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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
三章

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79/82

79 どこからでもドア


 私はアレクサンダーとバリーに再び視線を戻す。

 二人は私の考えていることがわかったらしく、諦めたように頷いた。


「よし、とりあえずこっちに来てよ、ジーノ」

「はい」


 ジーノは緊張の面持ちで私たちに近付くと、意を決したように顔を上げた。


「あの、僕から言い出したことなので、僕のサムシングについて打ち明けようと思います」

「えっ、いいの?」

「はい。そこまで大した能力ではないんですけど……とはいえ、秘密にしてもらえたら助かります」

「もちろん、勝手に誰かに言うなんてことはしないよ」


 私が答えると、ジーノは少しホッとしたように肩の力を抜くと、自分の能力は見てもらったほうが早いと言い、おもむろに何もない空間にドアを出した。


 ……そう、どこにでもありそうな木製のドアが出てきたのだ。


「えーっと……ドア、だよね?」

「そうです。これを開けると……」


 ジーノがドアを開けるとそこには……ものすごく寛げそうなリビングが広がっていた。


「家じゃん!」

「はい。どこからでも自宅に繋がるドアです」

「それって……どこでもド」

「やめときましょ、それ以上言うのは」


 おっと危ない。

 ただ自宅といっても、ジーノが日本にいた時の家だったり、今の実家というわけではないらしい。

 こことは違う謎空間に繋がっているようで、居心地の良い空間を作ったこの場所をジーノが自宅と呼ぶようにしたのだそう。


 ふむ、ジーノが所有する異空間にある家って感じか。

 執事界の家バージョンみたいな感じかな?


「ここ以外には繋がりませんし、中にある家具や物は自分で調達してこなきゃいけませんが……能力に気付いた時から少しずつ蓄えてきたので、普通に住める程度には整ってますよ」

「めちゃくちゃいい! じゃあさ、もし危険が迫っててもここに逃げればいいってこと?」

「そうですね。ただ、家から外に出る時は僕がドアを出した場所にしか出られないので、外が水没したとか雪に埋もれたとかになったら詰みます」

「なるほど……でも、十分チートでは!?」


 いつでも家に帰れるって感じなわけでしょ? 最高すぎる。


「旅の間、わざわざ宿を取らなくて済むってことじゃん。すごい節約になる!」

「羨ましがるのはそこなんですね」


 大事でしょうよ!

 これから旅に出るわけだし、いつでも良い宿に泊まれるとも限らないじゃない。

 治安の面でも安心! まぁ、私には執事たちがいるので魔力さえ保てばその心配もないわけだけど。


「もし僕を連れて行ってくれるなら、宿には困りません。部屋はまだありますし、コトリさんも泊まれますよ。執事さんたちも」

「えっ、いいの!?」

「むしろ連れて行ってほしいって僕がお願いしたわけですし」


 自分の人差し指同士をつつきながらそういうジーノはちょっと可愛い。弟みたい。

 実の弟とも、エミルとも属性の違う弟だ。増えたな、弟。


「ねぇ、アレクサンダー、バリー。一緒に行ってもいいと思わない? 私と似た境遇だし、どうかな?」


 正直、私の中ではもはや一緒に旅に出ることは決定事項になりつつある。悪いヤツにも見えないしさぁ!


 ジッと二人を見上げていると、ついに折れたのか二人同時にため息を吐かれてしまった。


「どのみち決定権はコトリ様にあるしなぁ。俺らはそれについていくことしか出来ねぇですよ」

「そ、それはそうなんだけど」

「仕方ありませんねぇ。まぁ、何かあっても私たちで対処いたしますよ。警戒も我々がすればいいのです、バリー」

「まぁ、そうだな」

「私、そんなに警戒心なさそうに見える?」


 そういった面での信用がないな~。

 おかしいな。私、そこまで危なっかしいとか思われるようなタイプじゃないんだけど。

 それともあれか? 異世界基準だとまだまだなのかな。


 まいっか! 執事たちが警戒してくれるっていうのなら頼ってしまおう。

 適材適所! 使えるものは使う! 頼れる執事は頼るってね!


 私が一人開き直っていると、アレクサンダーがジーノに歩み寄っているところだった。


「ま、船旅も快適に過ごせそうですし、なかなかやるのではないですか」

「恐れ入りますっ!」

「そんな畏まらなくていいよ、ジーノ……」


 そしてアレクサンダーは上から目線なの、直したほうがいいと思うよ……。

 どうしてそこで上下関係ができあがってるのさ。流されるな、ジーノ。


「あと、僕が出来ることと言えば、魚を捌くのが得意ってくらいですけど……それはあんまり意味がないですよね」

「え、採用。最初にそれ聞いてたら即採用だったよ」

「そんなに!?」


 さすが、海の町で育っただけある。めちゃくちゃ頼もしいよジーノ。よし、海の幸の買い溜め増やそう。

 きっと私の考えが手に取るようにわかるのだろう、アレクサンダーとバリーの視線が生温いけど気にしない。


 やはり食。生きる喜びには誰も勝てないのよ。

 新鮮な魚ならお刺身もいけるのでは? 船旅の楽しみが出来ちゃったな~!


「よし! それじゃあ、ジーノも一緒に行くってことで! あ、私の能力についても話しておかないとだよね」

「あ、それならうちにどうぞ。ここなら誰にも聞かれませんから」

「便利~! おじゃましまーす」

「さすがコトリ様。一切の躊躇いがありませんね」

「コトリ様、いいのか、それで……」


 いいのです。私から押しかけたのではなく、ジーノから言い出してくれたんだもん。

 でも浮かれすぎて図々しくなりすぎないようには気を付けなきゃね。


 ……え、手遅れ? 手遅れじゃない、よね? たぶん。……気を付けよっと。


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