第六十七話 第二次異世界大戦後
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は67話を投稿させていただきました。
ついに第二次異世界大戦が終わり、世界は平和へと進んでいく。
是非お楽しみください。
「まず話しておくこととして、ノーザとアッシュは魔王側の人間だった。それからアルケインは星の主という組織の者らしい。」
仲間だと信じてきた者が自分達の敵だったと言うのは言葉では言い表せない虚しさを感じさせる。アランは伝えることを伝えてすぐに話を切り替える。
「そんじゃあ、今回、王は魔王以外倒した。それで間違いないな?」
アランが皆を一人ずつ見ながら聞く。
「はい。私達は巨人王を倒しました。」
「俺達は鬼人王を倒した。」
「私は百獣王を。」
「俺はタル…冥界王を倒した。」
オベイロン、神木、ダルヴィッシュ、星影がそれぞれ答える。
「王以外の悪魔共も倒してるよな?」
「私は、百獣王の幹部三人とヴィルヘルム・ルージュ、バレン・ヴィオレを倒しました。」
「私はザムザ・ジョーヌとベルゼブブを倒したよ。」
「アルケインを倒した。」
「俺はノーザとアッシュを…。」
ノワール、シエル、ルベル、クラウスが答える。が、クラウスは渋い顔をしていた。アランは仲間を手に掛けたクラウスがどれだけの気持ちでいるかは計り知れない。しかし、とても辛いことだけはわかる。だからこそそっとしておこうと話題を振らなかった。
「俺とキツネ、シエルでルイ・ヴェールを倒した。これで現れた敵の中でも主力の奴らは倒せてる。ただ…。魔王に逃げられて勝利と言っていいが分からないが…。被害が大きすぎた…。」
アランの言葉に皆は目を伏せる。
「太刀川龍馬、アルベルト・フリッツ、クラールハイト、照井徹、迅風靡、トーマス、スティカ、ゴリラ、センにマサ、そしてナグリトバシ。十一人の仲間を失った…。」
星影は立ち上がる。
「後藤剛。」
その名を聞いて誰もが誰か分からなかった。悠都と茜を除いて。
「俺達はみんなの屍の上に立ってる。世界を救うためにその命を燃やし尽くしたあの人達のためにも、俺達は敵をみんな倒して、これ以上苦しんだり悲しむ人を生み出さないように戦い続ける。」
その言葉に皆は頷き、悲しみを飲み込む。
「残りの七王と《世界政府》、《星の主》、《堕天使》を倒して《終末世界》を阻止する。みんな、まだ先は長いかもしれない。けどこれからも力を貸して欲しい。」
「当たり前だ。」
「ああ。」
ルベルとアランはそう答え、皆も頷く。しばらく沈黙が訪れる。
「皆様、今後は敵に備えながらも国の復興を行なっていきましょう。国民の皆様も避難生活が続くのは苦しいでしょうから。」
オベイロンの話にダルヴィッシュは頷く。
「そうですね。昔のように…とはいかないかもしれませんが、それでも皆さんが笑って過ごせていた場所を取り戻したいですね。」
「そうと決まればやることは一つだ。ここから一番近いエーデルの復興を国民と俺達全員でやる。そして東や北、西の国も復興させ、千年前のような平和な世界にする。お前ら!やるぞ!」
アランの言葉に全員は立ち上がり「おぉ!」と声を上げた。それからというもの、毎日国民を含めた星影達はエーデル復興のために瓦礫の撤去や建物の再建築を行い始めた。日に日に昔のような活気あふれる国に変化していった。第二次異世界大戦から五年後。西暦ニ〇三五年、異界歴一一〇六年五月、エーデルはほぼ昔と同じ状態へまで復興した。そして、エーデル城の敷地には十三の墓石が置かれた。それはこれからずっと先の未来に英雄と語られる者達の証であった。ただし体の崩壊した後藤剛とゴリラの死体は消えていて墓石の下に埋葬されてはいなかった。
「あれから五年。平和ボケしそうなくらい平和だったな。これからもこんな日々が続くと良いな。」
エーデルの丘の上で横になっていた星影の言葉に悠都と茜は隣で頷く。
「そうだな。」
「うん。」
王城ではエーデル大王とオベイロンが今後の方針や他国の復興計画を立てていた。アランとルベル、ダルヴィッシュは今日も王城の敷地内にある訓練場で鍛錬に励んでいた。シエルとアリス、ルシファー、ヤミ、リリィ、キツネは国で買い物をしたり、スイーツ巡りをしたりと毎日やりたいことがいっぱいで忙しそうだ。クラウス、神木は墓の前で盃を交わし、亡き英雄達と語り合っていた。流星はエーデルで医者として働き始め、年寄り達の心の支えであると憩いの場として今日も賑わっている。ノワールはエーデル騎士団の指南役として今日もエーデル兵の育成と国の警備に取り掛かっていた。本当に五年と言う時間があっという間に感じられるほどに充実したものになっていた。
