第五十九話 再会
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第五十九話を投稿させていただきました。
百獣王との一戦が終わった中、次なる舞台は鬼人王へ移る。そこで悠都と茜が目にした者は…。
是非お楽しみください。
鬼人王イグニスほ燃え盛る体の前で腕を組み、彼の背後に並ぶ鬼人達もイグニスのように堂々と立っていた。そのプレッシャーに悠都、茜、神木、ヤミ、アリス、キツネは気圧されていた。特に悠都と茜はそれとはまた違った理由でイグニスに怯えていた。
「なんで…お前が…。」
悠都の言葉にイグニスは
「俺のことを知っているのか?」
と問う。
「知ってるもなにも…。」
「っ!剛は…?剛はどうしたの?」
茜の声にイグニスは引き攣った笑みを浮かべる。
「あぁ、思い出した。お前らはあの日あのちっぽけな町で祭りだと燥いでいたガキか。」
そう。イグニスは五年前、《プレデター》が現世へ攻めてきたときに乗じて現れ、星影達と共にいた後藤剛を拐った怪物だったのだ。
「剛だな。今も生きてるとも。来い。」
イグニスの声に燃え盛る体に変わってしまった剛が現れる。
「剛!」
「お前!剛に何したんだ!」
悠都が怒鳴ると
「こいつは鬼になる耐性があった。だから崇高な鬼人にしてやったのさ。剛、お前は友達と一緒にいたいよな?」
「うん…。いたい…。」
「そうだな。じゃああいつらにも鬼になってもらおう。そうすればお前の友達もちっぽけな人間という生物の枠を超え、俺達のような素晴らしい存在になれる。」
「うん…。悠都…、茜ちゃん…。鬼になろ…?」
「…。」
「酷い…。よくもこんなこと!」
茜が涙を零しながら叫ぶ。
「感謝してほしいくらいだな。儚い人間ではすぐ死んでしまう。しかし鬼ならば長らく生き、強靭な肉体によりどんな生物に恐れる必要もない。そうだろ?剛。」
「うん…。そう…。」
「っ!」
「悠都、茜、下がってろ。」
神木が二人の前に出る。その隣にはアリス、ヤミとキツネも共にいる。
「神木…。」
「先生…。」
「胸糞わりぃ話だ。お前名前は?」
「俺は鬼人王イグニス。この世で最も最強な鬼人だ。」
「そうか、イグニス。俺の生徒を傷つけたこと。後悔しろ。」
神木は抜刀すると一瞬でイグニスの間合いへ入り
「居合一刀流 天裂斬!」
「たかが人間如きに勝てると思うな!」
イグニスの体が燃え上がるが、イグニスの胸には深い切り傷が生まれる。そしてそこから勢いよく血潮が噴き出す。
「ぎぃっ!何故…俺の肉体が…。」
「符術 氷結!」
イグニスの体は氷漬けにされる。
「居合一刀流 巌裂!」
氷漬けになったイグニスは神木に一刀両断される。
「キツネちゃん、私達は後ろの鬼をやるよ。」
一方、神木とアリスがイグニスと対峙している中、ヤミとキツネはイグニスの背後に集う鬼人達へ攻める。
「はい!」
「死神!ブラックナイト!いっちゃえ!」
ヤミの式神が鬼人達へ襲い掛かる。
「女二人で何ができる?」
「へっへ!喰っちまおうぜ!」
「あぁ!食べ頃な体だ!」
鬼人達もヤミ、キツネへ迫りくる。だが、死神の大鎌とブラックナイトの長剣により鬼人達は次々に首を斬り落とされる。キツネは狐へ化けると、その小さな体を活かし、鬼人達の合間を縫うように駆けていき
「妖術 劫火紅蓮!」
鬼人達は自身の体から燃え盛る炎以上の火力に体が朽ち果てていく。
「ヤマタノオロチ!喰らい尽くせ!」
ヤミはヤマタノオロチを召喚し、ヤマタノオロチは次々に鬼人達の頭を喰い千切る。
「何なんだ…。化け物だ…。」
鬼人達は慌てた様子で逃げ惑う。キツネは逃げていく鬼人達を追い
「妖術 氷嵐葬送!」
氷の礫が宙を舞い、鬼人達の体を穿ち抜いていく。
「はぁ…はぁ…。」
キツネは慣れない技の連発に息が上がる。
「キツネちゃん、大丈夫?」
そんなキツネにヤミがすぐに駆け寄る。
「はい…。大丈夫…です。」
「休んでていいからね。」
「…ありがとうございます。」
「ドラゴン!逃げた鬼人達を追って!全員やっつけちゃえ!」
ドラゴンは咆哮し、逃げ惑う鬼人の残党を尻尾で振り払い、踏み付け、そして炎を吐き一掃する。
「ナイス!戻っていいよ。」
ドラゴンはヤミの言葉に姿を消す。ブラックナイト達も鬼人を倒し終えると消えていく。
「残るはこの剛って奴だけだ。」
神木が剛へ寄ると剛は怯えたように尻餅をつく。
「嫌…だ…。助け…て…。」
「悠都、茜。あとは任せるぞ。」
神木は剛に背を向け、悠都と茜の肩にポンっと手を置く。二人は剛に近付くと
「久し振りだな…。剛…。」
と悠都が声を掛ける。剛の目尻には涙が溜まるが、すぐに体の熱で蒸発してしまう。
