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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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54

書簡、と聞くと色々想像するわけだが。

北には使者を出してついでに運搬してくれるつもりだったらしいが、一度森に帰る旨伝えると、ではそれも魔道具でとなった。


そう、魔道具。お前本当に何でもできるな?

とは言え、成功率はあまり高くないらしく、同じ書簡を何通も出すそうだ。

途中でしくじった書簡は霧散して消えるので宛先以外に漏れる心配がないのが利点らしいが……届いたかどうか解らんの困らん?


何か、一対の魔道具で……言葉を梱包するそうだ。

その時点で意味わからん。書簡じゃないだろそれ。音声メッセージ的なやつやん。

で、梱包した言葉を魔道具で運ぶらしいのだが、この運ぶ役割を担うのが鳥型の魔力の塊だった。

目の前に、こんな感じのブツ、とサンプルが持ってこられたわけだが……。

ローテーブルを挟んで殿下に説明を受けている。

「一対ってことは、これもう片割れは誰が持ってんの?」

首を傾げて殿下に問いかけたら、にこにこした殿下がうむ、と頷き

「陛下だ!」

「いや何でだ」

即座に海がツッコミを入れる。

「陛下もお二人と会話したいと仰っているのだが、現状それが叶わぬだろう?そこで、少しなれどお二人と関われるならと此度の実験にお付き合い下さる運びとなった」

そもそも目の前に居る私が持っていてもあまり意味はないだろう?と言われてまぁそれもそうだが、とも思う。

が、だ。いきなり国のトップに一体何を送り付けろというのかこのオウジサマは。

相変わらず無茶ぶりの激しい天然殿下だ。


魔道具は板状の物で、それほど大きなものではない。大体文庫本サイズの板に、輪っか状の何かが埋まっている。

殿下がぽこっとその埋まった輪っかを取り外し、ぽんと寄越されたのでまじまじ観察すれば成る程内側に文様が刻まれていた。

「これに、少々魔力を流しながら言葉を封じるのだ」

「ちなみにこれ噛んだら噛んだとこも封じられちゃうの?リトライはできるの?」

「間違えたら一度魔力を止めて、霧散するまで放置すれば消えるぞ」

「霧散……」

「だが霧散するのに少々時間が掛かるので、間違えないよう先に言うべきことを書き出している事が多いな、私の場合」

あ、そこはちゃんとしてるんだ。

「書いたものは必要ならば保管しておくし、不要ならば燃やせば良いからな」

成る程な。送信ボックスにメッセージを残すような気持ちで先に書き出すのか。受信ボックスはないのか?残したい場合もあると思うんだが。

「受け取ったメッセージは一度聞いたら消えちゃうの?」

「否、転写できるぞ。必要だと思ったならこちらを使う」

そう言って、今度は魔道具を裏向けたならそこにはルーペ状の何かが埋まっていた。

それを取り外し、一枚の紙をぺらりとローテーブルに置いてその真ん中にセットした。

「届いた言葉を再生した後、このようにしてからこれに魔力を流せば内容が転写される。長文であれば紙の大きさによってはとてつもなく小さな字で転写されることになるので注意が必要だ」

