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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
19/124

19

帰宅したならそれはそれは両親が大騒ぎだった。

けれど、なんだか騒がしくも無事を泣いて鼻水たらして喜んで抱きしめてくれた辺りまでは覚えているのだけれど、流石に疲弊しすぎていたし、無事に帰ってきた安心感と相まって張り詰めた気がぷつりと切れてその場で昏倒したのは言うまでもない。


流石に玄関先に放置はされなかったが、二階までは運べなかったらしく起きたらリビングだった。炬燵ではなくちゃんと布団を出してくれていて、その中に転がされているあたりに愛を感じる。そしてしらたまさんも一緒の布団に入って丸まっているあたりが最高に癒される。

しらたまさんの向こうにさらに目を向ければ海も寝ていた。穏やかな寝息を零しながら眠る姿に安堵を覚える。己の無事と、弟の無事が実感として染み渡るというものだ。


いやぁ今回も死ぬかと思った。いや、確かに複数の敵と遭遇する想定が足りてなかったなと反省しきりである。

いつでも相手が一体とは限らないのだ。いい勉強になった……なんて思えるわけがないだろう馬鹿か。ふざけんな。

接敵しない事を最大の目的にしているのだからそこのあたり空気読んで頂きたい。何でいきなり孵化しちゃうのあと30分待ってくれても良かったじゃないの小鬼もちゃんと喰って処理しとけよ怠慢するんじゃない。


しかしこうなるともう、結界をインストールする以外方法がなくないだろうか。身動き取れない状況になったらとりあえず結界に引きこもって事態が収拾するまでおとなしく過ごすしかないと思う。

とは言え、結界のスキルって現段階でまだ取れないということはとんでもなくコストが掛かるということだろう。

しかして、今回の散策でそれなりにレベルは上がっているだろうから今後の対策の為に時間を少しばかりかけて魔力をまた鍛えていくのは手として有りだ。ついでに言うなら海の足が完治するまでとてもでないが出歩くなんておねーちゃんは許しません。


で、あればだ。

ポーションの質も上げておきたいので薬魔技師のランクアップもしておきたい。そりゃ次なる薬草の採取とか色々問題は浮上しては来るけれど、それはそれで今は置いておこう。なんせ魔力がないことにはどうせポーションだって作れないんだろうし。

あとショッピングだ。これは先の展開を期待して現状カンストさせたい。……できるか?できるよな?流石にその程度のレベルは上昇していると信じたい。どうか薬局を、薬局をくれ。膀胱破裂するから。


とにもかくにもまた思いつく限りの準備をして、その準備期間でこの折れた心を癒していきたいと思う。いや普通に折れたわちくしょうが。

ところで風呂入りたい。部屋着に着替えたい。最低限楽な服装にまで脱がせてくれてはいるが、やはりさっぱりしてリラックスしたい。

きっと海も起きたらそう思うだろうし、風呂でも沸かすかなぁとぼんやり思う。

窓の外は薄明るい。という事はまぁ一応朝なのだろう。

そういえば昼食もそんなにしっかり食べてないのに夕食も食べずに寝入ったなぁと思ったなら急激に空腹も襲い掛かってきた。

喉も乾くしついでにトイレにも行きたい。

うぅむ、起きぬけにやりたいことが多すぎて困ってしまう。でもだるい。起き上がるのしんどいなぁ、と怠惰な心地もまたあった。


ぼんやりと取り留めのない思考が定まらずにやりたいことを列挙していれば、リビングのドアが開く音。

「おー、起きてるなぁ」

親父だ。相変わらず朝の早い爺さんだ。

「おー、おはよー」

「大丈夫か?」

「うん、まぁ大丈夫。別に私は怪我してないし。海はちょっと足が心配だけど」

「そうな。傷口は確認できない程度に治ってたけど、それなりに出血はあったみたいだな」

ああ、ズボンとか靴下にも血は染みてたもんねぇと思わず頷く。血の汚れって取れにくいけどこれもクリーン一発でなんとかなるんだろうか。でも切れた生地は縫わなきゃダメだろうなぁ……

