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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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さて、もう色々と試したりしている内に重大な事が判明しました。

大人用おむつな。出しても大丈夫って思ってもなかなか出せるもんじゃないぞ?本能と理性の凌ぎあいがすごい。

膀胱破裂すんじゃないかなとか思ってもなかなか出せないねこれ。いやぁ、4回吸収安心おむつとか書かれててもな。できないもんだわ。

まぁ元々緊急時の保険みたいなものだと考えていたのでいいんだけど、ここまで理性が歯止めを掛けてくるとは思わなかった。

あと、割と長時間の着用は普通にかぶれる。蒸れる。ロー・ポーションで治ったあたりややウケである。

それからポータブルトイレな。薬局にはなかった。ポータブルトイレ用の薬液なら売ってるんだが……これはホームセンター頼みになりそう。がっかりである。


おうちキャンプは割と楽しかった。いや、最初は地面からの突き上げの寒気に震える羽目になったけど、徐々に快適度を上げて最後はもうリラックス空間が出来上がった。でも定員2名までだなこれ。ふかふかさせすぎたわ普通に。

でも組み立てた状態でインベントリに入れられるのは本当にでかい。これは便利だ。結界張ってテント出したら即休憩できるレベル。防水スプレーもちゃんとまんべんなく振りかけておいた。朝露だって凌いじゃうのである。

そんなわけで色々試しながら魔力も鍛えて現在の魔力残高は結界一人8回分。かなり増えた。3割ってでかい。


そして西の森には親父とツーマンセルで、結界も使いつつ野営もしつつ2泊3日で薬草採取してきた。いやぁ、色々あった。

そもそも雪月花とか探しても探してもそもそも草じゃなかったわ。クソが。そうだよな!花ってなってんだからそりゃ花だよな!割と普通に生えてたのに草ばっか鑑定してたわ時間を無駄に浪費したし途中危うく切り干し大根狼に接敵しそうになったわ滅びろ!南西に方角変えてもお前は出てくるのかよ!活動範囲広すぎない?ホント嫌なんだけど。ちなみに虫は出なかった。本当に良かった。心の底から安堵した。溢れ出る殺意と共に植え付けられたトラウマと生理的嫌悪感は格別なのだ。


あとはキュアポーションの材料な。これもまぁ見つけてきた。鮮紅草とかもう完全に動脈の血を連想させる物騒なお名前であることだが、普通に赤い葉っぱだった。他にも爪紅草とか紅蓮草、退紅草とか紅蓮華とかがあった。紅縛りなのなんとかならん?葉脈が紅いのとか、葉そのものが紅いのとか色々あるけどなんか見た目が物騒なのよな。毒々しいというか。あと、材料の中にある紅蓮華とか言うやつな。蓮華だけでよくない?そもそもあいつ赤いだろ?紅つける必要ある?まぁ見つけやすかったけどさぁ……釈然としない。

一応それぞれ幾ばかは根ごと回収してきてプランターに植えてある。水だけで栽培してみるのと、ロー・ポーション掛けてみるのと、あとできたらミドル・ポーションも掛けてみるかと分けて植えておいた。

そろそろプランター増やさないと結構使ってるので数が足りなくなりそう。直植えしちゃうか?否、まだ整地は進んでいない。木が邪魔なんだよ木が。

伐採しなくちゃ。……森林伐採系魔法スキルかぁ。いつ取れるかなぁ。


まぁそんなこんなで野営をしてきたわけだが、普通に結界で大丈夫って言われてもやっぱり森の中で野営って怖いわ。安心して眠れないって普通に。寝不足で肌荒れ深刻だわ。別に若くねぇのよこちとら。アラーム掛けて結界切れる30分前には解るようにしててもやっぱそわそわして仮眠くらいしか取れないという事実が判明しましたのことよ。

これもそのうち慣れるのだろうか。眠れちゃったりするんだろうか。

まぁ元々アラームの音には敏感なタイプなので寝入っても私は大丈夫だが。ただなぁ……母と海がなぁ。なっかなか目覚ましで起きないタイプなんだよなぁ。親父はアラームより先に起きるタイプなのでノーカウントだ。


しかし、そうこう努力した甲斐もあり、海くんの足が治りましたよ!ミドルで何とかなりましたおめでとうございます。

ただ、作ったミドル・ポーションの質が低品質だった為か相当不味かったらしくて一気飲みした後うおおおおとか言いながら床で悶えてた。

ドンマイである。

ちなみに、ロー・ポーションはもう上質まで作れるようになっている。上質になると味も随分とまともになって爽やかで飲みやすいものとなった。質が味に直結するらしい。

……普通さぁ。質って効果効能に直結するんじゃないの?なんでそうなのこの世界。ツッコミどころ作らないと立ち行かないの?ふざけてんの?


