第六十九話 新《巫女》
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第69話を投稿させていただきました。
終末戦争が始まり混沌を極める中、新たな《巫女》が悠都たちの前へ現れる。そこへ駆け付けたのは彼らのクラスメイトだった。
是非お楽しみください。
ルベル達は夢の世界に囚われたままだった。しかし、とある違和感にルベルとノワールは気付く。
「なぁ、ノワール。星影は半吸血鬼だったよな?」
「そうですね。」
「つまりこれは夢の世界で確定ってことで間違いないか?」
「ええ。そうだと思います。もしこれが現実であれば主は死ねない。半吸血鬼である以上、心臓を潰さなくては死ねません。」
「お前ら、死ぬぞ。外で星影が戦ってるかもしれない。ここは夢だ。」
そしてルベルとノワールは自分の首を斬りつけ死んだ。後に続きアラン達も自決していく。星影は夢幻王の能力により、再び夢の中へ。そこで三王と対峙していた。一方、現実世界では目覚めたノワール達が魔王マーリン、天界王釈迦、夢幻王ルミナスと対峙していた。
「まさかこんな展開になるとはな。」
釈迦は指を鳴らす。すると釈迦の背後にいくつものワープゲートが開き、中から人間が何人も姿を現す。彼らを見た直後、神木が息を呑む。
「足手纏の神木。まだ生きていたか。」
刀を腰に下げた男が凍てついた目で神木を見る。
「荒川…。」
「知り合いか?」
悠都が横目に神木を見て尋ねるが、神木は何も口を開かない。するとシエルが
「彼らは《龍神》…。」
「《龍神》!それって神木を追い出したチームだよな?」
「そう。そして彼らの後ろに控えているのは《邪神》。《世界政府》は本気で私達を消そうとしているみたいだね。」
シエルが低い声で言う。
「まさかここまでするとはな。」
ルベルは険しい顔をして彼らを睨む。
「《邪神》って、ジャック・ザ・リッパーやアルセーヌ・ルパンが元々いた組織ですよね?」
「ああそうだ。」
アリスの少し怯えているような声にルベルは頷く。
「さあ、敵を殺した奴は給料アップだ。《終末の七勇者》を殺した奴は給料三倍にしてやる。殺れ!」
釈迦の声に《龍神》と《邪神》は動き始める。その時、釈迦の背後に彗星とアダムが遅れて現れる。
「釈迦様。遅くなりました。」
「アダム、彗星。お前らも敵を屠れ。成果は義文さんに伝えておいてやるからな。」
「はい。頑張ります。」
アダムと彗星は頷くと《龍神》と《邪神》に続き攻めていく。
「オベイロン!エーデルから出るぞ!」
アランが声を上げるとオベイロンは頷き
「テレポート。」
味方、敵含め全員がエーデルの外へ転移させられる。
「やるじゃん、オベイロン。」
釈迦がニヤッと笑みを浮かべ、オベイロンへ歩き出す。
「マーちゃんとルミナスはエーデルに置いてかれた影塚殺してきちゃいなよ。俺はオベイロンを殺る。」
「いいだろう。」
「はーい。」
マーリンとルミナスは宙を舞いエーデルへ飛び立つ。ノワールはマーリンとルミナスがエーデルへ向かうのを目撃し、その後を追う。
「良かったな神木。足手纏のお前を捨てない奴らで。」
荒川は刀を抜くとそう言いながら神木に斬りかかる。神木も刀を抜きそれを受け止める。
「黙れ!」
神木は荒川を睨み
「こいつらは俺を仲間と呼んでくれる!お前らとは違うんだ!」
「そうか。」
荒川は力を込め神木を吹き飛ばす。
「以前よりも弱くなったんじゃないか?こんな弱い奴らと一緒にいるんだしな。」
「テメェ…!」
神木は刀身を黒く変化させ、荒川へ飛び掛かる。
