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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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なんやかんやで結界内休憩所の周辺が落ち着くまでに小一時間は経過した。

ついでに結界内だし排泄も済ませて置くかと努力したけどやっぱりおむつに出すことはできなかった。無念。まぁそのうち限界がきたら出るだろう。まだ余裕があるからダメなんだきっと。

周りが落ち着いたなら死屍累々と転がる生きてるのか死んでるのか解らないオタマジャクシと小鬼と、あとどっから出てきたのか途中参戦したウニと、ついでにここで初めて見ましたわという巻貝みたいなのに複数目がついている何か。巻貝部分は割とトゲトゲしているし、目はその合間についているのがきょろきょろ動いているし、貝の下方からちらほら見える手足がチョコマカと動いて移動するタイプだった。サイズ感はやや小ぶり。50cmくらいか。小鬼よりも背丈という意味では小さい。ただ、殺意は物凄く高い。トゲがな、時々こうズバっと伸びて相手を串刺しにするんだわ。で、縮んだ後ぽとりと落ちた亡骸の上にのそのそ移動して捕食してたっぽい。怖いわ。普通に。

そもそも貝殻部分何でできてるの。伸縮するとか貝じゃないじゃん。何なの。限りなくそれっぽい見た目なだけで謎素材に過ぎるではないの。

まぁそこまで真剣に問い詰めたいわけではないのでいいのだけれど、とりあえずほとんどがぐだってるので今のうちとばかりにそそくさと片づけをしてその場を後にした。


予定ではもう帰宅していていい時間だというのに、すっかり昼前になっている。全くままならない。

全身どろどろだし不快指数えぐいので早く帰って身綺麗にしたいものだ。休憩中にタオルで顔なりなんなりは拭いておいたものの、服がもう全身じっとりしている。なんならそのせいで寒さも割り増しだ。

キャンプ用品持ってくればよかった。今回日帰りだからいらないよねとか言わずに着替えとかもちゃんとインベントリに入れておけばよかった。

備えあれば患いなしって、どっかの偉い人が言ってたよね。全くその通りだわ。油断大敵だ。

だって洗濯とかで出したり、消耗品の類の残数チェックで出したりしたらもう一度リストアップしてインベントリに入れなおすのってちょっと面倒だったんだ。それにしても今回穴空いたこのジーンズ、スペア無いんですが……ええ。そうなると北も制覇して衣料品店もオープンする必要出てくる?出てくるわなぁ。そりゃなぁ。とは言えチノパンはまだある筈なのでそれほど急ぐこともないだろう。代替品はある。


とにかく来た道から逸れる為に大きく迂回しながら家の方角を目指して歩く。

そういえば、この沼地最初に見つけたでかい沼地ではなかった。ちょっと離れた所にあるまた別のでかい沼地だった。オタマジャクシの射程が推定500mだとか本当に洒落にならないので、ほんっとうに良かった。でも確実に100mはあると思う。結局ふざけんなのレベルである。

それにしても、今日は中々散々な有様だ。ウニに足払い掛けられるわ、恐らく小鬼狙った舌にからめとられるわ、ついでに脚喰われかけるわと。踏んだり蹴ったりだ。

やっぱり私達は物凄く運が悪いのでは……?何かスキルで運の向上できないか調べてみよう。幸運値とかあったらそれ目視化できたらいいのにな。

いやまぁ……できたらできたでショック受けそうだけど。


ぐるりと迂回した道は相変わらず足元が悪い。時折吹く風が湿った衣類を冷やしてぶるりと身震いしてしまう。風邪引いたらどうしてくれんだ。あ、キュアポーションですかそうですか……万能すぎて怖いんだけどお前。

太陽光ではいかんともしがたいこの寒気にそんな心配をしていたなら、不意に海がぴた、と足を止めてひく、と口元を戦慄かせて

「――っくしゅ」

くしゃみをした。そりゃそうだよね。寒いよね。私は上半身と足元びったびただけどお前全身だもんね。

マップ上にはとりあえず赤い点もないし、押し殺して我慢したのがよくわかる比較的小さなくしゃみだったので多分どっかから弾丸みたいな舌が飛んでくることもないだろう。ないよな?あるんじゃねぇぞ。

ぐず、と鼻をすすってすまん、と片手を上げてみせる海に、いいってことよと頷いて返す。

正直休憩している間に温まった身体もまた冷えてしまっているので、再び温まるまでにも時間が必要だろう。その前に冷え切ってしまうのだけは勘弁願いたいが。

なるべく乾いた木の根の上を歩いて少しばかり足を速める工夫をしながら歩いているのだが、それにしてもどこら辺りまで迂回すればあの沼地ゾーンを回避できるのだろうか。全く不透明である。

あと2、3時間もすればスメルレスが切れるので、そこも注意していなければならない。切れる前に掛け直さないととんでも生臭い目に遭うのが解りきっている。……そういえば、これ服脱いで身体から離したらその時点でスメルレスの効果から離れるんだよな……家の中で脱いだら物凄い顰蹙買いそう。


そうしてコツコツ歩くことおよそ一時間半。迂回を重ねてなんとか沼地も回避クリアして帰ってきました自宅まで。

大きな出来事がなくて何よりですが、今回も大概疲弊したわ。何でなの。最初からこの何事もないお散歩コースであれば最高なんだけど。別に日常にスリルもサスペンスも求めてないんだわ。これが日常という時点で積んでるわ人生。

