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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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14

ふー、と溜息を吐いてベッドに腰掛け脱力する。

騒がしい食事を終え、まさかの風呂付の部屋だったので交代で入ることとなったのだが、主人用と従者用で風呂が分かれていた。凄いな……設備えぐすぎない?なんなら魔道具さんで普通にシャワーなんかも出てくるし、風呂の湯だって沸かしてくれる。電化製品顔負けのレベルであった。

従者用でいいと言うに、まさかの主人用の風呂を使わせて貰う事となったのは大変申し訳なかったが……それにしても一週間ちょいぶりの風呂は最高だった。骨からとろけるかと思った……あとセルフでアカスリしたんだが、ごっそりだった。うへぇ……。海にも交代時にアカスリ貸してやったのだが、上がってくるのが楽しみだ。

ちなみに、風呂上りほかほかの状態の私に、お水飲みますかとかちゃんと髪乾かさないと風邪引きますよとか、湯冷めする前にベッドに入ってしまいなさいとか、妙に子ども扱いをしてくる筋肉さん達には色々物申したいのだが……お前等の中で身長が低いというだけでそこまで子ども扱いされなきゃならんのかと。些か納得が行かない。

まぁでもそんなことで時間を食っている暇はない。

速やかにあてがわれた部屋に入り、スマホを取り出してグループトークを立ち上げれば嵐のようにメッセージが入っているではないか。そりゃそうだわな……でもこっちも連絡とれる状態になかったんだ。察してくれ。

『風呂上りほかほかおねーちゃんです。現在西の国に猛進中。色々報告がありますので一度メッセージを送るのを止めてくださいどうぞー』

『あほみたいにレベルが上がってる件について』

親父がすみやかに返事をしてくる。

『それについても説明するからちょっと待ってねー。ちなみに二人とも健康状態良好。元気です』

そう返事をしたなら、現状解ったこと、不安要素、そして現在の状況を長々と打ち込んでは送っていく。


『と、まぁこんな感じ?』

『うちの子を森から誘拐するなんてやってくれるわね』

『まぁでもポーション買ってくれるみたいだしとりあえず収入の当てとしてちょっと期待しているとこ。ちなみにそちら残金大丈夫?』

『まだまだいけるわ。母さんやりくり上手なのよ』

『そりゃ何より』

『それにしても、スキルのインストールを最小限にってのは中々の縛りプレイだな……』

縛りプレイ……ゲーム上級者がやるやつじゃねぇか。ルールすら解っていない初心者がやっていいものではない。

『そうなんだよねぇ……あ、でも薬魔技師はカンストしていいと思ってる。龍シリーズって何か関りありそうだし』

そうこうしていたなら、ガチャリと音がして扉が開く。風呂上りほかほかの海がのそりと入ってきて、満足げに微笑んでいた。

「いやぁ……海くん一皮剥けたレベルでごっそり垢とれたわびびる」

「そりゃ何より」

そうして返却されたアカスリをインベントリにしまう。ちゃんとクリーンして返してくるあたりこいつは解っている。

「そして湯冷めする前にお布団入りなさいって言われたんだが、俺すら子ども扱いなの何なの?」

「お前も小柄にカウントされてんだわ……背丈だけなら殿下とそう変わらないけど多分筋肉が足りないんだと思う」

「いやあの筋肉は無理だろ一般人に備わる筋肉じゃねぇよ」

仰る通り。

「んで?親父と母さんに報告したの?」

「ん。で、スキルのインストールを差し控えるようには言った。そしたら縛りプレイって親父が上手い事言ったわ」

「あー……それな」

向かいのベッドに腰かけて海もまたスマホを取り出して操作しだす。

『風呂上りほかほかの海くんです。外の世界は新情報てんこ盛りで海くん疲れちゃう』

『普通に情報多いからな。こうして纏めて送られて来てもなかなかの衝撃があるからなぁ……お前等大丈夫か?』

『大丈夫じゃねぇけど大丈夫。とりあえずイエクサに聖域について聞いてみてくんねぇ?』

『あ、それ今聞いたらアクセス権がありませんって言われたわよ』

アクセス権ってなんだよクソがっ!

