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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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結論から言うと、全部あった。


嘘だろそんなことあるの?薬魔系のあれこれってかなり慈悲深い仕様じゃない?大丈夫?

と、思わず動揺したが他が酷すぎるだけなのかもしれない。


ちなみに、この材料を集めきるまでにすでに一週間は経過していると述べておこう。

草むしったり、低木ほじくり返したり、結界の際まで行って赤い点見つけた時にスタンして試してみたり、色々とやってはいるが概ねスローライフ的な様相である。

魔力もクリーン6回分にまで高まっている。とても順調だ。ここまでくればあとは割と加速度的に上がっていくはずのところまで来ている。


薬草も幾つかは根っこごと収穫して、プランターに植えてみたりなんてしている。

栽培できたらいちいち摘みに出なくていいの楽だよね、という理由から。あと母の薬草園の夢への第一歩だ。

しかしまぁ、全部集まったならこれはもう、やってみなくてはならない。薬魔作りを。

いっそ不可思議な程に魔力的な何かで傷なり病なりを癒してしまうけったいな薬を、この手で。


もう母はわっくわくである。いそいそと炬燵の天板の上を片付けて材料を並べている。

出来上がった薬は何に入れるか、となるとやっぱり空のペットボトルだ。念のためこちらは前日にクリーンを掛けておいた。不純物、ダメ絶対。

ペットボトルには油性マーカーで【傷】【病】とえらく丸いフォントで書かれている。これ、親父の字だ。この爺さん、とっても丸字なのだ。私の字と交換したほうがマッチしてくるんじゃないだろうか。ちなみに私の字はやや右肩上がりではあるが、大体の人から綺麗な字だと評価を受ける程度には整っている。

でもこういう時にラベルの代わりに書くならこういう丸字とかの方がデザイン的な見栄えはいいよなぁ、と少し羨ましくもあった。


乾燥と粉砕にしても、毎日コツコツとしてきたので下準備は完了している。

なんだかほんのり色のついた粉が小皿の上でこんもりと山を成しているブツを並べ、あとは調合と仕上げを残すのみのところまで持ってきているのだ。

いや、一日で全部の作業は無理だった。今の魔力では到底不可能。そもそも乾燥と粉砕で尽きる。薬草それぞれの種類ごとに魔力使うなんてなかなかじゃないのよ。

とは言え待ちに待った薬魔作りだ。どんな代物が出来上がるのか楽しみ半分怖さ半分といったところだろう。


とりあえず私はロー・ポーションを作ってみようと思う。やっぱりスタンダードに攻めていきたい。

目の前にある粉末小皿から材料を手元に引き寄せて、ミルクパンにそのまま入れてある煮沸消毒済の水も鍋ごと引き寄せる。

ちなみに、ミルクパンに関しては我が家に3つ程あるので天板の上に全部置いてある。何故そんなにミルクパンがあるのかって?好きだからさ。


IHって沸騰早いんだよねぇ……我が家にはウォーターサーバーないんだよねぇ……となると、すぐに沸かせるお手軽サイズ感のミルクパンは有能なのだ。そして何より、かわいい。ころんとしたフォルムのものも良いし、ホーロー素材のミルクパンはお洒落なカラーのものもある。

ホットミルクを作ってみたり、ホットココアを作ってみたり、なんせ使い勝手は多岐に渡るこのミルクパン。つい、買ってしまうのだ。

流石に4つ目を買おうとしたら収納スペースないわと怒られたので我慢している。ホーローの白ミルクパン欲しかったなぁ……


まぁそんなミルクパン、役に立っているではないか。今現在フルで稼働しているわけだ。

ちなみに、親父の前だけ普通の小鍋だ。かわいげが足りない。


いや、それはいいんだ。ミルクパンに対する熱い思いなど今は置いておこう。

粉末薬草と、水。

そして、ここから調合のスキルを発動させるわけだ。

両手を材料の上にそっと翳してスキルを発動させると、身体の中で魔力がむずむず動き出す。この、みぞおちがむずっとするの何とかならんのか魔力さん。え?これも仕様?ああ、そう。慣れろと。

