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情に掉させば
とかくに人の世は……
「たけちゃんて消しゴム貸してくれそうな性格してるよね」
中学生の頃に言われた言葉が頭を過った。そりゃ、貸すだろう。
「小林君」
課長が手招きをしていた。定時間際だった。
「明日のプレゼン資料作っといてくれない」
「今からですか?」
「悪いけどお願い」
「まあ、いいですけど」
「それじゃあよろしくね」
席に戻って背もたれに体を預けてふと、「これか」と腑に落ちた。
同時に、あの日の言葉には大事なものが抜け落ちていたことを思いだす。
「たけちゃんて”頼んでもないのに”消しゴム貸してくれそうな性格してるよね」
なるほど、どうりで生きづらいわけだ。
財布から小銭を取り出して席を立ち、自販機の缶コーヒーのボタンを押した。
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