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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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23

普段巻き込まれる側としては、この度殿下も司教様も司教様の護衛騎士さんも巻き込んだ朝食会は珍しくもこちらが巻き込む側となったので新鮮だった。

ちなみに、司教様の護衛騎士さんはお名前をレガートさんと仰るそうな。神殿騎士とか言う役職であるそうだ。騎士ってのも色々あるのだなと知った。薄茶の髪に若竹色の瞳を持つ青年、でよかろうか。多分20代だと思うが、自信はない。男性の見た目年齢って解らんのだわ。

期待通り食べてくれと乞えば結構食べてくれた。殿下レベルで食べてくれたのでありがたくも私と海は満腹ちょい手前くらいで食事を終えることができたし、司教様も思いのほか食べて下さったので数日で備蓄した余剰食糧が完売した。ご協力ありがとうございましたーっ!傷む前に誰ぞの血肉になって本当によかった……!

司教様には食事中も色々とお話を聞かせて頂いたのだが、どうやら祭壇にも魔道具があって、それに聖杯を掲げ祈りを捧げると時に祝福を授けてくれるらしい。時にってのがポイント高いな。気まぐれ過ぎない?打率上げろや。

神殿は森王族と共に龍を奉る信仰の場で、司教ともなると時に龍脈から神託のような御言葉が降りてくることがある……らしい。

ここ三カ月は割と受信していたらしいのだが……三カ月って、私達が森で活動し始めてからだよな、と。具体的に何て言われてるのかそっと聞いてみたなら、涙に触れるとか、我が身に触れるとか、血肉の源とかそういう奴らしい。……こっちの進捗情報じゃない?それ。いや血肉の源は全然解らんが……もしかして小鬼にかじられた事だろうか。いや、消化されてたまるかよ。

それにしても、司教様に進捗情報流す余裕があるならこっちに業務連絡してこいやクソ社長。信仰が足りないから龍脈に繋げないんだよとか言ったらぶん殴るぞ。どう信仰せよと言うのだ。まるで情報も寄越さないで無理言うんじゃない。憤りしかないからな。


しかしこの世界の信仰は解らないな……龍を奉じながらもそれに通ずる4国の力がそれほど強くないのか……?

一神教と思いきや、そうでもないのだろうか。昔は違ったとかなんかあるのだろうか。力が弱ってあの森のみの加護ともなればそりゃまぁ信仰続けてらんねぇわとなるのも解らんでもないが。だが台頭する存在も今の所聞かせては貰えていない。いやまぁ、この森王族を頂く国で別の信仰などないのだろうけれど。神具の修復が終わればまた何かしら変わってくるのだろうか……と言うかそんな大事な業務ならやはりちゃんと通達しとけよ。異世界転移した時にこう、何かしらの説明パートがあって然るべきだろうがよ。イエクサでもいい。なんか教えておけ。まぁ教えられたとしても何ができるかと言われたなら変わらなかったかもしれないが……心構えが違うだろう。こう、使命感的な?……いや、持てたかな。そんな余裕ねぇわ呆けとか言ってたかもしれないな。

それでも目的意識があるとないとでは準備も何もかもが異なっていたはずだ。何の準備も心構えもなくいきなり色々ぶっこまれてはたまったものではない。


食後の珈琲を飲みながらふぅ、と息をついて扉の向こうの森に目を遣る。

森の奥から差し込む光が陽光の代わりを成しているのか、あの森の昼間とそれほど変わらない明るさがある。つまり、少々薄暗い程度。もっと明るくしとけ。見えている範囲の植生もあまり変わりはない様子。

じ、と森を見ていたなら殿下もつられるようにそちらに目をやってから、こちらに戻した。

「……行かれるのだろうか?」

「接敵はしないんだよね?この森は」

「ああ。この森は安全だ」

「そう。海、身体大丈夫?」

「ん。行ける」

接敵しないなら少なくとも結界等の魔力を消費することはないだろう。残り魔力が2割程度というのは少々心許ないが……からと言ってここで一泊していくわーとは流石に……言えない。護衛して下さってる騎士さん達だってそんな暇でもなかろうし。

珈琲のマグを飲み干し、クリーンをしてから片付ける。どっこいしょと腰を上げて色々出したものを片付けたならぐいと伸びして、深く息を吸いこむ。

馴染んだ森の匂いが肺を満たし、ぴりと神経が張り詰めた。

「……帰ってきたって感じがするのがむかつくわ」

「わかる。でもこれよそ様の森なんだよなぁ」

ぐいぐいとストレッチをしながら海も頷きながらそう呟く。

「接敵しないってことだから隠密仕様でなくていいかな」

「多分な。ってか殿下達も行くんだろ?だったら意味ねぇし、いいんじゃねぇの」

俺等だけ不可視でもな、と肩を竦めたなら殿下が頷きを返した。

「私と、宰相。そして司教殿は少なくともご一緒させて頂く予定だ。後は護衛なのだが……」

ちら、と殿下がフォルテさんを振り返ったので恐らくフォルテさんは確定なのだろう。

「お二人にもせめて一人ずつ、護衛を付けさせていただきたいのだが……」

その言葉にくてりと首を傾げる。

この森は安全だと言ったではないか、と。

「確かに祭壇の森は安全ではありますが、念には念を入れておきたい」

「あー……うん。それで殿下が安心するなら構わないんだけど……」

「あ、なら森から一緒だった騎士さんらで頼める?ねーちゃんこう見えて人見知りするんで」

お前そういう情報ぶっこぬくのどうかと思うよ。私だって頑張ってるよこの城きてから先は特に。

「なんと……そうであったか」

そうだったんだよ。お前のご家族にいきなりご対面させられたこの辛さを少しは慮ってくれ。いやマジで。

ちなみに本日、ディベル殿下は執務により同行ならずで代わりに宰相さんが派遣されたらしい。……実際は執務押し付け合ったけれど謁見は宰相さんにはできないから王太子たるディベル殿下が残る事になったとのこと。お仕事お疲れ様です。


