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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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6

そんなこんな、殿下の洗髪を海と一緒になって済ませ、なんならもう一度汗拭きシートで身体を拭いてもらって諸々片付けてから一度結界を張り直してアラームも再設定してから銘々がテントに入り込み就寝となる。

が、就寝している場合じゃない。こっちはこっちで殿下の居ぬ間にグループトーク開始だわ。きっと謎の黄緑の点引き連れて歩いている事に対してメッセージガンガン来てるんだろうな、と思ってスマホを確認したらそりゃもう色々入ってるわ。

そうだよね。解んないよね。

『現地人初遭遇記念日。しらたまさんにごちそう差し上げて欲しい』

とメッセージを打ち込めば

『現地人ってその黄緑?』

親父がいち早く反応を返した。

『そう。この黄緑』

『何者?』

『いや、何かどっかの国のオウジサマらしい。ちなみに、くさかったので洗った』

『無慈悲』

『いや、無慈悲とかじゃねぇわ。あれは駄目だわ普通にやばい匂いだわ接敵免れたの奇跡だわ』

海も参戦して殿下のにおいをフルボッコである。いや、洗ったら普通の大学生になったよ。うん。サラサラの茶髪になったよ。ドライヤーないからタオルドライだけど短髪ってすぐ乾くのいいよね。本人もさっぱりした顔してたよ、私達良い事したと思う。

『王子様って、面倒くさくないの?あんた達大丈夫なの?』

母も参戦である。王子様と聞いて面倒くさいと出てくるこの人の思考回路の失礼さよ。最高か。

『割とフランクに接していても怒られてないから今の所大丈夫。腹の内はわからん』

『そういやポーションって神代の霊薬とか言われたんだけど。俺等霊薬作りすぎウケる』

低品質のポーションは薬草の肥料でしかないなんて……霊薬の扱い間違えてる可能性が高い件について。でもまぁ割と命を繋ぐには必要な行為なので許されよう。

『あと、何か魔法スキルって普通人間には備わらないらしいので、人前であんまスキル使うの良くなさそう』

『え、異世界のデフォルト不思議設定だと思ってたのに違うの?裏切られた』

『むしろ裏切られてない事がなにもない件について。オウジサマとか普通のそのへんの兄ちゃんだし。麗しいとかないからな』

『美形ですらない!流石!』

『でも筋肉えぐかった。アレは勝てんわ。怒らせんとこ』

その筋肉はお前しか見てないからな。あと勝負なんてする気ないからな。なんかあったら逃げ一択だからな。本気の隠密舐めんなよ。

『ゴリラなの?』

『いや、見た目は海とそんな変わらない感じだった』

『着やせするタイプだった』

もぞもぞとお布団の中でスマホをいじりながらぬくぬく過ごすこの時間……最高か。

ちなみに私達も殿下のついでに洗髪しておいた。テントに戻ってから汗拭きシートで身体も拭いているし、勿論着替えも済ませている。汚いままお布団様にくるまるなんてそんな無礼な事はしないのだ。海の城のおかげでテントが分かれているので実に自由に脱ぎ着できる。家族間なんてフリーダムである。

ポータブルトイレも殿下のテントに設置しておいたし、こっちはこっちで出したら即バニッシュしたら一個で何とかなる。明日殿下のブツは海がバニッシュする予定だ。汚物よ消え去れ。

『今日取得した情報として、東西南北瞳の色が違うらしい』

これも洗髪中に色々話をしてくれたものだが、西は緑~青系、東は黄~茶系、南は赤~桃色系、北は灰~黒とかの色で分かれているらしい。

これって小鬼の色に何か関係あるんだろうか……?偶然とは思えないくらい小鬼色だ。

『で、何か結婚式で神前で何やかんやしたら色が変わるってよ』

『これが本当の目の色変えた、ってやつか』

『やかましいわ』

『あと、この森なんか聖域らしい。王族とかしか入れないらしいので注意。ちなみに俺等は現地人としてカミングアウトしておいた。流れで』

『現地人……何か、ワイルドな響きだな』

『いやなんもワイルドさないけどな。森の子呼ばわりされたわ』

これに関してもどこまで信じているのか不明ではある。北の王族疑惑が晴れているのかいないのか。殿下の脳内でどういう処理をされているのかは解らない。そもそもまだ黄緑なのだからこちらに対して疑いは持っている筈だ。色々。

いや、話を聞いている以上こちらが相当非常識な存在であることは何となくわかった。そりゃ疑うわ。不審すぎるわ。何なのコイツらってなるわ。

でもな、こっちもこっちで何なの自分らってなってるんだわ。こっちが知りたいくらいだ馬鹿ったれ。


そして国についても、ロルクェストは西の大国であるそうな。他にも国が幾つかあるそうだが、森に入れる王族を頂くのはロルクェストだけだとか。

妙に誇らしげに言っていたのだが……うーむ、解らん。血筋と言っていたのでそこらへんが絡んでいるのか。始祖が何者かに寄る、とかか?