「辛かったよね…。ごめんね…。あの時救えなくて…。」
茜が膝を付き剛に謝る。剛は手を伸ばしかけ、すぐに止める。
「謝ら…ないで…。俺は…みんなに会えて…幸せ…だった…。孤児だった…俺に…優しく…してくれた…。嬉し…かった。」
二人は必死に涙を堪え、頷きながら剛の話を聞いている。
「星…影にも…会いたかった…な…。」
その言葉に二人は何も言えずにただ黙っていた。
「俺の…体は…イグニスの力…で保たれてたから…もうそろそろ…限界かも…。」
ふと剛の手に目を向けた茜。彼の手は燃えながら灰になり砕けていく。
「待ってよ…。まだ四人で…揃ってないのに…。」
茜は遂に堪えられなくなったように涙を零す。悠都も堪えていた感情が崩壊する。
「剛…!死ぬな!生きろ!」
「うん…。生き…たい…よ。でも…。」
「アリス!剛を何とかしてくれ!」
悠都が振り返り、背後にいたアリスへ涙目で訴える。しかしアリスは頭を横に振る。
「何で…?」
アリスは剛に近付き治癒魔法を掛ける。しかし、朽ちた体は再生することなく、炎はただ燃え続ける。氷結魔法を放っても、体の熱ですぐに溶けてしまう。
「悠都…、茜ちゃん…。」
「どうした?」
悠都がアリスから剛へ視線を戻す。
「星影…に…伝言を…。」
「ああ…!何だ…!」
「俺と…友達になってくれて…ありがとう…。って…伝えて…。悠都と…茜ちゃんも…ありがとう…。」
それを言うと、剛の体は全身が燃え上がり灰となって消えていく。悠都と茜はただひたすらに大きな声で泣いていた。
───
「…俺は倒れたんですね…。」
「そうですね。王権は魔力消耗が激しいですから。それに創世結界を持続的に展開するために神器に集まる魔力はすべて結界に使われていましたから。」
「…ノワール。あとは頼む…。」
星影は魂の世界にてパーシヴァルと話していた。そこへ吹くはずもない風が吹く。
「風…?」
パーシヴァルは不思議そうに空を見上げる。だが特に何も変わりはない。その時星影が膝を付き泣き出す。
「星影、どうしたのですか?」
パーシヴァルが寄り添い背中を擦る。
「生きてたんだ…。良かった…。でも…もう二度と会えない…。最後に…会いたかった…。」
「星影、大丈夫ですか?」
「…。やっぱり俺は戦う。これから先も。もうお前みたいな犠牲者は出させない。」
星影の心に吹いた魂の風。星影は幼馴染の魂に誓い立ち上がる。
「星影…。」
「パーシヴァルさん。行ってきます。」
星影は燃え盛るような魔力を纏い目を覚ます。
「主!」
「っ!バカな!」
ノワールとタルタロスの目の前、魔力が尽き倒れていた星影が立ち上がっていた。
「それにその魔力…何故貴様が鬼人王の魔力を!」
「ノワール。ありがとう。俺はもう大丈夫だ。」
ノワールは星影の側に寄り、片膝を付き頭を下げる。
「お帰りなさいませ。主。」
星影はノワールの肩にそっと手を置き優しくどこか寂しそうな眼差しを向ける。
「ノワール。またお願いしてもいい?」
「何なりとお申し付けください。」
「ダルヴィッシュの元に三体巨大な魔力が近付いてる。でもダルヴィッシュはもう動けなさそうだから、その三体を倒してきてくれ。」
「御意。」
するとノワールは姿を消す。
「何故…離れている敵のことがそこまで詳しく分かる…?」
タルタロスが驚きを隠せないように星影を見る。
「魂が見える。」
タルタロスは焦りを感じ、残り僅かな魔力を!絞り出す。
「やはり貴様は危険だ。影塚星影。必ず殺す。」
「決着をつけよう。タルタロス。」
両者は向き合い、互いに最大出力の技を放つ。
「滅亡の炎!」
「常闇 暁 虚空の明星。」
星影の神器は鬼人の炎を纏い、タルタロスの滅亡の炎を切り払う。そして、星影は地面を勢い良く蹴り、タルタロスの間合いまで入り
「鬼人炎 無斬!」
と燃え上がる剣でタルタロスの胸を斬る。タルタロスは魂までも斬り裂かれ遠吠えのような悲鳴を上げ消滅していく。それと同時に周囲にいたアンデッドも消滅していく。その時にはもう星影から鬼人王の魔力は失われ、剣が纏っていた鬼人炎も消えていた。
「…ありがとう…剛。お前のお陰で勝てたよ。」
星影は神器を鞘に収める。その時温かい記憶と後悔が風に乗って星影を包む。星影はもう一度消えてしまった魂に誓った。この思い出と後悔を未来へ繋ぎ、二度と誰も悲しまないように、この世界秩序を根本から覆すと。
皆さん、いかがだったでしょうか。
死んだと思っていたはずの幼馴染に再会した悠都と茜。
しかし運命は残酷にも全てを奪い去っていく。
彼は亡くなることになっても、その意志は受け継がれていく。全ては世界を救うために。
次回第六十話 悪戦




