第274話 既に気分は・・
『間もなくサンディエゴ湾を抜けます。現在速度30ノット。』
ムサシのインフォメーションが流れた。
「よし、それじゃ、我が母港、伊豆鳥島へ向けて、武蔵、最大戦速。さらにオプション最大。約9000キロ、さくっと帰港しよう。」
「了解、1番核融合炉、最大出力運転。艦底電磁バリアを艦首部分に展開、武蔵最大戦速、電磁推進装置を前方方向へ最大出力。船首サイドスラスターを下後方へ向けて全開。目標、伊豆鳥島。」
シオリの指示で武蔵が一気に加速を始める。
「武蔵、速度は?」
『現在72ノットで航行中です。』
「よし、出航完了だな。 本来なら最大戦速プラスオプション最大なんで、コンディションイエローで警戒なんだけど、今回は太平洋のど真ん中を進んでるんで、レーダー最大で警戒することで、当面このまま進もう。」
「了解。ムサシ、速度、目標そのまま。」
シオリが復唱した。
「よし、そういうことなんで、皆で夕飯にしないか?」
「そうだねー。良い時間だしねー。」
「ミユキも行きます。」
「はい、行きましょう。」
4人で食堂に入る。
「はい、皆さんお揃いですね。出航お疲れ様でした。私達的に今回の作戦が終わったことと、日本帰国へ向けて出航したお祝いで、夕食は手巻き寿司パーティーにしましたよ。」
厨房からジュンさんが出てきた。
「うっわー。手巻き寿司パーティー、久しぶりー。」
「もう既に気分は日本ですね。」
ミズキとミユキがハイタッチしてる。
「それじゃ準備しましょうか。 持ってきてちょうだい。」
ジュンさんが言うと配膳ロボが沢山の大皿を載せたカートを押して入ってきた。
「それじゃ、今日の具材たちを発表しますね。 最初のお皿はマグロ、サーモン、ボイルエビ、甘えび、イカ。 で、次のお皿はいくら、ネギトロ、焼きアナゴ、カニむき身、ツナマヨですね。 こっちの皿は卵焼き、きゅうり、納豆。 次の皿はカリフォルニア皿として、アボカド、クリームチーズ、エビフライ、オーロラソース、これでカリフォルニアロール風が楽しんでね。 こっちはいつものカイワレ大根、大葉、みょうが、ゴマ、ワサビ、醤油、ガリですね。 こっちのテーブルには潮汁、エビ塩焼き、ホタテバター、わかめの酢の物を置いときますね。 最後はデザートコーナー、アイスクリームは抹茶とバニラ、白玉あんみつ、ミニたい焼き、さ、召し上がれ。」
「うっわー、すっごーい。パーティーみたいだー。」
「いや、だから手巻き寿司バーティーですよ? ミズキ先輩。」
「いや、そのパーティーじゃなくて、もっとパーティーって意味だよー。」
「なぁ、ミズキ、なんとなく言いたいことはわかるけど、わかんないよ・・。」
「うーん、わたしも自分で言っててわかんないもーん。そう、すごーいってことだよー。始めようよー。」
「だな。よし、みんな、お疲れ様! 頂きます!」
「いっただきまーす。」
「頂きます。」
「いただきます。」
「わたしはカリフォルニア巻き風作るよー。 マグロ、サーモン、キュウリにアボカド入れてー。そこに、クリームチーズとー、オーロラソースだー。」
「ミユキはシンプルにネギトロにカイワレ大根で行きますよ。」
「私はマグロ納豆巻きにします。」
うん、見事な位に3人3様だな。
で、オレは、手巻きずしの前にエビ塩焼きと潮汁から行ってみよう。
こういう時は薄味のものを先に楽しむ。これが鉄則よ。
エビ塩焼きをガブっと一口。
絶妙な塩加減、プリップリの身。最高だな。
あぁ、最高過ぎて、ビールが飲みたい・・。
しまった。これなら最初から手巻き寿司で飯モードにしとけば良かった・・
「あら? ユーさん、なんかしんみりした顔になってますけど、どうかしましたか? なにか問題あったら言ってくださいね?」
ジュンさんが顔を覗き込んできた。
「あ、いや・・。 問題ないです、大丈夫です。」
「あまり大丈夫って風には見えないですよ?」
「・・あの・・このエビ塩焼き、美味すぎて、ビールが欲しくなったんです・・。」
「まぁ、フフフフフ。そういうことでしたか。 そうですね、これ実は、食事メニューよりもつまみ風寄せてるんです。 香り優先で少し焦がしてあって、レモンを強めに効かせてるんですよ。」
「だからか・・あまりにもビールにピッタリ過ぎたんで、頭の中が飲みモードになっちゃんだ。 先にしっかり手巻き寿司食べて食事モードにすれば良かったって、反省してたんですよ。」
「フフフフ。その気持ち、わかりますよ。 でも、ほら、あと3日で帰港ですよね? そうしたら上陸休暇あるんじゃないですか? もうすぐ、しっかり飲めますよ。」
「えー? やっぱり上陸休暇あるのー?」
ミズキが反応した。
「まぁ、帰港の理由はまだわからないけど、少なくとも武蔵の点検整備はするだろうから、その間だけでも上陸休暇があると思うけどな。」
「やったー。ミユキー、上陸したらラウワン行こうよー。わたしボーリングしたーい。」
「ミユキはカラオケもダーツもしますよ?」
「よーし、一日バッチリ遊ぶぞー。」




