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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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そんなわけで、大体ポーション作りに精を出しつつ、時々魔法スキルの試し打ちをしつつ、残った4レベルのうち3つを消費して予定通り新たにバインドだのブラインド・フォグだのスメルレスだのも取得したりしつつ、二週間。

魔力はもうクリーン39回分。……あと一日、魔力鍛錬するべきだろうか、と思わなくもない。

あと一日、それだけで51回分にもなるのだが……しかして、森から出るのにこの先どれ程の労苦があるのか解らない以上、あまりだらだらとしているわけにもいかないだろう。


ペットボトルのポーションも、低品質から普通品質まで一応の向上を見せている。ちなみに、低品質のものを折角なので各ポーションの材料になる薬草に与えてみたら思いのほかよい成長具合を見せまして、ちょっとプランターからはみ出した。いや、困る。収まってろ。


まぁそんな現状な我々は、ついに二度目の散策に乗り出すことを決めた。

ちなみに、今回森に出るのは私と海のツーマンセルだ。

何故ならば、スキルの試し打ちをした際に、やっぱりゲーム脳に寄った私達二人の連携が一番スムーズに決まったからだ。

そういった理由から、両親はお留守番という名のポーションの質向上の修行を引き続き行う事となった。

スコップは私が持っていく。故に、庭の開拓はお預けだ。悪いな、親父。


ちなみに、現魔力で使えるスキルの回数が以下の通りである。

クリーン(39)

スタン(39)

バインド(20)

ブラインド・フォグ(20)

スメルレス(5)

この、スメルレスのコストのえぐさよ。クリーンのおよそ7倍のコストがかかる。酷い話だなぁおい。

でも、これ一度使うと6時間は状態を保持してくれるのでまぁ……うん。納得、しても、いいかな。


危ないと思ったらそれがどこであっても戻ること

危ないと思わなくても正午になったら引き返すこと

この二点のみを約束して、二人で森へと繰り出した。


会話はない。足音も消した。気配も当然消している。お互いがお互いを認識しているのみで、息を殺して匂いも消して、ただ足早にかつ周囲を警戒しながら進んでいく。

エネミー表示には気を付けつつ、可能な限り前回通った道を辿り歩いていく。

人数が減ると歩みもやはり早い。

ペース配分はお互いのみに気を配ればいいのだから効率も上がる。


餓鬼に似た緑のアレにニアミスしたりしながらも、見つからないようひそんだり通り抜けたりと割と順調に進んで行く。ちなみに、この緑のちいさいのは小鬼と呼ぶことにした。

いや、鑑定してもいいんだけど、あれでゴブリンとか出たら思わず嘘つけ!とか声に出そうで……

あと、あのでかい青黒い単眼の恐怖の化身は青鬼と呼んでいる。ホラーゲーにあったよね、青鬼。逃げるしかできないやつ。似たようなもんだよなぁ、とちょっとばかり思う。

前回、あの青鬼と遭遇した場所までもうあと僅か。明らかに早いペースで進んでこれている。家から出て1時間程度でここまできたのだ。

30分は短縮しているよなぁ、としみじみ思う。


魔法スキルは相手の体格には関係なく効くらしいので、青鬼にもし遭遇して見つかったとしても多分逃げることくらいはできるだろう。

今回はその精神的余裕があるからきっと大丈夫。腰抜かしたりしないよきっと。

でもできれば遭遇したくない。小鬼にだって遭遇したくないわ普通に。

何も出てくるんじゃないよ空気読んで。


しかし、あの青鬼の生息域はこの辺りでいいのかね?それとも満遍なく森の中練り歩いてるとか言わんよな?

できれば一定のエリアを抜けたら青鬼回避とか、そういうポイントが欲しいものだ。

なぎ倒された茂みが、奴の足跡をありありと示す。あいつ歩いた跡ってほんとわかりやすいよねー、と思いながらもマップ画面にエネミー表示はない。まだ、大丈夫だ。

というか、これが二週間前の足跡なのか、それとも昨日今日ついた足跡なのか正直見分けはつかない。

踏み倒された茂みの葉が枯れているので、前のものである可能性は高いが……大体どれくらいで枯れるのこいつら。さっぱりだわ。


なんだかんだで奴が踏み慣らした場所は歩きやすい。少しの間その痕跡を辿りながら、方角が変わった時点で道を逸れる。

森の中にはやはり鳥の声どころか姿すらなく、木々の梢がざわめく音のみである。多少くらいなら枝葉の音を立ててもこれきっとまぎれるよなぁ、とか思わなくもないが、リスクを背負ってまでそんな真似はしたくない。

