表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
12/124

12

さて、カーテンを開ける習慣のなかった私が今朝もカーテンを開けて外を確認してがっかりした三日目の朝。


昨日は寝る前にベッドボードにちょっと埃溜まってたからクリーンしておきましたよ!

いやぁ、すっごい虚脱感だったわ。そのまま寝たわ。起きたらすっきり回復しているけれど。あ、ちなみに昨晩海は夕食にも手を付けず、風呂にも入らずにそのまま炬燵で就寝した模様。もしかしたら深夜夕飯レンチンして食べたかもしれないし、風呂入って汗流して部屋戻ってる可能性もあるけれど未確認。

お猫様を侍らせて寝るのもいいよねぇ。時々やっちゃうよねぇ、炬燵でおねむ。

温度は低めに設定しておいたから大丈夫だとは思うが、ちゃんと水分取っただろうか。

インベントリに散策用の水入ったペットボトル入れてるだろうから水分補給はすぐできただろうけど。


ちなみに、魔力の増え方というのを魔力感知でもって探ってみたわけですが。

大体3割くらい増えるらしい。……うーん。まぁ、分母が増えれば3割って大きくなっていくから妥当、なのか?

でも昨日が1だとして今は1.3なわけで、この0.3ってどう使うのだろう。


そんな疑問も私の中のスキル知識がさらりと正解を与えてくれる。結構な頭痛があった甲斐があるというものか。

疑問に思えば割と知識がふわりと浮上してくるって便利ね。頭の中に教科書ぶちこまれたような感じなんだろうか。調べようと思ったら調べられますよ的な。

で、端数な。意識して魔力捻りだしたら端数も使い切れるそうですわ。

ちなみに、対象の大きさは魔力の込め方にはそんなに関係はないらしい。一個と識別できるものに対して使用することになるので、例えば車なら車の外側はきれいにできる。でもシートとかハンドルとかシフトレバーとか、それはそれで一個としてクリーンしてねってことらしい。

あまり大雑把にクリーンできない様子。部屋まるごとクリーンしてくれよマジで。何なの面倒くせぇ仕様だなぁ。

それは端数を込めても変わらないらしいので、端数込め損なのはよくわかった。

でもまぁ、それしか消費できないならそうするわ。


解ったところでぐい、と背伸びをして体をほぐして気合を入れる。

まぁ今日は森なんか出掛けないけどな!暫く準備期間だわ普通に。

でも多分鑑定を取得することになるだろうから、結界内くらいなら鑑定しにこそこそ出てみてもいい。薬草的なもの生えてなかろうか。

……ないだろうなぁ。どうせ。

そんなお役立ちアイテムは結界の外なんだろ?そういう無慈悲な仕様なんだろ?っち。

あと薬魔技師もインストールしなくては。

この薬魔さん。作るときに魔力消費するだろうことは何となく字面で解るのだけれど、現段階で我々そもそも作れるのだろうか。魔力たりませーんとか言いそう。考えただけで腹が立ってきた。


素直さをかなぐり捨てて大体悪い方向に思考を割くと正解を引くであろうこの世界の仕様に徐々に慣れてきたような気がする。

とは言えまだ三日目の朝だけれど。

無断欠勤ももう仕方ねぇわなと諦めてしまえるくらいには色々気持ちが振り切れた。そんなことより生きる方法を模索せねばならんのだ。会社よ、今まで世話になったな。解雇手続きとかできないのって、どう解決するのかは知らないけれど。人事処理担当の方には本当に申し訳ないことをしたものだ。でもこれ私の意思でそうなってるわけじゃないので許されたい。


相変わらずトイレ行ってからリビングに行けば、炬燵にはすよすよと未だ寝息を立てている海が転がっていた。起きてないんかい。

…いや、それは置いといて。

親父はどうした。

あいつまさか懲りずに外に?

そんな馬鹿なことがあるだろうか。あんな目に遭っておきながらほいほい外に出る程危機意識が欠落している人だったか?


