第六十六話 終幕第二次異世界大戦
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第66話を投稿させていただきました。
アルケインの能力に翻弄されながらも全ての敵と対峙する星影たち。
この戦いの結末はいかに…。
是非お楽しみください。
「さあ、掛かってこい。影塚星影!」
マーリンはグリートーネアの体を得たことで以前以上に強くなっているのが感じられるほど魔力が膨れ上がっていた。
「創世結界 夜幻虚無帳。」
星影を中心に世界が闇夜に包まれ、空には星々が輝いていた。
「夜にするだけの結界か?なんとも興のないものだ。」
マーリンは嘲笑したが、結界が展開された直後に星影の姿は変貌を遂げ、魔力が倍近くに膨張する。
「…吸血鬼の力か…。貴様は何なのだ。」
「孤高の円卓騎士だ。」
星影は神器を手に握り締めマーリンへ勢い良く地面を蹴り、マーリンへ突進する。
「貴様程度、私の神器と王権で捻り潰してくれる!」
「黒曜滅雷!」
神器に黒い稲妻が纏わり、マーリン目掛けて振り下ろされる。
「危険な盾。」
星影の攻撃は、マーリンの展開したバリアに受け止められる。それと同時に星影がバリアに放った威力がそのままの威力で星影に返ってくる。
「ぐっ!」
「どうした?影塚星影。」
マーリンは一歩、また一歩と星影に近付く。一方、ルベルはアルケインの前に立ちはだかっていた。
「ルベル。」
「お前が敵だとは気付かなかった。」
「敵はお前らだ。星影の洗脳から解放されろ。」
「フッ。」
ルベルはアルケインの言葉に鼻で笑う。
「何がおかしい?」
「俺はアイツに洗脳されてない。アイツが世界を救うと言ったから俺は影塚星影を信じてる。なんて言ったって《特異点》の孫だからな。」
「黙れ。光陰の剣!」
アルケインが魔剣を振るうが既にルベルはそこにいなかった。ルベルも星影の創世結界の影響を受け、吸血鬼の力をいつも以上に発揮していた。
「随分と鈍いな。それで俺に勝てると思ったのか?」
上空から降下してきたルベルに気付き、魔剣を空へ閃かせる。
「そのスピードじゃ勝てないぞ?」
魔剣はただ虚空を斬っただけで、ルベルはアルケインの間合いに入っていた。
「ブラッディインパクト!」
血を纏った蹴りがアルケインの横腹に直撃する。
「っ!」
アルケインは吹き飛ぶが、すぐに体勢を整え膝立ちで
「ノワール!オベイロン!ダルヴィッシュ!ルベルを殺せ!」
「いつまでも余所見して喋ってるなよ。」
ルベルはアルケインの顎を蹴り上げる。
「お前を殺せばコイツらの洗脳は解けるのか?」
血を纏わせた蹴りが何度もアルケインの顔面を蹴り続ける。
「何とか答えろよ。おい?」
ルベルはアルケインの頭部を横から蹴り払う。
「お…お前ら…、早くルベル…を…。」
アルケインがダルヴィッシュたちへ視線を送る。しかし、アルケインに操られていた全員がその場に倒れ動けずにいた。
「何を…し…た…?」
「俺の血には毒が含まれている。少しでも浴びれば体が痺れ身動きを取ることもできなくなる。」
「…。」
「さあ、答えろよ。お前を殺せばコイツらはもとに戻るのか?」
「お!俺は!あの方のために!お前らを殺す!」
「話が通じないらしいな。」
ルベルは呆れたようにアルケインの首を掴むと上空へ飛び上がり、地面に投げつける。
「っ!ブルーアロー!」
アルケインの魔力がアクアの魔力に変化した。降下しながら青い魔力が槍のように変化しルベルへ無数に打ち上がる。
「紅血炎 ブラッディレイン!」
