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無垢な私を、裏アカ御曹司が溺愛して離さない  作者: Avelin


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4/8

揺彩の声

お読みいただきありがとうございます。


今回の話では──

名前も顔も知らない相手とのやり取りから、主人公が初めて「声」を意識します。


優しすぎる言葉に戸惑いながらも、

その裏にある“本当の彼”を知りたい気持ちが少しずつ膨らんでいく。


やがて社長の声と、裏アカの言葉が重なって……。


彼女の心はさらに揺れていきます。


どうぞ最後までお楽しみください。


眠れなかった。



昨日の夜、交わした小さな約束が、

頭から離れなかったから。



──「もう少ししてからね……。

僕も、君の名前を教えてほしいから」



その言葉を思い出すたびに、

胸の奥がじんわり熱くなる。


名前も顔も知らない相手なのに。


それなのに、どうしてこんなにも心が揺れるの?



朝、鏡の前に立つ。

そこに映るのは、

相変わらず疲れ切った“つんだ女”の顔。


……だけど。


思わず、口紅に手が伸びていた。


髪も、いつもより丁寧に整えている自分がいる。


(何やってるの、私……)



わかってる。

これはただのDM。

名前すら知らない人とのやり取り。


きっと、ただの気の迷い。


でも──


昨日までとは違う“何か”が、

自分の中で静かに動き出していた。




朝、会社に着くと。


デスクに座る前、同僚がふいに声をかけてきた。


「今日なんか……雰囲気違うね」


一瞬、足が止まった。


(……え? 私が?)


思わず頬に触れる。

ほんの少しだけ、化粧を丁寧にしただけなのに。


「そ、そうかな……」


照れ隠しの笑みを浮かべながら、

心の奥では小さな灯がともったように温かかった。


でも、すぐに自分でその気持ちを打ち消す。


(……意味ないよ。

こんな私を見ても、何にもならない)


胸の奥に広がる虚しさ。

だけど、その言葉とは裏腹に──

昨日までとは違う自分を、確かに意識していた。




夜。


ベッドの上で、スマホの通知が光った。


──新着メール。


差出人は……裏アカの彼だった。



「今日も一日お疲れさま。

無理していないか、心配です」



画面を見つめたまま、胸がざわつく。


(はじめての……メール)


怪しいのに。


でも、あまりにも優しい言葉に、

気づけば返信してしまっていた。



「ありがとうございます。

大丈夫です。無理は……してないと思います」


数分後、すぐに返事が届いた。



「よかった。

僕はね、誰にも見せていない自分がいるんだ」


指が止まった。


その言葉に、なぜか胸がきゅっと締めつけられる。



「仮面って便利だけど……

外して飾らない自分になりたい時があるんだ」



「君のあの素敵な器のように……ね」


息をのんだ。



高校の社会見学で作った、歪んだ陶器。


誰も褒めてくれなかったあの器を、

あの人は“素敵”だと言った。


(……どうしてそんなふうに言えるの?)


胸の奥で、何かがじんわりと熱を帯びていく。


優しいだけじゃない。

彼の言葉は、まっすぐすぎて苦しいくらいに響いた。


(……この人、本当に何者なの?)



ふと、広告で見た社長の姿が頭に浮かんだ。


完璧すぎる笑顔も、仮面のように思えて──


心臓が……ぎゅっとした。


胸の奥が小さく痛むようで、でも不思議と温かい。


(どうして……こんなに胸が苦しいの?)


誰なのか知らない。

なのに、この気持ちを止められない自分がいた。



──きっと今日も、眠れない夜になりそう……そんな気がした。


その余韻を抱いたまま、静かに瞼を閉じた。




翌日。


人混みをすり抜けながら歩いていると、街頭ビジョンがふいに視界に飛び込んできた。


そこに映っていたのは──「キューピッド・リンク」の若き社長。


黒いスーツを纏い、光を浴びながら堂々と話す姿は、広告で見るよりもずっと現実味を帯びていた。



低くて落ち着いた声が、スピーカーを通して響く。

その響きだけで、思わず胸の奥が熱くなる。


素敵な声……。


穏やかで包み込むような声、

耳に届くだけで胸の奥がじんわり温かくなる。


──もし、この声で優しい言葉を囁かれたら……。


そう思った瞬間、スピーカーから流れた言葉に息が止まった。



──「人を繋げるのは、条件ではなく“心の声”です」


胸がぎゅっと締めつけられた。


耳に届いたその言葉は、昨日の裏アカとのやり取りと……まるで同じ。


(……えっ? なんで……?)


驚きで息が止まる。


けれど同時に、心の奥で確信めいた声が響いた。


(この人って……やっぱり……?)


声と文字が重なった瞬間、心臓が大きく跳ねた。



街頭ビジョンの中の彼の声が、耳の奥に残って離れない。



低くて落ち着いた声。

もし、あの優しい文章をこの声で聞けたなら──。



裏アカの人が……この社長だったら。


(……聞きたい。あの裏アカの人の声が……)


小さな心の呟きが、胸の奥からふっと零れ落ちていた。



心が大きく揺れて、優しい風に包まれるような温もりが広がった。



もっと知りたい。


声を聞きたい……。



本当のことを知ってしまったら、私はどうなるのだろう?


(……好きになってしまうかもしれない)



自分でも気づかないうちに、

その予感が、胸いっぱいに広がっていく。



“あの彼”への気持ちが少しずつ変わり始めていることに、

恋愛経験の少ない私は、まだ気づいていなかった。





夜。


部屋の明かりを落とし、布団の中でスマホを見つめていた。


──通知。


画面に浮かんだ文字に、胸が震えた。


「君が笑えるように、僕は誰よりも願っています」


思わず、息をのむ。

まるで“特別扱い”されているみたいで、胸がじんわり熱を帯びた。


(……私だけに? 本当に?)


怖いのに。

でも、どうしようもなく嬉しい。


震える指が、勝手に動いていた。


──「……あなたの、声が聞きたい」


送信ボタンを押した瞬間、心臓が飛び出しそうになる。



数秒後、返事が届いた。


「僕も君の声を聞きたい……」


画面を見つめたまま、息が詰まった。


その一文だけで、胸の奥が溶けてしまいそう。


(……これ以上、好きになったら……)


恋の温度が、一気に上がっていく。



布団の中で、頬が熱くなっていく。


怖い。けれど、それ以上に嬉しい。


(……声が、聞けるかもしれない)



その想像だけで、胸がドキドキと暴れ出す。


スマホがもう一度震えた。



──「近いうちに……話そうね。」


息が止まった。


心臓がギュッと掴まれる。


次の瞬間、甘い予感にのみ込まれていく。


(……本当に、声が聞けるの?)



夜の静寂の中で、鼓動の音だけがやけに大きく響いていた。



──やっぱり、今日も眠れない夜になるんだろうな。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


第4話では、主人公が初めて「声」を求めてしまいました。


たった一言で、恋の温度が一気に上がる瞬間を描きました。


──「近いうちに……話そうね。」

その言葉が、彼女にとって大きなきっかけに変わっていきます。


次回からは、声をきっかけに二人の距離がどう変わっていくのか。


そして、主人公の中でどんな成長が芽生えていくのか。


どうぞ引き続き見守っていただけると嬉しいです。


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