相談相手の狙い
……っていうかそもそも――
「――それならどうして、年下に恋愛相談なんてしたの?」
そこだ。
俺もジルも、結局のところはまだまだ子供。俺に至っては中学二年生だ。
騎士学校に入れるのは卒業時に二十歳に満たない者ということなので、俺もジルも彼よりは年下だ。
そんな奴相手に恋愛相談をするだなんて、何かしらの理由があるはずだ。
「いや、俺としても、ジルくんに恋愛相談をしたつもりはないんだ」
「は?」
「何というか……その子が、小さいとはいえ貴族の家に住んでるから……彼のツテて、仲良くなるためのキッカケを得られないかなぁ、と思って」
うわ……コネ目当てか。
……いやでも、やろうとしてることは間違いではない……のか……?
「でもリビット兄ちゃん、その人と仲良くなりたいんだよね?」
と、ミミルの純粋な疑問。
「一緒に街を歩いたりとか、デートをしたいんですよね?」
これはカンナの疑問だ。
「それは……まあ、うん。そうだけど」
「「じゃあ好きってことだよね?」」
「それは、もちろん」
「「じゃあ結婚だよっ!!」」
「……う~ん……」
真っ直ぐで濁りのない子供だからこその言葉を受け、汚れた大人は何も言い返せない。
ただ困ったような表情を貼りつかせるだけ。
ここで大人の理屈――というかただヤりたいだけの話をして、理解なんてするはずもないし。
「リビットさん」
と、今度は唸る彼にジルが話しかけた。
「お付き合いはしたいが結婚する気はない……正直言って僕は、その気持がよく分かりません」
「……だからってお前、どうして“仲良くなるキッカケを作って欲しい”から“プロポーズのための恋愛相談”に変わったんだ?」
「簡単なことです。彼女に近づくためにはそうするしか無かったからです」
……あ、なるほど。
気付く俺とは対照的に、リビットは眉根をひそめる。
「僕がその付き合うだけをわからないというのは、偏に貴族だからです。貴族は家柄と血筋を何よりも重んじます。もちろん、相手によって変わるのは確かでしょう。ですがもし、遊びのためといった理由であなたが付き合おうものなら、親が認めるはずがありません。ましてあなたとその女性に、個人的な接点がある訳でもない。となれば、あなたの人柄を相手の親に認めてもらい、裏切らないことを約束し、結婚を前提としてお付き合いするしか無いのです」
やっぱりか……やっぱり、そういうしきたりめいたものがあるのか。
「あなたがその人と、そういった軽い気持ちで付き合おうとしているのなら……正直言って無理です。諦めて下さい。ですがもし本気になれると言うのなら……そのプロポーズの方法を、ここにいる皆で一緒に考えましょう」
こんな軽い関係を望んでる奴を、ジルは推薦するための力を惜しまないって言うのか……。
もしリビットがその女性を裏切った瞬間、貴族としての重んじる家柄が傷つくことになるというのに。
全く……やり過ぎというか、無謀というか……。
「……分かった。それなら、よろしく頼む」
ただまあ、そうして不貞腐れたようなリビットの答えを聞いて、真剣な表情から一転満面の笑みに変わったジルを見ていると……彼を助けないとと思えてしまうから不思議だ。
大方、自分の説得が通じたのだと思えたのだろう。
被害者に片足を突っ込み始めているっていうのに。
リビットと言う男……絶対、相手とくっつくようなことになってはいけないな。




