瀬戸物趣味無趣味
いつだったか、牛丼屋でサラダを注文したら、なにやら小じゃれた器に入って出てきたことがある。大ざっぱにいえば半球形のよくある形の鉢で、外側は薄緑の縞模様、内側は白だった。しばらく見ているうちに気がついたのだが、これはサラダボウルではなく、明らかに飯茶碗の流用であった。飯茶碗をサラダの器として用いるという自由な発想、そしてそれが小気味よく決まっていることに私は感心し、この采配をした担当者を心の中で賞賛した。
私は瀬戸物がけっこう好きである。といっても、開幕一番牛丼屋の器について語り出すあたりから推察してもらえると思うが、いわゆる通人とか趣味人ではない。高級品とか骨董品とか文化財にはとんと興味がなく、そこらへんで売っている安物専門である。知識も大したことがない。有田焼とか伊万里焼とか、名前は知っているが特徴はよくわからないし、見分けもつかない。
もう二十年以上も前だが、当時住んでいたところの近所に陶磁器の製造業者の直営店があった。廉価な瀬戸物がたくさん並べてあって、とても雰囲気がよかった。私は何度かこの店に足を運び、数百円の茶碗やら急須やらを買ったが、そのうちに閉店してしまった。こういう店は珍しいようで、その後ほかに見たことがない。
東日本大震災の年の秋に、一番町の歩行者天国で陶器市がひらかれたことがあった。おそらく復興を応援する企画だったのではないかと思う。私は仕事帰りにたまたまこれに遭遇して、わくわくしながら見て回ったものである。数十メートルにわたって無数の露店が店開きしており、瀬戸物の花盛りといったあんばいであった。このときはすこぶる気に入った美濃焼の飯茶碗があって、五百円ぐらいで買った。外側が濃い緑、内側は白なのだが表の緑がすこし透けているような微妙な色合いで、たいへん美しいものだった。しかし数年しか使わないうちに割ってしまったのは痛恨事であった。
私がいままで買った瀬戸物でいちばん気に入ったのは、丸い平皿である。直径二十五センチぐらい、裏も表も白一色で、何の模様もない。これはジャスコで買ったのだが、何がよいかというと、ものすごい厚手の皿なのだ。もしかしたら厚さ五ミリか、もっとあるかもしれない。このどっしりずっしりした安心感は、まさに普段使いする器の王道というべきものである。私はこの皿にカレーライス炒飯焼きそばスパゲティ焼き魚ハンバーグコロッケ餃子野菜炒めオムレツトーストホットケーキと、およそ汁物以外のあらゆる料理を載せて日々愛用している。かれこれ二十年近くたつだろうか、かなり乱暴に扱ったりもしているが、ひび一つ入らない。まったく丈夫な、信頼すべきやつである。
上で述べた瀬戸物屋さんの直営店について、他の人が書いた文を見つけたので、参考までにURLを載せておきます。
「神子町に瓦屋の名残はあるのだろうか」(「仙台人が仙台を好きになるブログ」より)
https://kumagai-ya.co.jp/blog/1950




