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夕陽
「夕陽に足を止めることの方が多いじゃんね」
寄せては返す波を逃がすまいと踏みつけた彼女が呟いた。
「昔のドラマにさ、あの夕陽に向かって走るぞってあったでしょ」
知らない。と素っ気なく返事をしたけれど、彼女はまるで俺のことなど見えていないかのように続ける。
「でもさ、きれいなものを見たら立ち止まるものじゃない?」
何が言いたいのかなんて分かっている。
子どもの頃に「大人になったら一緒に死のう」と約束したことを後悔させないよう、最後の警告をしてくれているのだ。
けれどもう、後悔する覚悟はしてきたばかりだ。
俺は彼女の手を取って、ぎゅっと握った。
彼女は優しく握り返してくれた。
ざっ、と波がくるぶしをさらう。
夕陽を前に走り出すなんてことはできない。
俺たちはただ、歩くだけだ。
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