「うん。あとロー・ポーションだと中までしっかり治らないみたいで、痛がってた」

「マジか」

「マジ。だから薬魔技師のランク上げたいんだよねぇ」

「あー、結構レベル上がってたからいけるだろ」

「あ、家だとイエクサがアナウンスするのか」

そういえば初日にイエクサのアナウンスでレベルシステムに気付いたなぁ、と思い返す。

という事は結構家で待機しててもぽんぽんアナウンス流れてたんじゃなかろうか。やかましそうだ。

「途中無茶苦茶上がった瞬間があったもんで、思わずマップ見たわ。あれ走ってた?」

「あー……植物系のと接敵して見つかった時かな。一気に走って逃げた時かも」

「何でそこで帰ってこないかなぁ」

「いや、逃げる方向とかあんま考える余裕なかったんだよねぇ」

でもそれで距離が稼げたし、レベルが上がったなら悪すぎる手でもないと思う。ついでにポーションの材料になる湖見つけたしある意味ラッキー、と思うしかない。帰りがとんでもなかったけれど。それでも損得勘定で言えばそこまでマイナスをぶっちぎらない、はず。多分。

いや、それもこれもこうして無事に帰りついたからこそ思える事ではあるけれど。追い回されてる最中ならとてもでないがそんなことは思えなかっただろう。なんでもいいが世の中を呪っておくかとばかりに胸中で呪詛を吐き出し続けていた気がする。


「そういや結局レベル今いくつなの」

「さぁ?俺もカウントしてないわ。イエクサ、現在のレベルを教えて」

上がっているよとはアナウンスされるけれど、その都度カウントは確かにしていられないなぁと納得の心地でイエクサの返答を待つ。

『はい、現在のレベルは41です』

「おー、結構上がった。で、これ結局直線距離でどれくらいなの」

「あー、ちょっと待て今計算する」

パソコンを起動するまでもないようで、電卓叩きながら計算してくれたならば

「12,300て出たから、12.3kmだな」

直線距離でざくっと12kmかぁ……確か大人の歩行速度を平均すると大体が時速4kmとちょっとくらいらしい。直線で歩いたとして、休憩や避難を除いても大体7時間くらいは移動していたからざくっと28kmくらいはトータルで歩いているはずで、片道でも4時間程度は歩いているのだから16kmは歩いているはず。しかも途中走っているのだからもうちょっと移動しているはずなのだが……蛇行がなぁ。蛇行さえなければなぁ……。

結構距離は稼げたとは思うけれど、この蛇行が原因で実際のカウント距離が12kmとは、世知辛いにも程がある。

やっぱり除草剤とかスコップ使ってある程度の道を作ることも視野に入れるべきだろうか。

でも道ができたらその分何か寄ってきそうな気もしてどうにも得策とも言えない。実に悩ましい問題だ。


とは言え、これでスキル取得の為のポイントはそれなりに増えたのは確実だ。あとはどこにどれだけ注ぎ込むか。これが今後の生命線になるだろう。

「んで、今スキル習得に使えるポイントっていくらくらいになるの?」

確か計算してたよね、表まで作って。と思って聞いてみれば、あーん?とか言いながらパソコンを起動していた。

それから何かしら新たに打ち込んでから、

「前回繰り越しが1あったから25だなぁ。割と色々できるか?これなら」

「どうかなぁ。薬魔技師を最低でも上級まで上げたいのと、もうマーケット開いてしまいたいのよな。あと結界ほしい」

「んー、それだと必要なポイントが……11か」

となると残りが14……うーむ。潤沢とは言えない、か。

とは言え次なる散策に向けての準備には足るはず。

「ところでな」

「ん?」

「私トイレ行ってくるわ」

「おう。行ってこいや」

ちょっと流石にだらだらしすぎた。膀胱炎なるわ。


―――


さて、生理的欲求を満たして風呂にもついでに入った。そうこうしている内に海も起きてきて入れ替わるように風呂に入ったなら、母も起きてきたのでリビングの布団を片付けて、またしても家族会議が行われる運びとなる。


