ようこそミステリーへ
僕達は山道を抜けて
貸別荘についた。
結局はレンタカーでの移動と同じ
延長と言ってもいい
最初は些細な確認のミスで
最初は皆も不満だったけど
体力的には何の問題もなかった。
そこは大学生だからと言わざるを得ない、
ただやっぱり
何処かに出掛ける時や
忘れ物とかしたら大変だろうなって
そんな事を考えていた。
「ここみたいだな」
少し古い印象も感じるけど
別荘として
しかも借りるだけなら十分な建物
「典型的な別荘って感じねぇ」
と麗香さん
「へぇいいじゃん。
こういうのが趣っていうんだろ?」
と森田君
これから仮にも城になる
その別荘に
それぞれが感想を持つ
いつまでも眺めてる訳にもいかないので
早速中に入ろうとする6人
ドアの鍵は予め借りていたモノを使う
「あれ?なんだよそれ?」
佐々木君がドアに鍵を
差し込もうとした時
森田君が何かに気が付いた
「ん?」
ドアに佐々木君もそれに気付く
「紙…だね…」
僕はそれを表現した
ドアに挟まれた不審な紙を
手に取る佐々木君
「ここを使う上での注意書とかかな?」
と興味を示す石塚さん
「早く開けてよー
疲れたんだからー」
と全く興味なしの麗香さん
真面目に黙って読んでる佐々木君
読んでる時間の長さから
結構な量が書かれてるのは分かった。
そして…目は全く笑っていない
佐々木君ならどんな活字でも
真剣な顔で読んでいそうな
真面目なイメージはあるけど
読み終えた佐々木君は
内容に対して一考しているみたいだった
「で…何だったんだ?」
内容を速く知りたい好奇心からか
森田君は急かす
佐々木君は結論を出した
「これなんだけどさ」
佐々木君は紙を差し出す
「どう思う?」
佐々木君は独りでは
決められないと思ったみたい
手渡された森田君は
それを佐々木君と同じように読む
「どうって…悪戯だろ?
こんなの」
と苦笑った
その紙を奪い取るようにした麗香さん
他の二人も覗き込んでみる
さすがに僕には出来そうもない
「なにこれキモい」
それが麗香さんの感想
二人も同じく気味悪がった
そして石塚さんから
その問題の紙を受け取る
そして読んだ
文字は直筆じゃなく
プリントされたようなモノ
紙がどうこうではなかった
問題なのは内容だった
「あの…これ…あれ?」
僕は紙を読み終えると
取り残されているのに気付く
「みんな中に入ったよ
さぁ…私達も入ろう?」
待っててくれた石塚さんが言う
でも…本当にいいのかな?
一枚目
「ようこそ別荘へ
私の事は「人喰い鬼」と
名乗らせて頂きます
どうぞ宜しくお願いします
これから
この別荘に宿泊頂くに当たり
私と少し知恵比べに
挑戦して頂きます
ルールは簡単
鬼が誰か当てるだけ
拒否する事も出来ます
その場合は
絶対に別荘の中に入らないようにお願いします
別荘へ入る事は
知恵比べに参加するという
意思表明と同義です
よく考えた上で御決断下さい」
二枚目
「達成目的
これから制限された項目と時間の中で
鬼を探し当てる
制限
期間は最大1週間
鬼を探し当てようと
挑戦される方々には
その権利を放棄する事を制限します
これが守られない場合
如何なる状況になろうと
保証されるものではありません
鬼は自由に隠れたり嘘をいったり出来る
ただし…鬼にしか適応されない
特別なルールもあります
色々推理してみる事も暇潰し
或いは解決の糸口になるかと思います
探す人間同士で相談や
協力してもいい
ただし…鬼に情報が知られる可能性がある
鬼を見つけ出せれば
必然的に鬼の敗北となり
身の安全は保証される
それでは
名推理に期待致します」
中に入ると木の香り
中は2つの洋室とリビング
あとトイレと浴室と物置
一階建てなので二階はない
簡単な作りだけど
別荘だから必要以上なモノはいらない
そういう感じの作りだった
窓もしっかりあって
外の森林を楽しむ事が出来る
夏なので蝉が合唱していて
暑さを引き立たせる
玄関から入って
手前の洋室を男性が
リビングを挟んで
奥の洋室を女性が使うことになった
洋室の一室は
六畳くらいの広さで
三人が寝るには
少し狭い感じもするが
不便ではない感じ
こういう感じ
小中学校の林間学校や
修学旅行みたいのを思い出す
楽しかったよなぁ
「で?
