第七十二話 《終末世界》の始まり
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第72話を投稿させていただきました。
須郷の登場により戦いは一時休戦となった。
しかしそれは新たな戦いの幕開けとなる。
是非お楽しみください。
三王と《世界政府》の襲撃、そして星の主の介入があったあの日から、一週間が経った頃。
「あれから一週間…。奴らは一体、何を考えてやがる」
アランの小言に、ルベルが答える。
「そうだな。奴らの目的が定かでない今、何が起こるかわからない。それに、あの須郷という男。奴は間違いなく現世の人間だ。《世界政府》に所属せず、何らかの手段を用いてアルケインに接触した。」
「でも、俺たちがやることは変わらない。世界を救うために、七王も《世界政府》も星の主も倒す。そして、《堕天使》も必ず倒す。」
星影の決意に満ちた声に、アランもルベルも安心したようにフッと笑った。
「そうだな。考えても分からないしな。」
「ああ。」
三人はギルド宿舎の裏庭で、そんな会話をしていた。
その時だった。灰色のボロボロなローブを身に纏い、フードを深く被って顔を隠した者が、宙に浮いているのが見えた。星影たちは、その者の存在に気付くことはなかったかもしれない。しかし、その者が放つ強大な魔力は、自分がここにいることを強調するかのように、周囲へと放たれていた。
「いつの間に…。いや…なんだ、あの魔力は…。」
アランが呆然としていると、その魔力を感じ取った皆が宿舎から出てくる。
「これは何なのですか…?」
「この魔力…あの時来た三王よりもヤバくない…。」
オベイロンは目を見開き、空を見上げていた。ヤミも驚きを隠せず、そのローブの者を見上げている。ほかの皆も同様に、そのローブの者から目を離せずにいた。すると、ローブの者の魔力が一気に膨れ上がる。次の瞬間――。
「消えた…。」
「魔力も感じない…。」
ローブの者は、魔力と共に姿を消した。アリスとルシファーが驚愕する中、ダルヴィッシュが口を開く。
「星影殿、彼は?」
「分散した…。あり得ないことかもしれないけど、魂が無数に分散して、至る所へ降り落ちていった。」
「魂が…分散…?」
キツネは訳がわからず、首を傾げる。
「俺にもよく分からない。でも…ヤバい気がする…。」
その時、消えたローブの者がいた空に、何かが見えた気がした。
「おい! あそこ!」
悠都が空を指差す。そこには、まるで空そのものに刻まれたかのようなヒビ割れが見えた。
「空に…ヒビ割れ…?」
皆が疑問に思った、その次の瞬間、空や景色が消え去り、そこにビル群が現れた。
「何ですか…この塔の群れは…。」
オベイロンはビル群を見て唖然としていた。それはダルヴィッシュ、ルシファー、キツネ、ノワールも同様だった。
「ここは…現世だよな?」
アランは驚きながらも冷静にルベルへ問いかける。
「ああ、間違いない。」
ルベルの答えに、オベイロンたちが驚愕する。
「皆さん、こんにちは。」
突如、空に映像が映し出された。
「あいつは!」
クラウスが空に映し出された人間を見て声を上げる。
星影以外の皆も、その人物を見て身構えた。
「あいつは…?」
星影の問いに、シエルが答える。
「彼が須郷雅仁。星の主のトップだよ…。」
「あいつが…」
映し出された須郷が口を開く。
「皆さん、はじめまして。星の主の組織長を務めています。須郷雅仁と申します。異世界に住まわれる皆さん。とても驚かれたことでしょう。これは僕たちの計画の第一フェーズ、現世と異世界の融合です。」
「融合…だと…。」
ルシファーが顔を顰める。
「僕たちの目的は、《堕天使》ルシファーを解放すること。そのための第一フェーズが、この世界融合です。ただ、これで完了したわけではありません。続いての第二フェーズを完了するためにも、条件を満たさなくてはならない。」
《堕天使》という言葉に星影が反応する。それは星影の内に棲むオリジンも同様だった。
