第六十三話 裏切り者
皆さんこんにちは。
ヤミです。本日は第63話を投稿させていただきました。
王たちと七勇者が戦う中、ついに《世界政府》が動き出す。
是非お楽しみください。
巨人王を倒し終わったノーザ、ルシファー、アルケイン、リリィ、クラウスはオベイロンにより傷の治療を行ってもらっていた。
「すまない、オベイロン。」
「気にしないで下さい。」
クラウスの言葉に、一瞬顔を曇らせたオベイロンはすぐに微笑み治療を続ける。
「まだ敵が潜んでるかもしれない。リリィ、見回りに付き合ってくれ。」
アルケインの言葉に、治療を終えていたリリィが頷く。二人はオベイロンの別荘を離れ、近くを見回りに行く。
「リリィ、お前は仲間を信じているか?」
「急にどうしたの?」
アルケインの問いにリリィは眉を顰める。
「すまない。変なことを聞いたな。ただ少し気になることがあってな。」
「気になること?」
「ああ。北の地は滅んだはずなのに、どうしてノーザとアッシュだけは生き残れたのか。たまたま遠征に出ていたというのなら分かる。しかし、あのマーリンがそうそう人を逃がすとは思えない。」
「つまり何が言いたいの?」
「ノーザとアッシュはマーリンの手先なんじゃないかと…。」
「でも彼はワタシ達のために巨人王と戦ってくれた。」
「そうだな…。」
「そんなこと言ってないで早く行きましょ。」
リリィはアルケインから少し距離を取るように見回りを再開する。アルケインは早歩きでリリィの背後へ迫る。リリィが振り返ろうとすると、リリィは背後から魔剣で貫かれる。
「っ!アル…ケイン…?」
「どうした?」
「何を…?」
「これも星の主の思し召しだ。」
アルケインは魔剣をリリィから引き抜くと
「短い間だったが楽しかったぞ。」
そう言い、リリィの背中を切り裂く。その頃、オベイロン達は全員の治療を終えて、アルケインとリリィ達とともに見回りをする者と、ユートピアの住民の安全確認をする者に別れ行動することになっていた。
「それでは私とルシファーで住民の安全を確認してきます。ノーザ様、クラウス様は見回りの方をお願いします。」
そして二組に別れたオベイロン達はそれぞれにすべきことを成すために動く。
「ノーザ。」
「ああ、敵の気配は感じない。」
クラウスの声に察したノーザが答える。
「特に敵がいなそうなら、他の王を倒しに行くか?」
クラウスがそう言うとノーザは
「それもいいんだが、一回アッシュと合流しておきたい。俺達二人だけの助太刀でどうなるかも怪しい。」
「それもそうだな。アッシュはリーダーと同じく《原初の悪魔》達へ向かっていったよな?」
「ああ、そうだ。」
ノーザとクラウスはアッシュと合流するために動き始める。一方、オベイロン、ルシファーは妖精の森の住民達の元へ到着していた。
「皆様、ご無事でしたか?」
オベイロンの声に今まで怯えていた住民達の顔に安堵の色が宿る。
「オベイロン様!」
「妖精王様だ!」
「私達はオベイロン様方のお陰で無事に生きています!」
住民達はそう声を上げながらオベイロンを囲む。そしてダルヴィッシュも奥から現れる。
「ダルヴィッシュ?こんなところでどうしたのだ?」
ルシファーはダルヴィッシュへ駆け寄る。
「百獣王との戦いで相討ちのような形になったところをノワール殿が助けてくれたようでして。」
「そうだったのか。」
「オベイロン殿、姉上。お二人に話しておかなければならないことがあります。」
「なんでしょう。」
オベイロンがダルヴィッシュの言葉に真剣な顔付きで聞く。
「星影殿が、星影は私達の敵です。」
「っ!」
オベイロンは目を見開く。それに対してルシファーは至って冷静に
「何を証拠に星影が敵だと?」
「…こちらは《世界政府》の鈴木義文殿です。」
ダルヴィッシュはそう言って義文へ手を差し伸べる。
「《世界政府》…。何故ここへ?」
オベイロンが警戒しながら義文を見る。
「はじめまして。僕は《世界政府》所属の鈴木義文です。お二方に会うのはこれが初めてですね。妖精王様、そんなに警戒しなくてもいいですよ。」
義文の柔らかい声に、オベイロンは少し警戒を解く。
「ダルヴィッシュ、この男が証拠になるものを?」
「その通りです。」
そこへエーデル大王も現れる。
「エーデル大王様…。」
オベイロンは頭を下げる。
「顔を上げろ。影塚星影は少しばかり前に《世界政府》へ向かっただろう。その時に行動を起こしていたのだ。《世界政府》へ向かうと我々に思い込ませ、他の王達とコンタクトを取っていたのだ。」