あ、転写する先のサイズ感に自動で調整されるのか。すげぇな魔道具。滅茶苦茶有能ではないの。


ほわぁ、と口を開けて説明を聞きながら眺めていれば、再びルーペを元の形にセットし直した殿下が輪っかに向かって魔力を流して見せる。

ほんのりとしたその魔力を纏いながら、

「こちらは準備完了です」

と、一言込めたら魔力を収める。輪っかが淡く発光している状態になり、それを板に戻したならふわん、と板から魔力が立ち昇り形を成した。

「おお……鳥だ」

小鳥である。

何かちょっと透け感ある愛らしい小鳥が現れたならひよひよと窓をスルーして外に出て行った。

「……物理無視か、すげぇな」

「それな。最強では」

羽ばたいていく小鳥を見送ったなら、殿下が微笑んで魔道具をローテーブルに置いた。

「言葉を封じる折に込める魔力の量次第で、鳥の形状が異なるのも面白いぞ」

「するってーと?」

「遠くに飛ばしたいのであれば、多くの魔力を込めたほうが良い。強く速く羽ばたける大型の鳥が産まれるからだ」

「へぇ。最初の魔力次第で到着率が変わるってことか……成る程なぁ」

「東へ書簡を出すのであれば、私の場合は充魔師の魔力に乗せて言葉を封じる事が多いな。私の魔力では中々クィンスタッドまで飛ばせぬ故」

成る程。込める魔力と封じる言葉の主は別でもいい、という事か。

……え、ではもしうちの母さんが魔力込めたら凄いことになるのでは?うっわ。やってみたいなそれ。


そんな感じに使い方を学んでいたなら、今度は先程と違う鳥が窓から入り込んできて、魔道具の上にちょんと着地した。

そうかと思えばその嘴を開き、

『こちらも準備完了しておる』

と、この城に来た初日に聞いた陛下の声がかわいらしい小鳥から発されて思わず少しのけぞった。

しっぶい声が、かわいらしい小鳥から出てくるの結構……裏切られた気分。

「……この鳥にこの声とか俺今ちょっと傷ついた」

しょぼん、と海が肩を落としている。

「解る……かわいい声でしゃべってほしい……」

「これ送り手選ぶ仕様だな……こう、渋い声なら猛禽類とかの強そうな鳥から出て欲しい」

「それな」

「魔力込めたら強そうな鳥が出るんだったら、こう……ちょっと多めに入れたら俺の声で再生されても違和感ねぇのかな」

「かもしれない。私の声でもこの小鳥だと、ちとがっかり感でるしな」

言葉を吐きだした小鳥はしゅるんと魔道具に吸い込まれるようにして消えて行った。これで後ろのルーペに記憶されたのだろうか。

くすくすと笑いながら殿下が輪っかを外して海に差し出している。

「気にしたことがなかったな、そのようなことは。あちらも問題はないそうなので、一度使ってみて欲しい」

これが使えたら、連絡が取れるようになる。

確かに有用なので、海に目線を送ってやってみ、と促した。


「……うまくいくかねぇ……どんくらいまでの魔力に耐えるのか未知数なのも怖ぇよな」

「ほどほどにしとくと良いよ。あんま入れて破損したら大変だから」

「ぱーんって弾けたら泣けるよな」

そんなことを言いつつ、魔力を操作してじわりと発光しながら輪に向かって、

「お世話になってます。海です。様々な面で騒がせてしまってすみません。今暫くご面倒お掛けしますが何卒よろしくお願いします」

と。

そうな。ここ最近龍関係で騒がせているので国のトップに謝罪できる機会だと思えば宛先が陛下で良かったのかもしれない。

魔力を収めたなら、殿下が込めた時よりも遥かに発光している輪に不安を覚える。これ大丈夫なん?

「……めっちゃ光ってるんだけど」

「どんだけ魔力込めたの……」

「いや、結界出す時……か、もうちょい割り増し……?」

マジか。それでこんな感じか。参考にしよう。

戸惑いながら板に輪をセットしたなら、ぶわぁっと魔力が立ち昇って思わず立ちあがって一歩下がる。

「殿下……これ大丈夫なやつ?」

「……お、おそらく……?」

そうして形作った鳥は、まるでコンドルのような雄々しさである。小鳥ではない。やばい。

陛下逃げて……!

ぶわっさと翼を広げたその全長は3mは余裕で越えている。発光したコンドルみたいな鳥が壁も窓も突き抜けてドンっと吹っ飛ぶように消えて行った。


「……う、うわぁ……」

やっておいて、海がドン引きしている。

私もドン引きだ。

殿下も流石にひきつった顔で飛んでった方向を見ていた。

……まさか結界張る程度の魔力であんな大型の鳥出ると思わんよね。

しかも小鳥が来ると思ってる陛下側からすればあんな巨大な鳥が弾丸のように突っ込んでくるわけだよね……?