「絶対切断…か。それで俺の能力に勝てると思ってんのか?」
荒川は刀を一振りすると強烈な突風が吹き荒れ、神木は腹部へ深い斬り傷を負う。
「っ…。」
神木は倒れ落ち、血溜まりができる。
「相変わらず雑魚だな。」
荒川は神木へ近付き、首を刎ねる。
「お前の絶対切断はもらってく。」
荒川は神木の手から刀を取り上げる。その頃、茜と悠都の元には扇を持った女が近寄ってくる。悠都は剣を握り女を睨む。
「余を誰か分かっておるのか?」
「知らねぇよ!でも敵だってことは分かってるさ!」
茜も隣で銃を二丁構える。
「無礼者が。余は《邪神》の《巫女》。卑弥呼である。」
「《殺し屋》と《怪盗》とはなんか威厳が違うな…。」
悠都が茜にコソコソという。茜も頷く。
「聞こえておるぞ。まあ当たり前のことよ。余は誰の手にも堕ちん。《殺し屋》と《怪盗》なぞ、力欲しさにオリジンの手に堕ちた。そんな者を余と同視するのはやめろ。甚だ気分が悪い。」
扇を持ち直した卑弥呼は扇を開き、悠都へ投げ放つ。
「これくらい!俺にだって斬れる!」
悠都は剣を振り下ろし扇を斬り落とそうとする。だが、悠都の剣は扇に折られ、悠都の頬を扇が掠って宙を舞い、卑弥呼の元へ戻る。
「余の扇が斬れるわけなかろう。貴様とは違うのだよ。凡愚。」
茜は卑弥呼へ銃弾を何発も乱射する。卑弥呼は扇を開き銃弾をすべて防ぐ。
「なんで…あんなに硬いの…。」
「これが余の武器である。それも貴様らが使っている貧相な武器とは次元が違うのよ。」
茜は弾丸を装填し、悠都は折れた剣を構える。
「まだ分からぬのか?貴様らでは余に勝てんのよ。」
二人は卑弥呼へ駆け出し悠都は剣を振るい、茜は駆け回りながら銃を乱射する。しかし、卑弥呼は扇で口元を隠しながら、すべてを躱し切る。
「貴様らの攻撃など手に取るように分かる。」
「なんで当たらないんだ…。」
「余は《巫女》ぞ。《巫女》に与えられる力は未来予知。それを駆使すれば銃弾を躱すことなど容易い。」
悠都と茜は卑弥呼から離れ次の攻撃に備える。
「余を相手に諦めないことは褒めてやろう。しかし、自分の力を見誤っている所だけは感心できぬな。所詮凡俗の集まりであるに変わりないな。」
卑弥呼は呆れた目を二人へ向ける。そして懐からもう一つの扇を取り出す。
「終いじゃ。」
卑弥呼は両方の扇を悠都と茜へ投げ放つ。悠都は茜を突き飛ばし剣を振るう。しかし、先程と同様に、悠都の剣では刃が立たず悠都は二つの扇に横腹と首を斬り裂かれる。
「悠都ぉ!」
突き飛ばされ倒れた茜が立ち上がりすぐに悠都に駆け寄る。悠都は苦しそうに呼吸しながら
「に、げろ…。おれ…たちじゃ…、勝てない…。」
「悠都!ダメ!目を開けて!」
そう声を掛けるも、悠都は脱力したように仰向けになる。
「悠都ぉ!」
「見事な散り様よの。しかし、残念であったな。この女も余の手に葬られるのであるからな。」
「っ!」
茜は卑弥呼へ一切見向きせずに駆け出す。
「逃げても無駄な事よ。」
逃げる茜の背に卑弥呼は扇を投げ放つ。
「共に散れ。」
だが、その扇は一人の男に斬り裂かれる。
「余の扇が…。貴様、なぜ其奴を庇う!」
「決まってるじゃないか。クラスメイトを見捨てろなんて神木先生は言わないよ。」
眼鏡を掛けた男が切っ先を卑弥呼へ向ける。
「これがどういうことか分かっておるのか?反逆罪であるぞ!」
「僕の目的は《世界政府》で力を手に入れ、もう二度と友達を失わないために戦うことだ。」
茜は振り返りその男を見る。
「あなたは…。」
「久し振り。夕凪さん。」
