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終末の七勇者(改)  作者: ヤミ
四章 第二次異世界大戦
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第六十四話 鬼子

皆さんこんにちは。

ヤミです。

本日は第64話を投稿させていただきました。

裏切り者のノーザ、アッシュ、アルケイン。そして彼らに組するバレン。

勇者たちは彼らの野望を阻止できるのか。

是非お楽しみください。

 ノワールは魔剣を握ると、迫りくるバレン・ヴィオレの剣撃を打ち払う。


「今のお前なら俺でも倒せるぜ!なぁ?ノワール!」


 ヴィオレは声を荒らげながら、次から次へとノワールへ魔剣を振るう。その度にノワールはヴィオレの剣撃を難なく受け流した。


「オラァ!オラァ!オラァ!お得意の領域は使わねぇのか?あぁ?」


 ヴィオレの猛攻は止まることを知らない。だがノワールも退くことなく、冷静に応戦する。


「ずいぶん魔力を消耗してしまってね。生憎、今使えるのは精々六秒ほど領域を展開できるくらいでね。」


「たったそれだけか?それじゃあ俺を倒すことは不可能だな!」


「ヴィオレ、何故魔王に就く?」


「分からないのか?あいつならこの世界を変えられる!俺達が思い描く世界を!」


「それは君達が世界の頂点に立つことかい?」


「当たり前だ!俺がクズ共を殺し尽くして頂点に立つ!」


「そうか。でもそれは決して叶わないことだよ。」 


「あぁ?」


 ヴィオレはノワールを睨む。


「この世界は主が創り変える。誰も傷つかず、苦しまない世界に。」


「へっ!マーリンの言った通りだな!絵空事ばかり口にする奴だと!」


 ヴィオレはノワールへ渾身の一振りを放つ。


「君はその程度で、私の主の発言を絵空事だと嗤ったのか?」


 ノワールは悠々と攻撃を受け止めた。


「っ!だから何だ!どのみち絵空事は絵空事だ!」


「君の『頂点に立つ』と言う方が絵空事に聞こえるよ。力も人望も、誰かの為にと言う想いすらない君では、そんなことを果たすことはできない。」


 ノワールはヴィオレの魔剣を弾き飛ばし、もう一振りの剣を抜いた。


「っ!それは……神器……!何故貴様が魔剣以外に神器など持っている!」


「私は主の……そして彼らの意思に応えるべく、君を倒す。」


「っ!ナメるなよ、ノワール!」


「領域展開。」


「なっ!」


 ノワールの六秒に限られた領域が展開される。たった六秒で何ができるのか。しかし相手は《傲慢》のリチャード・ノワールだ。たった六秒でも気を抜けば死ぬと、ヴィオレの本能が警鐘を鳴らす。


「花吹雪!」


「ぐがぁ!」


 舞い散る無数の斬撃が、ヴィオレの体中を切り刻む。


「はぁ……、計算違い……だったようだな……。」


 六秒が過ぎ、魔力が尽きたノワールの領域が強制的に解除される。


「こっからは!俺の番だ!掛かってこい!」


 体中から血を噴き出しながらも、ヴィオレは声を上げノワールを指差す。


「君の番だと言うなら、掛かってくるといい。」


「あぁ?何だと?」


「聞こえなかったかい?君の番だと言うなら、君が掛かってこいと言っているんだよ。」


「クソ野郎!」


 ヴィオレはノワールを睨みながら、血を流し、足を引きずりながら近付いていく。


「死ねぇ!ノワール!」


 ノワールの側まで来たヴィオレは魔剣を振り下ろす。ノワールはそれを容易く弾き返した。


「その程度かい?」


「黙れぇ!」


 ヴィオレはふらふらと足元がおぼつかない様子で魔剣を振るい続ける。


「ノワール!お前も攻撃しろ!」


「ヴィオレ、君の能力を知っている私が、君に安易な攻撃をすると思うかい?」


「クソ!クソ!クソ野郎!」


 ただひたすらにノワールを罵るヴィオレに、ノワールは深いため息を吐いた。


「ヴィオレ。終わりにしていいかい?」


「できるわけねぇだろ!お前は俺に勝てねぇんだよ!」


「その考えが命取りだよ。――領域展開。」


「は……?」


 先の領域展開後、この短い時間でも《原初の悪魔》の中でも逸脱した才能を持つノワールは、一秒にも満たない領域を展開するための魔力を回復させていたのだ。この一瞬は、ノワールにとって勝利の確信であった。ノワールは目にも留まらぬ速さで魔剣を振るう。


