同級生と旅行
それは夏の暑い日の事だった。
こんな日は外に出ず
クーラーの効いた部屋で
寝っ転がりながら、
ニュースなんかでやる
昨今の猛暑と対策
地球温暖化なんてのも
他人事のような気分でいたいのだけど、
私達はその猛暑の中
山中を歩いて
ある場所を目指していた。
「あっつ~」
皆の誰もが思っていたが
暑い以上の事は
暗黙のルールとしていってはいけない
そんな雰囲気だった。
「こんな日は海とかの方がいいよね?
絶対」
それでも…言えてしまえる人間はいる。
同性として羨むというより
そんな麗香に呆れてしまう
まぁ…本音を言えば
私もこんなつもりではなかった。
皆もそう思っていても
同調は出来ず
適当に無視するか苦笑うのみだった。
「で?なんで私達
山の中を歩いてるの?」
麗香の不満は何かに
ぶつけないと気がすまないらしい
まぁいつもの事ではあるが
「仕方ないだろ
目的地はこの先なんだ」
和也も少しは我慢しろという意味合いで
麗香にいうが
それで麗香が納得しないのが彼女である。
「だいたいこんな所
来たいって言ったの誰よ?」
多分…過半数が思ってただろう。
「お前だよ」と
それを言っても
「こんな事になるなんて知らなかった」
と言い張るのが彼女。
私達は貸別荘へ行く為に
ちょっとした山道を歩いていた。
私達はこの暑い中
ログハウス風の貸別荘で
楽しく過ごそうという事になった。
確かに海という選択肢もあったが
それは麗香が拒否
理由は「人が多いと落ち着けないから」だが
本音は「意中の彼が
海で不特定多数の女に
ナンパされるのは面白くな
い寧ろ嫌」だった。
まぁ…そこは女として
確かに一理ある。
それに貸別荘なら
一泊辺りが旅館宿に比べ
少し安い為に
大学生の経済的に安心
旅館料金と同じ値段で
長く居られるのも利点だった。
短期間で思いっきり遊ぶより少し長い期間で濃い時間を共有する。
私達は後者を選んだわけだけど、
でも…うん
安いというのは
それなりに理由があるんだな
「えっと…
誰が決めたんだったけかな?」
気不味い雰囲気を
更に悪くさせるような事をいう森田君。
そんな話題
私には絶対に振らないでほしい皆が思うだろう。
「なぁ信司?」
けど…その行き先は
予定調和のように決まってた
「えっ…と…」
信司君は彼が言い出した辺りから
ビビり始め
案の定御指名となった。
これもまぁ…
いつもの事である
麗香は美人ではあるが
非常に我が儘で
単品で付き合える人間は多分いない。
だから信司君のような
麗香の不満を一身に背負う存在
所謂緩和材が必要なのだ。
男子は彼を巧みに使い
「麗香と一夏の思い出」が作れれば
彼も麗香も要済み
満足なのだ。
麗香、
あんた絶対に損してるよ
と同性として思わなくもないが
大きなお世話なので言わない。
「………。」
彼は本当に忘れている訳ではなく
「本当に」言った後の
報復を恐れていた。
本当に答えれば報復が
嘘で誰かを売れば恨みが
そして
黙っていれば彼自身が
麗香の不満を被るという理不尽。
第一内気で意志疎通が
満足に出来ない人間を
わざわざ友人の和の中に入れる理由と言えば
ライバル減らしか数合わせ
それか今回みたいな
貧乏籤しかない。
あれ?
なんか思ってもない事を
今言わされてるような
私はそんな彼を見ていた。
少し脅えた姿は小動物の様で
とっても可愛く見える
愛くるしいと言ってもいい
…
……
………。
…ゴホン
「ログハウスで楽しく過ごそうって言ったの麗香じゃない?」
私はもう少し彼を堪能してもよかったが
見かねて助け船を出した。
「あれ?そうだっけ?」
不意の言葉(攻撃)だったのか
本当に不満が募って忘れてたのか
麗香はとぼけて誤魔化して笑った。
他の人も麗香の不満を
自分が被らなくていいなら
特別深くは追及しなかった。
だいたい駐車場から
今向かってる貸別荘まで
およそ歩いて30分
それを開始10分くらい歩いただけで
もう不満を募らせた
まったく
いつもの事とはいえ
先が思いやられる
麗香も自分が言い出した手前もあって
不満を言わなくなった。
私と彼は後方で歩いていた
「あの…ありがとう…」
彼が私に今の助け船の事を
それとなく私に言う。
「いいよ…気にしなくても
約束だしね」
だから私も言った
「あの…ありがとう」
彼は同じ言葉を言った。
同じ言葉なのに
私は二度目の方が嬉しかった。
一回目のそれは感謝ではなく言ってしまえば社交辞令的なモノ
内向的な彼は
いつも本音より建前の方が先だった。
私はそれを知っている。
二回目のそれが私に対する感謝なのだ。
だから私は嬉しかった。
いつまでも二人で
ひそひそと話していても
怪しまれるので
私は笑顔でそれに答えた。
今回の旅行参加者は6人
私(真澄)と彼(信司)
しっかりイケメンの和也と
お調子者の忍
あと我儘が玉に傷の麗香と
あれ…?
あーあと咲良
彼女は今みたいな
面倒くさい空気には絡んでこない。
明るい娘なんだけどね。