まぁ落ち着いて家族会議と行く前に、今回の詳細を語って聞かせる報告会もあったのだがそこは割愛しよう。

とりあえず母が除草剤と殺虫剤を撒いてやると、殺意の波動に目覚めていたが些細なことだ。そこには私達に対する愛しかないのだ。この人結構過激派よな。

いや、でも私も殺虫剤はとてつもなく賛成だが。うちのかわいい末っ子に何すんのよ的なあれだ。

「で、海くんあんよの痛みのほどは?」

「いや、普通に痛いわ。海くん泣いちゃう」

泣けるだけの環境で何よりだわ。お外では泣いてられないもんね。

「やっぱり薬魔技師をランクアップしようか。あ、あと幾らか草摘んできたから鑑定もしよう」

「とは言え、今回ランクアップしたところで俺のこれは自然治癒待ち?」

「まぁそうな。薬草採取の散策行かないとできないもんね」

「ですよねー。ローでコツコツ追いポーションして治すっきゃねぇか」

まぁそれは仕方ないよなぁ、としみじみと頷きながらそれで、と切り出す

「薬魔技師上げるのは別に異論なしでよき?」

そう聞けば、とりあえず異論はないようで頷きが返る。

「んなら、マーケットの取得はどう思う」

「それもこの先必要なことだし、他に買い物できる余地ができるかもしれないならいいんじゃないかしら」

そもそも薬局はどの道必要よ、と母が言う。

洗剤、シャンプー等の風呂用品、歯ブラシ歯磨き粉等の消耗品、そして何よりトイレットペーパー。様々な日用の消耗品がこれから無くなっていく。とてつもなく由々しいことだ。そして散策にも欠かせない様々な消耗品も薬局に頼ることになる。となれば、薬局をどうにかこうにか開拓できないものかと考えるのはやはり皆同じ意見であるようで、こちらも問題なく可決。

「で、あとは結界スキルか」

とは言えこれは現段階で取得できないから魔力鍛える必要がまたしても出てくる。いやまぁ、ロー・ポーションを上質にまで上げる訓練してればすぐに魔力なんてからっけつになるだろうからきっと大丈夫だろうが。

「なら、もう即断即決ってことで」

さらりとスキル画面を操作して海がインストールを開始していく


『ご利用ありがとうございます。鶏卵イエクサ、開店しました』

『ご利用ありがとうございます。米穀イエクサ、開店しました』


以下同文で、鮮魚もミートショップも鶏卵も乳製品も開店しましたわ。いや、お前乳製品イエクサって、せめてイエクサ牧場とかないの?捻れよ。屋号があまりに適当すぎてあきれ返るわ。

そして連打でインストールをして、ついにマーケットに3ポイント注ぎ込めば

『ご利用ありがとうございます。フレッシュショップ・イエクサ、開店しました』

あ、そこは捻るんだ。へぇ。

「どこまでも屋号にイエクサってつけなきゃならない縛りでもあんの?」

「いや知らねぇよ。でもこれで生鮮食品店になったわけで、金銭以外の心配事は減ったな」

その金銭が問題なんだよ。収入ないんだから無駄遣いすんじゃないぞ特に親父。おやつは我慢しなさい。

そしてそこまで開店させたなら、新たにツリーが発生した。

「よし来た。新ツリー出た」

これだ。これを待っていた。

さあこい薬局!ホームセンター!あと衣類もなんとかしてくれ!

祈る気持ちでスキル画面を確認すれば、なんと次はすべて発展形スキルですってよ。一個3ポイントとか食いすぎではないの。普通に辛いわ優しくしろよ。


マーケット

・家電量販店(西5km)clear

・ドラッグストア(東5km)

・ホームセンター(南5km)

・衣料品店(北5km)


と言うツリーが生えたわけだが。

「……これってさぁ」

「各方面に、これだけ最低限進めってこと、だよなぁ」

ひくりと頬がひきつるのを頬杖をつくついでに抑えつつ呻き声のように呟けば、その続きと言わんばかりに海がため息交じりに吐き出した。

いやいやいや、ちょっと正気を疑うわ。発展形ってだけで相当キッツイのにここにきて距離じゃなくて方角縛りまでつけてくんの?は?

しかも5km?ちょっとお散歩行ってきますねと、何もないなら言える距離だがこの森ぞ?迂回しながら直進カウント5kmぞ?おふざけでらっしゃるの?

しかも現在クリア表示になってる西は家電量販店?ハズレじゃねぇか!この環境で家電量販店にどんな用事があると言うのか。自宅の電球とか切れたら大変ねって話ですかそうですか。今はそんなことより薬局なんだわ!ドラッグストアを切実に望んでいるんだわ!

「何故最初に東に行かなかったの親父ぃぃっ」

「無茶言うな」

ですよねー。

「これって東西南北でレベル上がり方違うとかあんのかな」

「自宅から離れた距離って最初に言ってたから起点が家ならどっち行ってもカウントは変わらんのでは?」

まぁでもやってみないことには解らないので何とも言えないが、これマーケット展開の為だけにレベルも上がらない可能性高いのに進まなきゃならないのかと思うとうんざりするわ。そしてこれ、全部取得したら今度は複合店にバージョンアップできるらしい。複合店……最初からそれを求めていたんだがそこの所いかがでしょうか。労力ひどいな。

