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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
36/124

11

ざくっと話を纏めたならば、曰く、この世界の根幹には龍がおわすそうな。

それは龍脈、と呼ばれる道を通して世界中にその御力を行き届かせている、と。

その力が満ち満ちている時は、天災は起こらず、動植物は豊かに育まれ、世界は平和に保たれるそうな。


されど、ある時龍の御力に翳りが現れる。

この広大な世界を満たせるだけの力を失い、その加護は世界の中心に集約された。それが、聖域と呼ばれる森となる。

森は豊かに木々を育み、龍の力を間近に受けた生物はその形を変容させていく。龍の力を継ぐ、眷属となっていったのだと。


眷属の中でも特に森を管理する役割を持つ龍の指先と呼ばれる4色の管理者。それが小鬼……あいつら管理者だったのか。割に喰ったり喰われたりと散々だったのだが。

そして、森に害を成す者……否、龍に害を及ぼす存在があるならば守護者たる巨神が現れる。それが、青鬼。


ただ、龍の御力はそれからも徐々に削がれ、今はもう森を抱く結界を残すのみとなり、眷属達はここ数百年の内に変容を繰り返す。

森を守る者達は、森に立ち入る存在に牙を剥きその存在を抹消しようと動き出した。

されど、龍の森は希少な薬草が多く生育される場所でもある。龍の森へ入ることのできる王族を頂く国は、そうなってからも薬草を採取し、世界に流通させてきたそうだ。けれど、それも近年……と言っても百年余は不可能となり、薬草はこの世界の人々の生活から消え失せ、伝承を残すのみとなった。


聖域に入るための祭典はそれでも行われる。森へ入ることのできる王族を頂く国の誰かが成人となるその年に。

だが、祝福を得られるか否かはその時しか解らない。この祝福が、何を以てして付与されるのか……それも解っていない。ただ、殿下はその祝福を得た。一応兄の王太子殿下も祝福を得ているそうだ。

森へ入れる王族は、かつて龍と契約を交わした一族なのだそうだ。それぞれの王城には、龍を祭る祭壇があり今もその祭壇を利用して祭典を行っている、とのこと。


「先生質問!」

「何だろう、カイ」

「何で龍の力が失われていったんだ?」

「それは解っていない……数百年に渡り研究はされているが……」

首を振り、まだ解っていないのだと苦渋の表情を浮かべる殿下。

「先生質問!何故眷属は変容していったの?」

「恐らく、膨大な龍の力が制御を失っているのだろう、と言われている」

言われている、という事は結局憶測であり解っていないのと同じか……。

「ポーションが神代の霊薬と言われる由縁は?」

「森の管理者のみが作る霊薬だったのだ」

え、ちょっと待って。私達小鬼の亜種なの?マジで?衝撃の事実なんだが。

「かつては、森の管理者とも祝福を受けた王族はやりとりがあったそうだ。今はもう……お姿を見かける事すらなくなった」

だから、森の中で小鬼と遭遇した時に驚愕していたし、逃げる事を躊躇ったのか……霊薬をもらえる、と思った……?いや無理だろ意思疎通とかできねぇわなんなら私の足かじった奴すらいるわ。肉食ぞ。

しかし、そうなると殿下が私達を森の子だとか龍の御遣いだとか言ってしまうのは解った気がする。ポーション作っちゃったもんなぁ……海。管理者の亜種にしか見えないわなそりゃあ。

「……ちょっと待ってな。ちょいタンマ。俺今物凄い色々と混乱してる」

「大丈夫。私も混乱してる」

このまま森に居ればもしかして、私達も小鬼になるのか?それはちょっと遠慮したいんだが。角生えるの?私達に?いやぁ……全然要らないんで勘弁して頂きたい。

二人で話をする時間が欲しい。余人を交えずに話をしたい。

私達は管理者としてこの世界に喚ばれたのか……?それとも、イエクサが管理者なのか?

いや、イエクサあいつ何なの?あいつが龍の御力とか言うのか、もしかして。

私達はただの魔道具でしかないのか?それともちゃんと人間なのか?龍の加護とやらを身に宿しているから魔法スキルをインストールなんてされちゃったりするのか?

