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お客様は王様です
突然の寒波に急ぎでコートを用立てねばならず、馴染みの店には「忙しい」と断られたので、いかにも客入りの少なそうな仕立て屋を訪れた。
店員は客が来たというのに挨拶もせず、葉巻をふかして新聞を読んでいる。
「急ぎでコートを仕立てて欲しい」
丁寧に伝えると舌打ちが返ってきた。
「おいあまりに失礼じゃないか」
新聞で隠れた顔を拝んでやろうとすると、店員が溜め息を吐いて新聞を折り畳んでこちらを睨む。葉巻からぼろっと灰が落ちた。
「めんどくせぇな」
「なんなんだその態度は。お客様は王様と思えと教わらなかったのか」
「ええもちろん習いましたとも」
「ではその態度はどういうわけだ」
「どうもこうもここは仕立て屋ですよ。裁断機は現役で動いてます」
カウンターの上でぎゅうっと潰された葉巻から煙が上がった。
「なるほど」
私はその店をあとにした。
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