「うがぁぁぁ!」


 ヴィオレは右肩の付け根から袈裟斬りにされ、それと同時に領域が解除された。


「な……ぜ……?領域……が……?」


「君がふらふらしている間に、魔力がほんの少し回復しただけさ。」


「ふざけ……るなぁ……。」


 ヴィオレの体は光となって消滅した。ヴィルヘルム・ルージュ、タルタロス、ゴライアス、ブレイド、ガルーダ、そしてバレン・ヴィオレ。強敵たちを相手にしたノワールは深いため息を吐く。


「こんなに戦ったのは何時ぶりでしょう……。ねぇ、パーシヴァル様……。」


 ノワールは魔剣と花吹雪を鞘に収めると、クラウスの元へ向かう。一方その頃、クラウスとノーザ、アッシュは、ノーザの判断によりノワールから離れるようにして戦っていた。


「何故ノワールから離れる?」


「分かるだろ。俺達にあれと戦って勝てる力はねぇ。」


 ノーザの言葉に、クラウスは呆れたような顔をする。

「そうか。」


 クラウスは両手に剣を握り、ノーザへ突っ込んでいく。


斬撃の嵐(スラッシュストリーム)!」


 嵐のような斬撃がクラウス目掛け放たれる。だが、そこにクラウスの姿はなかった。


「っ!どこだ!」


「ノーザ!後ろだ!」


 アッシュが声を上げ、ノーザの背後に回ったクラウスへ大斧を振り下ろす。


破壊の衝撃(デストロイインパクト)!」


 振り下ろされる大斧を捉えたクラウスはそのまま斧へ飛び付き、次の瞬間には斧を八つに切断していた。


「っ!斧が……!」


「アッシュ!逃げろ!」


 八つに切断された斧の破片を足場にして、クラウスはアッシュに向かって飛び付く。次の瞬間、アッシュの太い腕と頸が斬り落とされた。アッシュから大量の血飛沫が噴き上がり、クラウスは返り血に塗れる。次にノーザへ目を向ける。


「化け物かよ……。」


 クラウスは地面を勢い良く蹴り、ノーザへ迫る。


「っ!反射斬カウンタースラッシュ!」


 クラウスの振るう剣を躱し、カウンターを決めようとするノーザ。しかし、クラウスはそのカウンターを片方の剣で弾き返す。


斬撃のあら(スラッシュストリ)……。」


 次の攻撃を放とうとしたノーザだったが、一瞬で両腕を切断され、鳩尾を蹴り飛ばされる。


「あがっ!」


 ノーザは転がり、立ち上がろうとするも、足が震えて力が入らない。


「俺は……俺は!マーリンの!魔王の力を授かってるんだぞ!お前ごとき人間に!」


「もういい。」


 クラウスは呆れた表情で一言呟くと、剣を閃かせノーザの頸も斬り落とした。クラウスは剣に付いた血を払うと鞘に収め、ノワールと合流するべく歩き出す。


「案外離されていたな……。」


 しばらくすると、進行方向からノワールの姿が見えた。疲弊しているように見えるノワールへクラウスは駆け寄る。


「大丈夫か?」


「はい。大丈夫ですよ。久し振りの連戦だったので少し疲れただけです。私も腕が落ちたものです。」


「そうか……。一旦妖精の森へ行くか?」


 クラウスの提案にノワールは頷く。


「そうですね。流星さんに魔力を回復できる薬があると言う話を聞いたことがありますし、もらいに行きたいですね。」


 そして二人は妖精の森を目指して歩き始めた。その頃、妖精の森ではアルケインの手により、打倒・影塚星影の動きが加速していた。


「殺すのは影塚星影とその仲間だ。」


「分かってますよ、アルケインさん。僕が協力したのは星影を殺しておきたいからですから。」


「そうか。お前は今後、星の主(シュテルン・ネンヘル)の一員として動いてもらう。問題ないな?」


「もちろんですよ。」


「今の世界秩序はこの世に合っていない。そしてこの世に存在する人間も、すべて正さなくてはならない。一度世界を破壊し、新たな世界を作り出し、それに適応した人間だけを生かす。これから我々星の主(シュテルン・ネンヘル)が行うのは、終末の先にある再生だ。その為にも星影を殺す。」