解らない。

何も。

もしかして、森に居る小鬼達はこの数百年の間に幾度も喚ばれた私達のような人間の末路なの、か……?そんな可能性すら脳裏を過りぞっとする。


くしゃりと前髪を握りしめて、纏まらない思考に頭痛を覚える。

私達は、何、なのだ。何故ここにいる。何故こんな世界に叩き込まれた。何を成せと言うのか。何のガイドラインもなく、ただただ生きる為だけに森の外を目指した私達は……これからどうすればいい。

……解るのは、龍の御力とやらが制御を失えば変容する可能性があるということ。ならばあまり多くのスキルをこの身にインストールするのはリスクがあるかもしれないということ。必要最低限に抑えておくことが安全策として考えられるだろう。

そして、龍について……知らなければ。龍の涙、龍の鱗……他にも龍シリーズはあるだろう。とにかくそれをまずは見つけてしまうべきだ。

ワンチャン、イエクサに龍について聞けないかなぁ……?あいつぽろっと吐かないかなぁ。

うわぁ、超帰りたいわー。今ものっすごい帰りたいわー。でも爆速で西進してるわー……。

せめてもグループトークで両親と相談させてほしい。ああもう、気になることを聞いたら余計に色々解らなくなってしまったではないの。何なのこのクソゲー。解決パート遠すぎない?ヒント少なすぎない?

「ソラ、カイ……大丈夫か……?」

「……俺、ちょい駄目かもしんねぇ。嘘だろ……俺等も変容するかもしれねぇってことだろそれ、そんなの、」

「海。落ち着いて」

「ねーちゃん……」

「幾百年の時を掛けて変容したというのならそう直近の話でもない筈。とにかく龍について調べよう。今できることは先ずそれだわ」

そう思いたい。思わせてほしい。

ふー、と長い息を吐き出す。とんでもない情報をぶっこまれたものだ。けれど、知らずに変容していたかと思うとぞっとするので今知れて良かったのかもしれない。

とにかく早い段階で両親に、スキルのインストールを抑えるよう伝えなければ。

「ごめん、殿下。どっかで休憩とか取るのかな」

「……一応、今日は夜も走り通すが、明日の夕方には一度大きな街に着くのでそこで一泊して休息を取る予定だ」

「そう……明日……解った。ありがと」

マジかよ貫徹走行しちゃうのこの馬モドキやべぇな。24時間働けちゃうのかよ。御者の人もやばいくらい体力あるな。眠たくないのかな。

シン、と車内は静まり返る。じ、と此方を見ている視線を感じるのは、恐らく正面のフォルテさん達だろう。


「……姉なのだな。妹ではなく」

そこかよ。

空気読めや。フォルテさんよ、お前も所詮脳筋か。

「いきなり失礼ぶっこまれすぎて驚きで全部吹っ飛んだわ!おねーちゃんですよ立派におねーちゃんですわ!海より5つは年上ですわ!」

「あ、ああ……もうしわけ、ない……?」

「5つも……!?ではまさか、カイはまだ成人しておらぬのか?」

「ちょぉっと待てや俺が幾つに見えてんだ殿下ぁ!」

「いや、てっきり私と変わらぬくらいだと……ソラは上と言っても2、3かと……」

「待って。殿下ってそもそも幾つ?」

「うん?私は今年19になる」

うっそだろマジかよ海と同じくらいだと思ってたら海より全然年下じゃないのよ……!?

