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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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さて、無事に地図まで頂いて二人で出かけた城下街。

昼下がりの城下は城での騒ぎなぞそっちのけで、ほのぼのわいわい平和なものだ。

今日も天気は生憎の雨。

ぱらぱらと小粒の雨が落ちてきては体温を奪おうとしてくるので、森で使う事のなかったレインコートを森装備の上から着込んでこそこそと二人で歩く。

森では雨天時テントに引きこもっていたからなぁ……結局。足場悪いとか何かあった時に命に係わるのだから、そりゃ休暇に当てるわ。


結局殿下が物凄い嫌そうに承諾してくれた後、色々と大司教様にもお話を伺う事ができたが、天秤についてはこれまた解らなかった。

神殿のお偉いさんでも解らない天秤とは真面目に何なのか。

もうね、正体不明のキーワードとか勘弁してくれないかな。

イエクサに聞けばわかるだろうか。

……アクセス権がありませんとか言われそうだよねぇ。


出掛ける前にどっさりとおやつの類を渡されたので、飴玉を口の中で転がしながら人の流れの少ない通りを歩いていれば時折第二の騎士さんが巡回していた。通常業務だろう。お仕事お疲れ様です。


人の営みの中をこうして、透明人間みたいになって移動するのは中々新鮮だ。

誰もかれもが、私達をいないものとしている。

――この隠密も、使いようによっては相当悪質だよねぇ。

ただ身を守る為に使ってはいるが、これ本当に凶悪なスキルだよなと。こうなってみるとしみじみ思う。

月のない夜でなくてもヤレるわ。これ。あかんやつ。

まぁこれだけ存在感を消せるので、神殿騎士さん達の帰還に合わせてついて行こうかとかも考えたのだが一応、鱗のせいとは言え騒ぎを起こしたので、色々な取り調べや事後処理等があって彼等は今日は帰還できないそうだ。

なんかごめん。

様々な人を不幸にしてる気がするのだが……いや、悪気は無いしなんならこちらも不幸にされてる気はするが。

良くないことが起こる要因となっているのが申し訳ない。


はぁ、と。溜息を吐き出せば白い息が蒸気となって浮かんで霧散する。

……これって他人から見えるのだろうか、とか。どうでも良い事を考える。

身体から離れたものは視認可能と言うのなら、呼吸すら気を配る必要があるか。

首元のスヌードを鼻先まで上げてぬくぬくしながら呼気を外に漏らさないようにした。

しかし、隠密中は会話が出来ないのがつまらんな。


森の中ではそんな余裕も無かったから、退屈などと言っていられなかったが。

街中を黙って二人で歩くのは、なんともつまらない。

夕方くらいには神殿に到着する事だろうが、そう言えば神殿付近に人に見つからず野宿できるような場所、あるのだろうか。

結界を張っても見える人には見えてしまうのであれば、芋蔓式に見つかるだろうから、誰にも見つからないように夜を明かす事のできる場所を探さなければ。

夜中に騒ぎが起こりでもしたら申し訳ないので、朝になってから忍び込む予定であるのだが。

最悪木の上にでも登って夜を明かす事になるかもしれないな。

また寝不足かぁ……嫌だな。

しかしそこらへんは諦めるしか無いのだろう。

周りが敵しか居ない環境ならば結界だけで話が済むが、そうでは無いと言うのも中々面倒なんだな、と理解した。

贅沢な悩みだと、思う。味方としてカウントされる人々から、いかにして隠れるか……などと。


水溜りを避けながら歩く石畳、そうしてどんどん街の外れまで歩いて、時々休憩して、を繰り返して居れば辺りが薄暗くなる頃に本部らしき場所までたどり着いたわけだが。

らしき、と言うのはまだ建物が見える段階では無いからだ。

驚くほどでかい鉄柵の門と、その向こうに長々と続く幅広い階段。

階段の左右は木々が植わって、上の方は死角になっていた。

思わず口を開けて見上げてしまう。

一体何段あるのか、この階段。

司教様とか大司教さまとかあのおじいちゃん達、これ上ったり下ったりすんの?マジで?健脚すぎん?