そんなこんな、護衛として私にはリダルトさん。海にはタッカートさんのお二人がつけられた。毎度毎度お世話になります。

ついでに殿下にフォルテさん、宰相さんにはコルドさん。司教様はレガートさんが元からついているのでそのままセットとなった。うーん、割と大人数で森入るのな。

「じゃ、行くかー。今日もご安全に!」

海がそう気合を入れたなら、私達二人で先行させて貰う。その後ろにひたりとリダルトさんとタッカートさんが付き、その後ろをその他がぞろぞろと二列縦隊で進む。遠足みたいだなこれ……。

扉を潜れば肌に触れる空気が変わる。ひやり、と少し湿気を帯びた森の空気。

靴底に感じる感触もまた、ここ三カ月で慣れた土と、木の根の感触。

「うーん……森だな」

さくさくと足音を立てながら歩くのに慣れずにやはり足音を殺してしまう。続く面々は普通に足音を立てているので意味はないが、気持ちの問題だ。

周りを見回しながら森だなぁ森だねぇと意味のない言葉を垂れ流しながら歩を進めた。


マップが切り替わり、森ピックアップになる。広さはどうやらこの王城のワンフロアくらいだろうか。狭くはないが、決して広大というわけでもない。攻略もそれほど大変そうではないが……このマップ。なんか、ぴこぴことここ目的地ですよ!みたいなアイコンがあるんだが。

苛ぁ、とする。あっちの森で出せや。重要ポイントここですよって知らせろや。お前自分がして欲しい事に対してだけ全力でサポートし始めるとかなんなの。自儘に過ぎない?自己中かよ。

「……流石森の御遣い、こうまで迷いなく祭壇への道を進めるものなのだな」

恐らく聞かせる為の言葉ではなかったのだろう。殿下の声が背後から聞こえてきた。

いや、マップさんがね。教えてくれるのでね。

と言うか、確かに普段と違う扉の開き方したみたいだし、招かれてるの私達は確定してるから私達が先行するねとは飯食いながら言ったけどな?別に道案内はしてくれていいんだぞ?後ろから声掛けてくれたら良かったんだぞ?黙ったまま後ろ歩いて勝手に感心するのやめてくれないかな。

特にそれに対してコメントすることもなく、さくさくと足を進めれば光が徐々に強くなっていくのが解る。

この感じだと、祭壇にこの光の源があるのだろう。

「しっかしどんどん明るくなってくるなぁ……これって通常時もこんな感じなのか?」

首だけ振り返って海が殿下に問いかければ、神妙な顔で軽く首を横に振られる。

「いや……ここまで明るい事は、なかったはずだ……やはり、お二人がいらしたからだろう」

マジか。これも通常時にはない仕様なのか。もしかして先程吸収された魔力効果か?いや、勝手に充魔に使うんじゃないよ人様の了承もなしに。しかも通常より強い照明とか必要なの?は?

「然様にございましょうな。私の記憶にもこれ程の明るさはございません」

司教様からもお墨付きを頂いてしまった。

「これが歓迎されてるってことなら、酷ぇ歓迎のしかただよなぁ。もし一人で来てたら、きっと魔力が足りなくてぶっ倒れただろうし。そういや、魔力枯渇してからも吸われたりしたら、どうなんの?」

「いや、前例がない故解らぬな……どうなるのだろうな」

「前例ないのかぁ……でもあの感じだと死んでもおかしくないよねぇ」

「だよなぁ……歓迎してんのか殺しに来てんのかはっきりしろって感じだよな」

「まぁでも森がヘルモードだから大体殺しに来てると思う」

「それな。俺等よく生きてここにいるよなぁ……運がいいんだか悪いんだか」

はー、と揃って溜息を吐き出してとぼとぼ歩く。

「それに比べて平和な森って不思議な感じがする」

「いや、普通平和なんだと思うぜ。俺等感覚麻痺ってる。毒されてる」

「解るんだけど……解るんだけど。森なのに、命の危険がないとかある?私達帰ってからちゃんと森で生き抜けるのかな。油断せずいけるかな」

不安になるわ。帰って即死とかしたら目も当てられないではないか。

「森入ってから三日以降が勝負だな。その頃には感覚取り戻せるだろ。多分」

感覚取り戻すまで危険な目に遭うことが大前提なのウケる。……いやウケねぇわ。

更に強くなる光、これはもうLEDのスポットライト並ですね眩しいんだけど。直射で当ててくんなよ。目が潰れるだろうから。


木々の枝葉が強い逆行を浴びてシルエットにしか見えない。それでも、マップさんの言う通りに歩を進めたなら

「……これ、」

「ああ……」

ぽかりと空いた空間。石造りの円状の祭壇に、短い階段がついている。

階段の先には空間があり、聖杯が置かれた台がある。そしてその上に、強く発光する物体が浮いているわけだが……目を細めてみても、これ、あれですわ。

ぽこん、と間抜けな電子音が響く。


『西の天穴に到達しました。アクセス権を一部取得しました』

そして聞きなれた声でアナウンスが流れた。

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