「第二フェーズ完了には、現世の皆さんも苦しめられた厄災、捕食王オリジンとその一派。そして、オリジンを現世に招いた張本人――魔王マーリンとその一派。そして、現世の皆さんにとっては残念なお知らせになるかと思いますが、この現世を地獄に変えたオリジンと組していた《世界政府》。さらに、《世界政府》と異世界に繋がりを持つ天界王釈迦。最後に、この世を終焉へ誘う悪の組織――《終末の七勇者》。彼らを滅ぼし、平和を享受できた時、《堕天使》と呼ばれた神は真の姿へ進化を遂げ、この世界に永劫の楽園をもたらすことになります。僕はこれ以上、現世の人にも異世界の人にも、大切な人を亡くす思いも、恐怖と隣り合わせで生きる辛さも感じてほしくない。だから僕たちと手を取り、悪を滅ぼし、世界を救いましょう!僕たちが偉大な救世主となり、今後この世界の自由と平和を、この手に掴むのです!」
須郷は一息置く。
「明日を!明後日を!来年を!大切な人と過ごしたい!隣人にも幸せになって生きてほしい!戦争がなくなればいい!そう思うのなら!僕と共に来てくれる人々がいるのなら!国境や世界を越えて、一人ひとりが手を取り合ってほしい!僕と共に世界を救おう!世界を終末へ誘う悪へ――正義の鉄槌をっ!」
きっと、訳のわからないことを言っていると思う人々もいるかもしれない。それでも、多くの人々は手を挙げ、声を上げる。
「僕と共に来てくれると思ってくれた皆さんには、僕から些細な贈り物を。今、皆さんには力を授けました。それは魔力です。魔力は皆さんの体に馴染み、それぞれの形へと変化します。」
「あの時、彼が私たちの戦いを止めた理由って…私たちを争わせるため?」
アリスの言葉に、ルベルは頷く。
「そうだろうな。」
その頃、世界各国では――。
「見ろ!手から炎が出るぞ!」
「俺は空を飛べる!」
「私は瞬間移動できる!」
力を授かった人々が、歓喜に満ちていた。
「皆さん、力は授かれたでしょうか?それでは、皆さんにこちらを。」
突如として、人々の腕にリングが取り付けられた。
「そこに、先ほど伝えた悪人たちの情報を記載したデータが添付されています。それでは始めましょう。世界を救うための、人類最終戦争を。」
そして映像が消え、眩い光が世界を包む。
「っ!」
星影は目を瞑る。やがて光が収まると、恐る恐る目を開いた。
「ルベル…?アラン…?」
周囲を見渡す。しかし、アランもルベルもいない。
「みんな!どこだ!」
アランやルベルだけではない。先ほどまで一緒にいた皆が、いなくなっていた。
『これで孤立させたところを襲わせる気だろう』
オリジンの声に、星影は少し安堵する。
「オリジン…。」
「あいつだ!」
「やるぞ!」
そこへ、五人の市民が駆けてくる。
「殺せぇ!」
五人がそれぞれ、炎、雷、風、氷、岩といった特殊能力を星影へ放つ。星影はそれを躱し、構える。
「聞いてくれ!俺たちは敵じゃない!敵は須郷だ!」
「嘘言うんじゃねぇ! 俺たちは見たぜ! お前たちが世界を滅ぼそうと王たちと会話しているところを!」
「それに、お前はオリジンと組してるらしいな!」
「俺たちから自由を奪った奴は死ねぇ!」
五人が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「単純な攻撃動作…。それに、能力の応用もない。」
星影が五人へ駆け出し、それぞれの首を叩く。
「少し寝ててくれ。」
そして星影は、仲間たちを探して走り出す。その直後、気絶していた五人の腕輪が、赤く点滅を始めた。そして爆発した。
「はっ!」
星影が振り返る。そこには、爆発によって倒れた五人の姿があった。
「ぁ…。」
『星影! 止まるな!』
星影は、自分のせいで罪のない人々が死んだのだと、少し前の自分の判断を悔やんだ。しかし、オリジンの声にハッとさせられる。
『須郷を止めるぞ。あいつらは洗脳されている。あの腕輪の付与と同時にな。』
「っ!」
星影は唇を噛む。
