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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
三章

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80/82

80 まだ認識が甘かったようだ


 内心で反省している私だったけど、ジーノに気にした素振りは一切なかった。

 それどころか、この空間に誰かを招待できたのが嬉しかったようで、どことなくルンルンしている。可愛いじゃないの……。


 アレクサンダーやバリーとともに室内に入ると、ジーノは閉めますねと声をかけてからドアを閉めた。これで外からはこのドアも見えなくなるという。

 おぉ、その機能は大事だね。不審なドアを誰かに見られて通報とかされたらたまったものではない。


 ただ、出入りの瞬間は絶対にドアが見えてしまうので、人の少ない場所を選ぶ必要はあるとのこと。ま、そこは仕方ないね。


「あっ、靴を脱ぐ感じ?」

「へへ、そうなんです。ご協力をお願いします」

「もちろんだよ! わー、久しぶりだー! 日本式~!」


 この世界に来てからは基本的に靴を履きっぱなしだからね! いいよね、靴下で室内を歩くこの感覚……。

 アレクサンダーとバリーは不思議そうな顔をしていたけど。故郷の文化だと伝えたらすぐに納得してくれた。


 室内は思っていた以上に広い。リビング、ダイニング、キッチン、それから個室がいくつか。ファミリー向けの戸建てのようだ。

 曰く、日本で済んでいた時の家に似てしまったのだそう。そっか。それがジーノにとっての寛げる空間だったのかもね。


 お茶の準備をし始めたジーノに対し、遠慮の声を上げようとした時、アレクサンダーが先に自分が用意すると言ってくれた。

 さすがは私の執事だ。以心伝心。よっ、有能執事! 目が合った途端、得意げな顔になるのも可愛いよ!


 それからダイニングテーブルでジーノと向かい合って座り、お茶を飲み始めたところで私は自分のスキルについて説明をしてあげた。


「執事召喚、ですか……なんか、ファビュラス」

「だよね」


 執事のイメージがわかりやすい言葉選びだ。実際は多種多様な性格なんだけどね。

 なお、ファビュラスなのはフェイビアンくらいだと思う。次点でまぁ、アレクサンダーかな。


 その後、執事は何人かいること、得意なものが違うこと、呼ぶには必要な魔力が違うことなどをざっくり説明している内に、ジーノの顔色がどんどん悪くなっていった。


 あれ、なんで? 体調でも崩した?


「聞いちゃまずかったかもしれない……」

「え、なんでさ」

「だって召喚士ですよ? しかも精霊召喚! 複数の! これは誰にも話せないですよ……」

「あー……やっぱりこの世界の常識だとそんなにヤバい?」

「ヤバいです。貴族にでもバレたら囲われますよ……」

「あー、すでに一人バレちゃってるんだよね」

「えっ」


 ミハイルさんっていうんだけどね。その辺りも簡単に情報共有しておく。

 執事召喚という規格外なスキルの他に貴族も出てきてジーノの顔色はさらにヤバくなってしまったけど、協力者だと聞いて少し落ち着いてくれたようだ。


 ……この反応を見ていると、自分がいかに楽観的だったかってことがわかるね。

 今もあんまり実感がないけど。生まれた時からこの世界にいて、常識が染みついていたら同じ反応をしたかもしれないね。


「なるほど……その人が良心的な方で良かったですね。本当に、本当に気を付けてください。貴族の大半は損得で動きますし、平民の人権なんてないと思ってますから」

「そんなに?」

「そんなにです! コトリさんは運が良いんですよ!!」


 そんなにかぁ……。

 こら、執事たち。視界の隅で首がもげる勢いで頷かないで! 私が非常識みたいじゃないか!

 まぁ、この世界の初心者なのは間違いないので否定はできない。


 そんな私の非常識具合は他の件でも思い知らされた。


「ス、ステータス画面!? なんですか、それ!?」

「え、あれ? この世界の人ってステータスを知らない……?」


 話の流れでタブレットを取り出したところで一度驚かれ、ステータス画面を見せたところでこの反応である。あれー?


「い、いえ、ステータスがあることは知ってますが、そう簡単に見られないというか、お金を払って年に一回見られればいい程度で……」


 そう、なんだ……? チラッとアレクサンダーとバリーに視線を向けると、スッと目を逸らされた。

 あー、はいはい。聞かれなかったから、ね。それでもすでに色々と説明を受けたはずなのに思わぬ見落としだ。今知れてよかったと思おう。


 ジーノはステータスについて驚いてはいたけれど、どうやらそれ以上にタブレットのほうに興味を示したようだった。


「うぅ、現代日本を感じるタブレット……あの、あの少し触ってもいいですか」

「い、いいけど……」

「画面のスクロール! 拡大、縮小! この目に悪そうな画面! 全部が懐かしいぃぃぃ!!」


 頬擦りしそうな勢いでタブレットを触っている。目の輝きが違う。久しぶりに見た前世の製品だもんね……。


 その後しばらく、ジーノはタブレットを手放してくれなかった。

 貸すのは別にいいんだけど、目が怖いな……。ちょっと心配になってきたぞ?


「……返してと言いにくい雰囲気」

「私が言いましょうか?」

「俺が力ずくで取り上げてもいいぞ」

「いや、それはちょっと。まぁ、気の済むまで触らせてあげよ」


 だってもし私がジーノの立場だったら、同じことをする気がするもん。


 ただその間ちょっと暇なので、さっき手に入れた海の幸でも食べながら待つとしようかな。

 ジーノの寛ぎ空間に海鮮の匂いが充満するかもしれないけど許しておくれ。


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