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蝉の声
蝉は無理。ゴキブリはいける
蝉を素手で捕まえた彼女が自慢気に見せてきたので距離を取った。
「それ持ってこっちくんな」
彼女は蝉と俺を交互に見て、名残惜し気に蝉を宙に手放した。
小便をまき散らした蝉はすごい速度で木の葉の隙間に隠れて見えなくなる。
「手洗えよ」
「洗ったら繋いでいい?」
返事をせずに、蛇口をひねって濡れた生温い手を握り返した。
「あ、鳴いたね」
「うるさいだけだろ」
「そんなこと言っちゃかわいそうだよ」
「余生だろ。文句くらいいいじゃん」
「わたしには遺言に聞こえるの」
そう言われると、そう思えてくるから彼女は不思議だ。
それでも、遺言を垂れ流されるのはやっぱり迷惑だろう。
俺でこれなんだから、彼女はもっと。
「痛いよ」
「ごめん」
握る力を緩めて、肩を寄せた。
このまま、なんて遺言を残すのはきっと野暮だろう。
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