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無垢な私を、裏アカ御曹司が溺愛して離さない  作者: Avelin


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7/8

独占のはじまり──君が欲しい

第7話では、璃音が初めて「独占欲」という感情に触れます。


電話の約束を胸に、飲み会に向かう彼女。


そこで待っていたのは──

少し酔った声、そして電話の向こうで揺れ始めるジュンの気持ち。


彼の“独占”と、璃音の恋愛初心者らしい不器用さ。


温度差が生み出すすれ違いが、

二人の距離をさらに揺さぶっていきます。


どうぞ最後までお楽しみください。



昨夜のあのメッセージが、まだ画面に残っている。


──「ジュンさん、あなたに会いたいです。」


勇気を出して送った一文。

でも、返事は最後まで届かなかった。



朝、目が覚めて真っ先にスマホを開く。


通知は……ない。


(……やっぱり、送るんじゃなかった)


胸の奥に、冷たい棘が突き刺さるようだった。


期待した自分を恥ずかしく思い、

後悔だけが大きく膨らんでいく。


「もう、メッセージ……来ないのかも」


そうつぶやいた瞬間、心の奥がギュッと締めつけられた。




通勤途中。


ふと顔を上げると、ビルの屋上に見慣れた文字が目に入った。


──「キューピッド・リンク」


あの時、大型ビジョンで見た社長の姿が重なる。


(……やっぱり、あの人の声と同じだった気がする)


でも、そんなはずない。


高嶺の花みたいな人が、私に優しい言葉をかけてくれるなんて……。


そう思えば思うほど、胸の奥がきゅっと締めつけられる。



コンビニで、レモンソーダを手に取った。


炭酸のパチパチ弾ける音に、なんだか心が引かれて。


職場の窓際に座り、ペットボトルの中で弾ける泡を見つめる。


太陽の光に照らされて、きらきらと眩しく光るその小さな粒。


ひと口飲むと、喉に爽やかな刺激が広がった。


(……うん。切り替えなきゃ)



そう思ってみても、胸の奥ではまだ、昨夜の余韻が消えない。


──声を思い出すたびに、また心が揺れてしまう。




オフィスには、

続々と社員が出社してきた。


その中で、

爽やかな笑顔を向けてきた一人の男性社員。


「おはよう、白石さん」


いつもより声が柔らかい気がした。


思わず小さく会釈を返すと、

彼は少し躊躇い(ためらい)がちに続けた。



「この前の飲み会なんだけど……

今週末、どうかな?」


不意にかけられた言葉に、

胸が小さく跳ねる。


(……私に?)


視線を合わせると、

どこか期待するようにじっと見つめてくる彼。


なぜか期待されているような気がして、

思わず視線を逸らした。


「……明日?ってことですか?」


戸惑いながらも確認すると、

彼は嬉しそうに頷いた。


「うん。よかったら一緒に」


迷ったけれど──


このモヤモヤを少しでも晴らせるかもしれない。


「……わかりました。行きます」


そう答えると、

彼の笑顔が一段と明るくなった。


(……そんなに、嬉しいことなのかな)



胸の奥で小さな疑問が膨らんだけれど、

恋愛に疎い璃音はそれ以上考えることなく、

心の中でそっとため息をついた。



その日の夜。


お風呂からあがって、テーブルに座り、

新作スイーツと、温かいシナモンティー。


「……返事なんて、もう来ないよね」


小さくつぶやいた。


胸の奥に、冷たいものが刺さるように広がっていく。


シナモンの香りは、確かに心を和ませてくれる。


でも、どこか満たされない。


虚しさが残ったままだった。




──スマホが震える。


思わず心臓が跳ねた。


画面には「ジュン」の文字。


「……え」


息を呑んで、通話ボタンを押す。



「こんばんは」


いつもと変わらない、低く優しい声。


それだけで胸の奥が熱くなる。


(……“あのメッセージ”には、触れてくれないんだ)