ルベルは燃える真紅の血を槍に変え、アルケインに無数に打ち下ろす。互いの魔力がぶつかり合い、水と炎が触れ合うと大量の水蒸気を生み出す。視界が霞む中
「宵闇 毒牙 人魔の狭間 毒血斬!」
水蒸気の中から飛び出してきたルベルが血に塗れた刀を振るう。一瞬、反応が遅れたアルケインが元の魔力に戻り魔剣を振るう。
「宵闇の剣!」
互いの刀と剣が拮抗して火花を散らす。
「奥義と言えどもその程度で俺を倒せると思うな!」
「腐血。」
ルベルの血塗られた刀に触れていたアルケインの魔剣はルベルの血が付いていた。そこから腐蝕が進み、魔剣が崩れ落ちていく。
「っ!アクア!」
魔剣は崩れ去り、アルケインはルベルの奥義を受け止めていたものを失った。
「終わりだ。毒血斬!」
血塗られた刀はアルケインの胸を切り裂く。地上に落下したアルケインは斬り口から毒が侵蝕を始め体が溶けていく。アルケインの体が溶け切ると同時に麻痺して倒れていた皆が声を上げる。
「なっ…!」
「体が…動か…ない…。」
「私達はここで何を…?」
「目が覚めたか?お前ら。」
「ルベル殿…?これは?」
「お前らがアルケインに洗脳されて俺や星影を殺させようとしてたから、寝ててもらおうと思ってな。」
「…!そうでした!アルケインは!」
オベイロンは魔剣に貫かれる前の記憶が戻ったようで周りを見渡す。
「アルケインは殺した。」
「ぇ…?」
その言葉に倒れていた皆は衝撃を受けた。
「何も殺すことは…。」
「アイツはお前らを解放しようとは思ってなかったのだろうな。だから殺した。…オベイロン、飲め。」
ルベルは倒れているオベイロンの前に屈み、解毒剤を飲ませる。
「他の奴らの毒はお前が治癒してくれ。」
「…わかりました。」
そしてオベイロンは皆の解毒を始める。シエル、キツネ、アランはルイ・ヴェールへ向かっていく。
「《怠惰》の能力は目が合った者を洗脳するものです。私が彼の目を無力化します。その隙に倒してください。」
「了解。」
「分かった。」
キツネの言葉にアランとシエルは頷く。
「妖術 雷槍閃牙!」
キツネが雷を槍のように形成すると一瞬でルイの両目を穿つ。
「っ!あ゛あ゛あ゛!目がぁ゛!」
「アランさん!シエルさん!今です!」
キツネの合図に二人は最大威力の技を放つ。
「氷輪月花!」
「神速 双彗星!」
シエルが展開した氷の花弁ルイを包み込み、アランの青く淡い輝きを纏った双剣が凍ったルイを砕く。
「これで残りはお前だけだ。マーリン。」
星影がマーリンを見据える。そして星影の周りにはシエル、アラン、ルベル、キツネが集まる。そんな状況でも余裕な笑みを浮かべたマーリンが
「残ったのが私だけだが、それがどうしたのだ?」
マーリンは掌を星影達に向ける。
「私は魔王。貴様らなどすぐに殺せるんだ。」
一気にマーリンの魔力が増加していき、空気を震わせる。キツネは強力な魔力に中てられ膝を付く。ルベルはキツネを抱えるとマーリンから離れる。
「大丈夫か?」
「すいません…。大丈夫です…。」
顔色が悪く額に汗が滲んでいる。
「あの九尾はこれにも耐えられんのか。さあ、貴様らはどこまで耐えられるかな?」
挑発的に言うマーリンはどんどん魔力放出量を上げていく。
「いつまでそんなことしてるんだ?」
星影の言葉にマーリンは眉間にシワを寄せる。
「何だと?なら最大出力を出してやる。」
マーリンは一気に魔力放出量を上げる。それにより、地割れが起き、シエルやアランは立っているのが精一杯に見える。星影は一歩マーリンへ近寄ると、マーリンの魔力量を上回る魔力を放出する。一瞬マーリンが驚いたように見えたがすぐに素に戻り
