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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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6

さて、無事に身体能力向上のスキルを取得した我々だが、ステルスとシャドウウォークに関しても母の無慈悲なる「えい」でインストールを完了した。


何なのあの人。

鋼のメンタルしてるの?

何が、「これは注意文がないから大丈夫よねー」だよ。

大丈夫じゃないよ何なんだよやっぱり何かしらのリスクはあるんじゃないか。

私は解ってきたぞ。ノーリスクで手に入るものなんてほぼないんだ。そういう仕様なんだ。

ステルスを取得する時は片頭痛を薬飲まずに極限まで放置したくらいの頭痛に見舞われたよ。まぁね、体捌きとかの知識とかね、必要だもんね。脳に直接焼き付けるんだからそりゃ痛いよねぇ。

理解できるけど納得は全くできないんだわ。


そしてシャドウウォークな、体の使い方は頭痛と共に。だが、しかし。それ以上に恐らく筋肉の使い方の癖を叩き込む為だろうな。こむら返りが起こったわ。

ふくらはぎさんがビキッと痛みを唐突に訴えてやっぱりもんどりうったわ。

「まだふくらはぎ痛い……」

もう泣きたい。


しかし、身体能力向上に比べていずれもインストール時間は短かった。

二つ合わせて5分程度だ。

そして苦痛に関してもアレに比べればまぁ短時間なら耐えられないこともない。

が、そんなことを口にしたならば、海が額を抑えて溜息を吐く。

「お前……それは、かなり毒されてきてんぞ」

……そうね。よくよく考えると私もそう思う。

大体片頭痛なんて居ても立ってもいられないし、なんなら眠ることすらできないから早朝に頭痛で目が覚めることだってあるんだぞ。薬飲まないと人間としての活動すらできないレベルで頭カチ割れそうなのに辛くないわけないだろ。

それにこむら返りだって、夜中何かの拍子に起こったら眠気もすべて吹っ飛んで痛みで覚醒するし収まるまで冷や汗流しながらひとりで苦しむ羽目になるんだ。

そして起きてしまったならトイレに行きたくなる地獄のコンボだ。でも痛みの余韻が残るからトイレまでの道のりが結構辛いというオマケまでついてくる。鬼畜の所業か。寝る前に水分取れよ、よいこのみんな。


さて、とりあえずこれで散策の下準備は整ってきた。

あとは散策用に装備を整える必要があるだろう。

が、言っておく。


私は今日、もう、どこにも出掛けたくない。


心身ともに疲弊している。何なら気力が湧き次第シャワーなり風呂なり入ってこのべとつく身体を洗い流してしまいたい。


「ところで、今日はもう明日以降の予定会議デーという事で、出掛けない方針でよろしいか」

まぁでももしかしたら出掛けたい元気な奴もいるかもしれない、と思って提案してみると

「さんせー」

と、まるで抵抗なく受け入れられた。そりゃそうだよね。全員もうびっちゃびちゃだもんね。

あとおなかすいたよね。朝ごはんすらまだ食べてないもんね。

怒涛の勢いで午前中がほぼ終わって行く……ろくな一日じゃないなこれ。


まぁそんなこんなで結局スキル画面をだらだら見ながら色々と今後の展望を考えていくにしても、だ。

攻撃系や防御系も考える必要があるだろう。いや、攻撃なんてのもまぁ牽制程度にだけれど。何の攻撃性もないのはちょっと、流石に不安が残る。

防御系に至っては、この広大なマップを見る限りきっとどこかのタイミングで野宿なんかも考慮に入れる必要があるから、結界的なものが欲しい。


そうなると、魔法スキルの取得が急がれることだろう。魔法とか憧れるよね正直!

が、だ。この魔法スキルもまた取得には条件があるわけで、前提となるスキルがあるのだ。


お前ほんといい加減にしろよ。


【魔力回路生成】って何だよ。

いや、いるよねそりゃね。ないよね当然ね。でも、この魔力回路生成にも例の注意文がついてくるのだ。着座または横になって、のあれだ。恐怖しか感じない。まぁ体内に存在しない何かを生み出そうというのだから、産みの苦しみとかあるんだろう。

もうこの時点で保留だわバカタレ。

しかも魔力回路生成したところで、【魔力感知】が必要なのだと。

感知できないもの使えないでしょってか。ド正論うるせぇよ。

これだけでも大概いい加減にして頂きたいのに、まだあるのだ。【魔力操作】だと。

そうだね、操作方法知らないと駄目なのわかるー……じゃねぇんだわ。お前これだけでもう3レベル消費するじゃないの、それでようやく魔法使いの卵だと?

