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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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33

さて、森産鱗持ちの騎士と海くん救出作戦なわけだが。

とんでもなく皆様気合いを入れておられる。

ありがたいことですね?でも流血沙汰にはならないよう努めましょう、と言う感じだ。


コルドさんの馬上に乗せられてぽこぽこと運ばれているのだが、騎士寮の側から城の外に出た挙句、街中を通らずに外壁門まで直通で来れる秘密の道があった。

凄いな、危急の事態に対してちゃんと対策されているんだなぁ……確かに街中を騎馬が走るなんてとてもではないが危険極まりないものな。


マップを見ながらあっち、と指差しながら案内をすれば割とすぐにその異様な集団は見えてきた。

馬車をぐるりと囲んでいる赤い点が、人間の形で認識できる。

こちらが視認できるということは、当然あちらもこちらを視認できるわけだが……

「……やはり第二騎士団、ですね」

城下の巡回中とかに鱗がひっつくのだろうか。

そう言えば前からマップにちらほら赤点があったな、と思い出す。もしかしてそれは既に鱗がついていた誰かだったのだろうか。総てに敵対心を持つ見知らぬ誰かではなかった、と。

面倒な話だが、原因を探る必要があるだろうか。でも私達がいなければ問題が起こらないのであれば、用事済んだらとっととお暇してしまうと言う手もあるな。


馬車の扉は開いている。中の海が手を振っているのが見えた。

その手に持つのは、スマホ、か?あれ。

「カイ様お元気そうですね」

「それな。あんまり痛そうにしてなくてよかった。ところでコルドさん、ちょっとマントの中潜っていいかな」

「……構いませんが。寒いのですか?」

「いや、ちょっと野暮用」

「……野暮用」

もそもそとコルドさんのマントに潜り込んだなら、何だかんだで腕を使って隙間を開けてくれる。

……おお、温かい。成る程寒い時もこれは有用だな。

インベントリからスマホを取り出せば、海のトークルームがいくつかメッセージを受信していた。


『やばい、この馬車すげぇ快適』

どうでもいいわ。お前誘拐されて最初に送ってくるメッセージがそれかよ。

『ところで俺の右目が悲鳴を上げている件について』

やっぱり痛いのかよそうだよな。そもそも痛みに動きが止まった瞬間に馬車が動いたもんな。

『御者のにーちゃんに何か黒いのがついてたのを剥したら馬車が制御を失って途方に暮れてる』

あっぶねぇな。

『なんとか御者さん車内に引きずり込めたけど、馬が自由すぎてどうしたらいいか解らん』

手綱握ったところでねぇ……馬の制御方法なんか知らんからねぇ……。

『騎士団と思わしき人等が馬止めてくれた。でも軒並み赤点だったので結界張ったら囲まれた助けて』

そういう流れか。そうか。

赤点であれば結界があれば存在そのものを視認できなくなるが、そこに居る、という事が解っていればそりゃ包囲もするわな。

森の動物じゃないもんな。知恵ある生き物だもんな。


『龍の眼があるじゃろ?』

と送ってみる。

『おう』

『それをな、えいっと』

『わかんねーよ痛ぇんだわ』

ですよね。

そしてやっぱり痛いのか。この距離でも私の右目も少々じくじくし始めているので、中心にいる海は相当痛いのだろうな……と思う。

『ちょっと隠密で出て来れない?』

『御者さんいるでな。あと包囲網隙間ないでな』

『結界の中においとけば大丈夫でしょ。ちょうどこっちを視認した赤点がガルガルし始めてるみたいだし穴できないかな』

『一触即発よな』

『なんなら隠密ついでにエリアスタンしてきてもいい』

『即バレするやつなそれ』

駄目か……。


「コルド、ソラは大丈夫なのか?体調を崩したのか?」

マントの向こうで殿下の声がしたので、もぞりとマントから顔を出せば目が合った。

「大丈夫。ちょっと野暮用だっただけ」

「……野暮用……マントの、中で?」

「そう、マントの中で」

じっとこちらを見て、コメントに困る殿下にへらりと笑って見せてからまたマントの中に潜り込む。

『ちなみに、おねーちゃん魔力ほぼ底尽きかけてるのでエリアスタン爆撃ができない』

『何やったのお前』

『いや、龍の眼をね、えいっと』

『わかんねーよ説明求む』

じりじりと距離を測りながら騎士同士が衝突しそうなこの気配の中で、なるべく急いで文字を打ち込む。誤字があっても許せ。

『目を閉じれば龍脈見えるので、そこに魔力をどばーと流すと不思議なことに加護が満ちて黒い靄がぱーっと晴れる感じ?』

『雑!でもやってみるわ海くんできる子なので』

『ふぁいとー』


そうしてスマホをしまってから、もう一度マントから顔を出せばコルドさんの横に並ぶ、馬上のリダルトさんがこちらを見ていた。

そう、海くん救出にはリダルトさんもタッカートさんも追加でお越しになられている。

第三騎士団の中でも割と腕に覚えのある面々で編成された特別部隊となったそうだ。

「多分あとは海がなんとかしてくれる」

と言えば、ことりと首を傾げてその目に疑問を宿した。

「……カイ様と、何かやりとりをされた、のですか?マントの中で?」

「まぁ……そんな感じ?」

「……俺のマントの中でえらいことが起きてたんですね?」

「ごめん……?」

確かにそんな不審なことがマントの中で行われてたらドン引きだよな、ごめんねコルドさん。

決して危険はない行為なので許されたい。

そんな気の抜けた会話をしていたなら、馬車のほうからぶわりと光が舞い上がる。

きらきらと光は波状に広がり、舞い上がる星が馬車を中心に広がって行くのが見えた。

「……こんな感じに見えるのかー。すごいねぇ……」

客観的に見るとこれは中々の光景だな、と思わず感想が口をついて出た。

霧雨を反射して虹のプリズムを弾けさせて、周りの赤点を飲み込んではその色を変えていく。

弾けて揺れて、溶け込んでいく光はまるで踊っているようにも見える。

騎士同士の潰し合いも事前阻止できたことだろう。いやぁ、何よりだ。


しっかし、本来ならば海はどこへ連れていかれるところだったのだろう。

途中で馬車が自由な行動をしてしまったので相手さんもきっと計算外にも程がある場所に今はいることだろう。

となれば、海を拐かそうとした輩とは一体何者であるのか。

あとは、この黒い靄と腐った鱗。

……なんともまた七面倒な事が巻き起こっている気がしてならない。もっとこう、色々素直に事が運んでくれたならいいのに。

きらきらとした光が徐々に収まり、馬車に戻っていくのを見ながら溜息をひとつ。


帰りたい思いと、落とし前はつけて貰わなければならんなと言う怒りがないまぜになって消化不良を起こしている。

そんな気持ちを込めた溜息だ。

うちの子を誘拐したのだ。それ相応に私は怒り心頭なのである。どの面下げてそんなふざけた真似をしやがったのか、そしてその面ひっぱたくくらいの事はさせて頂きたい。

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