ひやりと胃の腑が冷えた心地をしたところで、ザク、ザクと家の外から物音が聞こえたので窓から顔を出して見やれば、いたわ普通に。

スコップで低木ほじくり返してるわ。元気かおっさん。

「……何してんの」

もうね。あきれるわ。

「おー。おはよーさん。いや、手作業でできる整地くらいは着手しとこうと思ってな?」

あとこれ結構力居るから運動にいいわーとか阿呆みたいに爽やかに笑ったこの還暦過ぎの爺さん何とかなりませんか。

低木の根っこをほじくりかえしてはメキメキ言わせながらちょっとずつ引っこ抜いて穴を穿つその姿は何だか生き生きとしている。

「あとな、俺思った」

「なんぞ」

「ゴミ燃す必要あるでな」

「あ」

本当だ。

ゴミ収集車こないじゃん。ゴミ溜まる一方じゃないの。うわぁ。

「なので、穴掘って燃えるゴミは燃してやろうかとな」

「森林火災に注意する必要あるねぇ」

「まぁそこは穴の周りにちょっと土壁盛るとか?」

「なるほどなぁ」

存在感薄いけどちゃんと考えてるんだなぁ、この人。時々見直すわ。

抜いた木は乾燥させて焚き付けにも使えるだろうとのことで。最初は家の中にある古い雑誌でも焚き付けに使えばなんとかなるか。

「どれくらい掘るの?」

「……俺の身長の半分くらいでいけると思う?」

「たぶん。でもそんな掘れるの?」

「いやぁ、まぁ身体勝手に鍛わったからいけそうな気はしてるけどなぁ……結構地面固いんだよなぁ」

ああ、苦戦しそうな気配。

「水まく?」

「とてつもなく汚れる気がするし、浸透はしないんじゃないのか、これ」

そんな密度あるんか。まぁそうよな。地面だもんな。

まぁコツコツがんばるわーと言ってまたザクザクと音をさせながら地面をほじくり返している。

手伝いたいが、スコップ一個しかないんだよねぇ。


窓を閉めて海を見やる。顔の横にはお猫様が丸まって一緒に寝ているアニマルセラピーモードだ。

気持ちよさそうに寝息を立てていると、目付きが悪いのも和らぐので幼少期のかわいさを思い起こさせる。あと、年がそれなりに離れていたから寝かしつけとか私もしたよなぁとしみじみ思いだす。

こいつ寝言酷いんだよな。急に寝ながら笑いだすから普通に驚く。


それにしても、TVつけてもなんの番組も受信しないから一人でリビングに起きているのは実に退屈だな、と思う。

そりゃ穴掘りにも行くわ。

のそのそとキッチンで水をコップに汲んで相変わらず炬燵の定位置に移動して座れば、先程まで丸まって寝ていたお猫様が目を覚ましてこちらを見やる。ねむそう。

「おー、おはようしらたまさん」

白猫だからしらたまさん。朝だからか瞳孔の細い金の瞳が相変わらず美しいことで。ちなみに、おんなのこ。肉球とお鼻はピンク色だ。麗しい。

ぴくぴくと耳を動かしたと思ったら、なんだお前か、と言わんばかりにまた目を閉じて寝る姿勢に入った。相手しろや。


なんだかんだで、相変わらず朝の気怠い時間を家族が集合するまでだらだらと過ごす。

まるで休日の朝のようだ。

まぁ休日だからと言って穴掘ることはないけどな。普通なら。


暫くして起床した海がぼんやりとした眼差しを天井に向けてから、横を向いたらしらたまの毛に顔面が埋まる。うぶ、とか何か呻き声上げていた。

「おはよう」

「んぉ、はよ……」

寝起き特有のかすれた声で返事が返ってきたかと思えば、のそりと身を起こして着座姿勢でぼぅっと周りを見たその目付きはかなり悪い。やっぱこいつ目を開けるとなかなか柄が悪い印象を与えるなぁ、と自分を棚に上げて胸中で呟く。

会話してみると割とノリが良いし大体誰とでも仲良くなれる不思議ちゃんなんだがなぁ。

「よく寝た……床硬い……身体いてぇ」

「結局お前夜起きたりしなかったの?」

「してない。あのまま寝た。腹減った」

「お前の夕飯そのまま残ってるわ」

「くう」

のそ、と立ち上がってキッチンに行く姿を見送って隣の熱源が失せたしらたまが炬燵の中に潜り込んで行くところまでを観察したなら、とりあえずスキル画面を呼び出して画面を確認する。