海も同じらしく、お互い物音を最低限にしか立てないように歩を進めていた。


そして急に、海が足を止める。

なんぞ?と目で問いかけると、クイっと顎を動かしてある一点を示した。


そこにあったのは、骨だ。

多分、小鬼の骨じゃないかなぁ……角って頭蓋骨から形成されてるんだ。へぇ。頭蓋は一部欠けているものの割と綺麗な形で残っている。しかし身体の骨は割とバキバキになっていたので、何かと争った跡なのだろう。もしかしてこれ、喰われた、のか?

もうね、急にホラーやめてほしい。

結構ぞわっとした。背中から二の腕くらいまで鳥肌立った。薄暗い森の中に転がる砕けた骨とか、演出として最悪だと思う。


思わず眉を顰めてしまう。

ところでこれを成したのはきっと青鬼ではないだろう。あの巨体で小鬼を捕食するとなると、きっと踊り食いくらいの有様になると思われる。こんな、形が残るような有様にはならないはずだ。大体あの巨大な手でちまちま骨から肉を削ぐなんて不可能だろうし……うげ、想像したら吐き気がした。やばい、えづきそう。

思わず口元に手を当てていると、海が腕を引いて方向を変えて歩き出す。

ごめんねいらんこと考えて。おねーちゃん精神頑強になってもグロ耐性ないのよ。そのくせ想像力だけはいっちょ前なのよ。


少し離れたところまで歩いた後、海がインベントリからスマホを取り出して適当に袋状に縫い付けたタオルの中に入れる。

そう、木の上に登らなくてもいいように黒いタオルを縫い付けて袋にしてみたのだ。とんでもなく雑に波縫いしたタオルは光を抑え込むのには十分な仕事をする。

私もスマホを取り出してタオルにインしたら、無音でメッセージが流れてきた。

『青鬼じゃねぇよな』

『だと思う』

『共食い?』

『わからん。別の何かがいる可能性もある』

『肉食かぁ』

『そうな』

海も同じことを考えていたようだ、と思考が一致したことによる安堵と、不安。

何が、いるというのか。この仄暗い森の中に。


いやまぁ、何でもいるんだろうねきっとね。そりゃ外敵が小鬼と青鬼だけだなんて都合のいいことは考えてないよ考えてないから色々スキル積んできたんだからね!