あとこの鉄柵の門、解錠せねばならんのだが、私達破壊しか出来ないんですが。

うーむ、これは困った。

どこからか侵入できないものか。

朝になったら解錠されたりするのかな。どうなのかな。


どうする?と、海に目配せをしたら肩をすくめて軽く左右に首を振って見せられた。

どうしょーもない、と言うことだろう。

まぁワンチャン朝に解錠されることを願って今日はどっか野営場所を探すかー。


かなり人の営みから外れた地区にこの神殿はあるので、ここから少し外れれば墓地だの何だの、あまり夜は人が寄り付かない場所がある。

いやぁ、流石に墓地で一晩明かすつもりはないが。

ホラー展開とかあったら余裕で泣く自信あるしな。

とは言え、人の少ない場所を求めてそちらの方面に足を向けることとする。

この辺りはそもそも人通りが少ないが、尚の事静まり返る空気感にそわそわとする。

人の営みの傍にあるというのに、こんなにも静寂に満ちている場所があるのだな……と。


いや、まぁ夕暮れ時に墓地に向かう人間なぞそうはいないのだろうけど。普通帰るよね。そうだよね解るー。

墓荒らしとかの犯罪者とかくらいしかいないよねぇ……。この世界墓荒らしとかいるのだろうか。いるとしたらご遺体と共に何かしら思い出の品とか埋めちゃうんだろうか。

ご遺体は火葬済だろうか。違ったらあれだよな……確かご遺体から出るリンが空気中で燃えて人魂になるとかなんとか聞いた事があるからもしかしてリアル人魂拝めたりするのだろうか。

いや、別に見たくないけど。

そもそも墓地の中まで入り込むような無礼をする気はないけど。

大体雨で空気がしけっていれば燃えるものも燃えないわな。そうだよな。


しかし朝になっても開門されていなかった場合、一体どうすればいいだろうか。

今日は城で取り調べ的な事をされている神殿騎士さん達のご帰還に合わせて侵入するしかないのだろうか。

又は出勤してくる人に紛れて入り込む……?

うむ、それしかないな。

流石に破壊行為をするのは頂けない。

一応真っ当な人間として、倫理道徳は守りたいのだ。不法侵入しようとしているくせ何言ってやがるとは言うなかれ。

一応ほら、ご招待は受けているのだからそこは許されるべきでは?

ちょっと正規の方法でご訪問するわけにはいかなくなっただけでだな。

そもそもそれだって謎のモザイク龍のせいであって私達の罪ではないと言い張りたい。あいつマジなんなのか。

マップを見れば神殿辺りには赤点がやはりそれなりの数存在している。

……あとついでに街中にある赤点もなんだか一か所に固まっている気がするのだが、これは何故なのだろうか。

解らんなぁ。


考えても仕方のない事ばかりではあるのだが、結局出たとこ勝負の臨機応変な現場の判断で行くしかないのがストレスでしかない。色々準備したいのよこちとら。備えあればと言うではないの。備えさせろ。いやマジで。

墓地付近まで来れば見通しの良い丘に、白い墓石が整然と並んでいるのが見える。

そこまで行く気はないが、中々広い土地だった。これ最早墓園では。遥か先まで伸びる白い石が、雨に打たれてなんとも言えないムードを醸し出している。

いやいや、墓地ってほら。弔われた人達が眠る場所だからね。決して怖い事なんてないんだよ。安らかにお眠りになっているからね。うん。


そっと目を逸らして、周囲に目を配れば朽ちた小屋のようなものが幾つかそこらへんに建っている。

どなたかご在宅でしょうか、とマップを見ても空っぽ。

小屋の影にでも結界張ってテント張ろうぜと思って海を見たなら、きゅっと眉根が寄って嫌そうな顔をしていた。

……お前ホラー駄目だったっけ?割と淡々とホラーゲーするタイプじゃなかったっけ?

リアルは駄目なの?そう……。しらねぇよ。我慢しろや。


そんなわけで、本日の野宿場所が決まった。

しとしとと降る雨のせいでどうにも芯が冷えていけない。カップラーメンであったまろうではないか。

味噌にしよう。そうしよう。

一晩寝れば魔力も回復するだろうし、明日は万全な状態でカチコミを掛けに行きたい。

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