「まぁ、諦めて5kmくらいなら薬草採取もついで目的として、私もお父さんも行けばいいじゃない?」

本当にこの人はガッツがあるな。

「いや、普通に心配なんだけど」

「私達だって今回どれだけ心配したと思ってるのよ」

明らかに心外です、と言わんばかりに眉根を寄せて不満顔を見せる母に返せるのは苦笑くらいで、だからと言って二人でどうぞとはとてもではないが言えない。

「まぁ海は確実留守番係として、二人が行くなら私も行くから」

「あんたも休んだほうがいいんじゃないの」

「いや今日は行かんよもうちょっと魔力上げようよ足りないわ正直全然だめだわ」

思わずノンブレスで言い切るわ。何故に今日早速行こうとしているんだこの人。どんだけ思い切りカーチャンなんだわ。大体5km舐めてちゃいかんよ青鬼に遭遇したの忘れたわけでもあるまいに。

「海くんひとりでお留守番嫌な件について」

おもむろに挙手をして発言する海。我儘いうな。

「うるせぇ駄々こねるな」

「いや、正直魔力上げて結界取得してからでよくねぇか?現状で何かあったら運次第で死ぬぞマジで」

「それは道理」

「そしてその間で俺の怪我が完治する予定」

「そんな都合の良い話があるか」

大人しく留守番してろ怪我人が!大体お留守番嫌とか何歳児だお前は。ぼっち寂しいとかでなくて、どうせぼっち暇とかそんな理由だろうが。薬魔の修練でも積んでろって話だ。

とは言え、結界を取得してからのほうが良いというのは頷ける話なのでそこは素直に賛同させて貰おうかと思う。

「あるかもしれねぇだろ。全否定すんなよ。で?このまま薬魔も上げちまう?」

「あー……そうな。それも早いとこやってしまうが吉かなぁ。でも頭痛とみぞおちの不快感セットなのよなぁ」

「そうは言ってもやるのはやるんだろ?」

じゃあもうやろうぜと、最早色々麻痺しているのかそれとも治りきらなかった傷が余程に堪えたのかやる気満々な海がこれ以上の問答はしないとばかりにチョイスしてしまった。

中級と上級魔法薬を連打で打ち込まれたならやはり頭がカチ割れそうなくらいの頭痛がぶち込まれて、みぞおちも痛熱いのがもりもりと心身ともに苛んでくる。酷い話だ。悲鳴を上げる程でもなく、ただ眉間に皺を寄せて脇腹抑えながらインストールの時間を耐えるのみなわけで。


そうは言っても必要なものは必要なので文句はない。文句はないが、結果には文句しかない。

中級魔法薬だが、材料の中に龍の涙があった。そこはいい。丁度ゲットしてきたので大変ありがたいことだ。薬草は知らん物ばかりではあるが、コツコツ探す事になるだろう。

問題は上級魔法薬だ。龍の鱗って、なんぞ?どこにあるの?は?もしかしてこれも東西南北に分布してるとか言わないだろうな。中級上級特級アラカルトでそれぞれ東西南北攻めて行かないと薬魔さん仕事できないとか?

解らない。解らないので、ここは初心に帰ろう。

「イエクサ、龍の鱗はどこにあるか教えて」

これだ。そういえばコイツに質問するという基本を忘れていたわ。

問いかければ、ぽぉんと言う電子音がしたと思えば

『はい。龍の鱗は自宅から東に13km進んだ岩塩地帯にあります』

あ、普通に答えてくれるんだ?へぇ。

「これ、もしかして薬草も聞いたら生えてる場所解ったりするんじゃ……?」

ごくり。ワンチャンあるよねと、思わず母と目配せをしてしまう。やみくもに探し回るよりは、せめても方角だけでも解ればかなり楽になるのでは。

「いや、それはそれとして、東に13kmって、かなり条件キッツイなおい」

13kmも行かないと採取できないのかと。しかも岩塩。鱗のくせに何で塩なんだよ涙で代用しろよ塩気あるだろうがよ。大体13kmって、迂回時間を考えたら日帰りできるかどうかのギリギリのラインじゃないのよ。