はぁ、と絞り出すように溜息を吐き出して自宅玄関を見れば、こちらが開けるより先にドアが開く。

そして出迎えてくれた母がきょとりと目を丸くして一言

「ものすごくきたないわね……」

と。失礼にも程があるのではないだろうか。いや、まぁ凄い汚いんだけど。泥とかオタマジャクシの唾液とか沼水とかでもうどっろどろなんだけど。

とりあえず上着を脱いで、そっと差し出してみたならあからさまに顔を顰めて玄関横に置いてある洗車バケツを指さしてきた。受け取り拒否である。

「着替え持ってくるから、バケツに入れて水洗いだけでもしてね」

あと着替えは玄関ですませてね、と汚れを家に持ち込まないように付け加えられた。……ですよねー。

お風呂も沸かしておくわねと言ってくれたので、昼食は風呂の後になることだろう。

ごそごそと脱ぐものを脱いでバケツに入れ、玄関先ですぐにまた脱ぐ事になるが簡素な乾いた服に着替える。乾いているだけでべらぼうに温かい……最高か。

「ぅぇ……ふぇっくしゅ!」

そして盛大にくしゃみをした海がずず、と鼻を啜り

「気持ちよく出せた……」

はー、と満足そうに顔をほころばせている。

バケツからは異臭が放たれ、ホースで遠巻きに水圧掛けながら水洗いしつつ汚れをざっと落としていく。

「そもそもこれクリーンしたほうが早くねぇ?」

「あ、それだわ。常識に囚われすぎてたわ」

そうだわ。魔力もあるんだからクリーンしとけばいいんだわ……湿気はどうにもならないだろうけど、汚れは落ちるわ。便利なことである。

バケツから出してべちゃべちゃの服を一枚ずつクリーンして汚れを落とせば匂いもしなくなっていく。とは言え、一度は洗濯機で回してもらおう。柔軟剤の香りが愛しい。


そうして後の処理をしたり風呂に入ったり、昼食にありついて腹がくちくなったなら脱力してもう今日は何にもしたくないモードへと移行してしまう。

もうね、ほんとにね。疲れたわ普通に。スキル画面確認とか今度でいいわとか思ってしまう。

心底疲れた。今回も結構危険度が高かったように思う。と言うか私のジーンズが昇天なさったわ。喰い破られた布は流石に繕っても誤魔化しきれない損傷でうんざりする。同時にトレンカも一本お亡くなりになった。勘弁して頂きたい。

この調子で衣類が駄目になっていくのであればやはり北の攻略も考える必要は出てくるだろう。気は進まないが。

……ちなみにこれ複合店になったら何かまた別のカテゴリが生まれるのだろうか。そこは正直気になる。

靴とか新調しないときっと持たないし。かつてないほど歩いている。普通に靴底と体重すり減るわ。これもクリーンで綺麗にしておいたので汚れはなんとかなったが。それでも摩耗はどうにもできない。靴屋切実に求む。


何にせよホームセンターが解禁となったので速やかにスコップの追加購入をした。ニュースコップだ。こんなにもスコップを入念に選んだことがあるだろうか。いや、ない。けれどマイスコップをそれぞれが持つことで庭の手入れも捗るし、探索だって安心感だ。シンプルかつ丈夫そうなそれを購入して私は実にご満悦である。

後は念願のポータブルトイレな。これも全員分購入した。これで野営も安心だ。

そして色々とこまごましたものを買い足して、結構な額になったがこれは必要経費だと割り切るしかないだろう。

購入作業をしながらも、今日の出来事を色々話して怒られたりしながら過ごす。

待っている此方の身にもなれ、と。飛び出しそうになったと。そう言ってもらえるのは大変ありがたいのだけれど、まぁ結果として何とかなったのでご容赦頂きたい。

いやこっちだって危ない目に遭いたいわけじゃないんだ。だからこそ、色々と準備をしているのではないか。

大体これからも探索するとなれば、やはり色々と対策をする必要は出てくるだろう。スタンとか範囲攻撃できないかなぁ……とか、思っちゃうよね普通に。そう言えば発展形スキルってどうやったら取得できるようになるのか。ショッピングはオープンだけで発展していったけれど、魔法スキルの発展ツリーは今の所お目に掛かれていない。

そう思って、イエクサに聞いたなら

『魔法スキルを発展させるには、一定の習熟度が必要となります』

って言われたんだけど。

「……ってことらしいすわ」

「いや解らん。習熟度ってことは一定回数使えってことか?」

「そうかも?でも結構使ってるよね。一定ってどんくらいよ」

海と一緒に首を捻っていれば、聞けばいいじゃないと母がまたイエクサに質問を投げかける。

『およそ100回前後の使用が求められます』

ときたもんだ。

100回。しかも前後。

「曖昧すぎん?何前後って」

「ものによって違いがあるのかもしんねぇな」

「いつもながら面倒くさい仕様すぎて憤りしか感じんわ」

ある程度慣れてきたとは言え、腹が立つのは腹が立つんだわ。とは言え、もうなんでもいいからスタンしまくって発展形スキルを拝んでみよう。一番これが早そうだ。今回の散策でも大抵スタンしまくったのだからそれなりに回数溜まってる筈だし。

魔力鍛えがてらスタンしまくってやるわ。と心を決めた。


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