とは言え、これでまた海とツーマンセルで散策に行けるようになったので南へと繰り出すことが可能になったのだ。いやめでたい。

両親には是非ともミドル・ポーションの質向上に励んで頂きたいものだ。

ちなみに母が一番質の向上が早い。この人本当にポーション作りに憧れあったんだな……好きこそものの上手なれ、とは言うものの結構本気で取り組んでくれるので実にありがたい。

とは言え早いところホームセンターをオープンしてポータブルトイレを購入したいので、今回はミドル・ポーションに関しては低品質の物をインベントリに入れている。ロー・ポーションは上質なので安心だ。

万が一くっそ不味い思いをしたときのお口直しの為に、おねーちゃんはへそくりおやつの中から飴を持ち出してきた。ミルクキャンディだ。とてつもなく甘い。脳みそ疲れてる時に舐めると大変よろしい一品です。


それにしてもやはり歩く速度は海と二人の方が早いなぁ、と思う。両親はややのんびりペースなので余計にそう思うのだろう。

そうして結界の外に出てから早10分程で、森の空気が変わってきた。むっとした湿度の高い空気と、足元がぐしゅ、と濡れた感触がする。

……湿地帯とか。ええ……マジか。

長靴とかホームセンターで買う代物なのに、それを購入する前に湿地帯にぶち当たるの?不親切じゃない?

そしてこのシャドウウォークの仕事っぷりどうなってんの。どう見ても足跡着くはずなのに足をどけたら跡形ないのわけわからんね。いや、助かるけど物理どこ行った。謎すぎて震えるわ。

そして湿地帯であるにも関わらずやはり木々は生えている。元気にもりもり生えている。

逆に木の根を伝って歩いたほうが足元安定していいかもしれないと思う程度には生えている。こいつらどんな環境でも生えるの?地面がぐしゅぐしゅでも関係ないの?

あとちょいちょい水溜まりよりは大きい、一畳分程度のサイズ感の沼地があるのよ。そして沼地においては結構な頻度で赤い点灯ってるのよ。

水生のエネミーがついに現れたということだ。大体想像がつくんだけどホントやめてくんないかなぁ……これ水生っていうかどうせ両生類なんだろ?

急に跳び上がってくるとかマジやめてね。心臓に悪いから。声でちゃうから。

ところでこちらの小鬼は何色なんだろう。まだ見つけていないのだが。

くすんだ緑とくすんだ黄とくれば今度はくすんだ青とか赤とかだろうか。ちょっと気になるんだけどそこんとこどうなの小鬼さん。

それにしてもこのぬかるんだ足元、トレッキングシューズ一足しかないのに汚れるし痛むでしょうがよ。靴屋とかショッピングのツリーにすら出てきてないんだからホントやめてほしい。

と、辟易とした気持ちで足元に気を配りながら歩いていると、ざば、と水音がした。

ああ、沼地から何か出てきたんだろうねと周囲を見渡す。正直ちょいちょい赤い点が灯っているのでどこから出てきているのかさっぱり解らんので目視確認するしかないんだわ。

で、見渡した先大体10mくらい離れた沼地の端に、手が引っかかっているのが見えた。

――ひぇ。

手ですよ手。いや、ちょっと待って。ホラー展開真面目にやめて。覚悟した感じと違うんだけど何なの。

しかも濁った沼の水が纏わりついていて色味がはっきりしないけど、あの手……かなり鮮やかなピンク色してない?何故そこでピンクなんだよ。意味わかんないよこういう環境で色って言えば保護色じゃないのかよ。

ひたひたと沼の淵を手で探ったかと思えばもう一本手が出てきてざばーとか水音させながら本体がご登場なさった。


……小鬼ですやん?