茜に振り返り微笑むその男の顔を忘れるはずがない。それは茜達の同級生であり、星影と剛によく勉強を教えていた男。
「た、田中くん…!」
「田中!悠都は無事だ!」
「ありがとう。鈴木くん。さて、卑弥呼。僕がお相手しよう。」
田中に鈴木くんと呼ばれていた男も同様に茜達の同級生であり、小学生の頃から陸上で世界一を目指すと言っていた男だった。
「貴様ら!」
卑弥呼は田中へ扇を投げ放つ。
「無駄だよ。」
田中は優雅に刀を振るい扇を切り落とす。
「見てくれ!鈴木くん!この扇の斬れ方を!」
「んぁ?なんだ?ただ斬れてるだけじゃんかよ。」
「分からないのかい?!君はもう一度中学生をやり直したほうがいい!これは扇の面積を求める公式に当てはめるとね!」
「おい!難しい話するな!頭痛くなるだろ!てか!敵に集中しろよ!」
「あ…。すまない。僕としたことがつい…。」
「鈴木くん…。悠都は?」
「大丈夫だ!俺が治した!」
「へ?」
「俺は《世界政府》で癒しの力を貰ったんだ!これがあれば死んでなければ何でも治せる!陸上中にこれ使うと疲れが吹っ飛ぶから最高なんだ!」
「えっと…多分それで世界一になっても違反になるんじゃ…?」
「はぁっ!俺はなぜ気付かなかったんだ!確かにそうだ!今までにも陸上競技でそういう何とかって不正して辞退した選手もいたぞ!」
「何とかってドーピングのこと?」
「それだ!流石茜!」
「あはは…。」
「ずいぶんと呑気な事よ。」
「君も余所見なんて呑気なものだね。」
「余は《巫女》ぞ。呑気に余所見していないと貴様なぞすぐ死んでしまうぞ?」
「そうか。じゃあそう思わせないように少し本気出そうかな。」
田中は卑弥呼へ駆け出す。
「所詮何の力も持たぬ凡愚には余の力を超えることなどできぬよ。」
卑弥呼は未来予知により田中の振るう刀を全て避ける。
「流石《巫女》の力だ。でも予知するにも上限があるんじゃないかな?そうでなければ膨大な情報量により脳が焼き切れてしまう。せいぜい一度に見れる未来は二、三通りくらいじゃないかい?」
一瞬卑弥呼の表情が曇る。
「図星のようだね。それならその上限を超えるだけの動きをすれば良いだけ。それで君は攻略できる。」
「ガキが!」
「巫女さんがそんな口を利いていいの?」
田中は人差し指と中指をそっと添え眼鏡を押し上げると姿が消える。
「田中が動き始めたな。」
鈴木が田中を見て言う。
「田中くんはどこに?」
茜が聞くと鈴木は卑弥呼の辺りへ指を指す。
「多分あの辺じゃね?多分。」
「田中くんの能力って透明になれるの?」
「いや、走ってる。俺たちの目で追えないだけだ。あいつの能力はバフを掛けること。今はスピードに全振りしてバフを掛けてんじゃね?だから目に追えないくらいに速いんだ。」
「そうなんだ…。」
「クソ!どこへ!」
卑弥呼が未来予知を駆使し田中の行動を予測して動くがそれでも田中の姿が見えることはない。卑弥呼は懐から二つ扇を取り出し投げる。扇は宙を回転しながらブーメランの様に卑弥呼の元へ戻って来る。
「当たらぬ!こっちか!どこだ!」
ひたすら扇を投げ続けるが田中に触れる気配もない。その時、卑弥呼の右腕が斬り落とされる。それと同時に田中の姿も露わになる。
「っ!見つけたぞ!」
左手に持った扇を田中へ振り下ろす。が、それよりも早く田中の刀が閃く。卑弥呼は左腕も斬り落とされ
「ぐっ!待て!余は…降参する!」
田中は微笑みを浮かべ
「僕達は全員の命を背負って戦っているんだよ。あなたを野放しにしてそれで仲間に被害が出たら元も子もない。」
