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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
34/124

9

さて、殿下の傷も癒えたし、なんなら風の魔道具も充魔再び完了させた上でおやつ食べてお茶飲んで、充分に休憩をしたなら今一度の森チャレンジである。

多分、上手くいけばこの一回を最後にできる。森の外に王手が掛かっている。どきどきと期待に胸が膨らむというものだ。殿下無双のおかげでかなりいいペースで結構直線に近い移動をできているのだ。

あと何か、殿下のマップ表示が緑になったわ。完全に森の子認識された模様だわ。なんなら御遣い扱いされてる気がするわ。

まぁいい。まぁ何とかなる。きっと。そこは今問題にしている場合ではない。

一歩結界を踏み出したなら、また殿下が勢いよく駆け出していく。

それを早歩きで追いかける形で私達も踏み出せば、少し先でまた何かしらと接敵しては斬り払い、足を進めるというのを繰り返していた。

接敵率がえらく高い。殿下のエンカウント率が高すぎて震える程だ。幸運値は最底辺に違いない……かわいそうに。

ちょいちょいスタンしつつフォローをしながらもどんどんと西へと進んでいく。

あっちからこっちから虫が飛び出し、猪が突進をしてくる。猪割と多いな……森の外縁近くを住処としているのか。餌が豊富なのだろうか。そもそも猪って雑食なんだっけか。獣は漏らすことなくスタンする。流石に虫と同時に捌くのは大変だろう。

不意に、虫がキチキチと共鳴するように声を上げた。

そうかと思えば波が引くようにざっと虫が下がって行く。

――なんぞ?

不思議に思ったなら、ガサガサと音がして低木を掻き分け現れる……


小鬼やんけ。


お前本当にどこにでも現れるな。マジかよ。こんな浅い所にもいるの?そして虫に嫌われてるの?

くすんだ緑の小鬼が、森の奥にいる小鬼よりは細めの枝をこん棒代わりにその手に持ちながら現れる。

そうかと思えば殿下が小鬼を見て、動きを止めた。

「……まさか、」

と。何か呟いている。

いや、何を呟いているのかは距離があるのでよく聞こえないのだが、とりあえず驚愕しているのだけは解る。

けど、こんなところで足を止めている場合ではないし、虫が引いたのなら今のうちに進んでしまいたいのだが。

すたすたと歩いて殿下に近づき、小鬼にスタンをくれてやったなら海が殿下の腕を引いて進むように促す。

「いや、しかし……っ」

「あれなら森の中、割とどこにでもいるから。驚くような個体じゃないから」

何だか駄々を捏ねるので声を出してやれば、そんな、だとか、まさか、だとか言っている。

「とりあえず今は森を出る事が最優先だろ。アレに構っている場合じゃねぇよ」

海もまた、殿下にそう言って少々強引に歩を進めた。


森の奥で小鬼は虫の卵を喰っていたが、虫からすれば小鬼って天敵なのか?いやでもなぁ、蜘蛛カマキリの成虫には普通にごはんにされてたよなぁ……ここらの虫なら小鬼に群がればごはんにできそうな気もするんだけど、逃げてしまった理由が解らない。

とは言え、スタンが効いている今のうちに逃げてしまうのが吉だ。

そう、思ったのに。

倒れた小鬼が唐突に痙攣したように震えだす。

そうして、その震えは徐々に大きくなり、ぼこり、とその体表が波打ち出した。

あ、何か物凄く嫌な予感がする。

ぼこぼこと身体を内側から波打たせ、その場でびくりびくりと痙攣する小鬼の姿にこれ拙いやつじゃない?と海を見遣れば、海は海でうわぁ、と物凄く顔を顰めていた。

「逃げよう」

「そうな」

こんなのどうなるかなんて見ていてはいけない。多分、ろくなことにならない。

ぐいと殿下の腕を引いて駆け出せば、殿下は躊躇いながらもついて来る。

「何故あのような……?!」

「いや知らん。あれは俺も初めて見る現象。でも絶対ろくなこっちゃねぇから逃げる」

周囲にあれだけいた虫がいない。静寂の森を三人で駆けて行く。猪も居なければ熊もいない。

何もいない。

つまり、これはあれだ。沈む船から鼠が逃げ出すがごとく。あの小鬼に危険な要素があるから逃げちゃってるんだろう。

いやもうね。馬鹿なの?もうすぐそこなのよ森の外。

なのに何でこういうイベントがここにきて勃発するの?小鬼のメタモルフォーゼとか誰も望んでないんだわ。


殿下を引っ張りながら走っていれば、後方からバキバキと音がした。

「あれは……っ!」

ああ、やっぱりろくでもないことが起きたんだ、とちらり肩越し振り返れば

「青鬼ーっ!?」

嘘だろマジかよあれって小鬼の進化先なのBキャンセルしてよ誰か!

