59 すーぐ処そうとするー!!
みんなでわいわい食事会をした翌日。
アレクサンダーたちに用意してもらったテント内でぐっすり眠って起きた私は、朝からエミルの淹れてくれた紅茶でホッと一息ついていた。
全員を召喚し続けることは出来ないけど、エミルだけなら一日中いけるからね。
異変があったら起こしてもらって、何かあれば誰かを召喚することにして他のみんなを帰してから休んだのだ。
結局、朝まで起こされることはなかったから大丈夫だったのだろう。
「ありがとうね、エミル。うぅ、子どもに寝ずの番をやらせることになるなんて……」
「もう、まだ言ってるのですか? ボクだって執事なので平気ですよぅ!」
「それはわかってるんだけどさ、でも良心は痛むんだよぉ!」
私にもっと魔力があれば、せめて寝ずの番は別の執事に頼むのにっ!
ただ、次に消費魔力が少ないのはフェイビアンなので、それはそれで頼むのは心苦しい。
あんなに美しいんだもん。肌荒れでもしたらどうすんだ。
「本当にありがとうね、エミル。今は執事界でゆっくり休んでね」
「そんなお気遣いだっていらないのに……でも、コトリ様の優しさですもんね! ありがとうございます! またいつでも呼んでくださいね!」
帰る寸前までそんなことを言いながら笑顔を見せてくれるエミル、良い子すぎるっ!
さて、今日は朝から次の町に移動しなきゃいけないからそうのんびりもしていられないね。
テントを片付けて道のりを確認して……ああ、このカラフルな街並みも見納めか。
なんて浸っている場合でもない。昨晩は夜の街並みを特等席で堪能したし、もういいでしょう!
というわけで!
「執事召喚、アレクサンダー!」
久しぶりにアレクサンダーとの二人旅と参りましょう!
いつもの可愛らしい魔法陣からアレクサンダーが現れる。慣れた調子で挨拶するべく片手を上げたその瞬間、
「コトリ様。追跡機能がついていました。処しましょう」
「は? え? 何? なんの話?」
なんの前置きもなくアレクサンダーが話し始めたので目を白黒させてしまう。
ちょっとついていけてないんだけど?
それなのにアレクサンダーはさらに一歩、また一歩と私に近付きながら話しかけてくる。ぐいぐい来すぎでは。
「例の魔石ですよ! 調査を終えたのです!」
「な、なるほど……? えっ、追跡機能?」
「はい。ヒンギス家当主のミハイル様とやらがそうと知らずにコトリ様に贈ったとは考えにくいです確信犯です処しましょう」
「ま、待って待って、とりあえず待って」
真顔なのも怖い。魔石のことがわかってから呼び出されるのをずっと待っていたんだろうな……。
でもさ、落ち着こう? 正直、追跡機能だけなら予想はついてたからさ。
私は両手を突き出してアレクサンダーを止めると、一度仕切り直してから口を開いた。
「緊急信号的なものって聞いていたし、それなら居場所を特定する機能もあるのが普通じゃない? もしもの時に助けを出したものの、場所もわからないなんて助けようがないじゃん」
「ええ。ですから当然居場所はバレバレだろうなとは思っていました。問題なのは、あの魔石を発動させずとも居場所を常に特定出来る、ということです」
「あー、そういうこと……」
つまり、持っているだけで私の居場所はミハイルさんに筒抜けだったってことか。
ふむ、でも親が子に持たせるGPSみたいなものだと思えばおかしいとまでは思わないんだよね。
だって危険な時にその魔石を発動させられる余裕があるとも限らないわけだし、音信不通になった時に探すことを考えれば居場所の特定機能はあったっておかしくはない。
ただし。そういうのってお互いに承知の上で持つものだし、親子や恋人、とにかく親しい者同士が前提ではあると思う。
知り合ったばかりの不審な女に持たせる意味は、監視かなって思っちゃうよね。
その上、私はそういった機能があることについて説明されていない。騙し討ちと言える。
「断りもなく常に居場所を監視されるってのは、気分がよくないのはたしかだね」
「そうでしょう、そうでしょう、処しましょう」
「待ちなさい。それは待ちなさい、アレクサンダー」
すぐ処そうとする!!
私のために怒ってくれているのはありがたいけど、頼むから冷静に……。
いや、冷静に考えてミハイルさんのしたことはアウトではあるけど。どうしてそんなに執着するかなぁ。
私に女としての興味なんてないだろうから考えられるとすれば……。
執事たちが只者じゃないってバレている、だよね。きっと。
かといって馬鹿正直に彼らは精霊で、私は精霊の召喚が出来るんです、なんて言おうものなら今度はどう利用されるかわからない。
まぁ? 普通に真正面から言ってくれれば困った時に協力するのはやぶさかではないんだけどねー。
探りを入れたり、根回ししようとするから疑心が生じるわけで。
うん、やっぱりさっさとこの町から離れるのが最善だ。
余計なちょっかいは出さず、逃げるが勝ちってことで!
「その魔石も、執事界にあれば追跡されないんでしょ?」
「ええ。ですが追跡出来ないことで不審に思われているかもしれませんね」
「そこは……ほら。魔石が壊れたとかそういう言い訳で一つ」
「素直にそう思ってくれる相手ならいいのですがね」
「おっしゃる通りで」
あれ、ひょっとして逃げるほどに追いかけられたりするやつ?
なんかさ、やることなすこと裏目に出てしまっている気がする。
あの時、馬車を助けたりしなければ、途中まで同行しなければ、屋敷にわざわざ訪問しなければ……上げたらキリがないね!
そして今度は急いで逃げたりしなければ、か? 逃げるけどね!!
「考えたって仕方ない! 予定通りさっさとここを離れよ。そうだ、レベルが上がったんだった!」
「急に話題を変えてきましたね」
「いいから乗っておいて」
後悔する時間は短く! いつまでも落ち込んだって時間の無駄だもん。
それに、私のレベルはなかなか上がらないからね、これだって重大なニュースだよ!
昨日、執事を一斉に召喚したのがよかったのか、朝起きたらレベルが上がっていることに気付いたのだ。
最初の頃は体力がついたな、っていう実感があったからレベルが上がったことにも気付いたけど、最近はHPの増え方が落ち着いてきたからか少しくらい増えたところで気付かないんだよね……。
今後は定期的に自分のステータスを確認するようにしようっと。
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【コトリ・アサウミ】Lv7
HP:35
MP:110
攻撃力:F
防御力:F
素早さ:E
賢さ :C
器用さ:D
運 :A