「……もしかして、東西南北制覇させようとしてんのか?」

ぽつり、と海が呟く言葉に確かにその傾向はあると思う。ショッピングもそうだが、どうやら一方向のみ突き進むことは推奨されていないような気がする。

「そうだとして、何が目的なのかが解らんなぁ」

親父がうぅむと唸りながらマップを開いて眺める。西の方向だけがぐちゃぐちゃに線が引かれている不格好なマップは、家の周囲100m範囲以外他の方面は手つかずだ。

「でもその理屈で行くと、この先も何かしらのスキルを取得するのに方角縛りがあるってことよね」

ため息交じりに母もまたマップを眺めている。東の方向に指を添わせて大体13kmってこの範囲かしらねと半円を描きながら散策するエリアを確認しているようだ。

「つっても……一度は森の外に出て資金補給ができないかの確認をせんことには、現時点の残金だけでこの森制覇は現実的じゃねぇよな」

「問題がありすぎて頭痛が治まらんな」

先程のインストールの影響もあってか頭痛がする。いや、もしかしたらただの片頭痛かもしれないが。

「あ、私も頭痛するわ。もしかしたら天気崩れるのかしらね」

低気圧きてる?精神的なアレではなくて普通に低気圧さん来てますか。この森に恵みの雨的なもの降りますか。雨天中止だわ色々と。あ、でも野宿するようになってから雨が降ったなら雨天時の装備も整える必要があるか。防水スプレーとか?傘は駄目だ音がするから。あとレインコートも素材によるか……そうか。天気という敵もあったか。常に晴天とは限らないのだった。さらりと忘れていたわその可能性。

「……まぁ、とりあえず考えても仕方ないことは置いておくとして。先ずは東5kmは進む必要があると」

異論はないな、と親父の一言に全員が頷く。

「で、そのあとイエクサに聞きながら中級薬魔の材料採取」

それにも頷きを返す。

「中級薬魔ができた時点で、南5km攻略、のち東の龍の鱗の採取に挑戦、て流れか」

「それでいいと思う。まぁ東と南に出る前に魔力上げて結界は取得したいし、全体的に魔力に余裕を持たせる為にもロー・ポーションの質を上質に上げるのにも日数を割きたいかな」

もしかしたなら上質になったら多少は効果が上がるかもしれないし。と加えると親父がまたパソコンを眺めてうーん、と低い声で唸り

「今日から一週間も時間を割けば247くらいまで魔力上がる計算なんだが……」

「結界がどのくらいのコストなのかよねぇ」

ふぅ、と頬に手を当てて母が困った顔をしている。

「ちなみに、お金の心配もあるとは思うけど食費だけで考えるなら、生活費は月で5~6万もあればなんとかなるわよ」

それは朗報です。母よ、あなたの手腕に掛かっている。

「でも、野営の準備や装備なんかにどれだけ掛かるか解らない以上、資金を増やすのは必要不可欠よね」

まぁそうなんだけどな。

「それでも、食費の心配なら暫くはないと考えてもいいと思うわ。だから、魔力を上げるのは私も賛成よ。私、石橋は叩き割るタイプだもの」

「いや、割っちゃ駄目っしょ」

渡れねぇわ。とは言え、安全マージンは多く取ることに否やはない。食費の心配がそれほどないならなおのこと、魔力アップに時間を割きたい。しかし水道光熱費が掛からないのって本当に助かるわ。ありがとうライフライン。引き落としとかで残金減るとかやめてね。いや真面目に。

「そこで海くんの散策復帰の気配が濃厚に」

うるせぇわ留守番してろ。何だってそんなに行きたがるんだコイツ。

「海、大丈夫よ。母さん達だって無理はしないからそんなに不安がらないの」

ちゃんと治るまで、あなたはお留守番よと母が告げる。どちらかと言うと静かな声だ。いつもの元気さを置き去りに、諭すように投げかけられた言葉に思わず海は唇を突き出し拗ねた顔をして見せる。

「別に……不安とかじゃねぇし」

あ、末っ子の顔してら。チンピラフェイスのくせにこういう所本当にかわいいなこいつ。

「それに、お父さんも一緒に行くんだから多少のことはこの人が何とかしてくれるわよ」

この脱いだら凄い筋肉で、と上げてんだか下げてんだか解らない評価を親父に下して母が親父の二の腕をつまんだ。

「おー。スコップなら俺も振り回せるからな。大丈夫だろ」

「いや、まず見つかんなよ。そこが心配だわ俺は」

「やっぱり心配なんじゃないのよ」

「まぁ出るにしても結界取得してからだからなぁ。お前置き去りに死んだりしないからちゃんと中身まで治すこった。無理して後遺症とか出たら目も当てられないっしょ」

私もそう告げて、全治どれくらいかは知らないが表面だけ治っているその傷が全くの違和感がなくなるまでは大人しくしているように説得する側に回る。追いポーションしていても、歩いては痛みがぶり返すというのを繰り返していたわけだから見えない場所の損傷が怖い。神経とか傷ついていなければいいのだけれど、と祈る限りだ。

もしちゃんと治らないのなら、それこそ中級でも上級でも、なんなら特級でもおねーちゃん頑張って薬草採取してくるつもりである。いやほんとがんばる。

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