「うっそだろあれから一度も見かけてねぇと思ったらここにきて現れちゃうのあいつーっ!」

その巨躯を持って周囲の木々の枝葉をへし折りながらズシンと一歩ごとに音をさせて走ってくるあの、単眼の青鬼。

圧倒的な存在感に背筋が冷える。

だがしかし、あの時の私達とは違うのだ。もう見つかっているし追いかけられているのであれば何の躊躇いもない。スタンである。

「何でなの!?」

しかしその動きが一瞬止まったかと思ったら、それを振り払うように再び進行を開始されてしまった。

「ならこれで!」

海が今度はバインドだろう。魔力の鎖がその巨体を絡め取り、その場に縫い留め……ない。引きちぎられた魔力が粉々になり霧散していく

「嘘だろ!?」

冗談にも程がある。体格に関係なく効くって説明あったじゃないの何でなの

「森の守護者殿に魔法スキルは利かぬと何かで読んだことがあるぞ!」

「あああまた気になる単語が出たーっ!何、森の守護者って破壊神じゃん嘘ばっかじゃん!」

「魔法スキル利かねぇとか逃れようがない!え、ナニコレ結界も利かねぇってこと!?」

「おそらく!」

全力で走りながらも泣きが入る。

結界利かないとか終わってんなどうやって逃げ切るんだよ頭悪いの?大体魔法スキル利かないって積んでると思うんだけどどうなの。

そういや最初に遭遇した時はステルスで凌いだのだったか。あれは身体強化系スキルだからその限りではない、と?

いや、ふざけんなよ。視認された時点でジ・エンド極まりないわ何なの。

走るしか手がない。でも走ってもあいつの一歩が大きいのでこれではそのうち追いつかれる。

「守護者殿は森の外には出ないと聞く!このまま森の外までなんとか逃げ切れないか!?」

そう叫ぶ殿下にマップを見れば、ぐいぐいと端に向かって走っているのは間違いない。

追いつかれるまでに外に出られるか?

他に接敵しないなら、あるいはワンチャンあるかもしれない。

「一瞬とは言え動きが止められるならスタン連打で行こう!海!」

「了解!それしかねぇな!」

焼け石に水。それは解っている。

それでも脇目も振らずに走った所で追いつかれるのは目に見えているならガンガン魔力が目減りしてもスタンを連続で叩き込んで一瞬一瞬の時間を稼ぐ。

振り返っている時間すら惜しい。それでも、何もせずにはいられない。

木の根に足を取られないようにしながらも可能な限りの速度で走り、合間合間にスタンを叩き込む

息が上がる。

体力的な物というよりは、精神的な緊張から呼吸が苦しい。どくどくと心臓が恐怖に大きく鼓動を打ち立てて速く走れと急いてくる。


木々の合間を縫うように、せめても青鬼の進路を妨げられるように、

時折焦れたように青鬼がその剛腕を振るい周囲の木々を薙ぎ倒す。その破壊音を鼓膜が拾い、恐怖心が煽られた。

――あんなもん喰らったらワンキル待ったなし!

間違いない。死ぬわ。

死ぬわけにはいかない。

だから走る。

走って走って、スタンする。

汗が吹き出し息は上がり喉はカラカラだ。けれど足を止めれば死ぬ。

ただそれだけが今突き付けられている現実だ。

あの小鬼が何故青鬼になったのか。森の守護者とは何なのか。もしかして殿下虫抹殺しすぎ?だから青鬼が現れたというのか?