そして、全速力で駆け出していく。
───
その頃。魔王マーリンは、出会いたくない存在に出会ってしまった。
「また姿が変わったんだ。マーリン」
「哀れだね。ボクが救ってあげるよ」
白装束、黒装束の少女二人に目を向け、マーリンは冷や汗を流す。
「超越種…。」
───
「よぉ、妖精王。」
「天界王…。」
オベイロンは釈迦に出くわしていた。
「お前も生贄になれ。」
「生贄…?何のことですか?」
「あ?知らねぇのか。この戦いは、《堕天使》ルシファーを復活させるための戦い。そして、それは大勢の生贄の上に成される。」
「なぜ!《堕天使》などの復活を、あなた方は計画しているのです!《堕天使》の復活は、世界を滅ぼすのと同じこと!」
「そうだ。俺たちはこの世界を滅ぼす。そして、新たな世界を作り出す。新世界秩序こそ、世界のあるべき姿。」
「あなた方の計画のために大勢が犠牲になることは、私が断固として拒否します!」
オベイロンの体から、一気に魔力が膨れ上がる。
「王権!」
「止めとけ。魔力の無駄遣いだ。」
「虚ろな生命の葬送!」
だが、王権は不発に終わった。否、釈迦に掻き消されたのだ。
「だから言ったろ。無駄遣いだって。」
「天界王…。」
「あばよ。妖精王。」
釈迦は一瞬でオベイロンの胸を拳で貫いた。
「金剛怒拳!」
「ぐっ…!」
「慈光波動!」
釈迦の拳から強力な波動が放たれる。オベイロンは胸を貫かれたまま、内側に直接波動を受け、勢いよく吹き飛ばされた。胸を中心に全身へひび割れが生まれ、今にも砕け散りそうになっていた。
「まだ原型を留めてられるか。ま、王だもんな。」
動けずに倒れているオベイロンに、釈迦が一歩、また一歩と近付いていく。そして、胸を踏み付けた。
「今から楽にしてやるからな。」
魔力を足に込めた釈迦が、オベイロンを踏み潰す。オベイロンの体は砕け、消滅した。この瞬間、《暁》の皆は、馴染みのある魔力の消失と、それと同時に大きく膨れ上がる敵の魔力を感じ取った。
「オベイロン…。」
『まさか、あいつがやられるとは。』
オリジンがそう呟く。
『やはり、昔とは比べ物にならないほど力を増しているようだ。星影、釈迦には…いや、王には気を付けろ。』
「ああ。」
───
アランの前には荒川が現れた。
「テメェが神木をやったんだな。」
アランが目の前の荒川を睨みつける。
「怖い顔すんなよ。お前も神木のところへ送ってやるさ。神速のランスロット。」
アランは背から二振りの双剣を手に取り、抜剣する。
「来いよ。地獄に落としてやる。」
荒川も二振りの刀を抜刀し、アランへ駆け出す。
「神速…。」
突如、アランが姿を消す。
「どれだけ目に追えない速さで動こうが、魔力で位置が分かるんだよ!」
荒川は刀を振り回し、辺り一帯を切り刻む。ビルは倒壊し、景色が開ける。
「飛ぶ斬撃に、何でも斬る斬撃、そして斬撃の強化…か。」
アランは荒川の攻撃を躱しながら、懐へ入る。
「魔力で捉えられるんじゃなかったか!」
アランは荒川へ双剣を振るう。
「神速 双彗星!」
荒川が刀でアランの攻撃を受け止めようとする。しかし、荒川の刀は折れてしまった。
「っ!」
「遅せぇんだよ!」
アランはすぐに次の攻撃態勢へ入る。
「神速 閃光双乱舞!」
アランは《絶対切断》を握る荒川の左手首を斬り落とし、荒川の胸を複数回切り裂く。
「がっ…!」
「神木の敵は討たせてもらったぞ。」
アランは双剣に付着した血を払い、背の鞘に収める。そして、《絶対切断》を手に取り、鞘に収めた。
「安心して眠れ。後のことは俺たちに任せろ。」
そう《絶対切断》へ囁いた。
皆さん、いかがだったでしょうか。
須郷の計画が着実に進む中、王や魔力を手に入れた者たちが星影たちを狙う。
そして犠牲の上で成り立つ《堕天使》復活。
この壮大な終末戦争を星影たちは食い止められるのか。
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