「タルタロスと戦っていた時にはここまでの魔力を感じなかったが?」
「ワールド達を呼び出す際にも一人当たりに魔力を消費する。だからあの時はあれが精一杯だっただけだ。」
「面白い。では勝負といこうか。貴様が死ぬか、私が死ぬか。」
二人は見つめ合っていた。そして同時に動き出す。
「王権!」
「王権!」
互いの王権が発動し、二人を中心に魔力の嵐が起き始める。
「終焉の魔導!」
「絶対捕食者!」
マーリンは周囲の魔力を吸い寄せ、世界を藍色に染め上げる。放たれた魔力は触れた瞬間に全てを滅ぼさんとするばかりであることを直感で感じる。星影は黒い闇が星影を中心に広がり、マーリンの終焉の魔導を呑み込むように包んでいく。
「死ね!影塚星影!」
「呑み込め!」
互いの王権は相殺して消える。魔力の嵐は止み、静寂が訪れる。マーリンと星影は神器を握る。その時、星影は魂の世界と繋がる。
『星影、聞こえますか?』
「パーシヴァルさん?」
『マーリンは必ず神器の力を使ってきます。星影も神器の全てを解放してください。』
「どういうことですか?」
『神器には二つの力があります。使い手の魔力を具現化するために媒介として使う、星影達が奥義として使っているものです。そして、もう一つは、神器自体の力を解き放つこと。武器にはそれぞれ魂が宿り、神器など高位の武器ほどその魂は人格を持ちます。その武器の特徴を目に見える形に表す。それがもう一つの力。名を神威開闢。』
「神威…開闢…。」
『解放すればあとは彼があなたを導いてくれます。』
「彼って…?」
「何を呆けている?」
星影の意識はマーリンの声で現実に引き戻される。
「ごめん。続きをやろう。」
星影は神器を構える。マーリンも神器を構える。
「深淵を統べる魔の根源よ、全てを崩壊せよ。神威開闢 覇道冥府滅世之禍津神!」
「神威開闢!」
マーリンの握る神器は霧のように消えていき、マーリンの背後に巨大な体躯の魔神が現れる。
「禍津神!星影を消せ!」
マーリンの言葉に禍津神は巨大な剣を星影へ振り下ろす。
『初めてだぜ。神威開闢だけで力を発揮しようとする奴は。しっかり俺の名前を覚えていけよ、ガキ。』
星影の神器は剣身が真っ黒に染まり、長くなる。
「剣身が…!」
『俺は裂破黒曜。俺の力は禍津神のように内なるものを外に具現化するものではなく、内なるものをすべて俺の使役者へ与えること。お前の力は今、俺と一つになっている。』
星影の魂へ語りかける神器、裂破黒曜はそこで言葉を区切り、次に声を大にして星影の背中を押すように言い放つ。
『存分に暴れろ!俺の力を完全に引き出せ!』
「分かった。」
禍津神の振り下ろした剣は星影へ直撃した。
「呆気ないものよ。」
「何が呆気ないんだ?」
「っ!」
マーリンが禍津神の剣先へ目を凝らす。そこには裂破黒曜を片手で握った星影が禍津神の巨大な剣を受け止めていた。
「何故…?禍津神の剣は触れたものを破滅へと導くもの…。何故貴様は…!」
「ちゃんと破滅へと導かれてるさ。俺の魔力が。」
「まさか!私の禍津神は貴様の魔力だけで抑えられていると言うのか!」
「ああ。」
マーリンは少し冷静になろうと心を落ち着かせる。冷静になってみると違和感を覚える。
「何だ?何故そんなに魔力が…?」
「これが俺の神威開闢の力だ。」
「魔力を増幅させる神器だと…!そんなものがあるわけ…!」
「いくぞ!マーリン!すべて終わらせる!」
「禍津神!最大出力で奴を殺せ!」
星影は上空へ飛び上がり、禍津神の目の前まで飛び上がる。
「黒曜崩天斬!」
