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無垢な私を、裏アカ御曹司が溺愛して離さない  作者: Avelin


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5/8

初めて呼ばれた、私の名前

初めての電話。

初めて聞く声。


第5話では、璃音がついに「声」と向き合います。


待ち続けた日々の不安と、電話が鳴った瞬間の高鳴り。


そこで告げられた名前──「ジュン」。

声と名前が重なった時、彼女の心は大きく揺れ始めます。


どうぞ最後までお楽しみください。



──「近いうちに……話そうね。」


あの言葉を最後に、スマホは静まり返ったままだった。


ベッドの上で握りしめて眠った夜。


仕事中も、通勤電車の中でも──

ずっとポケットに入れて離さなかった。


それでも。


『プルル……』と鳴ることは一度もなかった。


メールすら、届かない。


(……やっぱり、私なんかに本気なわけないよね)


胸の奥でつぶやき、苦笑いを浮かべる。


落ち込むというより、夢を見ていたような感覚に近かった。



あの人が「本当にいたのか」さえ、

だんだん自信がなくなっていく。


だけど──。


歪んだ器を「素敵」と言ってくれた言葉だけは、

嘘じゃないと信じられた。


「……夢でも、いいか」



3日が過ぎた朝。


鏡の前で小さくつぶやき、会社に向かう。


通勤途中、ふと目に入った高層ビルの屋上。


そこに掲げられた看板には──「キューピッド・リンク」の文字。


大型ビジョンで見た、

あの堂々とした社長の姿が脳裏に重なる。


(……やっぱり、あの人が……?)


答えのない問いを胸にしまい、

私は会社の扉を押した。



昼休み。


いつもなら、一人でコンビニのおにぎりを食べるだけ。


だけど、その日は違った。


「白石さん、よかったら一緒に行かない?」


思わず顔を上げると、同僚が柔らかく笑っていた。


「最初はちょっと話しかけづらいなって思ってたんだけど……

なんか最近、雰囲気が変わったっていうか。

話してみたいなって思って」


少し照れたように言われて、

胸の奥がじんわり温かくなる。


(……私、変わってきてるのかな)



近くのカフェで交わす、何気ない会話。


笑顔でランチをしている自分が、なんだか不思議だった。


その時──スマホが震えた。



「連絡が遅くなってごめんね」


「携帯番号って聞いていい?」


「今夜、電話したいから」


画面を見つめたまま、思わずクスッと笑ってしまった。


(……そうだよね。番号、お互いに知らなかったんだ)


気づけば、心の奥で待っていた答えがやっと届いたような気がした。


向かいに座る同僚が、ちらりと私の顔を見てから微笑む。


「……彼氏?」


一瞬で顔が熱くなる。


否定も肯定もできなくて、ただ恥ずかしそうに笑うしかなかった。





その夜。


枕元のスマホが震えた。


『プルル、プルル……』


(……え?)


画面に映る番号は、見覚えがなかった。


しかも、その表示は──「海外」。


(ん? これって……海外? ……だよね)


胸が一気にざわつく。


震える指先で通話ボタンを押した。


「……こんばんは。初めまして、だね」


低くて落ち着いた声。


でも、不思議なくらい優しくて。


その瞬間、感情が一気に高ぶった。


「は、はい……」


緊張で声が震える。


沈黙を破るように、思わず名乗っていた。


「わ、私……白石しらいし 璃音りおんって言います」


「璃音……か。可愛い名前だね」


その一言で、胸がキュンとした。


耳まで熱くなって、声が出せなかった。


「俺は……ジュン」


短く名乗ったその声に、息が止まる。



「璃音って呼んでいい?」


「……はい」


「じゃあ、俺のこともジュンでいいよ」


「……ジュン、さん」


小さくつぶやくと、画面の向こうで微笑む気配が伝わってくるようだった。



ふと、気になっていたことを口にする。


「今って……遠いところにいるんですか?」


少し間があって、彼は答えた。



「うん。仕事で、海外に来てる」


(……やっぱり)



初めての電話。


初めて聞く声。



その夜、璃音ははっきりと気づいてしまった。


──この人の声……。



──大型ビジョンで聞いた、あの社長の声と同じだった。


(この人が……ジュン?)


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


第5話では、璃音が初めて「声」を聞きました。


その優しさと温かさに、胸が震える瞬間を描きました。


──そして、彼の名前は「ジュン」。

この一歩が、二人の関係を大きく変えていきます。


次回は、声がもたらす新しい距離感と、

璃音の中に芽生える“変化”を描いていきます。


引き続き見守っていただけると嬉しいです。


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