表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋と推しは違うので〜冷たかったドS騎士に溺愛されていたなんて聞いてない〜(全年齢版)  作者: 秋月朔夕


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/19

17



 あれからキースは冷たくなってしまった。

 全てはわたしのせいだ。

 罪悪感から婚約を破棄するか尋ねた。



『婚約を破棄して終わりにするつもりですか? そんなこと絶対に許しません』


 そう言い切られて、二年経った今も関係が継続している。

 キースがわたしに触れてくることはなかった。

 唇を重ねたのもあの時だけ。二人であったとしてもチクチクと嫌味を言われるか、沈黙のまま別れる。

 けれど、その関係ももうすぐ終わる。


 ――ヒロインが召喚されたのだ。


 ゲーム通りの展開なら、わたしはもうすぐ婚約を破棄されるのだろう。

 現にヒロインが召喚されてから、キースはわたしの元を訪ねてこない。

 決まっていた結婚も延期になって、その日取りも未定のままだ。




(最近全然キース様と喋ってない)


 冷え切った関係ではあったけれど、前は定期的に会う時間を設けてくれていたのに、ヒロインが召喚されてからはそれさえもなくなってしまった。


 キースはどうしたいのだろう?


 以前、わたしのことを許さないから婚約を破棄しないと言っていたけれど、それも薄れてきているいのではないか?


 現に今夜のパーティーだって彼はヒロインのパートナーを務めている。


(わたしだって参加しているのに)


 拗ねた気分になる自分が嫌だ。

 ――分かっている。あれは仕事だ。

 聖女であるヒロインを守る専属の護衛として彼女の隣に立っているだけ。



(だけどキース様のあんな笑み久しぶりに見たなぁ)


 上辺だけではない本心からの微笑み。わたしにはもう向けられることがないものだ。

 さりげなくキースの方を見れば、バチリと目が合った。彼はわたしの存在を認めると途端に眉間に皺を寄せて、難しい表情をした。




(さっきまであんなに笑っていたのに……)


 ヒロインに向ける表情との差を実感してうつむきたくなる。

 それを堪えたのはわたしの意地だ。

 傷付いていないフリをしてにこりと微笑むと、キースは眉間の皺を深くして顔を背けた。


(そんな見るに堪えない顔をしていた?)


 いや、そもそもキースからすればわたしは嫌いな相手なので、顔自体合わせたくなかったのかもしれない。



(来なければ良かったかな?)


 元気のないわたしを気遣って兄がエスコートしてくれたパーティーだけれど、居心地の悪さから帰りたくなってくる。


(お兄様からすれば善意だったんだけど……)


 キースとわたしは仲の良い婚約者のフリをしてきた。

 だから最近婚約者に会っていないわたしを今夜キースもパーティーに参加すると聞いた兄が連れ出してくれたのだ。

 まさしく因果応報。身から出た錆。前世の言葉が脳裏に過る。

 溜息を吐きたくなるのを堪えて、飲み物を持ってきてくれた兄にお礼を言う。


「ありがとうございます」

「いいや、これくらいお安い御用さ」


 気障ったらしく片目を瞑った兄はさらりと人の少ない場所へ誘導した。

 しばらく兄と喋っていると、後ろから声を掛けられる。その相手は兄の友人リチャードだ。

 何度か話したことがある相手だから身構えることなく対応する。

 伯爵家の次男である彼は気さくな性格でわたしにも優しかった。

 二人の軽快な話題にクスクス笑っていると、誰かがわたしの腕を掴んだ。

 


「え、キース様……?」


 ヒロインはどうしたのだろう?

 驚いたせいで声が上擦ってしまった。恥ずかしさと動揺が混ざった気持ちで彼を見上げれば、兄達に声を掛けている。


「申し訳ありませんが、彼女をお借りしても?」


 そう尋ねながらも、ほとんど言い切りに近い。彼は兄がうなずいたのをみると形ばかり頭を下げ、そのままわたしを連れ出した。



「キース様、どこに行くんですか?」


 無言のまま連れていかれていることに反発を覚える。

 まるでわたしの意思なんか関係ないという力強さで腕を引っ張られるのは気分が良いものではなかった。


「……私には笑い掛けもしないんですね」


 庭園に出たキースは不満げにこちらを睨んだ。

 けれど笑い掛けないのはキースだって同じだ。

 ムッと唇を尖らせたくなる。



(子供っぽいからしないけれど)


 それでもモヤモヤとした不満は胸をくすぶる。



「急に連れ出されて笑っていられるわけないでしょう」


 ああ、どうしてこんなに可愛くないことを言ってしまうのか。

 久しぶりにキースと会えたのだからもっと愛想良く接すれば良いのに、彼のピリピリした態度がこちらにも伝染して身構える。



「カレンの婚約者は誰ですか?」

「キース様ですけど」


 今は、まだ……。

 破棄される未来を想像したせいで歯切れの悪い答えになる。


「なんであなたはそんなに……」


 掴まれた腕に力が入る。

 痛みで顔を歪めると、彼はハッとしたように手を離した。


「すみません。痛かったですか?」

「いえ、大丈夫です」


 すぐに離されたからもう痛みはない。

 それなのに珍しく彼の方が慌てていた。

 掴まれていた手首をそっと撫でられる。まるで大切だと言われているみたいに優しく触れられて、どんな反応をすれば良いのか分からなくなる。



「カレン」

「はい」

「……もうすぐあなたは私の妻になる」


 それはキースの気持ちが変わらなければ、だろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