「悠都、茜。」
青空を仰ぎながら星影が二人に声を掛ける。
「なに?」
茜が星影の方へ振り向く。
「地下で生活する前みたいでさ、なんだか嬉しいな。…十年だ。あの日から十年してようやくこの生活が手に入った。」
「十年…か…。あっという間だったな。俺達もう二十二だぜ。酒も飲めるようになった。大人なんだな。」
「ふふ。大人になったんだね。私達。」
「ああ。そうだ。今日はルベルが教えてくれたあの酒場に行こう。三人で飲もう。」
星影がそう提案し、起き上がる。
「賛成。」
「俺も!」
三人は立ち上がると丘を降りていき、賑わっている国を歩く。
「星影さん!元気かい!」
「悠都くんは今日も元気だねぇ。」
「俺達のアイドル!茜ちゃんだ!」
「ふぅぅぅ!」
「可愛いよぉ!」
国を歩いてるだけでこの賑わいだ。本当にあれから五年で変わった。世界は良い方向へと進んでいる。そして星影達はルベルのオススメである酒場に辿り着く。
「いらっしゃい!お!星影さんじゃないですか!」
「あぁ、こんにちは。」
「こんな昼間からどうしたんです?」
「今日はみんなで飲みたくて。」
「ははっ!そうですか。ゆっくりしてってくださいね!」
マスターは声を上げて笑って星影達を席に案内する。
「そういえばみんなは何してるのかな?」
「さぁな?でもあいつらのことだ元気でやってるだろ!」
「うん。」
「田中は大学行くって言ってたな。」
「田中なら余裕だろ!」
「それもそうか。」
「鈴木くんは百メートル世界最強になるとかって小学校の頃から言ってたよね。」
「確かに。いくらあいつでも世界最強は壁が高すぎるだろ。」
「俺なら行けるぜ!」
「どうした?もう酔ってるのか?」
「俺ぁ!まだ酔ってねぇ!まだまだ飲むぜ!」
「こいつうるさいな。」
「本当に。」
三人は笑いながらグラスに注がれた赤ワインを飲む。その頃、エーデル王国の門番をしていた衛兵が二人殺された。その報告は王城にすぐに伝達された。
「なんだと!敵は?」
エーデル大王が焦ったように机を叩き立ち上がる。
「それが…。目撃者によると、アヴァロンの魔女ティーティスだと…。」
「まさか…!それは本当なのですか!」
オベイロンも焦ったように言う。
「大王様。ここは私が行ってまいります。」
そこにはこの部屋にいなかったはずのノワールが立っていた。
「おぉ!ノワール!頼むぞ!」
「御意。」
そしてノワールは姿を消す。門付近の民家へ侵入していたティーティスは衛兵達がこれ以上の侵攻を食い止めていた。
「邪魔をするあなた達も姉妹の命の糧になりなさい!」
ティーティスは光線を衛兵達に撃ち込み、衛兵達の体を光線が貫いていく。
「人間とは何とも脆い…。」
ティーティスは頬を紅潮させ次々に衛兵を撃ち抜いていく。しかし、突然光線が放てなくなる。
「っ!」
「よく持ち堪えましたね。すぐに重傷者を安全な所まで運び治療を行ってください。」
そこにはノワールがティーティスへ一歩、また一歩と近付いていた。
「…ノワール…。」
ティーティスは渋い顔をし引き下がろうとする。
「逃がしませんよ。」
ノワールはティーティスの間合いへ入り込み魔剣を振るう。魔剣はティーティスの胸を斬り裂く。傷口からは鮮血が噴き出しティーティスは倒れる。
「お…ね…ぇ…さま…。」
そしてティーティスは灰と化して消えていく。ノワールは亡き門番の元を訪れる。
「デューク。アゼル。よく頑張りました。あなた方がここにいなければ私達はこのような迅速な行動を取れなかったかもしれません。感謝します。」
そしてノワールは二人の亡骸を抱いて王城へ戻る。
「デュークにアゼル。大義であった。」
大王はノワールの報告に目を伏せそう労いの言葉を掛けた。きっと彼らにも届いていることだろう。今回の被害は門番二人の死と、衛兵達数人が重傷だけであった。
「ノワール。何故ティーティスが生きていたと思う?」
「ティーティスを仕留めたのはアルケインでした。きっと前回同様殺したように見せかけて洗脳していたのかもしれません。ただ彼女は姉妹を復活させようとしていたので、アルケイン亡き後洗脳は解けていたのでしょう。」