「そうですね。それこそが世界が望む在り方です。すべては星の主(シュテルン・ネンヘル)の思し召しですね。」


「何の……話をしている……?」


 アルケインと義文が振り返ると、そこにはクラウスとノワールがいた。


「下がっていろ。」


 アルケインは魔剣を抜くと、二人へ迫る。


「お前も裏切り者……なのか?」


 クラウスの脳裏には、先ほど自分の手で殺めたノーザとアッシュの顔が浮かぶ。


「俺は元々、お前達の仲間ではない。」


 そこへ茜、悠都、ヤミ、アリス、神木、キツネが駆けつける。


「三人とも、何をしてるの?」


 アリスの言葉に、クラウスは答える。


「アルケインは敵だ。」


「何を言ってる、クラウス。俺達は正義だ。」


 二人の言葉を聞いた神木は、考えたくもない最悪の事態にあるのだと察する。


「茜、悠都。下がってろ。」


 神木はそう言うと、刀を抜刀する。


「キツネさん、アリスさん。どちらか私の魔力を回復できたりしますか?」


 ノワールが二人へ問いかける。


「わ、私ができます。」


 アリスは瞳を輝かせ、トリスタンの力を発揮する。それによりノワールの魔力はある程度回復した。


「感謝します。」


 ノワールはアルケインに近付いていく。


「アルケインさん。これはあなたの意思ですか?それともブルーの意思ですか?」


「俺の使命だ。」


 アルケインの言葉に、ノワールは眉間にシワを寄せる。


「あなたは私達の敵だということですね。」


「俺達が正義で、お前達が悪だ。」


 するとアルケインとノワールは同時に動き出し、互いの魔剣が激しく火花を散らす。


「ヤミ!あの男を捕らえる!手伝ってくれ!」


「オッケー!」


 神木とヤミは義文へ動き出す。


「アダム。彗星。おいで。」


 義文の声に、アダムと彗星と呼ばれる少年と少女が現れる。


「神木隆一とヤミ、それから五十嵐悠都、夕凪茜を始末しろ。」


「了解です。」


「はーい、お父様。」


 アダムは神木とヤミへ向かい、彗星は悠都と茜へ向かう。


「なんだ、このガキは……?」


 神木が一瞬、刀を振るうのを躊躇う。


「ターゲット、神木隆一。」


 アダムが指を振ると、神木の腹部に斬り傷が付けられ血が噴き出す。


「ぅ……!」


「ブラックナイト!鬼!あの子を仕留めて!」


 ヤミはブラックナイトと鬼を召喚するが、アダムが腕を振るうと強烈な突風が巻き起こり、二体は真っ二つに切断された。


「ぇ……?」


 アダムはヤミの鳩尾へ拳を叩き込む。


「ぐぅ……!」


 ヤミは胃液が込み上げてきて膝を付くと、それを吐き出す。そこへクラウスが駆けつける。アダムがクラウスへ目を向けて腕を振るうと、クラウスはその腕に剣を振り下ろした。だが、アダムの腕は切り落とせないどころか、クラウスの剣が刃毀れしてしまった。