「星影様は母上の身を案じて、危険を覚悟で《世界政府》へ向かったのではないのですか?」
オベイロンの言葉に義文が近付いて来て
「こちらをご覧ください。」
義文はオベイロンとルシファーの前に映像を流し始める。
「これは…?」
オベイロンの疑問に
「これは《世界政府》に所属する天界王がアヴァロンにて記録したものです。」
『魔王マーリン。お前はオリジンを俺に奪われた事を恨んでたよな?』
『それを分かっていてよくも私に声を掛けようなどと思ったな。』
マーリンは掌を星影へ向ける。突如、膨大な魔力がマーリンから溢れ出す。
『待て、魔王よ。』
そこに魔神王メフィストが現れ、星影とマーリンの間に入る。マーリンは気に入らなそうにメフィストを睨むと、一歩下がる。
『何故邪魔をする?』
『それは我は先程影塚星影にとある交渉を持ちかけられたからだ。』
『交渉?貴様、何を企んでいる?』
マーリンは星影を睨む。
『オリジンを殺したことは謝る。だけどオリジンは俺の中に生きている。奴の魂は体から引き剥がし俺が取り込んだ。』
『何を言っている!』
マーリンは怒りを顕にし、星影へ迫る。
『待て。』
突如、オリジンの声が聞こえマーリンは止まる。
『オリジン…なのか?』
『そうだ。星影の意識と代わり今こうして会話をしている。』
『影塚星影はなんの交渉をするつもりなのだ?』
『まず先に言っておく。星影は星の主の一人だ。』
『っ!魔神王、どういうことだ?』
『我も先程聞かされ貴様の様に驚いた。しかし、星の主が地球に現れたということは、遂に我らの悲願である《新世界秩序》を体現できる日が近付いているということだ。』
メフィストの言い分に対しマーリンは納得するも少し引っ掛かるところがあった。
『確かに…星の主が動いたというのならそういう事だろう。しかし、それで彼が何故私達に交渉等を持ち掛けるのだ?』
『それは本人に聞くべきであろう。』
マーリンの問いにメフィストは星影へ視線を送る。
『俺達は地球を一つに統合しようと考えている。』
オリジンと代わり話し始める星影にマーリンは
『つまりこの世界と現世を合わせた新たな世界を創ると?』
『そうだ。現世ではオリジンとその他の王のお陰で人類の三分の一を滅ぼすことができた。そしてマーリン。そしてここには居ないがタルタロス、お前達のお陰で異世界では北の地と西の地の人類を滅ぼすことができた。これで二分の一を滅ぼすことができた。しかし、両方の世界を統合し、新たな世界を生きるには選ばれし者でなくてはならない。その為に、お前達王には人類の選別を行ってもらいたい。ただし、天界王、龍王、妖精王はこの件に関し異論を唱える可能性があるため、その三王には声を掛けずに行う。』
『それで、私達がそれを成し得た場合、そちらは何を差し出してくれるんだ?』
マーリンが聞くと星影は一呼吸おいてから口を開く。
『新世界の統治権を与える。その際に今存在する管理者達は俺達星の主が滅ぼしお前達王にその座を譲ろう。』
マーリンは一瞬反応が遅れるも、不敵な笑みを浮かべ
『面白い。交渉成立だ。』
と言い切る。それに星影も笑みを浮かべてから
『コソコソしてるなよ。天界王釈迦。』
撮影していた釈迦の元へ謎の攻撃が襲い、そこで記録は途切れる。
「…。」
「…。」
オベイロンもルシファーもその映像が途切れてもなお、その画面を見つめている。
「衝撃だと思います。私も最初は受け入れられなかった。しかし、これが真実なのです。」
ダルヴィッシュの言葉に現実へと引き戻されたオベイロンとルシファー。オベイロンは義文へ視線を向け
「天界王は…どうなったのですか…?」
「彼はあの謎の攻撃で致命傷を負ったが、王権の力で一命は取り留め、《世界政府》へ帰還したよ。」
「エーデル大王、いつから星影が裏切り者だと知っていたのです?」
ルシファーが大王に問う。
「恥ずかしながら私も少し前に知ったばかりなのだ。」
「義文殿から知らされたのですか?」
「いいや。アルケインだ。」
「アルケイン様…ですか…?」
「アルケインの力というよりもアクア・ブルーの力によってアルケインも知ることになったらしい。」
「どうやって少し前にアルケイン様から知らされたのですか?私達は先程までアルケイン様と一緒にいた。そしてリリィ様と共に周囲の警戒に当たっていた。」
「…。」
するとエーデル大王は黙り込む。
「鈴木義文。貴様が何かしたのか?」
ルシファーが義文を睨みつける。
「僕を疑うんですか?」
「待て、ルシファー。」
そこへアルケインとリリィがルシファー達の背後から現れる。
「…アルケイン…。」