「そんなに年下だったの……!?うっそでしょっ!?」

「待て、それではソラは幾つだというのだ……!?」

「女性の年齢をぶっこぬくのはマナー違反だ殿下!ちなみに俺もタメくらいだと思ってたけど殿下よりは年上だわびっくりだ!」

ぎゃーぎゃーと急に騒然とする車内。日本人童顔だと言われているけどこれはあまりにあまりだろう。流石に酷い。

「嘘でしょ……え、ちょっとまって。成人って幾つから?」

「18だが?」

だが?じゃねぇんだわ。

「……普通、女性は若く見られるのを喜ぶのでは?」

ぽそ、と横のリダルトさんが呟く。それを横目で視線を送り、思わずじとりと睨んでしまう。

「今のは若くではなくて、幼く見られたってことだから。全然喜べないから」

「ですが、成人している割に……随分小柄であるのは事実かと」

「森の外の女性の平均身長ってどの程度なの……?」

「概ね170cm前後……と言ったところでしょうか」

でかいわ。マジかよ。

「無論小柄な女性もいないわけではありません」

フォローまで入れるのかよ。

確かに筋肉さん達はでかいと思った。厚いと同時に縦もある。殿下はそのへん海とそう変わらなかったので威圧感が少なかったが、この四人の側近たちはざっと見ただけでも180cm前後は余裕だろう。物凄い圧迫感があるのだ。

でもこれ平均的なの?そして殿下まだ成長すんの?男性の身長って幾つまで伸びるんだっけ。でも成長期は過ぎてるよね?異世界あるあるでまだ成長しますとか言わないよね?震えるわ。

そして私達は小鬼になったらさらに縮むわけですよ。そんな未来があるかもしれないんですわ。ふざけんな。絶対なってたまるか見ていろ、抗ってやるわどこまでも!


「はー……いや、とんでもなく話ぶっとんだけど、王城の祭壇って見せて貰う事ってできるの?」

「う……む。恐らく、お二人になら大丈夫かと」

「あ、普通には見られないのか……」

自分で言うのもなんだけど、この不審者に開放していいものなの?それ。うーん、解らん。

「それで、お二人は森の御遣いであるという事でよろしいので?」

脱線させた犯人であるフォルテさんが軽く首を傾げて問いかけてくる。

「いや……それは解んねぇけど……ただ、管理者とは何かしらの縁はありそう、ってのは解った」

「……変容を恐れた、という事で誠に森に棲んでおられると……それは解りました。管理者と縁、とは?」

「フォルテさん。悪いけど、確定事項じゃないからそこは黙秘させて貰う。それに、貴方達をどの程度信用していいのか私達も解っていないので、あまり何でもかんでも吐き出すわけにもいかない」

だってお前等オレンジなんだもん。やや赤みは引いて来てはいるものの、でもやっぱりオレンジ。大変美味しそうな色である。

じっとその強面とも言える顔を、目を見て言い放てば向こうも負けじと目を合わせてくる。

「ただ一つだけ。私は、殿下が望むのならばキュアポーションを売る、と既に告げているとだけ」

そう言ったならば、その若草色の目が見開かれた。

「……ポーションを?売る……?」

「今言えることは、それだけ」

管理者が、祝福を得た者と意思疎通をしてポーションのやりとりをしていたのなら、それだけで何かしら伝わるはずだ。

こうなったら祝福を得ているかどうかも解るようになりたいものだが……果たしてそれは可能なのだろうか。祭壇とやらを調べさせて貰えれば何か進展はあるのだろうか。

とりあえずやりたいこと、やるべきことをリストアップしていかないと整理がつかないなこれ。

ところでいつになったらコルドさんって喋るんだろう。置物かよコイツ。ちょいちょい視線は感じるから一応生き物ではあるんだが……ほんっとうに喋らんな。タッカートさんはちょいちょい海と会話しているんだが……場所が悪いのか。あの場所が会話に参加させない場所なのか……?ここまでくると逆に気になるお人である。

先程見開いた目を、今度はきつく閉じてふー、と細く長く息を吐くフォルテさんを眺めながらそんなことを思う。

眉間の皺が凄いな……マッチ棒チャレンジできるんじゃないだろうか。何本か挟める気がする。

「……解りました。少なくとも今、お二人の不興を買うことが得策ではない、ということは」

信用はできねぇが妥協はしてやるぜ、という事なのだろう。大人の対応で何よりだ。

「それだけでも十分、かな。ところで、それなら言葉遣いを戻して貰えると嬉しい。どうにも、落ち着かないもので」

敬う気持ちがあるわけでもないのに、言葉だけが丁寧というのは実に気持ちが悪い。人間というのは表面を取り繕えてしまうところが怖いなぁ、とか思ってしまうあたりもう私野生に還りつつあるのだろうか……やべぇ話である。


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