「……ごめん……マジごめん。ホントごめん……」

そっと顔面を覆って海がごめんごめんと呻いている。後悔の度合いが凄い。

そしてお返事がなかなか届かない……。向こうの混乱が伝わってくるかのようだ。

「……陛下大丈夫かな」

「攻撃性はないので……大丈夫、な筈だが……」

「攻撃性なくてもアレがぶっ飛んで来たら怖くない……?」

「……正直、怖い」

だよねぇ。

自分よりもでかい鳥が弾丸みたいに物理無視して突っ込んでくるわけだもんな。


なんとも言えない空気感の中で、はらはらしながらお返事を待っていれば先程とはまた違う小鳥がスイと室内に入り込んできて魔道具にとまり、

『ディベルです。現場は少々混乱しておりますので、お待ち頂けますようお願い申し上げます』

と。

その返信を聞いた海が頭を抱えてごめんまじごめんとかブツブツ言ってるのを眺めながら、そりゃもう混乱しただろうなと乾いた笑いがこみ上げた。

使えないことはないけれど、込める魔力ちゃんと考えないとよろしくないなこれ。

「……えらいことになったけど、もしかしてさっきの鳥ならクィンスタッドまで一発で辿り着けたり……?」

「するだろうな……だが、事前の心構えなくあの鳥が飛んできたならどこであっても混乱が生じるのではないだろうか……?」

「……もう少し控え目なサイズ感が望ましいかぁ……難しいね」

鷲とか鳶とか、鷹とかもかっこいいよね……隼とかも目指してみたい。

猛禽類基本的に好きなんだよねぇ……かっこいいよね。梟とかもいいよね……そういうの出せないかな。どれくらいの魔力でそこらへん狙えるのかな。

逆にがっつり魔力込めたらなんかこう、神話の鳥みたいなの出てきたりするのだろうか。

鳳凰とかそういう……それもかっこいいな。いや、受け取り側は引くだろうけど。

「真面目な話、俺今から謝りに行った方がいいよな……」

ちょっと顔色白くして、血の気が引いた海が殿下にそっと問いかけたなら、ふる、と首を左右に振られてしまう。

「いや、もともと実験をすると言っていたのだ。これくらいの不測の事態は織り込み済み、の筈」

「でも現場混乱してるって……」

「大丈夫!の、筈」

殿下……さっきから言い切れない辺りに不安感が凄いんだが。

しかして一応使えることは解ったので、適切なサイズ感の検証をした上で殿下とのやり取りに使う方向性で纏まればいいのだろう。多分。


「そう言えば、これ到着した時点で近くに持ち主がいない場合とかどうなるの?」

「言葉を再生せずに待機することになるな」

「成る程。勝手に垂れ流して消えちゃうわけじゃないのか……あとは、この魔道具そのものが収納にしまわれてた場合とか着地地点見失ったりするの?」

「その場合は収納の魔道具を持つ者の周りを延々と飛んでいることになるな」

それは鬱陶しいな普通に。

「相手に届いたかどうかの確認はどうやってやってんの?」

「返事が来るか来ないか、だな。距離によるが、クィンスタッドなら半月も音沙汰がなければ届いていないものとして再度飛ばす事もある」

あ、その辺はアナログなのな……。

ちゃんと届いてるかどうかの確認ができないのは少々不便ではある、と。

となると、届いたならばとりあえず早々に届いた旨だけでも飛ばしておいた方が良いのだろう。それからお返事を考える、と。

中々上手に使わないと難儀しそうなシロモノだことだ。

とは言え、離れていても連絡手段があるというのは実際便利なのでうまく使えるようになれればと思う。

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