でもそんな、記念すべき散策リトライ一回目にして遭遇するかもしれないフラグとかいらねぇんだわ。

『どうする?』

昼までにはまだ時間はある。ここで先に進むべきか、それとも引き返すべきか。海に訊ねれば、渋面を浮かべて視線をスマホから周囲にぐるりと向けてから、

『進みてぇ。その為の準備はしてきたつもりだし』

『了解』

『いいの?』

『準備はしてきたのは事実だし、とにかく接敵しないことを目標にしてなら進めるはず』


それで後で泣きを見ても自業自得だ。二人なら逃げも打ちやすいだろうし、死なないことを目標に可能な限り進みたい。

お互いが目を合わせて頷きあい、スマホをインベントリにしまう。

それからまた、西に向けて歩き出した。

なるべく遠くを見ることを心掛けて、マップを広げることを念頭にとにかく進む。

見知らぬ何かが潜んでいるかもしれない、この緊張感はなかなか来るものがあるが今さらだ。


とにかくにも、相変わらず警戒をしながら視野を広く、少しの異変にも気付けるようにと気を付けながら歩いていれば不意にガサガサと物音がした。

マップに赤い点が音の方角に発生している。

また小鬼かね?いや、小鬼であれ。なんか小鬼の登場音にしては派手な音がしているが先程懸念した新出キャラクターとかもう望んでないんだわ。

嫌な予感を覚えつつ、視線を音源に向けてやれば


……なんっじゃありゃ。


派手に物音を立てて闊歩しているのは、大型犬くらいのサイズの獣。……獣か?あれ。

一応四足歩行の、多分犬科。なんだけどなぁ……人間でいうところの肩甲骨のあたりからなんか4本くらい生えてんのよ。

あれ、腕かなぁ。割と多関節なのか結構縦横無尽に周囲の草木をかき分けながら本体の歩く道を作っているような、そんな印象だ。

尾の形状的に、多分狼と分類してよさそうなのだけれど、顔面には3つの赤い目があるのでやっぱり動物と言うには少々異形にすぎないだろうか。

いや、そもそもその腕みたいなの何なの。一応先は人間の手のように5本指なのがまた気持ち悪いな。結構リーチが長くて、一本あたり大体2mはありそうだ。それがぐねぐねと動きながら草木をガッサガッサとかいているわけだ。肌質悪そう……なんか、あれだ。切り干し大根みたいなしわっしわの腕で、色味もちょいと血色を感じないんだが。

ところで胸部から前脚含めて足か手が合計6本生えているからあれは昆虫のカウントでいいのか?いや、でも本体は獣っぽいし……


海に目を向けると、海は海でやだーと言いそうに顔を顰めていた。

まぁそうよな。人様の進行方向に急に現れた妙な獣っぽいもの、嫌だよね。

しかもまぁ、狼チックな外見を裏切らず開いた顎に居並ぶ大変鋭そうな牙の数々。先程の小鬼の亡骸は、こいつの食事跡だと言われてもまぁ納得できる。超攻撃的な外見だよねこれ。むさぼりつくしそうよねコイツ。


あと本当に、ほんっとうにスメルレス取得しておいて良かった。絶対鼻が利くだろコイツ。

思わず生唾を飲み込む。相変わらず緊張感が高まると末端が冷える。いやこれきっと肝が冷えてるんだろうなとどうでもいい事すら思考を掠めた。

奴を何と呼称すべきか。そんなことは後回しだ。

進路を読もうにもなかなか広範囲にあの妙な腕が振り回されて読みにくい。じりじりと足元に気を付けつつ後退しながら視線はなるべく奴から外さないようにしていると、また不意に、視界の端に据え置いたマップに赤い点。


「……!」


アホか連続で出てくるんじゃないよ!一体でおなかいっぱいだよ!容赦しろよ!

息が詰まる。

新たに灯った赤い点の方角に目を向ければまたしても獣だ。というか、多分同種族。あ、狼って群れ作りますもんねーなるほどなー、ってなるわけないだろ!ふざけんじゃないよ!

でも微妙に違いがある。最初の獣は尾が白い。あと頭頂部も少し白い毛がある。そんな色味なのだが、新たに出てきた獣は形状は同じだが四足の先が白い。靴下わんこですねーって、かわいくねぇんだよ!全然これっぽっちもかわいくねぇわ!

大体お前らその太ましい四足の先にある爪、通常時はしまえないの?どうなの?とてつもなく鋭そうなその爪な。一撃で昇天させられそうなえぐい爪の数々よ。まぁ出しっぱなしということはしまえないんだろうなぁとは思うけどな。


で?お仲間なの?お友達なの?


勘弁してくれと思いながらも距離を少しずつ開けながら顰め面をしていれば、唐突に二頭の獣は咆哮を上げて互いに牙を剥き合った。

友達ちゃうんかーい!である。

完全に敵を認識した時の獣の反応である。聞いてねぇわ。

地を駆け互いに牙を剥き出してその逞しい爪を振るいあう。そう、それはどう見ても殺し合いです。もしかしたら弱肉強食の世界の一端を見せられているのかもしれない。

しかして、そんなことはどうでもいい。

4本の腕もまた絡み合いながら周囲の枝木をなぎ倒すように動き回っているのだ。攻撃範囲広いよ。巻き込まれてはたまったものではない。


海に目配せをすれば、頷きが返る。

奴らが互いに気を取られている内に逃げよう、と。


少々不安もあるが、背を向けて音をさせないように元来た道を引き返す。

あんな怪獣大戦争に関わっていられるか!

そこそこに離れてからマップを再度確認しても、奴らはあの場所からそう動いていない。さてどうするかと思いながらも少し方角を変えて歩きだしてみれば海もそれに続く。

進むことそのものを諦めるつもりはない。その意思でもって歩き出してみたのだが、どうやら異論はないらしい。


ひえ……知らんうちにブックマークとか評価とか、ありがとうございます。震える。

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