「クソ……。」


 クラウスは一旦退くと、神木とヤミを担いでアリスの元へ下がる。


「二人を頼む。」


「はい!」


 アリスはすぐに神木とヤミに治癒魔法を掛ける。茜は迫る彗星へ銃を発砲するが、気付いたときには彗星は二人の背後に立っていた。


「っ!」


 悠都は剣を握り彗星へ振るう。次の瞬間には、悠都と茜は顔を腫らして倒れていた。


「なんだ……これ……?」


「痛い……よ……。」


「人間って弱ーい!殴っただけでそんなになっちゃうなんてだらしなぁい!」


 彗星は倒れる二人を嘲笑うように見下し、悠都の頭を踏み付ける。


「ほら、やり返してごらん。出来ないの?ダッサァー!」


 悠都は立ち上がろうとするが、彗星が力強く頭を踏み付ける。


「あれれ〜?もうおしまいですかぁ〜?」


 彗星は悠都の前に屈むと、優しく笑みを浮かべて見つめる。


「悠都から離れて!」


 茜は体を起こし、銃口を彗星に向ける。


「撃ってごらんよ。」


 彗星は立ち上がり、茜に一歩ずつ近づく。茜が容赦なく三発発砲するが、彗星はすでに茜の後ろに立っていた。


「どこ撃ってるの〜?」


 横腹を強く蹴り飛ばす。


「ぐっ……!」


 茜はその強烈な痛みに倒れる。


「お父様!この子達の息の根止めていいの?」


「いや、そのまま拘束してくれ。あとで星影に見せてやろう。」


「流石お父様!」


 彗星は悠都と茜を鎖で拘束し、担いで義文の元へ戻る。クラウスは神木とヤミをアリスに預けると、再びアダムへ向かっていく。


「っ!」


 クラウスの高速斬撃がアダムへ迫る。だがアダムは体を硬化させ、全ての斬撃を防ぐ。そこをアダムの蹴りが、クラウスの顎を下から突き上げる。


「くっ……!」


 続けてガラ空きになった腹部へ三発、拳を叩き込む。クラウスは吐血し吹き飛ばされた。


「アダム。次はアリス・テイラーを仕留めろ。」


「はい。」


 アダムがアリスへ向かっていくと、アダムの顎を下から蹴り上げられる。


「っ!」


「はぁ……。」


 クラウスの体から蒸気が上がっていた。


「クラウス……?」


 アリスが声を掛けるがクラウスは反応しない。再びアダムへ向かっていく。


「しぶといな。アダム。クラウスをしっかり殺してからアリスを殺せ。」


「は……い……。」


 返事をしている最中に、クラウスの拳がアダムの頬を殴る。アダムは拳を振るうが、それはクラウスの幻影だった。


「いない……後ろ……?」


 アダムは振り返り、背後にいたクラウスへ蹴りを放つが、それも幻影だった。


「どこ……?」


 アダムは危険を感じ、全身を硬化する。クラウスは目の前から迫り、剣を胸に突き付ける。だが剣はアダムの硬化に耐えられずに砕ける。それでもクラウスは突き付け続け、アダムを吹き飛ばした。


「……!思い出した……。クラウス……そうか……。」


 義文がクラウスを見て何か小言を呟き始める。


「お父様、どうしたのですか?」


「あのクラウスというガキ、昔政府内で子供を人体実験して育成するというプロジェクトがあった。成功したのは唯一一人。孤児を人体実験として使っていたから名前は知らなかったが、あの力は間違いない。影塚暁彦が政府から持ち出したモノだ。」


「影塚……暁彦……。なぜ彼が?」


「あいつは僕達の研究を嫌悪していた。幼い子に異種族の遺伝子を取り込ませることに。それで連れ出したんだ。クラウスは鬼人と龍の遺伝子を取り込ませたハイブリッド。凶暴で目に映るものをすべて破壊する『鬼子』と呼ばれたガキだ。それを暁彦は手懐けて制御できるようにしたのか……。だが今のクラウスは、昔の『鬼子』と呼ばれた時のそれだ。奴が力の使い方を本能的に思い出せばアダムが勝てるか怪しい……。彗星、フォローに行け。」


「はい。」


 彗星がクラウスへ迫るが、光の壁が彼女の行手を阻む。


「クラウスの邪魔はさせない。」


 アリスが彗星の前に立ちはだかる。


「邪魔しないでよね。」


「符術 雷!」


 彗星は時を止めアリスの背後へ移り、蹴り飛ばす。時が動き出すとアリスは吹き飛ぶが、すぐに体勢を整える。


『アリス。もうあなたは次の段階に進めるわ。自分の力を、「できない」という想像だけで閉ざさないで。魔法の根源は、「こうできたらいいな」「あんな事ができたら素敵だな」と想像する力にある。』


「トリスタン……。」


『さあ、すべてを解き放ちなさい。』


 アリスは想像する。星影のようにどんな強大な敵をも倒す力を。ルベルのような強靭な肉体を。アランのように華麗に無駄の無い動きを。


「巫術 天罰の雷鎚。」


 突如、目の前が真っ白に染まるほど輝き、彗星は何があったのか分からない状態で雷鎚に撃たれ、黒焦げになっていた。


「……彗星……。」


 義文は膝を付き、顔を手で覆う。


「僕の……僕の娘が……。あぁ……!あぁぁぁぁぁ!彗星!彗星がぁ!」


 アダムがその声に反応し、義文へ振り向く。


「あ゛ぁ゛!」


 クラウスはその瞬間を逃さず、アダムを殴りつける。アダムの硬化は砕かれ、吹き飛ばされる。


「硬化が……砕かれた……。」


 アダムが呆けていると、目の前には既にクラウスが腕を大きく振り上げていた。


「お父……様……。」


 アダムが義文を見つめるが、義文は泣き崩れるだけだった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 クラウスは振り上げた拳を勢いよくアダムへ振り下ろす。アダムは頭部を砕かれ、そのまま全身までをも砕かれて、地面が衝撃で深く歪んだ。

皆さん、いかがだったでしょうか。

ノーザ、アッシュ、アルケイン、バレン。そして鈴木義文の子アダムと彗星に勝利した勇者一派。

これにより戦いも終わりが見え始める。


次回第六十五話 《神殺し》

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