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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
森とのつきあい方
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で、結局魔力感知と魔力操作をインストールしたわけで。

当然、リスクはあったわけで。


全身を這い回るような不快感を味わいましたわ。

悶えても転がっても振り払えない不快感ってすごいね。なんなのあれ。5分耐えたの褒めて欲しい。

そんな不快な思いをしたのに、魔法スキルほっとんど使えないことが判明しましたよ、クッソウケる。


スキルの横に数字が出現したの。何の回数だよ、と思うじゃない?

現段階で使える魔法スキルと、そのスキルが使える回数ですって。

例えば【スタン(1)】って感じで書いてあるわけよ。あ、これ一回使えるからインストールできますね、ってやかましいわ!


大体(0)なの!ほとんど(0)なの!

ご丁寧に選べないようにグレーアウトまでしてるの!


何故って、我々には魔力がほとんど備わっていないからですってよ!

備えておけよ!それくらいサービスしろよ!


魔法スキル基本セットを取得した時点で、ある程度魔法に関する知識もついた。当然頭痛もあった。そしてそいつが突き付けてきた現実が『魔力鍛えて出直してくださいね』って何なの。は?無理だっつってんだろ。

大体魔力鍛えるって、使える限り魔法スキル使ってすっからかんになったら鍛わりますよって、はぁ?である。

しかもすっからかんになったら死にはしないけれどとってもしんどいそうです。いや結局それは死ねと言っておられる。

殺意高すぎない?全体的に殺意しかなくない?なんなの?


もう海なんてふてくされてお猫様の腹に顔埋めて猫吸いしてるじゃないのよ。迷惑そうにしてらっしゃるわお猫様が。


「……当面魔力強化に費やすとなると、やっぱり食料の問題が浮上してくるわけで」

はぁ、と溜息しか出ないこの現状にうぅんと眉根を寄せた母がスキル画面を眺めつつ

「もう取っちゃう?ショッピング。どういう仕様なのか、これも知っておかないともしかしたらまた落胆が凄い可能性も……」

怖いこと言うんじゃないよ。

元々あんまり期待してないのにさらに予想を上回る、否、下回る仕様だったらどうすんだ。


薬魔技師と鑑定も然り、か。

取るべきもの取ってしまってから、魔法スキルに費やして鍛えに鍛えるという手もなくもない……か?


結界の境界あたりでエネミー表示探しつつスキル使いながら勝手を学び、魔力を鍛える。こんな方法しか思いつかない以上、強化にかかる期間はそれ相応なものになるだろう。

遠出?は?今の時点で?

ばかめそれは自殺だ。

そうなると、食料問題を少しなれど解決できるかもしれない、ほんのちょっとの可能性に賭けるのもいいじゃないの。


……慈悲がほしい。切実に。

ちょっとでいいんだ。ショッピング、お前に慈悲があるのなら、せめてカードを使える仕様でお願いします。


「落胆したくはないけど、取ってしまうのは手よなぁ」

「まぁどうせ取るならいいんじゃないのか?魔力鍛える間だけでも食いつなげれば先が見えるし」

親父も賛成らしい。

未だに猫吸いしている海は特に反論もないのか無反応だ。猫の匂いってどうしてあんなに心安らぐんだろうね。不思議。


「そういや、魔力鍛えるのに関して提案あんだけど」

ふいに、猫の腹から顔を上げた海が呟く

「なんぞ」

「いきなり外ですっからかんになるのはリスキーだと思う」

「道理」

とってもしんどいって、どの程度なのか確かに解らん。身動きとれないくらいしんどい思いをしたなら、その時点で積む。もう死ぬしかない。

「なので、家で使える魔法スキルをインストールすることを具申する」

「あ、生活魔法的な?それならクリーンにすればお風呂掃除も洗い物も楽になるじゃないの!」

確かにそれも解る。


「じゃあ整理するとして、ショッピング、クリーン、スタン、で3消費な」

親父が律儀にメモを取りながらそう告げる

「で、薬魔技師と鑑定で2」

この時点で5の消費。残るは4。何を取るか。何が取れるか。

「後の4を残しておくか、消費してしまうか」

「この時点で消費してしまった場合、次の探索まで増えねぇんだからは残す派」

「そもそも探索向けに取得できるようになった時点でバインドとかも欲しいから私も残す派」

「薬草探索もしなくちゃだし、結局外にでないといけないのは変わらないから私も残すでいいと思うわ」

「ま、そうよな。必要に迫られたらその都度考えるとして、保険に取っておいて損はないか」


とりあえず残すことで意見が一致したところで、スキル画面を親父が引き寄せた。

「じゃ、とりあえずショッピング行っとく?」

流石にこれは私達の身体に掛かってくるものではないから、リスクはないと信じたい。

少しばかり不安感はあれど、全員が頷いたのを確認してから親父がスキルを選択した。


『ご利用ありがとうございます。八百屋イエクサ、開店しました』


うるせぇわ。

何が開店しましただ。

しかも何故八百屋なのか。


おもむろにスマートスピーカーが明滅したと思ったらまたしても新しいウィンドウがリビングに顕著する。

もうね、ウィンドウまみれで室内うっとうしいんだわ。マップは非表示にしているとしてもスキル画面が今4つ展開してんだわ。

その中にどどーんと大きな画面が出てくるの何なの?