これからどうするんだ?
人喰い鬼探しでもするのか?」
僕達は荷物を置きに洋室にいた
早速森田君が面白がって話す
真面目ではなく
暇潰し的な冗談みたいなノリ
「人喰い鬼がいるいないは別として
この別荘の把握と
周辺の警戒は必要かもな」
真面目な佐々木君らしい意見
「僕も…そう思う…」
僕もそれに賛成する
「でも…あんなの嫌がらせか悪い冗談だろ?」
そう言いながらも
その嫌がらせや悪い冗談を
不吉や気味悪がらず
面白がるのが森田君らしい
人喰い鬼がいるいないでいえば
「いる」と思う
「いない」のに接触してきたりはしない
例え嫌がらせや悪い冗談だとしても
火のない所に煙はたたないように
玄関ドアに手紙を仕込んだ人間
「人喰い鬼」を自称する存在は「いる」
勿論本当に嫌がらせの可能性もあるから
人喰い鬼の特定は難しい
それに…
みんな悪い冗談だと思ってる
僕もそうであればいいと思ってる
その中で真面目に鬼の特定する事へ
協力的になるとも思えない
「ここで過ごすんだから
現状ぐらい確認するだけだよ
不安のまま生活したくないだろ?」
面倒臭がる森田君だが
この場合は佐々木君の方が
正論だと思う
「じゃあそういうのは
二人に任せるよ
俺は疲れたから少し休ませてもらう」
と森田君は大の字で横に寝っ転がり
小さく手を振った
そんな態度に佐々木君も呆れた
でも…存在意義の矛盾にならないだろうか
危害を加える気がないなら
存在を主張する必要がない
みたいな
「じゃあ信司は室内を頼む
俺は屋外を適当に見回ってみるから」
けれどそれは「嫌がらせ」であった場合
ひっくり返るような推理
だから嫌がらせかどうか
その真意を確める必要がある
その意味でも周辺の調査みたいのは
必要な事だと思う
「うん…分かった…
あの」
僕の躊躇った言葉に
「?」
佐々木君は首を傾げた
「気をつけて…」
けど
僕の言葉の意味を理解して
笑う佐々木君
「信司は人喰い鬼って
信じるのか?」
半分冗談もう半分が真剣なような苦笑い
「あの…その…
居たら怖いなって…」
僕の言葉に佐々木君は
素っ気ない感じでいたが
「もし本当に人喰い鬼がいるなら
それは外じゃないな」
佐々木君はいきなり持論を持ち出す
「え?」
いきなり切り返された気分
「人喰い鬼は内にいる
気をつけるならお前かもしれないな信司」
佐々木君は笑いながら
玄関を出た
外はまだ夏の熱気に包まれ
どっと熱が押し寄せてきた
「そんな…」
ただ…僕の中で同時に
悪寒みたいなモノも押し寄せてきた
人喰い鬼がこれからの事を計画している
それは僕の良く知る人物である可能性がある
言われてみればそうだ
佐々木君は「嫌がらせ」を
視野に入れながらも
その事に気づいている
怪しいなら誰だろう
サボって独りの森田君?
外へ出ていった佐々木君?
女性の中の1人?全員?
わけが分からなくなってきた
僕も疑われてるのだろうか
僕が信じてもらうために
出来る事は何だろう?
しっかり見回る事なんだろうか
「…頑張ろう」




