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猫イモウト  作者: 須羽ヴィオラ
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第二章 ハジマリ #2

「ねえ、ねえ。もっと詳しく聞きたいでしょ」

 ひね曲がった笑い顔の百合華と朱美が、話を続けようとする。

「聞きたくないってば」

 と撥ね付ける。


「えー。いいのかなぁ、聞かなくて…」

「そうだよ、濱野のために来たんだよ、私たち」

 あー、もう、しつこい。放っておいて欲しい。


「ん、んん」

 咳払いが聞こえた。

「そこ、私の席なんだけど。どいて貰える」

 アーちゃんが来た。助かった。

「あっ、奥寺さん。私たち、濱野さんに大事な話があったの」

「ふーん。でも、もうすぐ授業だから、どいてくれる」

「でも、濱野さんにとって、とっても大事な話なのよ。彩愛ちゃん」

「あー……。私、あなた達と親しくなった覚えはないから、下の名前で呼ばないで

くれる。それと、ど・い・て」


 アーちゃんのお蔭で、虎口を脱することができた。

 アーちゃん。奥寺彩愛あやめ

 私の中学時代からの仲良し。

 この町に古くからある名家の出だ。

 そのせいなのか、気が強くて、男子とも平気で渡り合える。

 だから、あの嫌な二人組なんか、簡単に追っ払ってくれた。

 ほんと、頼りになる。


「何か言われたの、あの二人に」

 私の異様な雰囲気を感じ取ったのか、アーちゃんが心配顔で尋ねる。

「えーと、その。何でもない…。大丈夫」

 と答える。

 アーちゃんが、私の顔をマジマジとみて

「美寿穂がそういうときは、大抵、何かがあって、大丈夫じゃない…」

 図星だ。

「う。うん」とお茶を濁す。

「まっ。大体見当はついてるけどね」

 とアーちゃん。


 見当がついている?

 どういうこと。アーちゃんも、三笠君の彼女のことについて知ってるの?

 私が、疑問符のついた顔を作ると

「ちょっと、ここじゃ話せないから、後でね」

 とアーちゃんが答えた。


 モンモンとした中で、午前の授業を受けた。

 先生の話した内容など、全くといって良いほど覚えていない。


 今朝押しかけてきた噂好き二人組の情報なら、話半分と思っていればよい。

 だけど、アーちゃんなら信頼できる。

 アーちゃんの言った「見当がついている」の意味が、三笠君の事だったら?

 きっと、私にとって有難くない話に違いない。

 なんだか、アーちゃんの話を聞くのが怖くなってきた。


 お昼休みになった。

「屋上で話そうか」

 とアーちゃんに誘われた。


 二人して、お弁当を手に屋上へ。

 適当な日陰を見つけて腰かける。

「私、回りくどい言い方できないからさ。単刀直入に言う」

 アーちゃんがさっそく口を開く。

 私は、次の言葉を固唾を飲んで待ち構える。

「昨日、町民体育館に行くときに、三笠君が女の子と歩いてるとこを見た」

 えーっ!!

 思わず声が出た。


「近くに牟田口も居たから、今朝、美寿穂が絡まれてたのも、その話じゃない?」

 その通りだ。でも、そんなことより三笠君のことが気にかかる。

「三笠君と一緒にいた子、かなり可愛かったけど、彼女かどうかは分かんないよ」

「…でも、女の子と一緒だったのは…確かなんでしょ?」

「だからぁ! 彼女かどうかなんて、分かんないって!」

「でも…、三笠君が、その子と手を繋いでたって、聞いた」

「確かに私も見たけど…、それだけで、彼女だって決まった訳じゃないでしょ」

 アーちゃんは、そう言ってくれてるけど、私の元気はしぼんで行く。

 ハァ。と大きな溜め息がでる。


「そんなに気になるなら、当人に聞いてみれば? てゆうか、コクれば?」

「えー…」

 それが出来れば苦労は無い。私の元気はますます小さくなる。


「出来ないよ…。そんなこと、私…」

 涙目になってきたのが自分でも分かる。

「もう。美寿穂の一番の欠点は、自分に自信がないところ。美寿穂は、女の私から

見ても可愛いし、何にでもひた向きだから、あなたのこと嫌いな人なんている筈が

ないよ」

「でも…」

「それに、私の見立てじゃ、三笠君も美寿穂のこと憎からず思ってるよ、きっと」


 えっ。そうなの。

 ちょっとだけ私の元気が膨らむ。

「まぁ、私の見立てだけどね。だって、三笠君、時々美寿穂のこと遠くから見てる

もの」

「そうなの? 私、三笠君のこと、まともに見れないから…」

「まぁ!! 純情だこと!」

 とアーちゃんに呆れられる。


 とにもかくにも、三笠くんが可愛らしい女の子と一緒だったことは確からしい。

 後悔の霧が、私の回りに立ち込める。

 勇気をだして、自分の思いを伝えておけば良かったのに…。

 思いも伝わらぬまま、私の恋はもうすぐ終わる。

 折角、咲いたのに、誰にも知られぬまま、消えてしまう私の恋心。

 ゴメンネ。恋心さん。私に勇気がないばっかりに…。


 なんて、ポエム作ってるようじゃ、だめなんだ私。

 だけど、何もできないままに最後の補習授業の一日が終わる。

 

 アーちゃんが隣に居たお陰で、噂好きコンビのチョッカイは受けずにすんだ。

 帰りもアーちゃんと一緒に帰る。これで、一安心。


「美寿穂さぁ。本とに、三笠君に告白した方が良いって」

「えぇー…。でもぉ」

「そうやって考えてる間に、例の女の子が彼女になっちゃたら、どうするの?」

「そ、それは…。三笠君がその子を選んだんなら、諦めるしか…」

「そんな消極的な気持ちじゃ、ダメ」

 アーちゃんが私の前に立ちふさがり、両手を私の肩の上に置く。

「美寿穂。あなたは、この夏休み中に三笠君に告白する。それが、あなたの宿題」

「えーっ! そんな、無理だよ…」

「絶対に上手くいくから。ねっ! 約束だよ」


 とうとう、三笠君への告白が、私の宿題にされてしまった。

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