しかも八百屋。有無を言わさず八百屋。


主食は?乳製品は?卵は?肉は?


いや、大事だよね野菜。わかるよ。しかも結構あいつら足早いからね。早期消費しちゃうもんね。補給できるのほんと助かる。

ついでに芋とか種芋にもできるしね。ネギなんて根っこから割と簡単に増やせるよね。ズボラな私達にでもネギは増やせるよ。

あと豆類な。大豆とかあったらたんぱく源として優秀よな。


……でも違うんだ。違うんだよ。ショッピングって言葉に求めるのはそういうのじゃなくて、もっとこう、複合店的なさぁ!!

わかんだろ!


しかも画面に出てる残高って何なの。割と額が入ってるあたりに慈悲の一端が見える……のか?

いやちょっと待て。ちょっと待てよ。

この額なんか見覚えあるんだけど。


「おい。おい。この残高、いくらくらいに見えてる?」


まさか。この額、もしかして。

個人個人で見え方違う可能性がある。

そう思って聞いてみたら


「残高?俺んとこは……30万ちょいくらいか、割と野菜買えるな」

そうよな、お前まだ社会人になってそんなに経ってないんだもんな。

海の返答でもう理解した。理解してしまった。

「あ、もういい。もういいです。はい」

「なんぞ」

「いや、多分これ、口座残高だわ」

「は?」

「私が見えてる数字とお前が見えてる数字が違うし、私のとこ大体私の口座残高くらいなんだわ」

だから、家族全員の残高分は買い物ができると考えていいのだろう。

が、だ。

聞いてほしい。

我が家はそれほど裕福ではない。

どちらかと言えば、家のローンと車のローンとで結構生活費はきつめである。

実家暮らしをさせて貰っている身として、社会人になってからは毎月給料から生活費を支払っている程度にはきつめである。

という事は、あまり両親の貯蓄も期待できない。

どちらかと言うと保険積立とかで老後にまとまった金額が入ってくる予定なのを見越して現在の収入はローンと生活費にほとんど消えていると考えてもいいだろう。


チラっと両親を見ると、少しばかりの苦笑い。

やっぱり期待できそうにない。

ならば我が家の食費は私の残高に掛かっていると言っても過言ではないだろう。

いや、まぁなくもない。なくもないが、私だって車のローンとかに結構消えているので、あまり期待しないでほしい。


「……で?家族全員の残高が今の生命線なわけで?お幾らよ」

海が少しばかり嫌そうな顔をして聞いてくる。まぁお前だけに公表させたのは申し訳ないと思っているよ。

「言うて、せいぜい350万程度だわ」

「多いのか少ないのか、何カ月生きられるのかよく解んねぇな」

解るのはお前の年でその貯蓄は少ないだろうということだ、と続けられてうるせぇよとしか返せない。

ちなみに、両親合わせて大体120万程だった。いや、思った通り少ないな。

しかし、食料事情は当面解決ということで。

とは言え、この残高が尽きる前に現地通貨を取得する方法を考える必要があるだろうことは明白。

あと、八百屋以外なんかないのかイエクサ!


八百屋画面には野菜の類は割と豊富にあった。ただし、季節野菜はリーズナブルだが季節外れの野菜はなかなかのお値段。いや、手を出すの躊躇うわなんだこれは。

あと果物の類もあったが、嗜好品買う余裕はねぇんだわ。今の季節は苺が美味しい。けれど、苺はいつだってお高くとまっていらっしゃる。安いお値段でこれなら季節外れたらもう手も出せないわ。


そしてスキル画面に目を戻せば、ショッピングから幾つか追加でツリーが展開していた。


【ショッピング】

・八百屋(済)

・鶏卵

・乳製品

・ミートショップ

・鮮魚

・米穀店


となっている。

そして一つ選択するにつけ1消費するらしい。

どうやらすべて取得したならマーケットに発展させられるとのこと。ちなみに、発展させる時には発展形スキルなので一気に3消費するってよ。

マーケットになったら調味料とかもあるそうですよ。所謂生鮮食品店になるんですって。


お前、そこまでに、どれだけレベル消費する気なんだオラァ!!

慈悲はどうした!

すぐ稼がなくても当面の資金はあったでしょってかやかましいわ!カードよりも確かに手っ取り早くて助かるけどそうじゃないんだわ!気遣いの方向性が間違ってるんだわ!


思わず奇声を上げながら頭を抱えてしまいそうだ。

思いつく限りの罵詈雑言を吐き出してしまいたい。

だがしかし、それをした所で何の意味もなければ得もない。現実は変わらない。

やっぱりクソゲー仕様のこの世界は一筋縄ではいかない。


とは言え、暫くは米の備蓄もあるし、肉類だって冷凍庫で登場する日を待ち侘びている。なれば、散策に力を入れて生鮮食品店をオープンさせる日もそう遠くはないだろう。多分。きっと。おそらく。

少なくとも魔法スキルをまともに使えるくらいになるまでは保つと信じたい。


まぁどれだけ文句をつけてもどうしようもない。

となれば、善は急げと言うので、魔力を鍛える為の第一歩。クリーン、その他のインストールをすみやかに行うべし。

「ところで、魔法スキルのインストールって痛いのかな」

「……ここまできたらいっそ痛いのがお約束じゃねぇの?」

そんなお約束はいらないけどな。


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