もしそうであるなら、私達が攻撃系魔法スキルを取得してそれらを揮っていたならば……青鬼と接敵して既に始末されていたとでも言うのだろうか。どんな理由であれ、戦うという事から逃げ続けた結果が最適解であったとしたならば、それは実に幸運なことだったのだろう。

森の生き物同士の殺し合いには関わってこないのだろうか。それともあまりに数が減ることがあればそれを防ぐ為に現れるのか?私達が最初に見た青鬼は一体何をする為にあの場にいたのだろう。

何も解らない。解らないが、とにかく走る。

死んでたまるか。こんなところで。もう、すぐそこなんだ。


マップの端がじわじわと近づいて来る。

木々の密度が減って、太陽の光が強く感じられるようになってきた

もう、あと少し

されど青鬼の手が届く、この距離

「スキルが駄目なら物理しかない!喰らえ空さんの大事なブランケット!」

お気に入りだったのよそれ!

その手をなんとか躱し、インベントリから取り出したブランケットを振り回して前屈気味になった青鬼の顔面に叩きつける。大変肌ざわりがよく、肌寒い日なんかには重宝したものだ。

青鬼の角を貫通してその単眼を塞いだブランケットに、その巨体を暴れさせむしり取ろうと両の腕をその顔面に引き戻す

その隙にまた駆け出して場を離れて

「無茶すんな馬鹿!」

「せざるを得ない局面だったでしょうが!怖かった怖かった足震えそう!」

むしろ震えていないことが不思議なくらいだ

殿下がなにかもの言いたげな眼差しを向けてくるが、文句は聞かないからな!守護者がどうとか知ったこっちゃないんだわ!


「殿下!空!見ろ!」

海が叫ぶ

木々が途切れ、強く光が差し込むその場所

――外だ!

駄目押しのスタンの連打で既に私のブランケットを屠った青鬼に嫌がらせをしながら、その光に向かって力いっぱい地面を蹴り進む

マップ上ではもう端に私達の点がある。

青い点が二つ、緑が一つ、赤が一つ、固まってその端に表示されているそれが、間違いなくここが森の端であると伝えてくる。


そうして、駆け抜けた先

ざぁ、と風が吹き抜ける

木々が途切れ、眼前に広がる広い空間。地平線が、見えた。

青鬼は!?と、足を止め振り返れば、こちらに伸ばされたその手が、森の境界を越えるその瞬間に、ざぁと光の粒子となって霧散していく。

その頭が、巨躯が、森からせり出すのと同時に消え去って行く。

「……は、マジか」

粉々に消えて、霧散したその姿にどっと脱力して腰が抜ける。

「消え、た……?森から出ないのではなく、出られぬのか……?」

はっはっと肩で息をしながら、殿下もやや呆然とした顔で青鬼の居た場所を見詰めていた。

「いや、何は、ともあれ……助かったー」

海もまた、脱力してその場にくずおれる。最後の駄目押しイベントを乗り切って、命の無事に安堵してはー、と長い息を吐き出した。


腰が抜け、座り込んだまま今一度外を振り返る。

木々が途切れ、地平線が見えるその景色。

大きく広がる空は、あまりに久しぶりすぎて涙が出そうだ。上空には鳥らしきものの影がある。そうだよな、鳥くらいいるよなぁ……

「外、だぁ……」

「おー、外、だなぁ」

苦節三か月。ようやく、森から出る事に成功した。

その実感を、この目の前に広がる景色を食い入るように見つめて噛みしめる。

胸の内から震えが湧き上がる。これは、歓喜だ。海を見たなら、目が合う。海も嬉しそうで、でも泣きそうで、お互いに震える手を伸ばして、

「ぃぃやったぞー!外だー!」

「出たよーっ!出たわー!っしゃー!」

ガシっと手を組み力一杯握りしめて喜びの声を叫んだ。長かった、辛かった、しんどかった、と思いつく限りの愚痴なのか喜びなのか、それすら解らないがとにかく溢れる気持ちを駄々洩れに口に出して歓喜を分かち合う。

「殿下―!外でたよ外ー!」

「見たか殿下ー!やったぜー!」

「あ、ああ……そうだな、無事に出られて、良かった、が。そなたら、はしゃぎすぎでは……?」

はしゃがずに居られるか!三日四日程度の森生活のお前と違ってこちとらもう三か月も閉じ込められてたんだわ!温度差激しいわ!