ちょっとあまりにコスト掛かりすぎじゃないの?


と言うわけで魔法は後回しになった。

そして次に考えるべきは健康面だ。病院とかないよね。あったとしてもすぐに医者に掛かることはできそうにない。

そもそもヒューマン的な存在といつになればエンカウントできるかどうかすら全く不明なのだ。

ではここで出てくるのが、これまた憧れのポーション作成的なあれだ。【薬魔技能】というスキルを発見した。


ちなみに、母はポーション系のお話が大好きだ。このスキルを見つけてもうわっくわくである。

しかしよく見るといい。

薬魔、そう『魔』だ。これも魔法スキルの一種ですってよ。震える。いいよ、暫く常備薬で凌ぐよ……大丈夫なのかこの現状。

しかもだ、例え薬魔技能を取得したところで我々には大きな問題がある。

薬草ってどれよ?って話だ。

そうなると異世界モノでお馴染みの【鑑定】スキルもセットで必要になってくるだろう。


「何で鑑定にまで注意文ついてくるんじゃー!!」


ふざっけんなよこのクソゲー!もうクソゲーオブクソゲーだよ!!

「痛いの?なんで?鑑定でしょ?どこに痛みを伴う要素があるの!?」

わっけわからんねもう。

「わかんねぇな……脳にデータインストールする痛み、とかか?」

もう躊躇いなくインストールとか言えちゃうあたり大概だよねお前も!


必要そうなスキル取得に少なくともあと2回はあの地獄を味わうの?は?


そして最低限必要なレベルがええと……ショッピングに1、魔法系前提に3、鑑定と薬魔技能で2……6必要なのか。

あと2km程距離を延ばす必要がある、と。

……ん?そういえば1kmでレベル3だけれど、実際どの程度の距離でレベルって上がるんだ?割り切れなくないだろうか、1kmで3って。もやっとする。

「イエクサ、レベルと距離の関係を教えて」

『はい、300mにつき1レベル上がります』

明確な数字が出てきた。

「ってことはとりあえず目下必要になるレベルが最低でも6だから、1.8km延ばす必要があるのか……」

「いや、ちょっと待て。イエクサ、自宅結界の範囲はどの程度ある?」

『はい、自宅結界は自宅から半径100mです』

100mとな。

「イエクサ、結界の範囲はレベルに関係しないのか教えて」

『はい、結界の範囲はレベルには関わりません』

「関わってたら1.7kmで済んだのに残念」

「もはや100mとか誤差の範囲だろ」

どの道行くとこまで行かないとどうにもならんのだし、と海が呆れたように言い放つ。

「でも100mは安全圏って解っただけでも幸いよね。何ならお庭広げてもいいんじゃないかしら」

薬草園とか作れるわね、と母がふわふわした展望を語る。

「木とか伐採して整地しないと無理だろ、そんなスキルあんのか。あったとしても後回しだろ」

「言うて、家庭菜園とかもできたら食糧問題はかなり改善するだろう。スキルで購入するにしても、資金にも限界はあるわけだしな」

はい正論。親父の癖にまともな意見をぶっこんできた。芋植えたいとか言ってる。芋は連作向かないから気をつけなさいよね。


「そういや、もう現状西に親父が探索してるから今後もとりあえず西に進んでいくってことでいいのか?」

海がそう問いかけたら、もう東西南北何があるか解らんしいいんじゃないのと頷く。

「拠点は家で、隠密活動しながら探索ならあんま人数いない方が安全よな」

「まぁそうだろうねぇ」

「なら、体力的な面から俺とお前がツーマンセルで動いて、コマンダーとして親父と母さんは家、がベターか」

ツーマンセルとかコマンダーとかお前何ゲーから出てきたの。ちょっと悪いけどおねーちゃん戦略系は手を出してないからさっぱりよ。

あと、若いからって体力あるって勘違いすんなよ。それは偏見っていうんだぞ。

とは言え、還暦前後の両親を出してしまうのは些か不安があるので文句はないが。

それに、ステルスとシャドウウォークをインストールしたことによりこの有用性と、弱点もよく理解できた。


なんせ、音も気配も存在感も消せはするが、一度相手に認識されてしまうと効果が切れるのだ。

という事は人数が増えればその分リスクが上がる。そして、会話もダメだ。声は消せない。となると、ジェスチャーでの意思疎通を求められることになるだろう。

念話的なスキルないのかな、と探したけれどこれはないらしい。何故なんだ。どっかのスキルを成長なり発展なりさせる必要があるのか?スキルツリーを猛烈に求む。攻略本置けよこのクソゲー。