禍津神はその巨大な剣で星影の攻撃を受け止める。しかし、通常の黒曜崩天斬よりも威力が増しており、受け止めた禍津神はその凄まじい威力に上半身を弾かれる。
「バカな!禍津神が…圧されている…!」
「まだまだいくぞ!」
星影は顔を手で覆う。すると、さらに魔力が膨れ上がり、星影の顔半分が黒い影に覆われる。服装も黒い靄を纏ったような黒装束に変化する。
「っ!あれは!」
ルベルはその姿を見て、アメリカの地下での戦いを思い出す。自我を忘れ暴れ尽くしていた影の力そのものだったからだ。
「何だ…その禍々しい姿は…?」
「これは俺の影だ。」
『久シ振リダナ。』
「お前の力も借りるぞ。」
『好キニシロ。俺ハオ前ダ。』
「ありがとう。」
星影は禍津神へ一直線に飛翔し
「黒曜…。」
大きく振り上げられた裂破黒曜は黒い魔力を纏い
「星翔!」
振り払われると同時に纏っていた魔力を流星のように禍津神へ飛ばす。禍津神の大剣はその一撃に耐えることが出来ずに砕け散る。
「そんな…事が…。あり得ない…。私は…魔王だ…!私の!千年の!貴様に破られる千年ではない!」
星影は上空に滞空したままマーリンを見下ろす。
「タルタロスも言ってた。千年がどうとかって。だから何だ?人を傷付け続けた千年に俺が負けるわけないだろ!」
星影は上空から一気に降下し、マーリンへ迫る。
「影塚星影ぇ!」
マーリンは声が枯れる勢いで星影の名前を怒鳴り付け、最大出力の魔力の塊を放つ。
「裂破黒曜斬!」
裂破黒曜はマーリンの放った魔力の塊を斬り落とし、マーリンへ剣を振り下ろす。その威力は地面をも砕き、禍津神はその衝撃で破壊される。しかし、そこにマーリンの姿はなかった。
「タルタロスがやられたって言うんで来てみれば、何とも恥ずべきことだ。あんな大口を叩いておいてこのザマか。」
マーリンを担いで星影へ鋭い視線を向けていた男に星影は目を向ける。
「メフィスト…。」
「ずいぶんと禍々しい姿だな。影塚星影。」
魔神王メフィストは星影からマーリンへ視線を移し、そしてもう一度星影を見ると
「今回は退かせてもらう。ここで魔王に死なれては我々の計画が破綻するからな。」
「…。」
そう言いメフィストは姿を消す。星影は元の姿に戻り、創世結界も解除される。裂破黒曜も元の姿に戻っていた。星影は腰を下ろし仰向けに倒れた。
「カゲ!」
シエルが駆け寄り、星影の直ぐ側へ腰を下ろす。
「良かった、無事で。」
シエルは瞳を潤ませ、星影を見つめていた。
「みんなのお陰だ…。ありがとう。」
アランとルベルも星影に寄り
「少しヒヤッとしたぞ。また暴れ始めるんじゃないかと。」
「ごめん。」
星影は少し困ったように笑みを浮かべルベルに謝罪をする。そこへ解毒を終えたオベイロン達に、マーリンの魔力に中てられていたキツネも集まってくる。
「すいませんでした。」
「すいませんでした!」
オベイロンとダルヴィッシュは星影に頭を下げる。
「私達がアルケインに油断したせいで、星影様を傷付けてしまいました。本当に申し訳ないです。」
「顔を上げて。オベイロン。ダルヴィッシュ。何かあったら必ず助ける。俺達は仲間なんだ。」
オベイロンとダルヴィッシュは顔を上げ星影を見つめ涙を流した。それからしばらくして
「そんじゃ今回のことを話し合うか。」
アランの声に全員は崩壊しかけたユートピアに集まって話し合いを始める。
皆さん、いかがだったでしょうか。
魔王には逃げられたものの戦いに勝利した星影たち。
彼らはユートピアにて今回の戦いについて話し合うことになる。
次回第六十七話 第二次異世界大戦後




