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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
東の国とのつきあい方
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3

連れられた城下には活気が溢れて……いなかった。

いやそらそうだろう。

街をぐるりと囲む塀の門をくぐった先も、乾いた風が吹いてはほこりっぽい空気が漂っていた。

石造りの建造物はやはり地震への耐久性は無さそうだ。この世界地震こないの?大陸的に安全なの?異国情緒溢れる街並みに、そわっとしちゃうわ。

しかして、そんな私の気持ちもよそに、道行く人はどこか仄暗い表情で、希望いっぱい夢いっぱいとはとても言えない。


やっぱり西のほうがマシだったように思える。水の在処が地下に多く含まれた土地はちと困りものだ。

地表が乾けば地下水も、水位は当然下がる。となれば、水をくみ上げる魔道具も魔力を余分に消費するので悪循環なのだそうだ。

このままでは主要の都市以外で水を得ることができなくなる日も近い、とのこと。それは由々しい話だな。

やはり雨が降らない事にはどうしようもない。

龍の加護とやらは融通が利かないのが難点だ。

つつがなく行き渡っていれば良いのだろうが、問題が発生するとてんで弱い。脆弱性に対して何かしらの対策が必要だろう。リスクに対して備えが足らん。


案内された騎士の詰め所で、ぼんやりと外を眺めながら晴れ渡る空に感じる何とも言えない心地。

街の至る所にあった水路らしき溝。あれが水で満たされていればこの街もしかして滅茶苦茶綺麗なのでは?観光名所になれるのでは?

普通に人が歩いて横切るただの乾いた石畳の道みたいになってたけど。木箱積んで階段作られてたけど。

と言うことは、街の水路が枯渇したのはもっと前からなのだろう。

地表の水が絶えて久しい。そのことが嫌でも理解できた。


「うーん、過酷」

「わかりみ」

「ほんと結構ギリギリすぎねぇ?この調子なら北も南もヤバい?」

「かもしれんねぇ……」

少し待ってろと言われて二人待機中なのだが、見張りの一人もいやしないのは一体何事か。

流石に放置プレイはどうかと思うよ。ロルクェストからの充魔師だなんて嘘くそかもしれないじゃないの。逃げたり問題起こしたらどうするつもりなのだろうか。

「つってもやっぱマンパワー足りねぇからどうしようもねぇんだけど……」

「そこよ。やることが明確になったところで、物理的にも手段的にもできることは限られてるわけじゃないの。こう、祭壇の森直結でぽーんと飛べるシステムとかないの?あるべきじゃない?ファンタジーが足りない」

