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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
二章

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63/64

63 召喚! またまたクセ強執事!


 まずは頭のいい例の執事を呼び出してみないことには話が進まない。

 ということで早速呼び出したいところなんだけど……。


「……あの。別室をお借り出来ませんか」

「えっ、見せていただけないんですか!?」

「あー、そのー……ちょっと、あんまり見られたくない、かな?」


 精霊召喚をすると知られた以上、別に隠す必要はないんだけど……あの可愛らしい魔法陣を見られるのが嫌だ。


 今のところ運良く、執事の身体のどこかに刻まれている魔法陣は見られていないしね。角度によってはアレクサンダーの首筋にあるのを見られそうでヒヤヒヤするけど。


 バレちまったら仕方ない、と割り切れるけど、バレてないなら隠したい。そんな複雑な乙女心だ。


 それに、新しい執事のどこに魔法陣が刻まれているかわからないからね……! チャズみたいに顔にあったら隠しようがないから諦めるしかないけど。


 そう考えると、ミハイルさんたちを助けた本人であるチャズがその姿をほとんど見られることがなくてよかったよ。

 戦闘能力の高さがこんなところでも役に立つとは。


「わかりました。残念ですが仕方ありません……隣室でも構いませんか?」

「あ、はい。それで大丈夫です」


 あからさまにしょんぼりするミハイルさんの反応になんとも言えない気持ちになりつつ、ありがたく隣室へ移動させてもらう。

 ドアを閉め、アレクサンダーに出入り口を見張ってもらいながら、いざ召喚!


 頭のいい執事、魔石の解析をしてくれた執事……頭の中でしっかり思い浮かべて、と。


「執事召喚!」


 いつものように可愛らしい魔法陣が現れ、室内に光が溢れ出す。

 少しすると魔法陣から人影が現れた。


 紫色という不思議な色合いの髪をした、どことなくヨレヨレな執事服を身に纏った長身の男性が現れる。

 背は高いけど細身で……いや、歯に衣着せぬ言い方をするならひょろがりだ。

 猫背な立ち姿といい、ちょっと……その。陰気なオーラを放っている。


「……お、お呼びですか。ご、ごしゅ、ご主人様」

「あ、えっと。来てくれてありがとう……?」


 発せられた声からして結構年配の方っぽい。五十代くらいかなぁ? 疲れたサラリーマンにも見えてきた……。

 というのもこの執事、前髪が長すぎて顔が見えないんだよ……! 年齢不詳!


 何もわからないのでひとまずタブレットで確認だ!


=====


【グリンバルド】

タイプ:インテリ

HP:1000

MP:3000

攻撃力:D

防御力:E

素早さ:E

賢さ :S

器用さ:A

運  :C


=====


 インテリ執事のグリンバルド、か。またアレクサンダーの時のような名前ギャップを感じるなぁ。

 賢さと器用さに特化したタイプね。わかりやすい。


 そんなことよりなにより、まず確認せねば!


「ちょっとごめんね!」

「ひぃっ、なっ、何をっ」


 怯えるグリンバルドに申し訳ない気持ちを抱きつつ、大切なことなので全身をチェックします。

 ふむ……見たところ目立つ場所に紋章はなさそうだけど。

 というか、本人は知ってるのかな? これまでだって本人に聞けばよかったのでは。やだ、私ったらポンコツ!


「ね、グリンバルド。執事たちはみんな私の魔法陣? 紋章みたいなのが身体のどこかにあるんだけど……貴方はどこにあるかわかる?」

「えっ、えっと、ですね……そ、その」


 グリンバルドはビクビクしながらも震えた指で右こめかみを指した。

 ……なるほど。目立つ位置ではある。しかし前髪が長く顔を隠しているせいでまったく見えないってことか。


 結果オーライ!!


「……見てもいい?」

「ひぅ、見、見ないで……で、でも、命令なら……」

「いや、命令ってわけじゃないけど。顔を見られるのが嫌なの?」

「ひぅん……」

「ひぅん、て。初めて聞いたよ、その悲鳴」


 まぁ、嫌ってことだよね。私だって無理強いする気はない。見たいけど。

 主人特権で怖がる執事の嫌がることをするなんて、ただのいじめだしね。見たいけど。


「紋章が隠れてるならオッケーだし、嫌なら見せなくていいよ」

「はふぅん」

「……グリンバルドはあれかな? 言葉を忘れがちな感じ?」


 これで頭脳派なんだよね? インテリ執事だもんね? 信じるよ?


 よし、本題に入ろう。その前にお礼も!


「魔石について調べてくれたんだよね? ありがとう。それで、今回呼び出したのは別件なんだけど……古文書って読める?」

「古文書っ!!」

「おわ、びっくりした」


 これまでおどおどしていたというのに、古文書という単語を聞いた瞬間、前のめりにズイッと寄ってくるグリンバルド。

 そこはかとなくミハイルさんに似た反応だ。オタク気質系の。


「よ、読めそうな感じ、だね……?」

「その古文書がどの時代に書かれたものなのかはわかりませぬが古文なら大抵履修済みですぞ。しかしながら古文書自体が現在では激レアモノでしてなかなか手に入らないっ! 手に入る物は全て読みつくし、もはや新しい古文書を読み解く楽しさを味わうことは叶わないと諦めていたのだがまさかこんな奇跡が起きるとは——」

「ま、待って待って、落ち着いて、小声の早口は聞き取れないっ!!」


 早口の小声で叫ぶって器用だな!?

 というかもはや独り言でこっちに聞かせるつもりはないのかもしれないけど。


 まぁいい。古文書が読めそうなことはわかったしね。

 しかしここで一つ、新たな問題が浮上したかもしれない。


 いまだ興奮気味のグリンバルドに顔を向け、言いにくいことを告げる。


「その古文書、公爵様が持ってるんだけど……」


 その一言だけでピタッと動きを止めるグリンバルド。

 わかるよ、気持ちはすごくわかる。でもたぶん気は合うと思うよ。


「こ、ここここ古文書だけ僕に渡し……」

「さすがに失礼になるし、貴重なものだから貸し出しはちょっと」

「ぐ、ぐぅぅ、ぬ、ぬぬぬ……」


 すごい葛藤するじゃん? しかもよく聞いてると「盗む」みたいな物騒な単語が聞こえてくる。これはまずい。

 私はちらっとアレクサンダーに目配せした。アレクサンダーはにこりと微笑むと、言わんとすることはわかったとばかりにむんずとグリンバルドの襟首を掴んだ。


「隣室に公爵様がいらっしゃいますから。行きますよ、グリンバルド」

「ひえぇぇえっ、お、おい、や、やめっ、やめないか、アレクサンダー……! あ、歩く、自分で歩っ」

「そう言って逃げ出す気でしょう。私に何度も同じ手は通用しませんよ。はい、行きましょうね」

「ああああぁぁぁぁ……」


 何度も逃げ出してるんだ……。慣れた様子で助かるよ、アレクサンダー。

 やっぱりあれだね。執事には執事をぶつけるのが一番だね!


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執事の手綱を握るのは主人の仕事だと忘れてはいまいか
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