いや、これもう小鬼って言っていいの?何か耳とがっりがりのあばらのあたりにヒレついてますけど。水生の小鬼なの?環境に適応しちゃってるの?それぞれの沼はご自宅であらっしゃるの?ここもしかして小鬼の巣窟だったの?ろくでもねぇとこ通ってるんじゃないの私達。素直に南下しちゃうの駄目だったの?ちょっと逸れて南下するべきだったの?

もうわかんねぇなこれ。そうかと思えばそいつのご近所の沼からもざばーとか水音させながらもう一体出てくるわけですよ。あ、隣人ですかそうですか。

顔を突き合わせてなんかコミュニケーション取ってますけど、金属をすり合わせたみたいな不快な音ってそれお前らの鳴き声なわけ?

沼の水でどっろどろのびったびたのままなんか井戸端会議みたいにお話が弾んでいるのかこちらを気にしたそぶりもない。

いやまぁ、隠密仕様だからそうそう見つからない予定ではあるが……なんとも言えない心地だ。何だろう、見てはいけないものをみてしまったような、そんな感じがする。

こいつらにもコミュニティがあって、その中で協力しながら暮らしているんだよなぁと思うと……骨になっていた小鬼とか、蔦植物にミイラにされた小鬼とかを思い出すと哀れにすら思えてくる。同じ食物連鎖ピラミッドの底辺として微妙にシンパシーを覚えてしまいそうではないか。なんか、いつぞやの獣に捧げた小鬼、マジすまん。

そういえば、ここの鬼は武器らしいものを持っていないな。どうしてだろう。

南の森は武器を持たなくても生きられるのだろうか。わからんな……それともこいつら武器なしに見えて何らかの攻撃性を持っているのだろうか。

角はやっぱりあるのだが、攻撃性はありそうにない。一本額に生えているのみだ。まっすぐではなく、少し湾曲して反り上がった形だった。


まぁ小鬼のご近所付き合いを眺めていても仕方ないので先に進むべきなんだろうなぁ、と思っていたらクイと弱い力で袖が引かれる。

あん?と思って振り返れば海が少し困った顔であらぬ方向を指さしていた。

そちらに目をやれば、またしても鮮やかな紫の……なんだあれ。沼から突き出ているのは同じなのだが、今度はなんか妙にトゲトゲと数本生えている。腕ではないなぁ、と思いながら眺めていればその数本のトゲトゲがうにうにと蠢いているではないか。え、普通に気持ち悪いんだが。

何だろうねと首を傾げたなら、トゲトゲしたものも徐々に水面に上がってきているのかその全容をハッキリとさせつつある。

うーん、あれも両生なのか?陸に上がってくるのか?

そうして思わずその全てが見えるまで、眺めてしまった。

――見るんじゃなかった。

ウニじゃん?何かとっても活動的な紫のウニじゃん?なんならちょっと紫が藤色っぽくてきれいなウニじゃん?なんで淡水と思われる沼から出てきたのこいつ。海洋生物じゃないのウニって。

そしてサイズ感が小鬼よりでかいのが難点である。はぁ?である。縦に横にウニだけにうにうに蠢きながらころんと陸に上がってきたそいつは井戸端会議している小鬼に這い寄って行くではないか。小鬼、にげて。超逃げて。

ハラハラとその様子を見守っていれば、ギャ、と小鬼が声を上げてウニを振り返ったと思いきや、何だか聞くに堪えない奇声を上げてウニに向かって吼え立てる。

いや、吼えてないで逃げるべきでは?でもあいつも両生なら水の中まで追ってくるのか。陸上と水中どっちのほうが機敏に動くんだろうコイツら。

そしてこの沼に点在しているエネミー表示、もしかして多種に渡るの?地面の下がこの森の生態系のメインなの?どうなの。

南の森も不思議だなぁ、とか思いながら小鬼とウニのやり取りを眺めていれば、距離が詰まってきたところで唐突に小鬼に動きがみられる。

ただ吼えていただけではないということか。大きく開いたその口、喉の奥から一直線に鋭い一撃が繰り出される。

は?何。水鉄砲的なあれですか?