ひとしきりはしゃいで居たら、何だか人の足音が聞こえてきた。遠くから殿下ーとか聞こえるので恐らく殿下の帰還を待っていた何者かなのだろう。

ふと、マップを見ると画面がブラックアウトして『Now Loading…』となっている。

……あん?何だお前いきなり何をロードしているんだおい。もしかして森の外の情報をダウンロード中か?マップ広がるのか?そこらへんはRPGっぽい仕様なのかよ。新エリア解放的な。

バタバタと走ってきているのであろう足音が近づいて来て、その姿が視認できたなら最初に殿下が着ていた詰襟と同じような恰好をした連中が現れた。制服なのだろうか。

それにしても……うむ、筋肉である。なんだろう、殿下と違って見るからに筋肉である。着やせしないタイプの野郎どもがぞろぞろと四人ほど。

地面に座り込みながらその連中を見て、殿下に視線を移したならほっとしたようにその表情を緩めているのが見えたので殿下の味方ではあるのだろう。……ただし、私達の味方であるとは言っていない。

「殿下!何者ですかその二人は!」

当たり前のように腰に佩いた剣を引き抜こうとしている男に、殿下が手を上げてその動きを制する。

「待て。こちらのお二人に失礼をすることは許さん。このお二人が居なければ、私は既に屍であっただろう」

殿下に声を掛けたのはおっさんである。先頭を走って来ていた筋肉その1だ。私の感覚からして、パッと見て30代半ばから40代前半くらいのご年齢層だと見受けられるが、ただ……ちょっとあれだ、彫りが深いので自信はない。日本人が童顔って言うけどさ、あちらの方々が大人びてらっしゃるのではないの?といつも思う。まぁそんな訳なので、このおっさんもしかしたら私とそう変わらない年頃か、もうちょっと上くらいなのかもしれない。だったらホントすまん。

頭髪の色は少々色素の薄い茶色。ミルクティのような割と美味しそうな色味だ。それを短く整えているので大変清潔感があってよろしい。目は緑。まぁ西の人だもんね緑から青なんだろうね。新緑のような色で、清々しい若草色である。厳めしい面構えは筋肉に大変よく似合うもので、眉がキリと吊り上げられてこちらを睨みつけるように見ていた。

やめろよ一般人を脅すなよ。その眼力だけでちょっと引くわ。

「それよりも、帰還の手筈は整っているか」

「は、恙無く。しかし、殿下……」

「ならば良い。……カイ、ソラ、申し訳ないが、私と共に我が国まで来ては頂けないだろうか」

「殿下!?」

うーん?私達が行く必要とは?そして早馬とか無理だわそんな体力ないわ。そもそも馬乗れないわ。それとも帰還の手筈とは何か別の手段があるという事なのだろうか。

しかし、早馬で一週間先の場所まで行って、帰ってくる時どうすんだわ。でも資金補給の目的は未だ果たせていないし……悩む所である。

「いや、それは良いんだけどよ……そっちの、ええと、誰かさん困ってんぜ?俺等連れてくの駄目なんじゃね?」

「貴様、無礼な口を……!」

「やめろ!無礼はそなただ!このお二人は森におわしたのだぞ!」

喧嘩すんなよ……やめろよ。

「あー……殿下、ちょっと待って。時間がないのは解るけど、何の説明もなしに事を進めるのは流石に無理があると思う。あと、こっちとしては買い取りをしてくれるなら何でもいいと言うか、ついていくも行かないもそちらさんのご都合によりけりというか……」

まぁ色々説明してもらいたいことは山積しているが、厄介事は御免被る。

「そもそも私達それはそれは不審者じゃないの。普通警戒するんじゃないかなぁ……」

と言うか、殿下の懐っこさが異常なんだと思うよ。多分。いや、ポーション効果とかあったんだろうけど……それにしてもよ。

「しかし、買い取りをしようにも手持ちでは圧倒的に足りぬのだ」

「あー……うん、そうなの……?薬草だけでも?」

「うむ……退紅草はそもそも市場には出回らぬ。故に私が赴いたのだ。それを買おうと言うのだ、今の手持ちではとてもではないが……無理だ」

「いやー、薬草だけならお気持ち価格でよろしいんだけど」

「どこまでもそなたらの善意に甘え続けるわけには行かぬ」

善意……いや、うん。ないとは言わないが、下心もあったので何と言うか……リアクションに困るわ。これどうするよ。

ちら、と筋肉さんを見れば物凄く難しい顔をしておられる。

「……えーと、なんか、不審ですみません」

「何故ソラが謝ることがある。森にいたというだけで身分は証明されていると言っても過言ではない」

「いやぁ……だってねぇ……?」

身分とか言っても、ほら。あれじゃん?王族とかではないし?ただの一般人だし?