3割増えたところで一応、使える魔法スキルが増えていないかそういえば確認してなかったな、と思い立った為だ。

けれど残念ながら新しく使えるようになっているスキルはなさそう。いや、興味ないわみたいな魔法は使えるようになっているのかもしれないが、そもそもそんな魔法チェックすらしてないから解らない。

割と3割ってでかいと思うんだけどなぁ。


しかし、お前このタイミングで夕飯食ったら朝食は入らないよねぇ。と思いながらも、レンチンして戻ってきた海がもそもそ食べる姿を眺める。

正直私も腹が減っているわけだが。余計に腹減るわこれ。見てちゃダメだわこれ。

「んで、今日は薬魔技師と鑑定?」

箸でおかずを摘まみ上げながら海がじろりと目をこちらに向けて問いかけてきたのでとりあえず頷いて返す。

「そうな。そうなるだろうな」

「覚悟いるなぁ、あれよなぁ」

「そう、あれよなぁ」

着座又は横になって、のあれよなぁ。

鑑定怖いなぁ。

「何であんなクソきっつい思いさせるんだろな」

「知らんがな」

そう、知らんがな。

「まぁでも、これさえ乗り切ったらあとは暫く魔力鍛えて修行?的な?」

「そうな」

「で、ある程度したら結局生きるために散策出ないとならんわけか」

「まぁそれは確定だよなぁ」

魔法スキルの使い勝手も結局試さないと解らないから、それも実験する期間にもなるだろうし。

「……野営とかさ、できんのかな俺」

「お前虫超苦手だもんな」

「そこよ」

仮に、我が家にキャンプ用品があったとしてだ。

虫はなぁ。どうにもならんものなぁ。ちなみにテント等の類は一応あるはずだ。子供時代に連れて行ってもらった時の、結構古いものが残っている。捨てていなければ。

「そもそも結界ってどの程度まで防いでくれるのかねぇ」

「それは取得してみないと解らんでしょ」

「あと、トイレどうすんだ」

……どうすんだ。結構切実よな。

そもそも森の中で排泄行為とか、無防備な真似ができるだろうか。なかなかに難しい話だと思う。出るものもひっこむわ。

「……ショッピングの今後に期待するしかないんじゃない?」

「あー……ポータブルトイレ的な?それって薬局の類か」

「多分ねぇ。あと最悪の場合を想定して大人のおむつ」

「……え、きっつ。きっついなそれ」

「いつでも尻を出せる状況とは限らないんだから、それくらいは備えておくべきだと思うわけよ」


しかし現状ショッピングは食料品に偏っている。ここを開拓しきれば次の展開がある、と、思いたい。たぶん。きっと、おそらく。

だって無理だ。衣料品も必要だろうし、特に靴下なんてすぐ親指穴あくから。で、薬局の類も絶対に必要だ。洗剤とかシャンプーとか、ストック尽きたら終わりとかそれはあんまりだろう。どれくらいのレベルを消費するのかは知らないが、ショッピングの開拓は必要不可欠なのは間違いない。

あとはホームセンターも必要だろう。なんなら大型ホームセンターなら自転車くらい売ってるだろ。欲しい。


「まぁなんにせよ、日帰り範囲を散策してからその時に上がったレベル分でできることをしていくしかないよねぇ」

「酷ぇ話だよなぁ」

相当空腹だったのか、ぺろりと食事を終えた海が加熱式タバコを点火して水蒸気を溜息と共に吐き出しつつ寝癖のついた頭をガシガシと掻きむしる。

「修行にあんま期間取れない現状ってのもきっついよな」

「だから結局見つからないように散策するのが大前提なのは一緒よな。多分魔力鍛えるにもそこまでゴリゴリに上げてる余裕はないだろうから、最低限度で済むように立ち回る必要があると思う」

先行きは決して明るくはない気がするが、まぁやるしかないかぁ。


「で、親父は?」

とりあえず一服して落ち着いたのか、きょろっと室内を見渡してから首を傾げて聞かれたので窓の外を指さす。

「外で穴掘ってる」

「何で」

「ゴミ燃やすって」

「ああ……」

納得感を醸し出して窓の外、親父の姿はここからは角度的に見えないがそちらに目を向けて

「俺、火付けするわ」

「あ、そ」

新しいレジャーじゃねぇんだわ。ちょっとそわっとしてんじゃねぇわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