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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
三章

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81 タブレットの機能


 アレクサンダーとバリーも一緒に屋台で買った海鮮を楽しんでいると、ようやくジーノがこちらの世界に戻って来てくれた。


 おかえり。タブレットは堪能できたかな?

 バツの悪そうな顔をしているのがちょっと面白いね。気にしないで。こっちも部屋を海鮮臭で満たしてしまったので。


「興奮しすぎてすみません」

「いいよ。こっちも好き勝手に食べてごめん」

「ふふ、めちゃくちゃいい匂いですね。お腹が空いてきました」

「ジーノも食べよ。いっぱい買ったからさ」


 ジーノは照れ笑いしながらお礼を言うと、ダイニングテーブルの向かい側に座った。

 そのままテーブルに並ぶイカ焼きをつまむ。アレクサンダーが食べやすいように切り分けてくれたのだ。有能。


 ジーノは先ほどの興奮ぶりから一転して急にテンションが下がり、時々ぼんやりしている。はしゃぎすぎて疲れた? んなわけないか。


 引き続き私も貝を食べ始めた時、ジーノは意を決したように口を開いた。


「……これって、元の世界に戻ったらステータス画面とかもなくなるんですかね。元の世界での機能が使えないみたいに」

「うーん、どうだろう。その可能性は高そうだよね」


 考えたことがなかったな。でも、日本でステータス画面が見られたとしたら、執事召喚も使えるってことになるか、と言われると……無理だよね。


 普通に考えて日本でスキルが使えるわけがない。

 日本での機能、主に通信系だってこっちの世界では使えないわけだし、そういうものなんじゃないかな。


 返してもらったタブレットを操作する。

 この世界に来てからはステータス画面をチェックするくらいしか使ってなかったから、ずっと持っているというのに懐かしい、という奇妙な感情だ。


 だってさ、だって。

 元の世界を感じたら、ホームシックが酷くなりそうだなって思って。


 これを見て懐かしみ、心が落ち着くほどの年月はまだ経過していないのだ。


「あれ。カメラは使えるっぽい」


 ふとカメラのアイコンをタップすると、普通に起動して驚く。

 試しに一枚撮った写真には、驚いた顔のジーノとイカ焼きがしっかり映っていた。

 ごめん、急に撮って。嫌ならすぐに消すから。


「向こうで撮った写真も残ってる……タブレットで写真を撮ることなんてほとんどなかったから、気付かなかったな」


 写真はほぼスマホを使ってたしね。試し撮りした部屋の中の写真しか残ってないや。

 これで家族や友達を撮っていたら、と思う気持ちと、余計に寂しくなるからなくてよかったという気持ちがある。複雑な心境だ。


 ちょっと心が乱されたけど、大丈夫そう。

 でも前より少し、元の世界に帰りたい気持ちが強まってしまったかもしれない。


「……あの。これで僕の動画を撮ってもらえたりとか、出来ます?」


 心がモヤモヤし始めた時、ジーノが恐る恐ると言った様子で質問してきた。

 ジーノの動画を……? と少し不思議に思ったけど、すぐに彼が考えていることがわかった。


「……それを、向こうのご家族に? でも、今の姿は」

「そうなんですけど。前世の僕らにしかわからないこともあるんで。わかってもらえるかはわかりませんが……どうしても伝えたいんです」


 見知らぬ外国人が家族しか知り得ない情報を語り始めたらホラーじゃない?

 それを持っていく私もかなり不審人物になるのではなかろうか。


 ……なんて、現実的なことはその時に考えればいいか。出来るかどうかだってわかんないんだもん。


 ただ今は、ジーノの頼みを聞いてあげよう。

 望んだ結果になるとも、そもそも可能かどうかさえわからないってことくらい、ジーノにだってわかっているはずだ。


「わかった。いつでも貸してあげるから、何を撮るか決めたら声かけてよ」

「っ、ありがとう、ございます!」


 たったそれだけで前世からの憂いが晴れるというのなら、協力くらいするよ。


 さ、話がまとまったところで!


「よし、せっかくだから今みんなで写真撮ってみない?」

「えっ」


 いつか、元の世界に戻った時にこの世界でのことを懐かしめるように。

 それはそれで寂しかったり悲しかったりするかもしれないけど……撮っておけばよかった! って後悔したくないからね。


 何より、執事たちのイケメンぶりを撮っておかなくてどうする。

 この人たちを侍らせていたんだ、と老後に思い出してニヤニヤしたいんだ、私は。


 今はアレクサンダーとバリーしかいないけど、いつか執事をみんな呼び出して集合写真も撮ってみたいよね。


 ただ、イケメン執事たちの中に地味な私一人がいるのは、なんか、こう……ね。浮くよね。

 美形に囲まれるのは気持ち的に上がるけど、それを第三者視点で見たくはない。

 普段から美形を連れ回してる、という点については考えないものとする。


 アレクサンダーとバリーを呼んで後ろに立ってもらい、ジーノに隣に座るように促す。

 カメラのタイマーをセットして、インカメラにして、と。


 はい、ばしゃり。

 すごい、執事二人はなんとも言えない表情を浮かべているというのに顔が整っている。

 一方、私とジーノは笑顔なのにあまりにも一般人だ。いやそれが普通なんだけど。


 改めて執事たちとの集合写真、自分が入るかちょっと悩むな……。


「タブレットのこの機能については知っていましたが、実際に使っていただくのは初めてです」

「俺もだ。すごい便利な道具があるんですなぁ……」


 撮った写真をまじまじと観察しながら二人の執事がそんなことを言う。

 私とジーノは顔を見合わせて少し笑ってしまった。


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