「いやアクセス権ってなんだよどうやったらそれ取れるんだよ説明なさすぎねぇ?」

『アクセス権の取得方法を教えてって聞いてみてくんね?』

ぶつくさと文句を言いながらさらにメッセージを送る海。

『それもアクセス権がありませんって言われたわ』

「役立たずかイエクサ」

「役立たずだなイエクサ」

ッチ、と揃って舌打ちをする。

「そもそもヒントなさすぎねぇ?攻略しようがねぇんだけど、このクソゲー」

「それな」

でもこれ現実なのよねぇ……攻略しないともしかしたら変容しちゃうかもしれないリスクまで背負ってるのよねぇ……ハイリスクすぎない?難易度至難にも程がない?

『龍についてはどう?』

『それもだめー。全部アクセス権ないわねぇ……壊れてるのかしら』

「分解しちまえポンコツが!」

「いや分解しちゃ拙いでしょ普通に」

気持ちは解るが、それはいかん。

『でも放置はできないわよねぇ。それで?祭壇とか言うのを見たらまた連絡くれるんでしょ?』

『タイミングが合えばそれまでにも連絡はするよー。ホームシック空さんです』

『海くんもおうち帰りたい……自室としらたまが恋しい』


はー、と揃って溜息。

「しらたまさん、私達の事忘れてないかな……」

「そういうとこあるよなアイツ……」

長期不在は赤の他人認定を喰らうので危険なのだ。

ふと、海がインベントリから紙巻オリジナルブレンド煙草を取り出す。森でも休憩時には吸っていたが、殿下と会ってからは初である。お前もう禁煙できるんじゃないの?というレベルだ。

「……ねーちゃんにも頂戴」

「お前禁煙成功してるくせに吸っちゃうの」

「やってらんねーよと言う気分なの」

「いいけど。どれにする?海くんオリジナルブレンドいっぱいあるんだけど。甘めのフレーバー?それともがつんと系?メントール系?」

どんだけあるんだお前。

「俺のおすすめはこのベリー系か、キャラメルか……あ、バニラもある。うまくブレンドできた」

ドヤァじゃねぇんだわ。

「ベリーのミント系とかないの?」

「お客さんお目が高い」

あるんかい。

一本手渡されたタバコは、手巻きの割にちゃんとフィルターまでついている。仕事が細かいなこいつ……

窓を開け放ち、煙草に火をつけたなら肺に煙を叩き込む。すっとしたミントの香りとほの甘いフレーバーが鼻に抜け、有害物質が喉を通り肺に落ちる感覚がした。質量をもたないくせ、妙に重みのある煙に軽くむせる。