「子供たちだけで行かせるのはちょっと頂けないわねぇ」

二人の会話に母が口を挟む。

「いや、だから人数増えるとリスク上がるって。それに、母さんスマホのアプリとかもあんま使いこなせないタイプだろ」

「今回のスキルはインストールだったから、私でも使えるわよ。そもそも、最初からそう遠出はしないでしょう?あんた達が心配してくれるのは解るけど、親として子供を心配するのは当然だし、何より子供を守るのが親の役目よ」

そうなんだよなぁ、この人ふわふわしてるけどかなり過保護なとこあるんだよなぁ。

その割に無慈悲なる「えい」はしてくれたが。どこで線引きしてるんだろう。

「いやまぁ、そりゃ最初から遠出はしないし、スキルの勝手を探りながら様子見から入るけど」

「なら、それくらいは一緒に行けばいいじゃない。大体、現状インベントリも一人3kgなのよ?運べる物量は人数で増えるのなら、最初は過ぎるくらいの用意をしておくほうがいいんじゃないの?」

それもまぁ、わかる。

ハンマーとかインベントリ入るかどうかすら解らないし。いや、多分入るけど、相当容量圧迫する。

からと言って、そんな重いもの持ちながらうろつくのも体力的に怪しい。

ま、持つのは海だけど。

「少しレベルを上げて、それから本格的に探索の方針を考えるべきだと思うわ」

ある程度の安全性を確認しないと、子供だけでの探索は許可できない、ときっぱりと言い切る母。

頑固な面もあるこの人だ、ここであまり渋ってもじゃあいいわよ一人でいくわよー!とか言いかねない。危険極まりない。

しかし互いが互いを心配している以上、やはり最初は全員で出かける案を飲むのが妥協点だろうか。

最終的には人数を絞るのが理想とは言え、ある程度のスキルの習得まではやはり人数の力というものも必要かもしれない。


そういえば、スキル習得と言えば耐性系のスキルはないのだろうか。

苦痛が前提となった以上、せめてもそれを和らげるスキルがあればまだマシだろう。

海と母が話し合っている傍ら、スキル画面を改めて眺める。

あった。【苦痛耐性】と【精神頑強】だ。これは欲しいな。

しかし苦痛無効とかないのな。発展形なのか、それともそれはご法度なのか。いや、まぁ痛みって命の危険を知らせるシグナルだから無くしてしまうのはリスキーだものな。痛くないから知らないうちに死んでましたーとか、洒落にもならない。


精神頑強に関しては、精神力がアップするだけのものだがこれが中々侮れないと思う。

そもそもこの現代日本で平和に生きている人間が突発的な恐怖体験にパニックを起こさない保証はない。どれほど覚悟をしていても、不可能は不可能なのだ。

もしかしたら、この耐性系のスキルも早い内に取得するべきなのかもしれない。

……どんどん必要なスキルが増えていくことにめまいすら覚える。


そういえば始業時間とっくに過ぎてるなぁ、と現実逃避ついでにスマホをタップしてみる。

まぁ当然電波などないので連絡の一つも入ってこない電気食う板でしかないのだけれど。

元の世界で我々はどういう扱いになっているのだろう。我が家があった場所はもしかしてただの空き地と化しているのだろうか。一晩で空き地になる一軒家とか普通にミステリー極まりないな。家ごと失踪した扱いとかもう目も当てられない。

まぁ家ごとこちらにいる、と思っているのは我々だけで、この家すらもしかしたら何かしらのレプリカである可能性すらある。なんせ自動修復機能とか積んでいるらしいし。真っ当な建築物ではない。

それにしても、やはり電波はない。スマホの上のほうに燦然と輝く圏外の文字……圏外、じゃない?

「……んぁ?」

「なんぞ」

思わず上げた声に、海が怪訝な表情で会話を切り上げこちらを見やる。

「いやぁ、スマホさぁ、圏外ってなってるだろうなーと思ったら、なんか違う」

圏外じゃなくて、家族ってさぁ、なってるんだよね。

「あん?」

チンピラみたいな返事をしたかと思ったら海も自分のスマホをいじりだす。待ち受けがネットから拾ってきた美少女のドール写真なのいつみてもクッソうける。一時期本気でドールお迎えしそうになってたもんね。でも化粧技術もないし、理想の美少女作れる自信ないから頓挫してたもんね。しかも当時まだ学生だったから金銭的にも諦めてたよね。