「お前達。見ての通り、こちらは北の王族であらせられる。様々な故あって、公には出ておられないお二人ではあるが、無礼はまかりならん」

おや?と思って殿下を見たならぱちりと目を合わせてきて、こくりと頷くではないか。もしかして、森の原住民であることは隠しておいたほうが良いのだろうか。

「何故、北の王族が西の森におられるのです」

「様々なご事情があるのだ。話すには時間が惜しい」

殿下強引じゃね?それちょっと無理があると思うんだけど。ほら、滅茶苦茶胡散臭そうな目でこっち見てるよ筋肉さん。わかるー。

「父上の容態は一刻を争うのだ。疾く、帰還するぞ」

そして薬草必要なのオトンかよ。つまりは国王陛下的なアレじゃないの。そりゃ急ぐわ。


恐ろしく不審なものを見る目付きで残りの筋肉もこちらを見ているが、そのうちの一人が近づいて来て手を差し出してくる。

いつまで座り込んでんだオラァ、ってことか。じ、と見上げていたら苛っとしたのか、眉根を寄せて

「立ってください」

と震える程冷たい声で言い捨てられる。あ、はい。

一応差し出された手に気持ち程度掴まって立ち上がると、背を向けて歩き出す……これは青年でいいのか?壮年か?もう解んねぇなこれ。こげ茶の短髪に苔色の目をした筋肉。顔立ちはこれまた少々彫りが深いタイプで年齢が本当に解らんのでやんの。普通なのか男前なのかすら判断つかない顔立ちなのだが、すこぶる無表情であったので少々恐い。ついて来いってことでよろしいか。海を振り返るとそっちはそっちで手を貸されて立ちあがっていた。へらり笑ってどうもとか言ってる。お前丹力凄いな。そっちの筋肉は金茶の髪をしていた。生憎と後ろ姿なので目の色は解らないが、どうせ緑か青だ。

海が横に並んで私を見下ろし、困った顔で笑って見せる。

「……なんか、ちと面倒なことになってきた?」

「かも。これ流れで連行されちゃう奴よな」

「まー俺等も流れで殿下森の外に出しちまったし……薬草そこまでの値段で売れるとは思ってなかったのも問題か」

「でも草ぞ。確かにすんごい深いとこまで行かないと採れないけど、草ぞ」

「でもあそこまで森を潜れる奴そういないんじゃね?普通に戦闘行為しながらだったらワンキル待ったなしだし」

「……ところでマップさんがロード画面から立ち上がらない件について」

「おせぇよ早くしろよって感じだよな。どうせ筋肉連中赤点なんだろうが、気になるじゃねぇかマジで」

のろのろと会話しながら歩いて筋肉の背中を追えば、何かごっつい馬車が置いてあった。……馬車?馬?それ馬なの?

とてつもなく立派な体躯の、馬……?いや、私の記憶では馬って四足動物なんだよねぇ……六足ないんだよねぇ……。一回りも二回りも私の記憶にある馬よりもでかい体躯に、筋肉質なぶっとい足が六本。毛並みは黒くてつやっつやである。

そんな馬が四頭、ごっつい頑丈そうな箱に繋がれているブツが見える。

「ソラ、カイ!帰りはこれで走ることとなる」

じゃーん、と言わんばかりだ。なんか、誇らしげなの何なの?

「軍部から借り出したスレイプニルだ。精霊種なので扱える者が限られておってな」

精霊種って何。

来るときは間に合わなかったけど帰りには間に合うように後から来て貰っていたのだと大層嬉しそうにご紹介頂く、馬。いや、普通に怖いけどそいつ。森で会ったら即逃げるけど。何なのこれ。しかも速くて体力があるから凄いんだそうだ。へぇ……ああ、そう。ふぅん……。

さあ乗ってくれと促されるままに乗り込む箱の中は、硬そうな長椅子が一体型で設置してあるだけのもので……あの、これ、サスペンションとか大丈夫っすか?尻割れない?

当然のように殿下の両側に筋肉が座し、その向かいに私と海、合間に筋肉が座る。私、筋肉、海、筋肉……うおお、誰か助けて……っ!筋肉まみれなんだけど!?何なの!?

森の中より息が詰まるんだけど……折角外に出たのに、あの喜びを返して頂きたい!


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