ルシファーがアルケインを睨むと
「光陰の剣…。」
目に留まらぬ速さでルシファーの腹部に魔剣が突き刺さる。
「っ!…きさ…ま…。」
「ルシファー様!」
オベイロンが駆け寄ろうとするもダルヴィッシュに押さえつけられる。
「ダルヴィッシュ様!何をしているのですか!」
アルケインがルシファーから魔剣を抜くとルシファーの傷は塞がり、何もなかったのように立ち上がる。
「…ルシファー…様…。」
オベイロンがルシファーを見ていると
「どうしたのだ?オベイロン。」
「いや…今アルケイン様に刺されましたよね?」
「何のことだ?」
ルシファーは頭を傾げる。そしてアルケインへ向き直り
「オベイロンはどうしたのだ?」
「さあ。俺にも分からん。」
「っ!アルケイン様!何をしたのですか?!あなたは何者なのですか?!」
「俺か?俺は星の主の幹部だ。」
「ぇ…?星の主とは先程星影様が映像の中で言っていた…。」
「あれはフェイクだ。現世のAIの力というものはとても凄い。俺の力を使わずともあんな芸当が出来るのだからな。」
「アルケイン様!いつからあなたは星の主の一員だったのですか?!」
「いつから?面白いことを聞くな。妖精王様。」
アルケインはオベイロンを嘲笑うように笑いながら
「そんなの最初からに決まっているだろ。」
「…。最初から…。では何故あなたはオリジン達や巨人王と戦っていたのですか?」
「あれはそうするのが星の主の思し召しだからだ。そろそろ良いか?」
「何の話ですか?」
「ダルヴィッシュ、オベイロンを押さえておけ。」
「はい。」
「離してください!ダルヴィッシュ様!」
アルケインは捕らえられたオベイロンへ魔剣を突き刺す。そして引き抜くとルシファーの時と同じように傷が塞がり、何もなかったのように立ち上がる。
「三人には負担になるかもしれないけど頼みたい。どうか星影を止めて世界を救ってくれ。」
義文は頭を下げる。エーデル大王も他の住民達も同じように頭を下げる。
「顔を上げてください。私達は世界の悪を滅ぼす《終末の七勇者》です。必ず、星影殿を、いや、星影を倒してきます。」
ダルヴィッシュの言葉に住民達は声を上げる。それにルシファーとオベイロンも頷く。住民達は
「頑張ってください!ダルヴィッシュ様!」
「気を付けてくださいね!ルシファー様!」
「悪を打ち払ってください!オベイロン様!」
三人は住民達、そして義文、エーデル大王へ一礼をすると、戦場へと駆け出していく。その頃、クラウス、ノーザはアッシュと合流していた。
「アッシュ…。どういう事だ?」
クラウスは剣を両手に握りアッシュを睨む。
「おいおい!仲間だったんだろ?睨んでやるなよ!」
アッシュの隣で悪夢的な笑みを浮かべる《憤怒》のバレン・ヴィオレはそう言ってクラウスを見る。
「ノーザ、どうする?」
「何を、だ?」
「っ!」
クラウスが振り返りノーザへ視線を送ろうとした時、ノーザはクラウスへ剣を振るう。間一髪で躱したクラウスは目の前の三人を睨む。
「お前達はグルだったのか?」
「もともとお前らに付いてるわけじゃねぇ。俺達は魔王マーリンの配下。」
その時、ノーザとアッシュの姿が変化する。黒いマントを纏い、魔力が一気に膨れ上がる。
「なんだ…この禍々しい気配は…。」
「これが俺達がマーリンから授かった力だ。」
クラウスは三対一の形であるが、怯むことなく構える。
「バレン、とっとと仕留めてマーリンの元へ行くぞ。」
「誰に口利いてんだ!言われなくても分かってる!」
バレンは魔剣を手に握り、クラウスへ飛び掛かる。その時、とても重苦しいプレッシャーに場にいた四人は背中に粟が立つような恐怖を覚える。バレンはすぐにクラウスから離れ、目の前の悪魔に目を向ける。
「…リチャード・ノワール。」
「お久し振りですね。バレン・ヴィオレ。」
「ノワール…。」
「クラウスさん。彼らは敵で間違いありませんね?」
「ああ。魔王の仲間だ。」
「そうですか。クラウスさんはノーザとアッシュの相手をお願いします。」
「私はヴィオレの相手をします。」
「了解です。」
クラウスは頷きノーザとアッシュを睨む。
「はっ!俺の相手だと!そんなに消耗しているお前ごとき敵ではない!ナメんじゃねぇぞ!」
バレンは魔剣を握るとノワールへ駆け出していく。
皆さん、いかがだったでしょうか。
仲間だと思っていたアルケイン、ノーザ、アッシュは星の主と魔王の幹部であり、星影打倒のため《世界政府》と共に動き出す。星影たちはこの局面を乗り越えることはできるのか。
次回 第六十四話 鬼子




