続けながらも、必死に耐えていた。
「こいつ、タフだな。」
「オレっちの最強をぶつけてやるぜ!」
男は四本の指をまっすぐ伸ばし、ダルヴィッシュの鳩尾へ突き込む。
「ぬぐっ!」
「どうよ?オレっちの攻撃は?」
ダルヴィッシュは苦しそうに顔を歪める。
「こ…これは…?」
「毒さ。オレっちの能力は、毒を生成することができる。」
「毒…。」
ダルヴィッシュの身体を、次第に異変が襲う。目眩と吐き気に襲われ、寒気が背筋を撫でる。
「あばよ。」
男はダルヴィッシュの顎下から拳を叩き上げる。ダルヴィッシュは意識を失い、その場に崩れ落ちた。
もう一人の男が能力を解除すると、ダルヴィッシュの身体は再び自由を取り戻す。しかし、すでに立ち上がる力は残っていなかった。
「さてと、次に行こうぜ。」
毒使いはニヤッと笑みを浮かべると、周囲の人々へ声を掛け、その場を後にした。
皆さん、いかがだったでしょうか。
マーリンの前に現れた超越種と呼ばれる天使の久遠と悪魔の時雨。彼女らにより魔王マーリンは千年の君臨を終える。
だがそれだけで終末戦争が終わるわけではない。
この世界を救うためにもどれほどの犠牲を出そうとも彼らは戦い続ける。それぞれの思いを掛けて。
次回第七十四話 魔神王