「これきっつ」

くらくらするじゃないの。重いわバカタレ。

「そうなんだよなぁ……なぁんか重いからやっぱ加熱式タバコに戻したいんだよなぁ」

ふー、と窓の外に紫煙とやさぐれた気分を一緒に吐き出す。

「で、縛りプレイで暫くやっていくとして……殿下の国の祭壇とやらはいつ見せて貰えるのかねぇ」

「さぁ?殿下のオトンの体調次第だろうから、先にそっちの快癒が求められるんじゃないの」

「最悪の場合ハイ・キュアか……普通品質じゃだめかね」

「低品質は飲めないからアウトだけど、普通品質ならもんどりうつほど不味いだけで飲めるからありでは」

「良薬口に苦しとか言って許されるかな……」

ハイ・キュア希少品なんだよ……琴子印のポーションしか上質ハイ・キュア存在しないんだよ……。許してくれ。でもお願いだからミドル・キュアで治ってくれ。

じりじりとタバコが灰になっていくのを海の携帯灰皿に落としながらもう一口。今度はむせずに吸い込めた。

「……帰りたいね」

「……帰りたいな」

家に。あとできれば日本に。平和で、ちょっとした不満があって、忙しいようなそうでもないような、あの日常に、帰りたい。

あとソシャゲしたい。クソゲーじゃないやつな。

「そういやさ……このホテルの従業員見て思ったんだけどよ」

「何」

「まぁ軒並み身長高いじゃん?この世界の人」

「うん、そうな」

「でも筋肉は殿下達が異常なだけで、俺普通だと思う。ってことは、俺が小柄って言われるのおかしくね?」

「殿下はきっとまだ成長するんだよ……だって従業員さんも男性は多分あれ180は超えてるよお前小さいよ」

「そうかよ……小さいのかよ……。確かに女性従業員が俺とそんな変わらない身長の人ばっかで悲しくなったわ……」

お前で女性カウント身長か……悲しい現実だな。そして私はもっと悲しい思いをしているんだ。解れ。

「西がでかい人が多いという可能性に賭けよう」

「やめろ。希望を持つと裏切られるだろ」

お前まだこの世界のこと解ってねぇな。希望を打ち砕き、嘲笑ってくるのがデフォルトだぞ。可能性なんてないと思っているくらいで丁度いいんだ。


『ちなみに家は平和にしてますか』

一応これも聞いておこう。とメッセージを送りつつ、もう一口だけ吸った煙草を携帯灰皿に捨てる。外から揉みつぶすようにすればくしゃりと音がして、燻る煙もなくなった。残り香が甘い。

『平和にしてるわよー。あ、母さんハイポーション作りすぎて魔力が凄いことになってるの』

『倒れるまで作り続けるのほんとやめなさい』

『大丈夫よー、ちゃんと最後は寝る準備してからやってるから!たくさんストックできたから安心してね!』

そのストックをインベントリ直通で運送して頂きたいものだ。イエクサ運送とか現れねぇかな。もうあいつならなんでも業務展開できるだろどうせ。

『親父はポーション作ってねぇの?』

『俺は畑仕事で忙しいからな』

『農家ライフ満喫しすぎかよ』

『作付け時期が解らんのが難点だ。ネット使えないの不便』

『イエクサに聞けイエクサに』

『あ、そうか。その手があったか』

そもそもイエクサってそういう存在だから。ネットで調べるの面倒くさい時に質問したら答えてくれるそんな存在だっただろうが。決してスキル取得とかショッピングとかそんな事ができる存在ではなかったから。しかし見事に農業楽しんでいるようで何よりだ。

伝えたいことを伝え、平和そうな自宅の近況も聞けたところで、ほっと安堵の息を吐く。肩の力が抜けて、程よく眠気が襲ってきた。ふわ、とあくびをしたなら海もつられたようにあくびをして、ねむねむと目をこする。

「……寝るか」

「そうな」

「念の為結界張る?」

「うーん……悩むよな……いきなり始末しに掛かってはこねぇと思うけど……無防備すぎるのも怖ぇよなぁ」

「まぁまだポーションも薬草も渡してないから大丈夫だとは思うんだけどねぇ」

あ、そうだ。今のうちに薬草株分けしておかなければ。プランターどーんと見せるわけにはいかない。あと水……じゃなくてポーションやりもしておかなければ。

「あとはまぁ……マップ表示が今もうほぼ黄色なんで。いきなり気配とか全部消えたら逆に疑われねぇ?」

オレンジに逆戻りってのは確かに頂けない話だ。

「そうかもなー……なら今日はこのまま寝る?」

「おう。まぁそもそも俺馬車で爆睡しちまったし、今更なんだよな」

それな。ホントそれな。寝落ちしたもんなお前。

そんなわけで、やることやったらごそごそとお布団に入る。うむ……ふかふか。お日様の匂いがする……素晴らしい。

「おやすみー」

「はいおやすみー」

明日起きれるかなこれ。馬車移動ガチで疲れたわ……。

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