「ファンタジー足りないの解る。便利魔法スキルもっとあるべき。力尽くで問題全部薙ぎ倒して解決するのに憧れる」

「んなこと言って常識捨てられないくせに」

「そんな常識人な俺がかわいいくせに」

「うるせぇわ。その通りだわ」

そして私も結局この年になるまで培った常識を捨てられないので人の事は言えない。


こう、不思議異世界パワーがあったとして、それを無駄なく使いこなすのはハードルが高いだろう。

いやしかし、それはそれとしてもうちょっとイージーモードにして頂きたい。

割と根性は付いてきた、と言うより諦観を持って受け入れた結果、動揺が減ったのだが……それにしても精神的にハードモードなのは変わらないのだ。

油断したならワンキル待ったなしの世界に慣れ始めていると言う事実が辛いのだ。

やってらんねぇな、と溜息ひとつ吐き出したならば簡素な扉がノックされる音。

「はいってます」

「トイレかよ」

反射で返事をしたなら即座にツッコミが入った。

そうな、間違えたわ。ここはどうぞとかはいとか言うべきシーンだったわ。

やや躊躇ったのだろうか、少しだけ間が空いて開かれた扉の向こうに居たのは知らん顔。

若い。眉を下げて困ったような顔に笑みを浮かべる青年。いや、これ少年?もう解らんな。多分殿下とそう変わらん年頃では無いだろうか。

「普通に寛いでない?お二人さん。何でそんなリラックスしてんのさ……」

困ったような笑みではなく、呆れた笑みだったようだ。

「いやぁ、別にギスギスされた覚えもねぇし……緊張する理由がねぇ。となると、後は寛ぐしかできなくねぇ?この部屋なんも無ぇし」

机と椅子。どちらも簡素なものがあるだけの部屋。

これ取調室的な位置付けの部屋かもしれんな。考えてみれば。窓に格子も嵌ってるしな。

「呑気だなぁ……ま、いいや。ちょっとお呼び掛かってるんで、一緒に来てよ」

「へーい」

「はーい」

「いやホント呑気過ぎない?」


連れられた廊下は薄暗い。窓が少ない廊下を黙って連れられ、出た先ではレランドさんが何やら誰かと揉めていた。

「あんれ?隊長部屋で待ってる予定だったのに何やってんだろ」

あ、お呼びなのレランドさんですかそうですか。

まぁ他に誰が呼ぶんだって話でもあるので予想の範囲内ではあるが。


耳を欹てていれば、余所者が魔道具に充魔することに対しての不満を申し立てているようだった。

「……充魔ってそんな大層なお仕事なの?」

「え?いや、そりゃ充魔師が入れるようなシロモノ、普通は無理じゃん?」

「でも持ち前の魔力入れるだけだよね?たまたま自分に魔力多いだけで、特別なことでは無いと思うんだけど」

「ええ……西ってそんな感じなん?充魔師になれる程の魔力っつったら、龍の寵愛持ちってのがこっちの感覚なんだけど……」

龍の寵愛……うわ。いらねぇわ。

思わず顰め面になっちゃうレベルで不要だわ。

「それが寵愛だとしたら、俺ちょっと遠慮するわ」

海も普通に顰め面である。

今心はひとつに。

頷いたなら、呆れたような溜息ひとつこぼされて、

「不信心にも程がない……?西ってそれ許されるの?」

「いや、多分俺等だけじゃねぇかな。こんな感じなの。めっちゃ信仰厚めの層が多いと思うぜ」

「それな。一緒にすると西の人たちに迷惑かけるレベル」

「自覚ありかよ……ええ、ヤバいのと関わっちゃったなぁ……」

失礼な言われようだ。

こちとらその龍のおかげでえらい目に遭ってるんだ。どう信仰しろと言うのか。

奴の無茶振りに対応して業務を成さんとしているだけ褒めて欲しいくらいだ。

「別に迷惑かけねぇって。魔力の多さが寵愛だってーんなら、俺等それなりだしそんな嫌そうな顔すんなよ。傷ついちゃうだろ」

「その面で傷ついたって言われてもなぁ」

「地顔はどうしょーもねぇだろ。目付き悪いの気にしてんだからやめろよ。普通に傷付くから」

「気にしてたんだ……なんかごめん」

なんとも気の抜けたやりとりをしているが、地顔は貶しちゃいかんよ。とてもセンシティブな問題なんだぞ。


しかしそうか。龍の寵愛が故に充魔師なのだと聞いたなら、そりゃまぁこの世界の人からすれば誇らしいことなのかもしれない。で、その仕事を余所者に任せるのは勘弁ならんと……なるのか。そうか。

「……でも実際人手足りてないんだし、使えるモンは余所者でも使えばいいのにね?狭量だよねぇ、あのおにいさん。もしかしたらおっちゃんかも知れんけど」

ギャンギャンと、レランドさんに噛み付いている充魔師は見た目だけなら割と若い男性だ。頭髪もふさふさ、肌艶もよし。

そう言えば、東も西と背の高さはそれ程変わらなかった。大体見上げる羽目になる。この世界の基準身長バグってない?いや、私達がバグか。そうよな。

小さくボヤいたつもりの言葉が先方の耳には伝わってしまったらしく、ぐりんとこちらにその顔を向けてきた。

怒り心頭なのか、赤くなったその顔面が頭に血が昇ってますよと語りかけてくる。脳血管大丈夫だろうか。

「そもそも国に対する忠義はどうした!どこぞの使者だと言うのなら仕事をしろ!」

「うっわ、ごもっとも」

「言うて、仕事する為の手段として魔力分けるって話した後だしよ。そこ責められるの?俺等」

「責められてるのは忠義的なあたりなのかもよ?言うて、殿下なら笑ってオッケーする領域よな」

「そーな。殿下だしな」

深く考えずに、お二人のなさりたいようにとか言いそう。皆幸せなら自分も幸せだよねとか考えてそう。

「そもそも魔力なんざ、使ったところで寝たら大体回復するしよ。出し惜しみするもんでもねぇじゃん?」

それな。と頷けば、ぴたりと充魔師が動きを止めて、

「は?」

ぱかり口を開けて一言漏らした。

「え?」

「んん?」

ちょっと待て。その反応は予想外だ。

え?回復しないの?マジで?聞いてませんが。

「……ちょい待って。今の無しで。ひとマス戻るコマンドで頼む」

やらかした、と顔面に書いた海がパタパタと手を振りながらそう告げる。

が、残念。

吐いた言葉は帰ってこないのだ。


だがしかし、ならば普通魔力はどうやって回復させると言うのか。そこが問題だ。

「待って。いやマジで。おたくら寝たら魔力回復すんの?どんな身体してんの?」

案内役の騎士さんが、妙な生き物を見る目で私達を見ながら比較的静かに問うてくる。

「逆に聞くけど、じゃあそれ以外どうやって回復してんの?」

「いや、時間経過でちょっとずつ回復しかなくね?」

「……やっぱ寝るのと一緒じゃね?時間経過だろ?寝たら割と時間経つし、起きてる時より回復率良くね?」

少し渋い顔で海が答えたなら、軽く首を振って見せられた。

「いや、寝てる時に回復率良いとか聞いた時ねぇんだけど」

「うっそだろ。じゃあガッツリ魔力使った後のあの疲労感どうしてんの?何日か寝込むの?」

「時々寝込んでるよな、充魔師の人」

それはお気の毒な話だな?

「……ちなみにちょっとずつって、一時間に何割くらいとかあんの?」

「何割とかは人によるんじゃね?」

「じゃあ俺等、回復異常に速いってことで話が纏まる感じか?」

「それだ。ちなみに充魔師さんは、例えば一晩寝たらどの程度回復する感じなの?」

「……全体の3割程度だ」

「3割……」

多いのか少ないのかが解らん。そもそも全体がどの程度なのか解らん。

しかしそう考えると、3割を超える魔力の消費は回復までに時間が掛かるので、有事の際には使うが基本温存魔力になるのだろうか。

使えない7割の魔力を遊ばせることになる、と?そりゃ充魔追いつかないのも頷ける話だ。

人数が居れば交代制で休みも取れるのだろうが、現状各街に派遣されていれば3割使い切る日々を送っている事だろう。もしかしたなら多少多めに消費しているのかもしれない。

いやぁ、お疲れ様です。マジで。

魔力の自転車操業感が半端ない。

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