トス、とウニに突き刺ささっているが……うーん、あれダメージになってなくないか?突き刺さった瞬間は微妙に動きを止めたが、それだけでまたうにうにと距離を詰めて行くではないの。やっぱ逃げるべきでは。そして攻撃方法がその水鉄砲だとしたら、初めて見る遠距離攻撃型ではないだろうか。遠距離?中間距離?まぁどっちでもいいが放出系の攻撃だ。

いつぞやの花の花粉も遠距離攻撃と言えなくもないが、あれはどちらかと言うとデバフに近い印象がある。もしかしたらこの小鬼の水鉄砲もデバフ効果とかあるんだろうか。ちょっと時間が経つとウニが動かなくなったりするんだろうか。


と、その時近くの沼の水面が盛り上がった。

いや、さっきまでそこ赤い点灯ってませんでしたやん?いつ現れたの?この沼もしかして下で繋がってるとかありますのん?聞いてませんけど。

ちょっと焦って視線をやればまたしてもウニらしき物体がトゲトゲとその姿を現そうとしている。

もうウニと小鬼の攻防見てる場合じゃないなと、海を目を合わせてそっとその場から離れる事にした。

一歩、二歩と歩を進めたなら、唐突に足首をビタンと払われる感触がしたと思えばバランスを崩して

「――っ!」

倒れる!こんな、どっろどろの地面に倒れたら滅茶苦茶に汚れる!うわぁっほい!と身体を捻ってダンッ、と力強く大きく足を踏み出して何とか転倒は免れた。が、だ。

そんな無理矢理な体重移動、シャドウウォークさんの身体捌きにはないんだわ。解るな?盛大に音がした。

先程まで争いつつあったウニと小鬼が動きを止めて、小鬼はこちらを見ているし、ウニは目がついてるのかついてないのか解らんが何となくこちらを意識している気がする。気だけだが。

あと、私の足ひっかけた奴。お前だ、お前。近くの沼から出てきた水色のウニ。お前カラーバリエーション豊富なの?は?ちょっとスカイブルーできれいな色なの何なの?あと何でこっち認識して足払い掛けてきたんだテメェ。

苛っとしてひやっとしてぞわっとするわ。

パパパンとスタン4発連打で叩き込んでぱっと海を振り返れば頷きと共に走り出す。

割とエネミー群生地なのであまり走りたくないし、何なら足元がぐちゃってるので普通にそっと足を運ばないと音がするのだが言っている場合でもない。

ウニが意味不明過ぎる。あいつがもし熱感知だったとしても、目がないんですがこの場合ブラインド・フォグ作戦は使えませんな?

動きが鈍いのが幸いか。スタンで逃げ切ってしまえるとは思う。


とは言え泥を跳ね上げながら走っていれば当然そこらへんの沼から何々~?とばかりにピンク色した小鬼がちょっとずつ顔を出す。

すっこんでろ!

あとちょいちょいウニらしきものもトゲっと浮いてきている。

沈んでろ!妙にカラフルで癪に障るわ!

見えた先からスタンしまくって駆け抜ける。

東の森は割と平和に済んだ気がするのに、また走ってる現状に嘘だろと思う。もしかして海って持ってる?持ってるの?いわゆるバッドラックとダンスっちゃうタイプなの?

「この際なんで声出すけどよ!」

「何!」

「何か急に華やいだな!この沼地!」

「くっそどうでもいいわ!」

確かに色とりどりのウニと、ピンク色の小鬼の頭なり手なりが沼から生えてるので花咲いたように見えなくもない。いやでも無理だわ全然美しくないわ。

「あとあのウニ何でお前の足ひっかけたんだ?お前のこと認知してたのか?」

「周囲を探った結果の足払いだとしたら私の今日の運勢最低に違いないんだけど!」

「占いカウントダウンも見れやしねぇ!こんな世の中じゃ!」

スタンの乱発ですよ。もうね、消費1なら全然臆することなく使いまくるわ。

あと幸運値底辺這ってるの私だった可能性が浮上。え?でも東では平和だったじゃないの。むしろ両親二人の幸運値が振り切れてる可能性がでてきた?嘘だろ。そういや親父と西の森に採取行った時も大きな事件無かったな……あれ。私と海のツーマンセルって良くないのでは……?

ともあれスタンの大売り出しをしながら走って、時々木の根を跳び越え背の高い草を掻き分けスタンしつつ、穴ぼこ沼地ゾーンは抜けきった。帰りはちょっと違うとこ通ろうと思う。

「っはー、疲れた」

抜けたら普通に喋ってんじゃないのよ。お黙り。


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