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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
二章

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67/71

67 優秀なのに惜しい


「それではロアンさん、今日もよろしくお願いします。私たちは依頼を受けてお昼過ぎに戻ってきますので」

「承知いたしました。お気をつけていってらっしゃいませ」


 ミハイルさんの別邸にグリンバルドを連れて行き、すでに古文書に釘付けな彼を置いて屋敷を後にする。

 ロアンさんに丁寧に見送られるのは相変わらずくすぐったいけど、今はそれよりも。


「バレてない、よね?」

「バレておりませんね」

「はぁ、緊張したぁ……」


 今回はこっそりホープも一緒に置いてきたのだ。

 人間から姿を見えなくすることも出来るというので、試しに見つからないでいられるのかを検証しようと思って。

 妖精というのは本来、人の目には滅多に見えない存在らしいんだけど、やっぱり実際にやってみないことにはわかんないじゃん?


「別に見つかったところで問題ないではないですか」

「そうなんだけど、気持ち的に緊張したんだよ。あと、出来れば妖精の存在は隠しておきたい」

「気持ちはわかります。またすごい食いついてきそうですもんね。あの変態貴族」


 お口が悪くてよ、アレクサンダー。

 まぁ、その通りなんだけど。


 精霊召喚している時点であの興奮ぶりだったし、今さら妖精が増えたところで変わらない気もするけど……また畏まられたり食い気味に息も荒く問い詰められるのは避けたいので……。

 ロアンさんだけならそこまでのことにはならないだろうけど、主人の耳には入るじゃん? そしたら次に会った時が怖いじゃん?


「それに、奥の手みたいなものは隠し持っておくものでしょ」

「その通りでございますね。全てを明かす必要はまったくないかと」


 アレクサンダーと一緒ににっこりと微笑み合う。理解のある執事で助かるわぁ。


 というわけで、この後は冒険者ギルドで簡単な採集依頼を受けてこようと思います!

 採集系はあんまり稼げないけど、何もしないよりは稼げる! 小さな額からコツコツとーっ!


 ◇


 こうして朝にグリンバルドとホープをミハイルさんの別邸に連れて行き、アレクサンダーと依頼をこなした後、午後にはみんなで帰って宿で一人魔力回復をする、という暮らしがしばらく続いた。


 午後はある程度回復した後に、他の執事を召喚したりもした。だってなんか静かすぎて落ち着かない身体になっちゃってぇ……。

 あとは余裕があれば、午後も他の依頼をこなしたりもした。だいぶ異世界生活にも慣れてきたなって実感する。


 執事たちにお世話されている分際で偉そうなことを?

 その通りです。優雅な生活送ってすみませーん。


 地味にお金も溜まってきた。食費がそもそもかかっていないのと、今は宿代すら支払ってないからね。

 なんか怖くなってくるよ、この贅沢な暮らし……。

 元の世界より至れり尽くせりだもん。異世界転移でそんなことある?


 細かいことを考えたら負けだ。

 そうそう、暇な時間にホープのこともタブレットにまとめておいたよ。


=====


フェアリー執事

名前:ホープ

外見年齢:5歳くらい

身長:7㎝

必要魔力:1

羽の生えた妖精。他の人から姿を見えなくすることも出来るらしい。まさに偵察にうってつけ。

生意気な性格だけど、甘いものさえ食べていればなんでも言うことを聞くので扱いやすいかもしれない。真面目なことや堅苦しいのは嫌いな様子。

呼べばすぐに戻ってくるけど、指示がない時はフラフラあちこちを飛び回ってどこにいるのかわからないのが少し困る。


=====


 ホープは必要魔力が1なので、割とずっと呼び出しっぱなしにしているんだよね。

 でも本当に自由で、気ままで、いつも姿が見えない。名前を呼べば出てくるんだけど、その度に海に行ってたとか、山の頂上に行ってたとか、どこそこのお宅に行ってみたとかヒヤヒヤするようなことばかりしててさぁ……。


「すっげぇ、でっかい魔物がいたぞ! くしゃみだけで吹き飛んじまいそうだったぜー! 牙とかこーんなでさぁ! 俺の背よりでっけぇの! 隣に並んで比べっこしたんだ!」

「頼むから危険なことはしないでよぉ!!」


 この調子ですよ。心配で仕方ない。妖精だから大丈夫なのはわかってるんだけど!


「ミハイルんとこにはさ、うまい菓子がいっぱいあったんだぜ?」

「……待って、勝手に食べたの?」

「まぁな! でもグリンバルドに用意したヤツらしいし、あいつは研究に夢中で食わねーし、別にいいだろ?」


 くっ、ダメと言いにくい! なので、用意したもの以外を盗み食いしてはいけないことと、存在がバレないようにとだけしっかり言い聞かせておいた。


 一応は私の言うことを聞いて、他の家でも悪事は働いていないみたいなんだけど……ちょっと家具の向きを変えたり、物の位置を変えたりだとかいう、しょーもないイタズラはしてるっぽいんだよね……。

 やってることが悪ガキなんだよなぁ。どうしたものか。


「妖精は息をするようにイタズラをしますからね。まぁ、この世界に住む人は少し変なことがあっても、文字通り『妖精のイタズラ』としてほとんど気にしませんから大丈夫かと」

「妖精を認識はしてないけど、イタズラされているのはわかるの?」

「信じているものとそうでないもの、半々といったところでしょうか。妖精のせいにして気にしないでおく、という捉え方をする人が多いです」

「なるほど……だからといってやりすぎはダメだからね? ホープ」

「わーってる、わーってるって!」


 そう言いながらホープは頭の上で手を組みながら横になる姿勢でふわふわ浮いていた。


 かと思ったら急にハッと上半身を起こす。


「どうしたの?」

「言い忘れてた! グリンバルドの古文書解析、明日には終わりそうだってさ!」

「聞いてないんだけど!?」

「今、言ったー」


 も、もぉーっ! 仕事はちゃんとしてよぉ、ホープ! と言いかけたけど、一応は報告してくれてる、な……?

 ぐ、ぐぬぬ! いたずらっ子執事の扱い、難しーっ!!


「っていうか! グリンバルドからも聞いてないんだけどぉ!?」

「聞かれてないことは答えないぞ、あいつ」


 た、確かにここ最近は私も進捗を聞いてなかった、かも……。


 いやいや、でも! なんのためにこうして毎日通ってたと思うのさ! 察してよぉ!


「聞かれてないから、教えない……ね」


 ガックリと肩を落としつつちらっとアレクサンダーに顔を向けると、同じタイミングでグリンッと顔を逸らされた。


 自覚あるんだね、アレクサンダー。

 そしてグリンバルド……お前もかっ!!


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