会わせたくない想い
「とりあえず、まずはその女の子がどんな子か、見てみないと」
俺のその提案に、リビットは渋々といった様子で女の子がいる屋敷へと案内してくれた。
といっても、場所的にはあまり離れていない。ジルの手が借りられればすぐに向かうつもりだったのだろう。
さらに一つの角を曲がった先にあった屋敷へ案内され「ここだ」と言われた。
屋敷、というにはあまりにも普通。
確かにこの辺の家よりかは多少豪華だが、俺のいた世界の少し大きな一軒家ぐらいだろうか。
てっきりもっと大きな、端から端までが見えないようなものを想像してしまっていたが……小さな貴族、と言っていたが、それはどうやら本当だったようだ。
外観の色が俺の世界の物と違うのは、きっと材質に依るものだろう。
だがそれ以外は基本的な二階建ての家と変わらない、門扉と建物の間に庭があるだけの、極々普通の建物だ。
「いつもは、あの二階の部屋にある窓を開けて、外を眺めたり、読書をしている姿が見えるんだ」
と言って、今は未だ閉まったままの窓を指差す。
そこには「窓」というよりか、板が枠に嵌ったような部分があっただけ。
てっきり普通のガラス窓を想像していただけに、これには拍子抜けした。
しかしまあ、この時代のガラスは小さな入れ物に使うのが限度だっただろうから、小さな貴族では中々手に入らないものなのかもしれない。
そもそも明かりなら魔法で容易に生み出せる以上、無理に採光を求める必要が無いから技術が発展していない、とも考えられるが。
「つまり、一目惚れ?」
「まあ、そうなるかな」
俺の質問に少し照れたように後ろ頭を掻く。
「じゃあ、諦めるか」
「なんでっ!?」
「いやなんでと言われても……貴族相手に一目惚れでしょ?」
「そこがいいんじゃん!」
と、熱くなったミルルが声を荒げた。
「ひとめぼれ! びょうじゃくな女の子! しんそうのれいじょう! みぶんさのこい!」
そんな一方的に萌える単語並べられてもねぇ……。
「うん、良いよね。うん」
ブンブンと力強く頷くカンナ。身分差の恋に自分とジルを重ねているのか。
こちとらお前たちが慕ってる彼の身分が無くならないよう彼を諦めさせようと思っているところだというのに。
「……ジルも同じ意見?」
「お互いが好き合っているのなら、応援したいとは思っている」
「いやどう考えても相手は好きでも何でもないでしょ……一目惚れってことは、リビットとは話もしたことないんじゃない?」
「それは……まあ」
「ほらやっぱり」
「でも、俺のことは知ってくれてると思う」
「なんで?」
「その……父親の方とは、面識があるんだ」
あれ? コレ詰んでね?
「って、ん? それなら何でジルの手を借りようとしたの?」
「だからそれは仲を取り持ってもらいたくて……」
「向こうの親との関係があるのに?」
「それは……」
言い辛そうにマゴマゴとしだす。
これは……怪しい。
「まあ、そこは良いじゃないか」
いやいやジルさん!? 俺アンタのために色々と手を焼いてんだけどっ!?
「それよりも今は、プロポーズの手段を考えないと」
「その方法を考えるためにも相手の親のことを知っていれば何かと手段って増えない?」
「「「あぁっ!」」」
「なんでそこで三人共が納得の声っ!?」
いや子供二人は分かるけどねっ!? ジルの方は考えとこうよ!
「それじゃあ、そのへんも踏まえて、皆で話し合おうか」
仕切るようにジルが言葉を発するが、ここその相手の家の目の前だけど……。
「じゃあ、さっきの場所に戻ろうか。ここで話すのもアレだし」
リビットはそう切り出した後、皆の返事も聞かずに帰り道とは別の方向へと歩きだす。
露骨にその場から離れたがっているリビットの誘いには乗らず、俺は俺で別の方向へと歩き出す。
「あれ? リフィアお姉ちゃん?」
「ああ、うん。ちょっとだけ用事」
気付かれたミミルに誤魔化すような返事をしながら、俺は一つ路地に入って、壁蹴りを繰り返してその昇ってみせる。
「という訳でストーカーさん、一つ協力しない?」
そうして、魔法で姿を見せなくしている相手に向け、俺は話しかけた。