田中は卑弥呼の左肩の付け根から斜め下へ一閃したあと、右肩の付け根からも斜め下へ一閃する。卑弥呼は鮮血を噴き出し田中は返り血を浴びる。刀に付いた血を払い鞘に納めると、眼鏡を外しポケットから取り出した布で眼鏡に付いた返り血を拭き取る。
「これで一件落着。」
田中は鈴木達の元へ歩いて来る。
「田中、これで俺達も政府に歯向かう悪党になったな。」
「そうじゃない。友達を守る為に悪党を辞めたんだ。」
「別にどっちでもいいだろ。」
「まあ君がそう言うならどっちでも良いだろう。」
「二人はこの後どうするの…?」
「それは決まってるさ。」
「ああ!先輩達をボコしに行くぜ!」
「夕凪さん。これを。」
田中は布袋を手渡す。
「…これは?」
「石が入っている。」
「石…?」
「あぁ、ただの石じゃないよ。オリジンが作り出した《血石》を元に《発明家》が作り出した人工石さ。僕達もそれを摂取して力を得た。五十嵐くんと一つ選んでその力を自分の物にするんだ。僕達が守れないかもしれないときは自分の身をそれで守って欲しい。」
「…。分かった。」
「じゃあ。行こうか、鈴木くん。」
「おうよ!」
田中と鈴木は駆け出していく。
「悠都…。大丈夫…?」
「あぁ…。多分…。」
「これ、一つ選んで。」
悠都は布袋の中に手を突っ込み手探りをして一つの石を取り出す。
「そんなテキトウでいいの?」
「あぁ。俺が選んだんだからな。」
そして悠都はそれを飲み込む。茜は布袋の中を覗き、一つの石を取り出す。
「綺麗…。」
光沢のあるピンク色をした石を人差し指と親指で掴み、少し眺めてからそれを口に含み飲み込む。
「…何か変わったのかな?」
「なんか出すイメージしてみろよ。俺も昔ナグリトバシに貰った石飲んだときにそうしたら剣を手から出せたんだ。今はオリジンが死んでその石の力もなくなっちまったみたいだけどな。」
「そうなんだ…。」
茜は目を閉じイメージする。自分が星影の様に強く皆を守れる様な力を。
「ひゃっ!」
その時、体が燃え上がる。
「ゆ!悠都!熱い!…あれ…?」
茜は慌てふためくも、熱くないことに気付く。
「熱くない…?」
「おぉ!炎か!良いな!俺もやるぞ!」
茜の炎を見てウキウキし始めた悠都が足を大きく開き、少し腰を落とすと腕を腰のあたりに構え
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
と変身でもするのかというように声を上げ始める。
「ゆ…悠都…。」
「はぁぁぁっ!」
すると悠都の背後に悠都よりも少し背丈が高く体格の良い剣士が現れる。
「ん?想像してたのと違ったな…。てっきり変身できるかと思ってたけど…。でもこれはこれで良いな!」
悠都がその剣士を突く。
「反応ねぇな…。」
「それって悠都が操れるんじゃないの?」
「おぉ!そういうことか!」
悠都は腰に左手を当て、右手は真っ直ぐ前を指さし
「エクスカリバー!進め!」
「エクスカリバー…?」
「カッコいいだろ!今名付けてやった!」
「そ、そうなんだ…。」
悠都の指示に剣士、もといエクスカリバーは歩き出す。
「おぉ!キタキタキタ!これなら俺最強だわ!」
悠都が嬉しそうにはしゃぎ回る。
「神木に見せよう!行くぞ!茜!」
「ちょ、待ってよ!」
悠都の後を茜が駆けて追っていく。
皆さん、いかがだったでしょうか。
田中と鈴木が悠都と茜の助っ人に現れ、《巫女》を撃破した。
茜と悠都は新たな力を手に入れ戦場へと駆け出す。
しかし、新たに現れたのは《巫女》だけではない。クラウスの目の前に現れたのは太刀川龍馬の代わりを担う者たちだった。
次回第七十話 新《剣士》




