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スキル「執事召喚」でコトリは異世界を優雅に歩く  作者: 阿井りいあ
二章

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53/57

53 居心地の悪すぎる空間です


 執事さんに案内され、談話室のソファーに座る私とフェイビアン。


 き、緊張する……! でもフェイビアンに言われた通り、わずかに口角を上げた表情を保ち、背筋を伸ばしてソファーには浅めに座っている。つ、疲れる。


 ドキドキして待っていると、談話室にミハイルさんがやってきたので慌てて立ち上がった。

 思っていた以上に早く来たのでびっくり。こういうのってしばらく待たされると思ってたよ。急いで来てくれたのかな? 助かる。


「やぁ、よく来てくれたね、コトリ」

「お、お久しぶりです、ミハイルさ、様」


 緊張と不慣れにより挨拶も噛み噛みだ。あんなに練習したのに、実際使うとなるとこれである。

 あとでフェイビアンに怒られるかもしれない。怖い。


 しかし当のミハイルさんは気にした様子もなく、むしろ嬉しそうに微笑むと私に近付き誉め言葉を口にしてくれた。


「驚いたよ。やはり貴族のご令嬢だったんだね。あの場で言ってくれれば良かったのに」

「騙すような真似をして申し訳ありません……!」

「いや、いいんだ。警戒するのも当然だからね。ああ、旅装姿も可憐だったが、ドレスに身を包んだ君もとても美しい」

「お、お褒めに与り光栄です」


 ごほんごほん、とわざとらしい咳が響く。当然、フェイビアンだ。

 ミハイルさんはちらっとフェイビアンに目を向けたけど、すぐに視線を戻して私を見た。


 ね、ねぇ、どういう感情? 勝手に他の人を連れてきて怒ってます?

 フェイビアンもそうだけど、貴族って本当に怖い! 笑顔の下で何を考えているのか全くわからないよ!!


 でもミハイルさんはどこまでも親切で、私にソファーに座るよう促すと、メイドさんが運んできたケーキとお茶を勧めてくれた。


「さぁ、どうか気を楽にして。我が家のケーキは絶品だよ。ぜひ君に食べてもらいたい」

「あ、ありがとうございます」

「……フェイビアンさん、だったかな? 貴方もぜひ」

「お気遣いいたみいります」


 だからなんでフェイビアンが絡むと急に温度が下がるの? マジック?

 男女で態度が違うとか? それならまぁわからなくもないけど……露骨なのはフェイビアンが最初から不機嫌さを隠そうとしていないからに違いない。


 頼むよフェイビアン。普段の厳しい姿は隠して、表では良い顔しておいてよぉ……!

 居心地が、居心地が悪すぎる!


 全員がソファーに座ると、ようやくミハイルさんが口を開いた。


「改めて、私はヒンギス家の長男ミハイル・J・ヒンギスだ。貴方がたはリッシュ家とアサウミ家、でしたかな? 勉強不足で申し訳ない。耳にしたことのない家名だったもので、どこの出身かお伺いしても?」

「知らないのも無理はありません。僕たちは遠い島国出身ですからね」

「島国というと……」

「ああ、詮索はおやめください。いろいろと訳ありなのです」


 ここから先、私の仕事は穏やかに微笑みながら黙っていることである。

 話は全て自分がするからお前は黙ってろ、と言われているからね。そんな言い方はされてないけど。意訳だ。


「なるほどね。では、相当なご苦労をしたのではないかな?」

「お恥ずかしい限りですが。けれど、後悔はしておりませんよ。今、僕らは自由になれてとても幸せですから」


 フェイビアンがちらりとこちらに顔を向け、とろけそうな眼差しと優しすぎる微笑みを向けてきた。

 そう、まるで恋人にするかのような表情で……。


 演技だとわかっていても美形のこの顔は反則っ!!

 照れ臭いのと美しいものを拝ませてもらったので顔に熱が集まってしまう。

 くっ、写真を撮れないのが悔やまれる……! 飾っておきたい、この笑顔!


 と、私が顔を真っ赤にしつつギリギリのところで床をのたうち回るのを我慢している間も、ミハイルさんとの会話は続く。


「自由、ね。ご令嬢と幼い弟君のたった二人で旅をするほどの自由ですか」

「ええ。僕も気が気ではありませんでした。彼女は少々……お転婆なところがありまして」


 知らない間にお転婆令嬢になっている……。

 そりゃあ私はただの庶民なので、令嬢にしてはお転婆でしょうよ。

 ともかく、少しは返事をしたほうがいいよね。


「その件についてはもう謝ったでしょう……?」

「そうだったね。でも本当に心配したんだ。もう二度と僕に黙って旅立つのは止めてね」

「わ、わかりました」


 だから甘いマスクで甘い微笑みを浮かべながら話しかけないで、勝手に赤面しちゃう。

 ファンサが過ぎるとどうしたらいいのかわからないよ、私は! いっそのことうちわ振ってキャーキャー言いたいっ!


 落ち着けー、落ち着け私ー。


「それにしても、今のコトリはあの時とはずいぶん雰囲気が違うね。どちらも魅力的だけれど、はたしてどちらの姿が本当のコトリなのだろう。興味が尽きないよ」


 ギクッ。も、もちろんあの時の私が本当の私ですとも。今の私は仮面どころか令嬢の着ぐるみを着用しているようなものです。

 ま、あの時もかなり外向きの顔はしていたけどね。本当の私はもっと怠惰で適当で呑気な女だよ。


 それにしてもミハイルさんは息をするように誉め言葉を並べるなぁ。貴族、やっぱり怖い。慣れていなさすぎて精神疲労がやばいよ。


「失礼、ヒンギス公子。コトリさんは僕の婚約者ですので、呼び捨ては止めていただけませんか」

「これは失礼。ずっとそう呼んでいたものでね。それに、彼女のほうは気にしていないみたいだが?」

「へぇ……悪い人だ。コトリさん、僕が嫉妬深いのを知っているだろう?」

「ひぇ……」


 待って、こっちに振らないで。あとフェイビアン、嫉妬の演技がうますぎない?

 なんか、こう……ぞわぞわするっ!

 そしてミハイルさんとフェイビアンのニコニコ合戦が止まらない……!


 あーっ、もう! 早く帰りたいよーーーっ!


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― 新着の感想 ―
心の中で執事を数えるのだ… 執事が一人 執事が二人 執事が三人 執事が4人… いまごろ何してるのかなぁ ひつじがごにん…zzz
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