いや、正直ドールとか私も興味あるよ。でもきっとこれは沼るから手を出したらアウトな奴だと思った。可能な限り検索もしないでいる。クオリティ高いドールとか真面目に芸術よな。

そんなどうでもいい事に思考をかっ飛ばしていると、ふいに自分のスマホがバイブした。見てみると、コミュニケーションツールがメッセージを受信している。

「は?なんぞ。きもちわる」

ホラーである。電波ないのに受信とかもうまっことホラーである。

「いや、なんかどうやら家族間だけはスマホで連絡取れそう。友人知人は軒並みグレーアウトしてて選択できねぇけど」

多分通話もできるわこれ、と海がスマホをスワイプしながら呟いた。

と、なるとだ。メッセージのやり取りをサイレントモードで行えば意思疎通は最低限行えるのでは?念話的なスキルはないけどこれでなんとかしろってことか?

でも、何か危険な気配もするんだよなぁ……ほら、バックライトが光ってそれで見つかるとかありそうじゃない?このクソゲー的異世界ならそれくらいやってのけそうじゃない?

もう何も信じられないよ。

「あ、ソシャゲできる?」

「できるわけねぇだろ。通常回線は愚か、Wi-Fiすら死んでおられるわ」

そうか。ご臨終なさっているか。そうだろうね。

「連続ログイン途絶えるわ、鬱」

「うるせぇ。んなこと言ったら俺だって報酬SR欲しかったわ」

あ、イベント中でしたか。それはご愁傷様です。

しかしまぁ、家族間で通信できる分ないよりはマシか。活用法を考えつつもとりあえず一旦置いておこう。

「で、最初は全員でピクニック的な話で纏まったの?」

「お前途中から他所事してたのマジどうかと思うぜ。くっそ脱線したじゃねぇか」

「いや、耐性系のスキルとかないかなって思ったからつい」

「あったのか?」

「あった」

必要な移動距離がどんどん伸びるね!

まぁ森抜けるのが最終目標ならまだまだではあるが。


で、結局全員ピクニックで近場の探索をして、スキルの使い勝手などの確認をすることとなった。

その上である程度のレベルを上げることができた時点で耐性系のスキルを取得、そこから魔法セットと薬魔セットを取得。

そこまで来たらツーマンセルでの探索でさらに距離を稼ぐ、という方針になった。ショッピングはそこからだ。

そもそも現地通貨の取得すら視野に入れなければならない可能性すらあるのなら、そこまでショッピングに大きな期待はできないという理由もある。

ともあれ、2カ月以内に我々はそこまでをやってのける必要があるだろう。

が、単純に考えてそれは不可能ではないと思う。

実質直線距離で10kmも行けばレベルは33程上がる。平地ならば山道の10kmよりは体力的には遥かに楽なはずだ。

ただ、モンスター的なものとの遭遇などを考慮に入れた時の精神的疲労がどの程度カウントされるかは未知数ではあるが。遭遇したとてやりすごせるだけの丹力が求められる。いや、思いのほかハードル高いなおい。


あと親父が空気すぎるなぁ、と思ったらスキル画面見ながら手元に何かメモ取ってた。

どれどれと覗き込めば農業系のスキル列挙してやがる。あと森林開拓系。何なの森林伐採系魔法とか。

お前どんだけ農家さんに憧れあるんだよ。どうしても家の周辺開拓して農地作りたいらしい。

いいけど、そんなに早い段階でそれは叶えられないからな。まず生き延びる算段つけてからだからな。解ってんのそこんとこ。

これ幸いと老後の人生設計してんじゃないのよ。満喫しすぎか。

思わず半眼で見てしまったが、割とご機嫌なので置いておこう。

とにかく明日に向けて、そろそろ優雅にブランチと行こうではないか。賞味期限が割と短い食パンからかな。インスタントスープ系は割と日持ちするからまだ手を出すべきではない、か。

食料の残量考えながら生きるのって結構苦痛だなぁ、と思いながらスウィートスポットの浮き上がったバナナでもつけたら多少は満足感あるかな、と思う。全員若い青バナナの方が好きなんだけど。でもこのままご臨終させるのはもったいないのでバナナも是非消費してしまおう。

母が食事の支度をしてくれている間に風呂の準備をする。

今日もう疲弊しきってるから風呂入ってさっぱりしたらそのまま寝てしまいそうだ。探索用の服装とかいろいろ考えることはまだ山積してはいるが、一寝入りしてからでいいかなぁ。

お昼寝してから再度考えるべきだと思うの。食って寝て、リフレッシュしてからの方が効率上がりそうだし。

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