全く持ってしょうがねぇなと言う気持ちだが、スキルが発動したなら手の下の材料が勝手に適量ふわりと浮かび上がり混ざり合う。魔力が卵状に材料を包み込んで中で混ぜては捏ねて色が変わっていくのが見える。

――きったねぇ色だなおい。

何だ、あれだ。いや、まぁ草だもんな。草を砕いたものを水に混ぜたらそうよな、こういう、何と言うか……土色に緑混ぜたみたいなくすんだ妙な色になるのは、まぁ解る。でもお前、これ薬だろ?もうちょっと、なんだ。目に優しい色になってくれまいか。

そう思いながらも仕上げに掛かる。卵型の魔力の器の中に魔力をさらに注ぎ込み、撹拌させながらも馴染ませていく。

すると、きったない色だなと思った中身が魔力に反応したのか徐々に色味が変わっていくではないか。何なの魔力的な何か。お前本当意味不明だな。色素まで変えちゃうわけ?


とは言え、ここまできたらほぼ完成のようなもの、らしい。じっくりと色が変わってその変化が終わりを迎えたなら、そっとペットボトルに中身を移した。

「すっくねぇ」

いや、ちょっと少なくない?

飲み残した茶じゃないんだから。どれくらいよこれ。

処方一回分、飲んでも良しかけても良しの不思議な魔法のお薬は、随分少ない。広い範囲の傷なら飲む以外ないじゃないのこれ。

うぅん、と眉を顰めて生成されたロー・ポーションを眺める。


変化した色味はブルーハワイのような青色だ。

ハッキリ言って身体に悪そうよな。これ。大丈夫なの?いやまぁ大丈夫なんだろうな。

とりあえずちゃんとできているのか鑑定してみる。


【ロー・ポーション。品質:低い。もう少し丁寧に魔力を込めましょう】


は?うるせぇわ。

丁寧に魔力込めるって何。

丁寧さをそこに求めるの?むしろどうやって丁寧にすればいいのかすら解らんわ。理不尽な叱られ方じゃない?

実に釈然としない。

「ねぇ、品質低いって出るんだけど」

ややぶすくれた顔で母が言う。一緒だねと目を合わせて頷いておいた。

「丁寧な魔力操作って何って話よな」

「あ、一緒なのね」

何故そこでやや嬉しそうなのか。

ちなみに母はロー・キュアを作っていた。ペットボトルの中は微妙に赤紫色だ。何その紫蘇汁みたいなの。酸っぱそう。見るだけで口の中に唾液がじわりと生まれたわ。いや、味はどうなのか知らないけれど。

「しっかしこれ、一回の量微妙に少ないよねぇ」

ペットボトル満たしたところで一回分を正確に使用するのはなかなか難しそうか?

「うーん……これくらいの量なら、プリンカップに入れてみる?」

あー……確か買ってたな。耐熱性のプリンカップ。確かアレ一個で180mlくらいの分量よな。

提案されたのでいそいそとキッチンに行き、食器棚からプリンカップを取ってくる。

で、ペットボトルを傾けて投入すると、割と程よい。

「うーん、これ外から油性マーカーで印付けておけば測れるかなぁ」

「でも油性マーカーだとクリーンで消えちゃわない?」

「あー……」

どうすっかな。

「そこで登場マスキングテープ」

急に会話に参加すんじゃないよ親父。そしてどっから出したそのマスキングテープ。

「会社で貰ったけど俺使う予定ないわと思いつつ、捨てるに忍びなくて持ってたんよな。使えるんじゃないかと思うんだがよ」

「そうねー、丁度上に張ればいい感じになるわね」

確かに、丁度ぴったり目安のラインになる絶妙な太さのマスキングテープである。

何かよくわからんが、良い仕事をしたな親父。

「そして俺もちゃんと低品質のロー・ポーションが出来上がりましたっと」

そこ、ちゃんとなんだ。

まぁとりあえず、魔力操作もポーション作ってたら上手になるかもしれないという事で、もういいよ。理解した。

きっとそのうち魔力操作がちゃんとできないと駄目な出来事があるに違いない。そういう解釈をして鍛錬することにしよう。目にもの見せてやるわ。

短くなった……次くらいには森に行きたい。

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