↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わらしべ聖女〜ただし、私の配役は藁(ワラ)のようです〜  作者: まめ まめみ
王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/33

布から馬③裏庭の庭師

「正面玄関の近くや応接室など、外部の方とお会いになる可能性の高い場所はお控え下さいませ。それと、執務室やお嬢様のお部屋なども——」


 侍女長は、入ってはいけない場所を次々と並べ始めた。待って待って、覚えきれないから。それに、お屋敷探検をするつもりはない。


「あの、大丈夫です」


 思わず手を上げる。

 

「部屋から見えていた庭を、一度歩いてみたかっただけですので」

「裏庭でございますか?」


 ノギの部屋から見えていた庭は、裏庭らしい。

 確かに、晴れている日には使用人たちが何枚ものシーツを干しているし、森に近い場所には小さな作業小屋も見える。


 そして、そこには時折ひとりの老人が出入りしていた。


「あちらでしたら問題ございません」


 侍女長は頷き、それから少し困ったような顔をした。


「ただ、この季節は冷えますので……」


 唐突に外に行ってみたいと口にしたノギだったが、侍女長は否とは言わなかった。


「一度お部屋にお戻りくださいませ」


 首をかしげつつ言われたとおりに待っていると、しばらくしてシンプルで動きやすそうなドレスと分厚いマント、それからブーツが届けられた。


「マントとブーツは侍女用の物ですので、本来はノギ様にお貸しするような品ではないのですが」

「いいです、いいです! ありがとうございます」


 嬉しくなって頭を下げる。

 ばふっとマントを羽織ると、ドレスはすっかり隠れてしまった。


 案内するという侍女長をどうにか断って、道順だけを教わると、さっそく裏口へ向かって歩き出した。


 作業小屋に出入りしているお爺さん。その周りには、遠目にも分かるくらい、いくつも妖精が集まっていた。


 公爵家というよく分からない環境に放り込まれ、誰とも関わるつもりがないノギだったが。


(あんなに妖精をくっつけている人、初めて見た。話してみたい——!)

 

 長い廊下を進み、裏庭へ続く扉をギイッと押し開けると。


「おっと」


 低い声が降ってきた。

 見上げると、そこには目的の人物がいた。

 もじゃもじゃの茶色い髪と、同じくらい立派な髭のお爺さん。鍬や鋏を握り続けてきたのだろう。扉を押さえるゴツゴツとした手には土が染み込んでいたけれど、不潔な印象はない。


(うわぁ。絵本に出てきた森の門番みたい)


「なんじゃ、こんな寒い日に。薪が足らなくなったか?」


 お爺さんは、薪を積んだソリを引っ張って来たところだった。薪にも髭にも、妖精がしがみついている。


『重たーい!』

『運べなーい!』

『あはは、ブランコ~』

(やっぱり妖精だったんだ)


 窓から見えた金色のキラキラは見間違いではなかったらしい。


「あの、その薪に——」

「もう少し待て。今いつもんトコに運ぶから」


 そう言いながら、よっこいしょと薪の束を抱え上げた。


「すまんが、そのまま扉をおさえててくれんか」

「あ、はい」


 そうして、扉を開けたり閉めたり、妖精に気を取られながら薪運びを手伝っていた。


「ふーっ、やれやれ」


 最後の束を運び終えると、お爺さんは大きく息を吐いた。

 

「ありがとよ。何か用事を邪魔しちまったかい」

「いえいえ、大丈夫です」

「そうかい。ところで、ワシはただの庭師だ。かしこまった言葉遣いはせんでええ」

「庭師様でしたか」

「ぶはっ!」


 庭師のお爺さんは腹を抱えた。

 

「なんじゃ、庭師様って!」


 皺だらけの顔をくしゃりと崩し、わははっ! と豪快な笑い声を響かせる。


『わははー!』

『わし様ー!』


 この屋敷で妖精を見かけるのは、いつも庭師のお爺さんの周りだけだった。林縁の庭でキラキラと光る様子を、静かな部屋の中から眺めていたのだ。

 久しぶりの妖精たちの賑やかさに、なんだか少しホッとする。


「こんにちは。初めまして」


 思わず妖精たちに向かって声をかけると、お爺さんが変な顔をした。


「お、おう……? 初めまして」


 戸惑ったまま返事をしてくる。

 

『初めまして!』

『あっ! この子、見えてるよ!』

『わぁっ。久しぶりに——』

「なんじゃ、丁寧にされるとなんだか照れるのう」


 お爺さんがぽりぽりと頭をかいた。

 周りでは、妖精たちが一斉に飛びまわり始めた。

 

(あ、あれ?)


 ノギは瞬きをした。

 お爺さんの顔の前で、金色の粉を散らしながら飛ぶ妖精たち。かなりまぶしいと思うんだけど……。


「むぅ。雪の中から急にお屋敷の中に入ったからか、目がチカチカするのぅ」

 

 庭師様はそう言って、目頭をギュッと押さえた。

 

 この人、もしかして……妖精が見えてない? こんなにいっぱい、くっついているのに?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。