肩代わりの約束
しかし同時に、そりゃここにいれば会ってしまうわな、とも思う訳で……。
「……はぁ……」
つい、ため息が口を吐いた。
自分の馬鹿さ加減なのか、それとも運の無さなのか……何に対してなのかは分からないが、ともかく、諦めにも似た感情が去来した。
話し込んでしまった……予定通りなら、早々にジルのおかげで会って、心置きなく話をしてから、この周辺から逃げ出せていたのに……告白だとか家を見せてほしいだとか、そんなことを言われて周辺に居すぎてしまった。
「誰だ? お前たちは」
そう後悔しているリビットの前に、ジルが立つ。
彼と男たちの間に割って入るように。
「俺達は、取り立て人だよ」
「取り立て?」
「ソイツの借金のな」
「えっ……?」
驚き振り返ってくるジルに向け、リビットは観念したかのように、再びため息を吐く。
「実は、そういうことなんだよ。俺はこれでも大量に借金があってな。返さないといけない立場なんだ」
「じゃあ……女の子に告白したいって言うのは……?」
「いやだから、ひと目会いたかっただけだって言っただろ? 返しきれない借金のせいで、これから先どうなるか分からないからさ。ジルの力で女の子を外に連れ出してもらって、一通り話をしたらそれで終わらせるつもりだったんだよ。どうせ俺はこれから、この町を出ることになるだろうからな」
所謂、出稼ぎ、というやつだろう。
「ここは学校があるし貴族たちもいる結構大きな街だ。でも経済の中心地だったり城がある訳じゃない。だから働けたとしても、そこまで大きな稼ぎにはならない。それじゃあ借金を返し終わるまで待って貰えそうにないからな」
「……お別れを、言いたかっただけ、と……?」
「まあ、会ったこともない男にそんなこと言われちゃ、あの女の子も困ったことになったろうけどね」
その話が終わるタイミングを待っていてくれたのか、そこでようやく現れた大男の一人が声をかけてきた。
「それじゃあ、主人の元へ行こうか。契約の見直しだ」
「ああ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
歩み出ようとしたリビットを、手を横に挙げて静止するジル。
そして再び振り返り、男二人と対峙する。
「君たち二人、もう少しだけ待ってもらえないか?」
「あん?」
「僕は、彼との約束を果たしたい。彼女と彼を、会わせてあげたい」
そんなジルの提案に、男二人は顔を見合わせて、少し困ったような表情を浮かべる。
「……兄ちゃん、まだ学生だろ?」
「……ああ」
制服を着たままだから、誤魔化しようがない。正直に頷く。
……いや、ジルのことだから私服であったとしても頷いただろうが。
「どうしてこの時間に外にいるんだ?」
「彼を、助けるためだ」
「それを果たしたいから待ってくれって?」
「ああ」
「だがなぁ……ソイツ、逃げてここにいるんだぞ? これ以上信用しろってのか?」
「だったら、もし彼が逃げ出したら、僕がその借金の肩代わりをしよう」
「「は?」」
突拍子もない提案に、取り立て人である二人の声が驚きに重なった。
「だから、彼が逃げれば、借金は僕が返す。それでしばらく待ってもらえないだろうか」