そしてリグリスダットも北の国名。こちらも北で唯一、森に入れる王族を有する国だとか。あとは東にクィンスタッド、南にマルクヴェストという国があり、森王族がいるのはこの4国だそうだ。他の国の紹介がなかったが、どうせ覚えられないので別に構わない。

森が聖域と呼ばれている所以については話が長くなるとのことで、今回は教えて貰えなかった。残念。同じく祭典についてもそこに関わりがあるらしく、細かな事は落ち着いてから、と言われてしまった。

……落ち着くって言うけどさぁ、明日には森の外なわけで。ノクトはそこからダッシュで国に帰るわけで、私達とはそこでお別れになるのでは?薬草か、ポーションか、どちらかの代金どうやって貰えばいいのか。でも、最悪持ち逃げされてもまぁ痛くもないので構わない。でもちょっとでいいから収入が欲しい。いや本当に。真面目に。最悪の場合充魔屋さんにでもバイトさせて貰えなかろうか。無一文ニートはキツいわ普通に。

『まぁそんな近況。明日には森出れるんじゃねぇかと思うけど』

『そっちは何かあった?平和?』

『家は平和。俺の畑にポーション撒いてみたら芋が死んだくらいか』

『一大事じゃねぇか』

いやホント一大事だわ。どういう事なんだわ。

『何か、分解されて土に還ったわ。薬草以外に使えないことが判明した。また明日種芋植えるわ』

ええ……どういう作用でそうなるのかがさっぱり解らない。薬草は育つのに野菜は駄目なのか……魔力的な何かって本当に何しでかすか解らんな。震えるわ。


「……芋畑死んだのか」

海がしょんぼりしている。私もしょんぼりだ。お芋パーティーできないじゃないの。

枕に顔を埋めながら悲しみに暮れるわ。

ふぅ、と溜息のように息を吐き出しころりと仰向けになった海が、遠い目をして幾度か瞬きをする。

「……明日、無事に森から出られると思うか?」

「出るしかねーでしょ。最悪結界繋いで歩くという手も」

「あー……ものすげぇ力技」

くすくすと海が笑う。

でも実際有効な手段だと思う。結界だけなら一人で50回ちょいは張れるわけで、繋げられると知ったなら手段としてはありだ。とは言え、二畳が1.8mなわけで……ええと?これを50繋げて90m……緊急時の最終脱出手段だな。うん。

「でも出たら出たで何があるか解らんので、できれば魔力は余りある程残しておきたいよねぇ」

「体力もだけどな」

「しかし今日は疲れたねぇ……」

「気疲れのほうがでかいけどな」

「新情報多すぎて頭死んだわ」

「それな」

でもまぁ、少しだけこの世界の事が解った記念日でもある。これまで何もわからず、それこそ五里霧中の状態で森の外を目指すこの一点のみを目標に頑張ってきたのだ。まだ外には出ていないが、それでも現地人とのエンカウントをこなせたのはとても大きな一歩ではないだろうか。

当初恐れていた人の形をしていないかもしれない説はなくなった。現地人ちゃんと人間の形してた。それだけでもほっとしたわ。

東西南北で国が分かれていることも解った。この森を中心に、この世界は発展している模様。

この森は一体何なのか。何故聖域なのか。

聖域と言う割にデスモードなの何でなの。

気になることは未だ山積している。しかしてノクトを引き留めるわけにはいかないのは解る。こんな森にあんな装備で一人きりで入ってきたのだ。それ相応に切羽詰まってる人間に、こちらの知識欲を満たす為に残留してくれなんて誰が言えるのか。

「……俺さぁ」

「んー?」

「ツーブロック辞めるわ」

「どうした」

どうした。何故お前この流れでヘアスタイルの話になった。いや、解る。解るけど。帽子外してころころしながら自分の髪をちょいちょい気にしてたもんね。でもここで俺さぁ……とか言われたら何か物凄い決意の言葉とか出てくるものと思うじゃねえか期待外れだよ。

「放置した時のこの無様な仕上がりご覧になって?海くんみっともなくて人前で帽子脱げないわ」

さらにどうした。何故いきなりお嬢言葉になった。動揺が激しいのではないか。

「お前は伸びたから俺のヘアゴム使って纏められるからまぁいいよな」

「ばっかお前、量が多いから鬱陶しいんだわ。切れるなら切りたいわそりゃもう心から」

森の外に床屋さん、どうか早目に発見されますように。

そんなことを思っていたならグループトーク画面に新しくメッセージが追加された。

『そうそう、そういや今日俺散髪した!』

と、親父の写真付きで送られてきたのだが。タイムリーすぎて此方の会話聞こえてるんじゃないかと震撼するわ。

「……スポーツ刈りかぁ」

「流石に俺ここまでする勇気はねぇなぁ……」

「そうよなぁ……しかもこれ、なんて言うか……おじいちゃんにめっちゃ似てるんだけどウケる」

今は亡き祖父様のコピーじゃねぇの。遺伝子って怖い。

『おじいちゃん久しぶり!』

と送っておいた。

『違うわ。親父じゃねぇわ。俺だわ』

ややこしいわ。

「……はー。割とどうでもいい情報が最後に入ってきたところで、寝るか」

「そうな。オヤスミ」

何だか程よく脱力したので寝ることにする。明日に備えて。きっと走ることになるだろう。その覚悟もまた、胸に抱いて。


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