「そうか…。ご苦労だったな。」
「それでは失礼します。」
そしてノワールは部屋を出ていく。
「これは何かの前兆なのか?」
エーデルの声にオベイロンは緊張した声で
「分かりません。が、何が起きてもおかしくありません。」
「そうだな…。国外周辺にも拠点を築き衛兵を置くとしよう。」
「では手配してきますね。」
「あぁ。頼んだ、オベイロン。」
そして今日もまた終わりを迎えようとしていた。
「あぁ…。飲みすぎた…。うぷっ!」
「おい、悠都。こんなところで吐くなよ?」
星影の言葉に笑顔を見せる悠都の表情が一瞬にして青ざめる。
「だいじょ…うっ!」
「ちょ!悠都!まだ我慢して!」
茜が焦ってカバンの中を漁り始める。悠都が口に手を当て頬を膨らませる。これはまずいと思った星影は
「ワールド!時を止めてくれ!」
「御意。」
星影の影から現れたワールドが時を止め、その間にトイレに連れて行く。
「ワールド、戻していいぞ…。」
「…はい。」
まさかワールドもこのような場面で力を使うと思っていなかったようで、少し呆れているように見えたが、それには触れずにおこう。
「オロロロロロ!」
トイレを見た途端に全てをぶち撒ける悠都を置いて外に出る星影とワールド。
「悠都は?」
「ゲロってる。」
「はぁ…。」
茜は深い溜め息を吐き
「ワールドさん、すいません。こんなことのために力使わせちゃって。」
「いえ、お構いなく。主の命でしたので。」
そう言いながらも何故自分の力をこんな時に使うんだと納得出来てないような顔をしていた。
「本当にごめん…。」
星影は申し訳なくて謝る。
「いえ、謝らないで…ください…?」
何故疑問形?と思うも、流石に星影もこんなことに力使わせられたら嫌だなと思いながら何度も頭を下げる。
「よう…お前ら…。」
掠れた声でトイレから出てきた悠都が青白い顔で引き攣った顔で笑みを浮かべていた。
「お前、今すごい顔してるぞ。」
「うん。なんかちょっと気持ち悪い顔…。」
「おい…。人の顔に…文句言うな…。」
「ツッコめる元気あるなら大丈夫だな。帰るか。」
「そうだね。」
「ワールドもありがとう。戻っていいよ。」
「はっ。」
ワールドは姿を消し、星影と茜は帰路につく。
「ま、待てよ…。追いてかないで…。」
悠都がフラフラと二人の後を着いていく。三人は新たに創設されたギルドの宿舎に戻る。
「おかえりなさい。」
宿舎に帰ると受付嬢のマーガレットが笑顔で迎えてくれた。
「ただいまです。」
「ただいまです。」
星影と茜が答えるとその後に悠都が気持ち悪い笑みを浮かべ
「今日も可愛いね。」
とだけマーガレットに言い、自室へ向かっていった。
「悠都さんどうしたんですか?背中に凄い鳥肌立ったんですけど…。」
「あいつは飲み過ぎてさっき吐いたばかりなんですよ。」
「あぁ。そうでしたか。」
ぎこちない笑みを浮かべたマーガレット。完全に呆れてるな。ドンマイ悠都。と思いながら星影達も自室へ戻る。星影が部屋に入るとそこにはノワールがいた。
「うぉぁ!びっくりした…。」
誰もいないと思っていた星影は薄暗い部屋にノワールが立っていたので驚いて声を上げてしまう。
「これはすいません。」
「いや、電気ぐらい点けろよ。」
「それもそうですね。」
と言ってノワールは電気を点ける。
「どうしたんだ?」
「今日、アヴァロンの魔女ティーティスが現れました。」
「っ!」
星影は驚いて声も出せなかった。
「ティーティスは私が倒しましたので心配は要りません。」
「そろそろ、動き出してくるのか…?」
「分かりません。しかし、もう何が起きてもおかしくないかと。」
「そうか。報告ありがとう。」
「いえ。」
そしてノワールは部屋を出ていく。
「あいつ、鍵閉めておいたのにどこから入ったんだよ…。今度から部屋空けるときは結界張っておくか…。」
そして星影はベッドに横になる。そして、目を閉じる。そしてこの十年間を思い返す。そのうち次第に眠気に襲われいつしか意識は夢幻の世界へ誘われる。
四章 第二次異世界大戦 完
皆さん、いかがだったでしょうか。
第二次異世界大戦が幕を閉じ国の復興や騎士団の再生と育成。そして星影たち幼馴染との大人になったやり取り。
平和な日常が続く中、彼らは動き出す。平和などひとときの休暇にすぎない。世界はここから混沌へと、終末へと進んでいく。
次回 五章 《終末戦争》編開幕