少し違和感を抱えながらも、耳が離せなかった。



「この前、海外で君に好きそうな陶器を見つけたんだ」


「陶器……?」


「リモージュ焼っていうんだけど、

透き通るような白に、すごく繊細な絵付けがあって……綺麗だった」


思わず顔がほころぶ。


璃音は昔から陶器が好きだったから。



「すごく素敵……。見てみたいです」


自然に笑い声がこぼれる。


ジュンもふっと笑った気配が伝わってきて、胸がぎゅっと高鳴った。


「明日も、電話してもいい?」


少し考えたあと。


「……明日、会社のみんなで飲み会があるんです」


何気なく口にした璃音。


その瞬間、通話の向こうの空気がぴたりと止まった気がした。



「……飲み会?」


低く落ち着いた声。けれど、その奥に微かな硬さを感じる。


「はい。あの……同じ部署の人に誘われて」


「……帰りは、遅くなる?」


「えっと……多分、そうなるかもしれません」


胸がちくりとした。


それは、叱られているみたいな緊張の痛み。



「……帰りが遅くてもいい。俺は……話したい」


言葉の温度が変わった。


強く、譲らない響き。


(……え? そんなに気にすることなのかな?)



璃音には、それが“独占”の始まりだと気づけなかった。



ただ頬を染めて、笑って答えてしまう。


「じゃあ……帰ってから、ですね」


──彼女の無邪気な一言が、ジュンの胸の奥をさらにざわめかせる。




飲み会の当日。


いつもより時間をかけて髪を整え、少しだけ華やかな服を選んだ。


(……帰ったら、ジュンさんと話せる)


その思いが背中を押してくれる。


自然と笑顔になれていた。



はじめての飲み会は想像以上に賑やかで楽しかった。


「璃音さん、今日は楽しそうだね」


「うん、なんかすごく雰囲気変わったよね」


普段は話しかけてもらうことのない同僚たちと笑い合い、グラスを重ねる。


気がつけば、少し飲みすぎていた。



帰り道。


フラついた足取りを支えるように、あの男性社員が隣に立っていた。


「白石さん、今日は俺が送りますよ。危ないから」


「えっ……でも」


「気にしないで。女の子一人で帰す方が心配だから」


まっすぐな笑顔に、断りきれなかった。


ふたり並んで歩く道は、夜風が少し冷たくて、酔いで熱い頬に心地よかった。



自宅の前。


カバンの中から鍵を取り出そうとした時──スマホが震えた。


(……ジュンさん!)


胸の奥が一気に熱くなる。


鍵は男性社員が代わりに開けてくれて、璃音は夢中で通話ボタンを押した。



「もしも……し♡」


酔いのせいで甘く震える声。


通話の向こうで、わずかな沈黙が流れた。



その隙間に──。


「もう、大丈夫ですよね?」


玄関の中まで入らず、彼は一礼して帰っていった。


「……ありがとうございました」


璃音の小さな声。


それが、通話の向こうのジュンの耳にも届いてしまった。



「…………男、だよね?」


低く冷たい声。


普段の優しさが影を潜め、張りつめた響きに変わっていた。


「え……あ、あの……違っ……」


慌てる璃音。

けれど、その拙さ(つたなさ)が余計に彼をざわつかせてしまう。


「……ごめん。今日はもう遅いから」


冷たく区切られた言葉に、胸がひやりと凍る。


(……どうして、そんな言い方……?)


恋愛初心者の彼女には、それが嫉妬や独占欲だなんて気づけなかった。



通話が途切れた直後。


スマホが震え、最後のメッセージが届く。



──「……僕も、君に会いたいと思ってる」


その一文に、璃音の息が止まった。


胸の鼓動が暴れ出し、体の奥まで熱くなる。


(……会いたい……? 本当に……?)


戸惑いと期待で、璃音の世界は大きく揺れ始めていた。



ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


第7話では、ジュンの独占欲と、

璃音の不器用な恋心の温度差を描きました。


少しずつ変わっていく彼女の心。


そして、知らず知らずのうちに強くなっていく彼の想い。


まだ恋に不器用な璃音が、どう成長していくのか。


ぜひ、この先も見届けていただけると嬉しいです。


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